【池谷のぶえの「人生相談の館」】第39回 鈴木杏さん(女優)
むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。
2月に愛人宅(と呼んでいる新しいお家)を借り、引っ越ししようとしたものの、コロナの影響によって引っ越すタイミングがつかめなくなってしまったまま、5ヶ月目に突入。
緊急事態宣言も解除されたことですし、そろそろ意を決して動かねばならないものの、この先お仕事がどうなるかわからない状況で、いままで20年間すんでいた家賃も安く愛着があるが都心から遠くて手狭な本妻宅に居続けるか、家賃は高いが広くて都心な愛人宅に移り住むか、考えれば考えるほど決断が難しくなり悶々としているんです…と、リモート飲みで心中吐露したところ、占い師さんを紹介していただいたので、ドキドキ訪れてみました。
「どちらかというと、こちらがいいですかね」ぐらいの指針を言ってもらえるのかな…と勝手に思っていましたが、気持ちいいくらいきっぱりと「愛人宅に行きましょう!」とのこと。
なんとなく感じていた本妻宅に対する愛着や離れがたい想いなどについても、気持ちいいくらいズバズバズバっと言葉にしてくれて、なんなら泣きそうになりながらお話を聞く。
引っ越し決めるのに泣くなんて! 何してんだ自分は…。
ということで、いよいよ具体的に動かねばなりません…んが、んがんがんが、なぜだかとても忙しい…時間が全くない…できんのか…本当にできんのか引っ越しよ…がんばれ…がんばれ引っ越しよ…ああ…魔法使いになって、あっという間に荷造りをしたい…いや、魔法使いなら荷造りなんかしなくても引っ越せるのか…いや、魔法使いなら引っ越しどころか豪邸に住めるのか…いや、魔法使いならもはや家などなくても生活できるのか…いや、魔法使いなら働く必要もないのか…じゃあ、魔法使いはいったい一日中何すんだ…?
魔法使いになったらなったでまた悶々としそうなので、とりあえず現状維持で引っ越しを頑張るしかないようです。
引っ越しの相談の後、まだ時間が残っていたので恋愛のことも教えてもらったところ…
・同年代~5歳下くらい
・さわやかさはない
・髭がちょこっと生えていてワイルド系
・時々、眼鏡の印象がある
・短髪
・俳優やサラリーマンではない
・何かを企画したり創る側
な方との出逢いがあるそうです。
さわやかではないみなさま、お待ちしてます!
さて今回は、私よりずっとずっと若いのに、なぜだかずっとずっと先輩だと思ってしまっている女優さんからのご相談です。
*****
ミケ谷屋白塗りさま
先日はインスタライブご出演ありがとうございました。連日のようにやっていたインスタライブの中でも、まさに「神回」でございました。また不定期ででも、ぜひご一緒したいです。
さて、ご相談ですが、、、
以前、のぶえさんにも「業が深くない役をやっているあんちゃんは、なぜだか物足りない」と言われたように、私の元には、業が深い役ばかり降ってきます。なぜでしょう。。。私という人間そのものが、業が深いから、類が友を呼ぶように、類が役を呼ぶのでしょうか。。。のぶえさんからみて、私、業、深いですか?
あと、もう一つ。
台詞が多すぎて、覚えられているのか覚えられていないのかが、わかりません。
台詞が覚えられる、食べ物、飲み物、呪文、奇行などがあれば、教えてください。
鈴木杏さん(女優)
*****
まずは、「ミケ谷屋白塗り」という名前にびっくりして、杏ちゃんのご相談がまったく頭に入ってこなかったら困るので、そこのところ整理しておく必要がありますね。
6月頭、杏ちゃんのインスタライブに、顔面白塗りにドレスという気のふれた正装で参加させていただきました。自粛が続く中、久しぶりの表現の場に常軌を逸していたとしか思えません。
さらに、自粛中何をしていたかという話題の際、アプリでピアノレッスンをしているが、私が弾く「ミ」の音をどうしてもアプリが受け付けてくれない…という話をした結果、「ミケ谷屋白塗り」という落語家さんのような立派な名前が誕生したのであります。
さあ、もう大丈夫ですね? 先へ進みましょう。
先にも書いた通り、杏ちゃんは私よりもはるかに若いにも関わらず、なんなら先輩のように思ってしまっているので、いろんな経験やいろんな想いを通過しているように思ってしまうのです。ですから、多分「業」についても、私より長い時間をかけてそれを集めてきた感が漂っているわけです。
イメージとしては、杏ちゃんが建物だとするならば、地下の方に「業」という広い部屋があって、そこにたくさんの業フィギュアや、業の骨董品などを、収集しているようなイメージです。
東に珍しい「業」があると聞けば東へ、西に珍しい「業」があると聞けば西へ、北に普通の「業」があると聞けば、寄らずに南へ…みたいな、「業」の目利き師のような。
そして、お芝居で「業」が必要になると、気分が上がる稽古着や衣装や楽屋グッズなどを選ぶ時のように、今回はこの「業」とこの「業」なんかいいわね…と、地下室から持ち出してみる…みたいなね。
ただし、それを意識してやっているわけでは決してなく、なんなら「鈴木業」と書いて「すずきあん」と読むくらい、自然なことのような気がします。なんなら四季のような。春、夏、業、業、てな感じです。
だからもちろん、杏ちゃんの春も夏も見たいのですが、まさか業がこないことなんてないですよね…? あれ、今年は夏が長いんですか…? あ、虫が鳴きはじめましたね…涼しくなってきました…そろそろ業ですか…? 朝晩めっきり業っぽくなってきました…。 空がすっかり業ですね…いよいよ本格的な業に業に業に…杏ちゃんの業お芝居、キターーーッ!!!!! となるわけです。
ね、地球が回っている限り、杏ちゃんの業も巡っていくのです。そして私はその業を楽しみにしている一人です。次回公演の業セレクトも楽しみにしてるわね!
そして記憶力ですが、これはもう、私の永遠のテーマです。
どうしたら記憶力がよくなるか…について、暇な時に調べておけばいいものを、いざ覚えなくてはいけない時になって調べ始めたりするので、その調べている時間を記憶する時間に使え! と、毎回自分に思います。
そして、調べれば調べるほど、繰り返し覚えることしか手立てがない…という壁にぶち当たり、いまだその壁を越えられずにいます…というか、本当にそこにしか真実がないような気さえしてきました。
しかし、いままで調べたものたちで一日をコーディネートしますと、
朝起きたら太陽を浴びセロトニンを摂取、身体を動かしながらブツブツ覚え、食事には青魚とカマンベールとカカオを摂取、夜寝る前にも覚え、朝復習する。
記憶を司る「海馬」はストレスによって委縮してしまうらしいので、とにかく幸せ物質であるセロトニンを絶やさないように、ハッピーでいた方が記憶力がよくなるようです。
「覚えられないぜー! へーい!」くらいの明るい気持ちでいることが大事なのかもしれないですね。
とか書きながら、記憶力がよくなるためのあれこれすらももう忘れていて、久しぶりに調べて書きました。へーい!
ずっとずっと先輩だと思っている杏ちゃん、あ、違った、業ちゃんは、まだまだ若いんだから全然大丈夫よ!
自粛生活になってから、初めて劇場で観ることになるかもしれないのが、業ちゃんのひとり芝居です。楽しみにしてるわね、お稽古がんばってね! へーい!
■ラッキー待ち受け
知人の方から送っていただいた、逆さ「ミケ谷屋白塗り」をラッキー待ち受けに。
スマホの設置に戸惑って、杏ちゃんの画面と私の画面がいつまでたっても同じ並びにならなかったのが楽しかった。
自粛期間中も、頻繁にインスタライブしたり、その間に膨大なセリフ覚えたり、でもいつも通りの杏ちゃんで。あらためて、頼りになる先輩! って思いました。
■鈴木杏さん今後の予定
「殺意 ストリップショウ」
作:三好十郎
演出:栗山民也
出演:鈴木杏
7/11(土)~26(日)@シアタートラム
https://setagaya-pt.jp/performances/2007satsui.html
【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。
[出演情報]
【映画】
東映まんがまつり「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 つりたい焼き」(監督:富岡聡)
近日公開
https://www.toei-mangamatsuri.jp
【テレビ】
NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー
https://www.nhk.or.jp/life/
【テレビ】
BSテレ東「執事 西園寺の名推理」パート1 再放送
2020年6月13日(土)より毎週土曜 21:00〜21:54
伊集院家 ベテランメイド・板倉明美役
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/shitsuji/
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
★単行本『贋作 女優/池谷のぶえ~涙の数だけ、愛を知る~』えんぶ★ショップにて独占販売中!
Tweet