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【フォトグラファースギノユキコ with えんぶ WEB CLOSE to my HEART】07 小林義典

えんぶにて脚本家・演出家・俳優を撮り続けて約20年(長期中抜け有り)。
いわゆる非日常を創作する彼ら・彼女らの姿を
日常的でありながら、そっと風変わりな目でつかまえるスギノの写真。
このコーナーではえんぶ誌面では掲載しきれなかった
“スギノお気に入り”の写真達とともに演劇人を紹介。
インタビュー&写真から現れるその心にフォーカス。

File.07 小林義典
(2019年2月取材/撮影)

劇団が活動休止したら、なぜか急に声がかかるようになって(笑)。

○○10年、というフレーズが演劇の世界でもよく使われる。それなりに何かが形になるまでに、10年くらいかかるということだろう。その伝でいくと小林義典はクロムモリブデン10年。昨年春の劇団公演『たまには海が泳げ!』に出演して「初めて役者として〝クロムモリブデン〟に立てたなって感じがした」という。だが、その公演を終えた直後に劇団は活動休止になった。ところがその後、なぜか出演のオファーが増えた。なるほど小林義典の出演する作品は面白く、次の公演も観にいってみようと思わせる。そんな彼の存在感にゆるりと迫ってみた。

気づいたら 10年経っていた。

――昨年、劇団が活動休止しました。

気づいたら10年くらい経ってました。

――劇団が休止してから引っ張りだこな感じで出演が続いていますが。

『たまには海が泳げ!』の公演で初めて、役者としてクロムモリブデンに立てたなって感じがしました。本番も初めて楽しいって思えたり。稽古は前から好きだったんです。稽古だったら誰も怒らないというか、その…怒るんですけど、何してもいいっていうんですかね。クロムの稽古ほんと楽しくて好きでした。他のところに客演した時にクロムって稽古「長いな」って気づくんですがね(笑)。大学出て初めて関わった劇団だったので結構クロムが基準になっているというか、そこで色んなことを教えてもらったって感じですね。クロムが活動休止になって、なぜか急に声がかかるようになったというか。それまではそんなに声がかかることもなく…。

キレて乱暴する役が 重なった。

――休止後。桃尻犬みのりの公演『熊ん子リバーバンク』(脚本・演出:野田慈伸)に出演されました。

徳橋みのりさんがやろうって言ってくれて。まさか自分に声がかかるとは思ってなかったですね。野田くんってJーPOP使うのがすごい上手だなって思うんです。音楽使うの上手な作・演出家は信頼できるなって思いますね。クロムの青木(秀樹)さんもそうですけど、選曲のセンス、音楽のセンス、ここでこの曲をかけるんだみたいな、そういう。野田くんはそういうの信頼できると思ったので出ようと思ったし、みのりちゃんに嫌われてると思ってたから声かけられて嬉しくて(笑)。嬉しくて出たら、あんな役でした。

――面白い役でしたね。もう嬉しくなっちゃいました。急に友人を訪ねて、卵を要求して、足りないと大暴れする、テニスの格好をした男。かなり理不尽なのにすごく本当っぽかった。

あれは、『ファニー・ゲーム』っていう映画があって、そのオマージュらしいんですけど。僕、白いTシャツ白い短パンで出たのが2回目で、しかもテニスラケットで殴る役も同じだったんですよ。2017年8月のナカゴーに出演した時に松岡修造の役だったんですね、似てないんですけど(笑)。で、途中で、「松岡修造じゃねえぞ!」って怒って。河童の話だったんですけど。河童たちに、人間の皮膚を被せてた赤羽の闇医者の役なんです。ちょっと言ってることがわからないと思うんですけど(笑)。

――(笑)。

河童が手術代の頭金しか払ってくれなくて、踏み倒されたからお前らに復讐する、って言ってめちゃくちゃキレて、ラケットで乱暴する役。『熊ん子リバーバンク』で全く同じ衣装でまた乱暴する役だったから、そういう風に見えんのかな? って怖かったです。

――でも妙な爽やかさもあるから変だったなあ、と思って。小林さんじゃなきゃできない役になってますもんねえ。すごい楽しかったです。

でも…こんなこと言ったら変かもしれないですけど、割とあの役って、意味がわかったっていうか、セリフの意味とかはよくわからないんですけど、なんか、僕はすごいやりやすくて。本人、悪いとは思ってないというか。そんなに善悪で判断するんじゃないっていうか。衝動みたいなものなのかなって思いました。

インコの役も すごい楽しくできました。

――くによし組番外公演『チキン南蛮の夜』のインコ役も、面白かったですね。

本当にあれも面白い役で。インコみたいなイメージということで。だから何してもいいし、ってわけじゃないけど、楽しくやれましたね。稽古場も、演出の國吉(咲貴)さんを楽しませたいっていうのが強くて。結構自由でインコの役もすごい楽しくできました。

――なんか、上手におうむ返しでちょっと変えたりとか。人なのにインコって言われて、ああ、みたいな。会場も変わった所で、ちょっと度肝を抜かれましたよね(笑)。

あれも、すごいな、と思いました。インコの役とチキン南蛮の役を僕と梅田(優作)くんのどちらにするかで悩んでたみたいなんですけど。どっちも変な役なんですけどね。なんで決まったのって聞いたら、小林さんはインコに見えたから、みたいな。そうなんだって(笑)。

――インコは家出して大阪弁になってました。

エセ関西弁みたいな(笑)。

――インコを演じるとかそういう変なことがあるってことでは、そんなに苦労されないで、とにかく…。

そうですね。あんまりインコだ、変な役だ、と思ってお芝居はしてないですね。どっちかっていうと、「これで本当にお客さんが笑ってくれるのかな」って思ってます。インコに見えなくても楽しんでくれたらそれでいいし、インコに見えたら一番嬉しいんですけど。見えなくても僕のせいじゃないっていうか(笑)、作・演出のせいだなって。っていうと語弊がありますけど。うまくできたら自分のおかげだし(笑)、國吉さんのおかげですね。

――小林さんが演技しているのを見てると、役に苦労が見えてこないからすごい楽しいです。だからって別にポジティブでもないんですけど、不思議に惹かれていきます。

楽しくやらせてもらってるって感じですね。ありがたいです。

 

【小林義典プロフィール】
こばやしよしのり○岐阜県出身。東海大では演劇研究会。08年よりクロムモリブデンの演出部に参加。09年『不躾なQ友』より役者として舞台に立つ。劇団公演のみならず、スイッチ総研、ナカゴーなどでも活躍。2018年の劇団活動休止後、なぜか出演のオファーが途切れない。同劇団員の花戸祐介とのユニット「パラパラチャーハン」では主に映像を作成。出演の他に、監督・撮影・編集も担当する。少しはにかんだ笑顔が魅力の自称「田舎モン」。

【パラパラチャーハン】
Twitterアカウント
@palapalacha_hanアートにエールを!参加作品
パラパラチャーハン「HOME MADE KARAOKE」
https://cheerforart.jp/detail/1881

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【スギノユキコプロフィール】
すぎのゆきこ○神奈川県出身。
日本女子体育短期大学舞踊科卒業。
在学中に演劇好きな友人に連れられ初観劇。たまたまその公演後オーディションがある事をチラシで知り、勢い余って受けた事がある為、今でも爆風スランプRunnerが耳に入るとゾワゾワする。
通信社等を回り、写真を学ぶ。

【インタビュー・文◇矢﨑亜希子 撮影◇スギノユキコ ヘアメイク◇宮崎健】

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