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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.121「努力義務」

わりと自転車ユーザーな方だと思う。
子供の送り迎えは基本的に自転車だし、駅に出るのも自転車。
稽古場に至っては、三茶、渋谷、恵比寿、下北、初台、新宿あたりなどは全て自転車で通う。
スピード出す出さないで言えば、あまり出さないタイプだと思う。
車道を走れと言われても、怖くて歩道をゆったりと走ることを選ぶ。
車道を走れ!と叱られたら、死んだらどうすんだ!と言い返す準備はできている。
急いでいる時は車道を使うが、やはり時折危険を感じる。
基本的に車の運転者を信用していない。
みんなが必ずしもちゃんと前を向いているとは限らないと、常に思っている。
交差点などでは、運転手がちゃんとこっちを見ているかを必ず目を見るようにしている。
いつ轢かれても不思議ではないと常に思っているし、
つまり車に、ビビっている。から、自分が乗る時もビビっている。
そう考えると、自転車は随分気が楽だ。
車道を走れということになった時はかなり心がざわついたが、前述の通り基本的には歩道をゆっくりということでやらせてもらっている。
思えば、自転車が走るレーンが、ここ何年かのうちにかなり整備されたように感じる。
そのおかげもあってか、自転車の死亡事故は年々減ってきて、今や年間400人強ほどなんだとか。他の死亡事故に比べたら格段に少ないとは言え、そのうちの一人が自分の身内だったかもと思うといたたまれなくなる。それだけ危険なのだということを我々は忘れてはならない。
そうは言っても、ヘルメットを全員が被る規則というのは、何かがちょっと違うように思う。抵抗感を感じてる。
「自転車は、気をつければ大丈夫」。
これは毎日乗っていて実感することだ。なにもそんな強制的な規則や、物を買わせるまでしなくていいんじゃないかと。乱暴な乗り方をしている人は、ヘルメットもきっと被りませんよ。どうせまた、事故も起こさないような真面目な者だけが損をするようなことになりそうな気がしてならない。
加えて、やがてマスクの時のような同調圧力が生じていきそうで非常に怖い。

なんて言いつつ、私は息子に毎日のように言われるのだ。
「なんで大人は被らないの?ずるい!パパも被りなさい!」
息子からの同調圧力に屈してヘルメットを買ってしまうのも時間の問題な気がしている。

【著者プロフィール】

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。

 

【今後の予定】
THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演
COCOON PRODUCTION 2023『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』
舞台版構成台本:ノゾエ征爾
2023年5月6日~28日 THEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階)
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/evangelion2023.html

 

▼▼前回の連載はこちら▼▼

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