【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.87「こわい」

2020/06/17 ノゾエ征爾『桜の島の野添酒店』 / 日刊☆えんぶノゾエ征爾 , はえぎわ , フォトエッセイ

先日、ノドを潰しかけた。
とある声のお仕事にいかせていただいたのだが、
あまりに長いこと静かな音量でしか声を出していなかったため、
割とマックスに近いレベルで声を出してたら、
ものの見事に、数テイク目で、「声枯れてます？」と指摘された。
仕事で、はじめて、無視をした。
ヘッドホン越しのご指摘。
私は数秒黙ったのち、静かにマイクのスイッチを下ろした。
なるほど、想定していなかった。
滑舌は大丈夫だろうか？そればかり気にしていた。
もともとそんなによくない方なので、しばらく前から滑舌練習をして備えていたのだが、大事なことを忘れていた。
数ヶ月、通常より静かめにしか話していなかったことを。
久々のお仕事で力んでいたってのもあると思う。
舞台でもあるあるの話だ。役者は初日に声を潰しがちだと。緊張して力むから。
その後はなんとか、ギリギリ持ちこたえたのか、どうなのか、ともかく無事に録音室から出てきた私は、今度は酸欠状態で疲弊しきっていた。
いやはや、舞台復帰が待ち遠しいどころか、怖くなってきた。
とはいえ、どこで声を出せばいいのだろう？
マンションの入口にはいまだに貼ってある。
「新型コロナにより在宅勤務をされている方がいます。みなさんお静かに」