【池谷のぶえの「人生相談の館」】第45回 池田成志さん(俳優)
むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。
PARCO劇場オープニング・シリーズ ねずみの三銃士 第4回企画公演「獣道一直線!!!」無事、大千穐楽を迎えることができました。
ご来場いただいたみなさま、配信を観ていただたみなさま、お気にかけていただいたみなさま、ありがとうございました。
今年を振り返ると、コロナの奴めのせいで演劇界は振り回されっぱなしでした。
公演が無事開幕し、無事閉幕するという、いままでは当たり前のことが奇跡のような出来事になりました。
お客様たちも、万が一のリスクをぬぐい切れない状態での観劇、という世の中になってしまいましたね。
そんな中無事完走できたのも、制作のみなさま、劇場のみなさま、スタッフのみなさまの細心の注意と、お客様たちの観劇に際するご協力があったからです。
改めて、ありがとうございました。
そして、いざ公演に携わることになると、カンパニーの仲間と他のお仕事の方以外は、肉親や知り合いにがっつり会うことができなくなってしまいます。
頭では理解していましたが、いざ3ヶ月半を過ごしてみると非常に孤独です。
リモート飲みなどもめっきり数が減りましたし、とにかく非常に孤独です。
キング・オブ・孤独です。
まあ、いままでだって孤独だったので、いまさら騒ぐことでもありませんが、いままでは会いに行ける孤独だったのが、会いに行けない孤独になってしまいました。ただただ受け身の孤独です。
自然界に例えるなら、いままでは虫だったのが木になったような感じでしょうか。動ける虫たちが来てくれるのをただ待つ。
虫よ! 来たれ!
これが、私の2020年を表す言葉です。
とはいえ、夏ごろにはきっと開催できないかもな…と思っていた公演が、無事完走できたことはやはり奇跡であり、演劇がこれからも続いて行くための希望でもありました。
これから上がる幕たちも、どうかできるだけたくさんの方たちに届きますように。
さて今回は、孤独な3ヶ月をご一緒したねずみ先輩達から、こちらの方のご相談です。
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私、「ねずみの三銃士」で、のぶえ先生と現在全国ツアー中ですが……ご存知の通り、肩、腰、喉、歯、色んな故障が頻発しております。
めんどくさいし、憂鬱でなりません。どう日々を過ごせばよろしいでしょうか?
池田成志さん(俳優)
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成志先輩、まずは謝らねばなりません。
このコラムがwebにupされるのは千穐楽後なので、先輩のご相談にどんなに素晴らしい回答をできたとしても、もはや何の解決にもならないことに先日気づきました。
ただ、言ってしまえば今回のコラムは、ご相談をいただく…という形式を借りて、成志先輩をはじめ、ねずみの三銃士で3ヶ月間駆け抜けたみなさまへの感謝をお伝えしたかったのであります。
そんなこと言うと、「おい! じゃあ俺の肩、腰、喉、歯はどうしてくれんだよ!」と怒られそうですが、本番が終わってしまったいま、しばらくお会いできることもないと思うので堂々と逃げ切ることができます。さっ! 逃げるわよ!
…正直、お稽古場では「逃げたい…」そんな日々でした。
このご時世、いつどうなるかわからない世の中です。
公演の詳細の発表も夏ごろまでありませんでしたので、本当に開催されるのだろうか…という不安な時間も長く、台本が届いた時点でようやくうっすら実感できたものの、お稽古が始まってもいつお稽古がやれなくなってしまうかという不安。そして2月に味わった、本番が開く直前にシャッターが閉まってしまうことも充分あり得るというトラウマ。
初日に向かってお稽古していながらも、どこか幕が開くことを信じられない部分もあり。
お稽古といえば、時々お酒の場などを通じてコミュニケーションを深めていた時間も、まったくなくなってしまったり。
これまでとは違うお稽古期間の進み方に、自分のバランスを整えて行くのにとても時間がかかりました。
成志さんとは、ジョンソン&ジャクソン以来6年ぶりくらいの共演でしたが、お稽古中は何だかいままでの、私が知ってる成志さんとは違うようにも感じてしまい、正直とても怖く感じてしまう時もありました。
それもこれも、成志さんが期待してくださっている域に、なかなか私が到達しそうにない日々だったからだと、いまは思います。実際最終的に到達できていたのかすら、わかりませんが…。
2日に1回は、「もうっ! 成志さんめっ!」と逃げたくなり、翌日優しい成志さんに会うと「ああ、やっぱり以前の成志さんだ…」となり、翌日また「もうっ! 成志さんめっ!」と逃げたくなるの繰り返し。
お稽古が終わっても、もう何も考えたくないので、音楽をガンガン聴きながら30分ウォーキングして帰り、帰宅後は毎日キャベツと茹でた豚肉にポン酢をかけたものだけを食べていました。
ですから、お稽古期間の印象は、成志さん、ウォーキング、キャベツ、茹でた豚肉で彩られています。
お稽古が進むと同時に、どんどん豚肉の茹で加減が上手になっていき、なんで自分は上手になっていかないのだろう…と、絶妙に柔らかく茹で上げられた豚肉にも嫉妬しました。
ありがたいことに、無事初日の幕も開き、お客さんの反応から喜んでいただけている印象も受け、少しほっとしてパンフレットを読んでいると、今回の作品に最初に私の名前をあげてくださったのが成志さんだと知りました。
成志さんもよくご存知の通り、池谷はネガティヴ国ネガ県ティヴ村の住人ですから、今回のように煌びやかな作品に呼んでいただき責任の大きい位置をいただくと、「きっと誰も期待してないんだろうな…」「お客さんも呼べないのに、なんでキャスティングされてんだろと思われてんだろうな…」「お稽古見てて、たいしたことないなと思われてんだろうな…」「私とお稽古やってたって、全然楽しくないんだろうな…」と、ずっとずっと拗ねながらお稽古していました。
でも、本番でお客さんたちからのたくさんの笑い声をもらって、こんな状況の世の中で、またこうした体験をさせてもらえたことに感謝しています。
2日に1回、成志さんめっ! だなんて思ってごめんなさい…私みたいな地味な役者を引き上げてくれようとしてくださったのに…そんないきさつを全く知りませんでした。
だからこそ、「もっとやってくれよ!! のぶえちゃん!!」というお気持ちだったのでしょうね…。本当に申し訳ありませんでした。
この場をお借りして、みなさまにもお礼と感謝を。
生瀬さんは2回目の共演でしたが、前回はわからなかったフリーダムな天才さをじっくり堪能することができました。毎日新鮮にお芝居されているので、おのずとこちらも新鮮にさせてもらえます。お母さんの役の時など、こらえきれないほど面白い回もあり、ああゆう境地へ至るにはどうしたら行けるのか尊敬です。ありがとうございました。
古田さんは、とてもこっそり私の知らないところで後押しして下さっていたのだと思います。ありがとうございました。笑いのポイントを確実に仕留めていく姿は、かっこよかったです。古田さんは荒ぶってる印象でしたが、今回ご一緒して常識人なのだと知りました。今回はいつものように飲めませんでしたね。またいつか飲んだくれさせてください。
河原さんは、触る者みな傷つけそうなナイフのような頃に知り合ったので、今回は殺される覚悟で挑みましたが、丁寧で穏やかで面白くて繊細な演出で、これまた疑ってかかったことをお詫びします。「こうなったら嬉しいな…」とふと感じる気持ちを掬い取っていただいたところもあり、本当に感謝しています。ありがとうございました。
宮藤さんは、初めての宮藤さん台本で、初めての共演という、急速に宮藤さんまみれな今回。素敵な言葉や素敵なシーンをたくさん書いていただき、ありがとうございました。リアクションが丁寧でお上手ですねとお伝えしたら、「リアクションは礼儀ですからね」と言った宮藤さんの言葉を、リアクションを怠る役者たちに伝えていきます。
美月ちゃんは、もちろん美人さんですから勝手にクールな印象を持っていましたが、総合して面白いです笑。もちろん誉め言葉です。お稽古場でもしっかりくらいついて、最終的には本番中一番頼りになる存在でした。楽屋でのおしゃべりも楽しかったです。またいつか、舞台の美月ちゃんを見られるのが楽しみです。たくさんありがとう!
そして、PARCO劇場の玄さん、藤井さんはじめ、制作部のみなさま。
演劇界ヒエラルキー最下層のような私を使うことに勇気を持ってくださり、ありがとうございました。
長野、札幌、京都、福岡、高知、沖縄に呼んでいただいた、プロモーターのみなさま。
各劇場のスタッフのみなさま。
頼りになる舞台監督の福澤さんはじめ、毎日舞台を支え、整え、彩り、導いてくださった各部署スタッフのみなさま。
本番が始まるまでの間、宣伝やチラシやパンフや取材や映像や装置や小道具やアクションやステージングや音楽やプランニングや、様々な準備をしてくださったみなさま。
静かにじっくり土台を整え見守って下さった、演出助手の菅野さん。
お稽古場からずっと支えて下さった、泰志さん、さとみさん。
このような状況の中、ご観劇に足を運んでくださったお客様、配信で観てくださったお客様、お気にかけていただいたみなさま。
本当に、ありがとうございました!
そして成志先輩。
肩、腰、喉、歯、なんとか持ちこたえてよかったですね!
さっ、何の解決もせずに逃げます!
またぜひ、どこかでご一緒させてください。
その時は1週間に6回くらいは、「成志さん、大好き!」と言います!
■ラッキー待ち受け
作品中に登場した、すし密の大将です。この姿で成志さんと一緒に写真を撮りましょう、と言ったまま撮りはぐれてしまいましたね。
大千穐楽が終わり「今回とてもよかったよ」と言ってくれてほっとました。成志さんめっ♡
■
池田成志さん今後の予定
【ドラマ】
NHK「今ここにある危機とぼくの好感度について」
作:渡辺あや
2021年4月スタート(連続5回)
毎週土曜よる9時から9時49分
【映画】
「猫と塩、または佐藤」(監督:小松孝)
2021年公開
【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。
[出演情報]
【舞台】
シス・カンパニー公演「ほんとうのハウンド警部」(作:トム・ストッパード、翻訳:徐賀世子、演出:小川絵梨子)
2021年3月5日(金)~31日(水) Bunkamuraシアターコクーン
【テレビ】
TBS「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!」
2021年1月2日(土) 21:00〜
【テレビ】
テレビ東京 ドラマ24「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」
2021年1月スタート
【テレビ】
Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
毎週火曜 18:45~18:54
声:銭天堂の店主・紅子役
https://www6.nhk.or.jp/anime/program/detail.html?i=zenitendo
【テレビ】
WOWOWプライム「竹内涼真の撮休」
毎週金曜 24:00〜24:30
https://www.wowow.co.jp/drama/original/satsukyu2/
【テレビ】
日本テレビ「メグたんって魔法つかえるの?」再放送
毎週日曜 25:40〜
https://www.ntv.co.jp/megutan/
【テレビ】
NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー
https://www.nhk.or.jp/life/
【映画】
「浅田家!」(監督・脚本:中野量太)
公開中
https://asadake.jp
【コラム】
福岡のエンタメ情報誌 シアタービューフクオカ「めずらしく体調のいい日に」
https://tvf-web.com
【動画配信】紙芝居風ラジオドラマ
紙立体映画館「ローマの休日」
https://www.youtube.com/watch?v=-9NMgpRPYPk
「roomaの休日」zoom風収録風景バージョン
https://www.youtube.com/watch?v=6R_3w_dLiE4
【動画公開】イキウメ「外の道WIP」
https://sotonomichi.jp
【動画配信】無観客配信ライブ 入江雅人×池谷のぶえ 二人朗読「ローリングサンダーリーディング」
https://live.line.me/channels/2632380
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
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