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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.92「お目め」

今はもっぱら、12月の新国立劇場での稽古の日々なわけですが、
時折ふと、役者のエネルギーに不足感を感じたり、寂しいものを感じたりする。
声の感じも悪くないはずなのに、なんでだ?とちょっと悩んだりする。
あ、そうかと気づく。
役者の目しか見えてないのだ。
そう、マスク。
みんな常時マスクをして稽古をしているわけで、目しか見えていないと、そりゃ寂しいわけだ。
たまに誰かが休憩時に、マスクを外して飲み物を飲んだりしてると、誰だこの人?と一瞬思ったりする。それくらい、みんなの顔が隠れっぱなしなのだ。
大きく笑ったり怒鳴ったりしてる時などは、マスクしててもなんとなく分かるけど、通常のテンションのところなどは、もはや無に見えたりする。
「無でやるような芝居じゃないだろう・・。」
「いや、無なんかでいるわけないだろう、表情が隠れてるだけなんだよ。」
そんな一人会話を時折、稽古を見ながらしている。
人は表情の半分以上を、鼻から下で作っている。
最近よくそう思う。
というか、自分自身に強くそれを感じる。
目の色をあまり変えないようにするような癖がついてしまっているせいか(なぜ?なんのために?)、
あ、俺って表情の多くを顔の下半分で作ってたんだなと、写真などを見て気づく。
どれもこれもほとんど同じ表情をしているのだ。最近の自分の写真ときたら。
まあ、自分の写真なんてどうでもいいのだけど、
稽古でのこれは悩ましい問題である。
本番でみんながマスクを取れた時に、異常にみんなの演技が大袈裟に見えてしまうかもしれない。
そんなことを危惧して、稽古での役者のテンションのあんばいを探る日々なのである。

はあ。5ヶ月も現場もなかった時期は、どんなことでもいいから現場を再開させてください!と神様に祈ったもので、
今は再開できただけでも十分すぎるほどありがたいはずなのに、まことにわがままな生き物なのである。
そしてまだ思う。透明なマスク、開発されないものかしら。

 


【著者プロフィール】

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された

 

【今後の予定】

新国立劇場「ピーター&ザ ・スターキャッチャー」
作:リック・エリス 原作:デイヴ・バリー、リドリー・ピアスン 音楽:ウェイン・パーカー
翻訳:小宮山智津子 演出:ノゾエ征爾
2020年12月5日、6日 プレビュー公演
12月10日~27日 東京公演( 新国立劇場・小劇場)
https://www.nntt.jac.go.jp/play/peter-and-the-starcatcher/

▼▼前回の連載はこちら▼▼

http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe91/

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