まもなく開幕!ミュージカル『アナスタシア』稽古場レポート&写真到着!
ブロードウェイで絶賛され、世界中で上演されたミュージカル『アナスタシア』。2020年のコロナ禍で大半の公演が中止となった奇跡の舞台が再びの上演が決定し、9月12日に東京公演が東急シアターオーブにて幕をあける。(10月7日まで、大阪は10月19日~31日、梅田芸術劇場 メインホールで上演)
本作品は、第70回アカデミー賞で歌曲賞、音楽賞にノミネートされたアニメ映画「アナスタシア」に着想を得て制作されたミュージカル。ブロードウェイ公演は、2017年3月にプレビュー公演を経て、4月に開幕後、2019年3月まで2年間にも及びロングラン上演。その他、スペイン公演、北米ツアー、ドイツ公演など世界各国で上演。今回の日本公演は、アメリカメディアの劇評でも絶賛されるなどブロードウェイで高く評価された本国のクリエイティブスタッフと日本公演キャストで上演する。
当初は、2020年3月1日より公演予定だった本公演は、新型コロナウイルスの猛威で初日を延期、大阪公演含め全52回の公演が予定されていたところ、中止によりわずか14回の上演となった。観劇が叶わなかった人たちから再演を望む声が多く上がる中での待望の上演となる。
主演のアーニャ役には葵わかなと、木下晴香の2人がダブルキャストで務める。
アーニャと出会いともに旅をする若い詐欺師・ディミトリ役には海宝直人、相葉裕樹、内海啓貴の3人がトリプルキャストで出演。
皇女アナスタシア殺害の命を受けたボリシェビキの将官グレブ役には堂珍嘉邦、田代万里生が今回初参加、そして、海宝直人がディミトリ役に加えてグレブ役の2役を、トリプルキャストの一人として務める。
ディミトリと共にアーニャを皇女アナスタシアに仕立て上げ懸賞金を狙う詐欺師・ヴラド役には大澄賢也と、石川禅がダブルキャストで登場。
マリア皇太后に仕える伯爵夫人リリー役には朝海ひかる、マルシア、堀内敬子がトリプルキャストで出演。
そして、孫娘アナスタシアを探し続けるマリア皇太后役に麻実れいが出演。豪華俳優陣が大集結した!
その公演に向けてキャストスタッフ一同、一丸となって全力で稽古に取り組んでいる稽古場の様子(稽古場レポート)と写真が到着した。
《稽古場レポート》
2020年の“幻の上演”から3年。メインキャストもほぼそのままに、ミュージカル『アナスタシア』が帰ってくる! 期待に胸を膨らませながら広い稽古場に足を踏み入れると、そこには30名ほどの出演者と、同じくらいの人数のスタッフが。ここ数年の状況下ではめっきり珍しくなった大所帯の稽古場に、ブロードウェイ発の大作ミュージカルならではのスケール感が漂う。
8月中旬に訪れたこの日は、歌の抜き稽古からスタート。
第一幕から、記憶喪失のアーニャ(葵わかな/木下晴香とWキャスト)が、ディミトリ(内海啓貴/海宝直人・相葉裕樹とトリプルキャスト)からもらったオルゴールの音色を聴いて歌う「Once Upon A December(遠い12月)」。幻想のように舞踏会の男女が現れて踊る中、必死に記憶を辿ろうとする葵アーニャを、内海ディミトリがじっと見つめる。複雑な心情をにじませるナイーブな表情が印象的だ。
続いて、両親を亡くし、ペテルブルクの街が俺を育てたというディミトリ(海宝)が、アーニャ(葵)に語って聞かせる「My Petersburg(俺のペテルブルク)」。つらい過去にも負けず力強く歌い上げる海宝ディミトリに、初めは軽く流しながらも次第に聞き入っていく葵アーニャ。寒い公園で過ごす夜、それでも未来を信じて顔を輝かせる2人に目を奪われた。
次は、懸賞金を目当てに、ディミトリ(相葉)が小悪党のヴラド(大澄賢也/石川禅とWキャスト)と共に、アーニャ(木下)を“皇女アナスタシア”に仕立て上げようとするシーン。ブロードウェイらしい明るく前向きな「Learn To Do It(やればできるさ)」に乗って、本を読み、ダンスを習うアーニャ。初めは2人を詐欺師と呼んでうさんくさげに見ていた木下アーニャだが、どこか誠実さを感じさせる相葉ディミトリや、地頭の良さを垣間見せる大澄ヴラドと過ごすうち、だんだん笑顔を見せるようになってゆく。
歌の抜き稽古の最後は、政府事務所に呼ばれたアーニャ(木下)に、ボリシェビキの将官グレブ(堂珍嘉邦/田代万里生・海宝直人とトリプルキャスト)が歌う「The Neva Flows(ネヴァ川の流れ)」。夢に惑わされるなとアーニャに助言しつつ、任務と過去の記憶の狭間で揺れ動くグレブ。沈鬱な曲調の中、感情を押し殺すようにして歌う堂珍グレブと、強い意思を瞳に宿す木下アーニャの対峙は、波乱の物語を予感させる。歌の抜き稽古だけなのに、その世界観にすっかり引き込まれてしまった。
第二幕の稽古が始まる前に、ヴラド役の大澄と石川、アナスタシアの祖母・マリア皇太后に仕えるリリー役の朝海ひかるとマルシア、堀内敬子(トリプルキャスト)のシーンを、本国ブロードウェイから来日した演出補、サラ・ハートマン氏が細かくアドバイス。“ワケあり”な2人だけに、ソーシャルダンスが盛り込まれたくだりはコミカルな描写もあり、石川の奮闘にマルシアが思わず噴き出してしまうひと幕も。ダンス経験が豊富な大澄と朝海が、石川とマルシアに身体の角度を助言し、それを堀内がチェックするなど抜群のチームワーク。実力派のベテランが揃った和やかな雰囲気に、カンパニーの盤石ぶりが伝わってきた。
その後はいよいよ、第二幕の通し稽古がスタート!
冒頭は、冬のペテルブルクからやってきたアーニャ(葵)とディミトリ(相葉)、ヴラド(石川)が、明るいパリの春に心浮き立つ場面だ。作家、画家、詩人……たくさんの芸術家が集い、自由に生きている花の都パリ。石川ヴラドはおっとりとした温かい人柄がにじむ役づくりで、新しい未来に挑もうとする葵アーニャを優しく見守っていた。
場面は一転して、皇太后マリア(麻実れい)のパリの邸宅。皇太后の財産を狙おうとやってくる貴族を追い払い、ひと息つくリリー(マルシア)とマリアの会話から、寂しげな生活ぶりが伝わってくる。偽のアナスタシアが何人もやってくることに心を乱され、疲れ切っているマリアだが、麻実はそれでも品格を損なわず、現実に対峙する皇太后として表現。ひそかに嘆きながら古い写真を抱きしめる姿に、稽古場の演者たちも思わず見入っていた。
終幕まで続けられた第二幕の通し稽古は、他にも見逃せない場面が続く。
アーニャたちを追う将官グレブの苦悩や、詐欺のくわだてのつもりが、いつのまにかアーニャの幸せを祈るようになったディミトリの想い──。
二幕の中盤、バレエが上演されている劇場で、マリア皇太后とアーニャが初めて目を交わすシーンは圧巻だ。バレエの進行と共に、麻実マリアと葵アーニャは葛藤の中でお互いの存在を認め、見つめながら、膨らんでゆく想いを歌い継いでゆく……。その後の展開は、ぜひ実際に舞台を観て、確かめてほしい。
歴史の波に翻弄されたとしても、いつの世も変わらず人は人を想い、勇気をもって行動し、人生を選び取ってゆくのだと、ミュージカル『アナスタシア』は教えてくれるようだ。社会情勢が変化を見せる今、皇太后マリアが口にしたセリフの1 つひとつは、3 年前よりさらに重い。アーニャと皇太后マリアが、そしてディミトリやグレブが選んだ道を思うとき、本作の持つ力の大きさと最高のキャストで演じられる幸運を、さらに実感する稽古場取材となった。
(取材・文/藤野さくら)
【公演情報】
ミュージカル『アナスタシア』
脚本: TERRENCE McNALLY(テレンス・マクナリー)
音楽: STEPHEN FLAHERTY(ステファン・フラハティ)
作詞: LYNN AHRENS(リン・アレンス)
振付: PEGGY HICKEY(ペギー・ヒッキ―)
演出: DARKO TRESNJAK(ダルコ・トレスニャク) 他
キャスト:
葵わかな・木下晴香/海宝直人・相葉裕樹・内海啓貴/堂珍嘉邦・田代万里生/大澄賢也・石川 禅
/朝海ひかる・マルシア・堀内敬子/麻実れい
五十嵐耕司・伊坂文月・井上花菜・工藤 彩・熊澤沙穂・小島亜莉沙・酒井 大・杉浦奎介・渡久地真理子・西岡憲吾・
武藤 寛・村井成仁・山中美奈・山本晴美
内 夢華・鈴木蒼奈・戸張 柚
草場有輝・篠崎未伶雅(スウィング)
●9/12~10/7◎東京公演 東急シアターオーブ
●10/19~31◎大阪公演 梅田芸術劇場メインホール
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場(10:00~18:00) (東京)0570-077-039/(大阪)06-6377-3800
〈公式サイト〉https://www.anastasia-musical-japan.jp/
〈公式X〉@AnastasiaJapan
〈公式Instagram〉anastasiathemusical_japan