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【池谷のぶえの「人生相談の館」】第37回 浜田信也さんと大窪人衛さん(俳優・「イキウメ」)

さあさあいよいよ演劇界も、本格的に未知の世界に突入いたしました。
初日を開けられないまま、次々と中止・延期になっていく作品たちを目にする毎日。もちろん、とても残念ですし、とても悲しい。

しかし、もうこれはまぎれもない現実であって、しっかと受け入れて、次の章に進まねばなりません。
ここから先は、誰も経験したことがない世界なので、一日一日をできる限り新鮮に生きていくほかありません。
今日産まれたと思えば、元々こうした世界なわけですし。まあ、ひどいHappy Birthdayですが。

先日、とある方と電話でお話ししていて「元気ですか?」と聞かれて、「不思議なことに以前より元気です。最近、ネガティヴなこともSNSに書いてませんし」と言ったら、「悪魔だ(笑)」と言っていただきました。

そうなのです。最近すこぶる心身の調子がいいのです。
世の中がこんなに大変なことになっている中で、自分が恐ろしい…本当に悪魔なのだろうか…。
ご先祖様に悪魔がいなかったかどうか、いまこそ親に正すべきでしょうか。
そこで「実は、ひいひいおじいちゃんが悪魔でね…」と言われたところで、もはやどうすることもできませんが。

まあしかし、この調子の良さも長い時間がたてばまた状況が変わってくるでしょう。元気なうちに、元気なことをやっていきたいと思います。

さて、今回のご相談は…といいますか、今回と次回は、5月末から公演予定のイキウメ「外の道」から、イキウメンズの浜田信也さん、安井順平さん、盛隆二さん、森下創さん、大窪人衛さんのご登場です!

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のぶえさんに人生相談出来る機会を与えてもらってとても嬉しいです。
のぶえさん、よろしくお願いします。

早速ですが、実は僕には長年の悩みがあるのです。苦しんでいると言っても過言ではありません。
それは、僕の出身地は東京なのだろうか、ということです。
僕はプロフィールに東京出身と書いています。
初めて会った人と出身の話になった時は必ず、東京ですと答えています。
でも本当は、その度にいつも少し葛藤があるのです。
僕は本当に東京出身なのだろうか、と。
もちろんそれは嘘ではないのです。
僕は東京の病院で生まれ、そして東京で育ちました。友達もたくさん出来ました。転んで顎を5針縫う大怪我をした事もありました。
東京で育ったのです。そう、ちょうど10歳になるまでは。
その後、両親の仕事の関係で埼玉に引っ越しをしているのです。
そしてそこで19歳までを過ごしました。
つまり、東京で10年間、そして埼玉でその後の9年を過ごしたのです。そして今も実家は埼玉にあります。
出身とは即ち、その人が生まれた場所である、という事なら僕は東京出身です。
しかしながら、出身とは自我が確立された場所である、という事ならこれはもう埼玉出身だと言われても仕方ないようにも思うのです。
例えば、です。フランスのパリで生まれて3歳までを過ごし、そこから埼玉に引っ越した日本人がいたとしましょう。その人はもちろんフランス語は話せません。記憶すらほとんどないのです。
そんな人が誇らしげに、私はフランスのパリの出身だ、と公言していたら僕は納得できません。
あなたは紛れもなく埼玉出身だ、と内心では思うことでしょう。
埼玉。そう、問題は引っ越した先が埼玉だということなのです。
あの、埼玉です。
曰く、特徴のない県、住みにくい県、東京のベッドタウンの県。
兎角埼玉には悪評が付き纏います。
もし引っ越し先が神奈川の横浜や、或いは湘南であれば、僕は神奈川出身と言っているのでないか、自分はただ埼玉出身のつまらん奴と思われたくないだけなのではないか、と悩むのです。
僕は横目で見てきたので知っています、埼玉出身の人と会った時の人々の反応を。
“あ、埼玉なんだ。ふぅん。埼玉かぁ”
と、言葉少なに、その会話がそれ以上弾まないということを。
そして、そんな会話を聞く度に恐怖に慄き、自分は東京出身だからいいんだ、と言い聞かせてきたのです。
しかし僕は、埼玉の美しい茶畑に囲まれ、埼玉の美しい少女に恋をし、甘くて美味しい狭山茶(埼玉名産)を飲み、十万石まんじゅう(埼玉銘菓)を食べ、山田うどん(本社所沢)で腹一杯食べ、浦和レッズを応援して青春時代を過ごしました。そう、僕は埼玉を愛しているのです。
東京出身と公言することで、僕はそんなかけがえのない時間と埼玉を自ら貶めているのではないかと、悩むのです。
のぶえさん、僕は、東京出身と言っていいのでしょうか。
浜田信也さん(俳優・「イキウメ」)
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出身地の定義では、「その人が生まれた土地、もしくは育った土地」で、その人が生を受けた場所や、成長の時期を過ごした場所をいうそうです。
また、「生まれてから15歳までの間、一番長く過ごした場所」を出身地とするのが一般的だとのこと。

この定義にあてはめると、浜ちゃんの出身地は完全に東京ということになります。

一方、ふるさとの定義では、「その人に、古くからゆかりの深い所。生まれ育った土地や以前に住み、またはなじんでいた場所」とのこと。

この定義にあてはめると、浜ちゃんのふるさとは埼玉ということになるのでしょう。

世間のルールに従い社会で生きて行く以上、出身地を聞かれた際には今後も「東京です」と、今後も公言していかねばなりません。

しかし、浜ちゃんの文章から垣間見える心の叫びを聞いていると、ああ…埼玉出身と言いたいのだな…と感じます。でも言ってしまったら社会のルール違反です。

でも、浜ちゃんには「ちょっとうさんくさそうな雰囲気」という、俳優さんとしてとても魅力的な最大の武器があるではありませんか。
以前浜ちゃんとご一緒した作品のお稽古で、嘘をついている人を見破る的なゲームをした際も、浜ちゃんが何度も的確に嘘を暴いているにもかかわらず、なんとなくうさんくさそうな雰囲気を醸し出してしまうため、なかなか信用してもらえないという現象が起きていました。いまこそその力を使いましょう。

インタビュアー「浜田さん、ご出身はどちらなんですか?」
浜ちゃん「出身は東京です(かすかにほほ笑む)。でも、ふるさとは…………(ためる)…………埼玉です(遠く、もしくは埼玉方面を見つめる)…………あ、すいません。続けて下さい」

そんな風にうさんくさそうに答えらたら、「浜田さん、ぜってー埼玉になんかあんな…」と、大抵の人は感じてくれると思います。そして、そんなふうに言ってる浜ちゃんは、とても似合います。

出身地は東京と言いながら埼玉と伝える…ぜひやってみてください。
そして、浜ちゃんのうさんくささファンとしては、それを伝えている時の姿をとても見たいので、誰か聞いてくれないかな…。

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料理上手なのぶえさんにご相談です
ご飯の食べ方は人それぞれあると思うのですが、自分は比較的おそいほうの部類に入ります。
楽屋でお弁当を食べている時も最後はひとりぼっちになってしまいます。劇団員の安井さんとご飯に行くとよく『男らしく食べろ。ちまちま食べるな!』といった食に関する説教を10年間受け続けています。
文字に起こすとパワハラみたいですが、若いんだから男らしく食べてほしいという安井さんの愛ある説教なので、それに10年も応えられていない自分が情けなく思えます。
自分で原因を解決したかったのでおそらく咀嚼力に問題があるのかと思い一時はガムを頻繁に噛んで訓練したのですが、稽古場でガムばかり噛んでいた結果客演さんにも怪しまれスピードも対して変わらず効果はありませんでした。
いつか口の周りにご飯粒がくっついてるのに気が付かないくらいのワイルドな食べ方を習得してみたいです。

そして、女性はやっぱり豪快に米粒をかき込むような男らしい男性に惹かれるものなのでしょうか?

大窪人衛さん(俳優・「イキウメ」)

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たしかに、性別関係なくモリモリ美味しそうにごはんを食べている姿は、素敵だなぁと感じます。それと同時に、じっくり食に向かう姿も素敵です。
どちらも、その場その場でしなやかに適応できたら、自分も相手も素敵なごはんになりますね。

まずは、食についてアドバイスまでしてくれる安井さんという先輩と、10年間ごはんを食べ続けていられることに感謝ですね。食べ方のことを言う間柄というのは、ある程度踏み込んだ関係でないと、発生しないコミュニケーションだと思います。

私も唯一食べ方に対して意見するのは、ブルー&スカイくんぐらいです。そんなに踏み込んだ関係でもないですが…。
しかし、10何年間言い続けても、変わる様子はちっともありません。ブルーくんの場合、変えたいつもりもなさそうなので仕方ないのですが、人衛くんの場合は、ガムを噛んで咀嚼を鍛えてみたり…変えたいという気持ちがちゃんとあるのですものね。

しかし、身についてしまったものを変化させるには、それまでかかった時間と同じくらいの時間もかける必要がある気がします。長期戦になるかもしれませんが以下の事を試してみてください。

時間を決めて食事を切り上げる。
例えば45分の食事休憩がある場合でも、何分までしか食べてはいけない、と決めて食事をする。たくさん食べたい場合は早く食べなければならないし、そうでもない場合はおのずといつものペースになると思います。

これを続けることで、人衛くんの気持ちがどちらに引っ張られるかが大事だとも思います。本当に速く食べたいのか、それとも自分のペースで食べたいのか。
どちらにしろ、人衛くんが心地よい方を選んだらいいと思います。人衛くんの身体だもの。

そんな時間のかかるまどろっこしいことじゃないんだ! という場合は、食事の前にまず口の周りにご飯粒をつけてから食事をしましょう。一瞬で豪快な食べ方に見えます。なんなら、普段から口の周りにご飯粒つけていきましょう。
「あ、ご飯粒ついてますよ」と、取ってくれる素敵な女性にも出会えるかもしれません。

私も、「隙」のある女性になりたい…と思っていた時に、常に口元にケチャップをつけておこうと思い立ちましたが、いまだに勇気が出ません。人衛くんがご飯粒つけるなら、私も勇気が出ると思います。よろしくお願いします。

次回は、安井順平さん、盛隆二さん、森下創さんのご相談です。

 

■ラッキー待ち受け

いまは難しい時期だけど、少しでも早く劇場の幕が開くといいですね…という願いを込めて、毎回全く上手に撮れない新幹線からの富士山写真集をラッキー待ち受けに。ご利益なさそうな写真たちですが…。
普通に新幹線に乗って、普通にみんなでお弁当を食べて、普通に公演をして、普通に終演後にごはんを食べに行って、また公演をして…かけがえのない普通がまた戻ってきますように。

■浜田信也さん、大窪人衛さん今後の予定(4月上旬現在の予定です)
イキウメ「外の道」
作・演出:前川知大
出演:浜田信也/安井順平/盛隆二/森下創/大窪人衛
池谷のぶえ/薬丸翔/豊田エリー/清水緑

5/28~6/21 東京芸術劇場シアターイースト
6/27~28 サンケイホールブリーゼ
7/5 北九州芸術劇場中劇場
7/11 穂の国とよはし芸術劇場PLAT

詳細→ www.ikiume.jp/

【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
イキウメ「外の道」(作・演出:前川知大)
2020年5月28日(木)~6月21日(日)  東京芸術劇場シアターイーストほか、大阪・北九州・豊橋公演あり
http://www.ikiume.jp

【映画】
東映まんがまつり「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 つりたい焼き」(監督:富岡聡)
近日公開
https://www.toei-mangamatsuri.jp

【テレビ】
NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー
https://www.nhk.or.jp/life/

 

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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