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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.99「 べきか否か ~エレベーター狂想曲~ 」

エレベーターを使う機会が増えている。
ベビーカーを使っている時の話だ。
駅のホームなどでは、ベビーカーの行列ができていたりする。
ベビーカー、ベビーカー、高齢者、ベビーカー。
そんな時、様々なお伺い合戦が繰り広げられる。
まずは、「エレベーター、もう一台入るべきか否か」問題だ。
以前なら、後ろで並んでいる人のためにも、入れる限り入りましょうな風潮があったのだが、最近は、密の問題があるので、皆さんお互いに探り合う。
例えば、自分たちが最初に乗って、まだスペースがある時、次の方にどうぞと言うべきか否か?
密的に、乗りたがらない人もいる。逆に、そんなのはいいから早く乗りたい人もいる。
0.何秒かの間に、相手の顔色を伺って、入りたいのか入りたくないのかを見定めて、声をかけるかどうかを判断する。下手に「まだ入れますよ」なんて言って、そんな密で入るわけないだろう!くらいの強い調子で拒否された時には、しばしそのことで頭がぐるぐるしてしまう。そんな強く言わんでもいいじゃないか・・。
また、先に別の人が入って、まだ入れなそうなスペースがある時は、自らは行かずに、先の人からのO Kを待つ。乗って欲しくない人は、見て見ぬ振りをしてササっと閉める。それはそれでいい。けど、そんなつっけんどんにせんでもいいじゃないかとも思う。こっちは別に強引に攻め行ったりせんよ。でもきっと、攻め入られた経験があるのだろう。そんな慌てぶりだ。
ちょっと難しいのは、3番目に並んでいる時だ。最初に入った人が、まだスペースあるからどうぞと言う。しかし二番目の人は、密的に乗らないタイプの人だった。さて、三番目の私どもは、じゃあ先いいですか?と入るべきか否か?だ。
自分らが最後ならば焦ることもないのだが、後ろにさらに行列がある時は、少しでも早めないといけないような強迫観念に駆られてしまう。どうか穏便に、穏便に進みますように・・。脇に汗をにじませながら願ったりする。

そんなこんなで、エレベーターに対する思いが随分と変わった。
エレベーターマストな人々が並んでいる時に、明らかに元気な学生の数人なんかがいると、正直ちょっといらっとしてしまう。
ただ、乗っちゃいけない人は誰もいない。それだけは僕らも勘違いしてはいけない。
でも、元気な人は、混み具合を見て、判断するのがベターだろう。エレベーター界隈に渦巻く精神衛生的に。

ここで難しいのが、「一見元気そうな人」である。何を抱えているかは誰にも判断がつかないからである。ご本人も、元気のくせに乗りやがってと思われてるんじゃないかと冷や冷やしているかもしれない。元気ではないのに元気そうに見える人が、一番苦労が多いかもしれない。
駅などでは、エレベーターというのは、大抵、ちょっと不便な離れたところにあるから、そこまで行くのにもちょっと、あーあと思わされるし、着いた時に、必要そうじゃない人がいると、なにか余計な思いが交錯してしまうような仕組みに、そもそもなっているのである。

先日、エレベーターの先頭に並んでいた、一見元気そうなおばさまが、エレベーターから出ていく時に、片足をひきづっているのに気づいた。
そっか、足が悪いだなんて全然わからなかった、、やっぱりみんなそれぞれ事情があるんだよ、、なんて思ってたら、少し行くと、そのおばさまが普通に歩きはじめた。
え? どっち?
エレベーター狂想曲は終わらない。

【著者プロフィール】

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された

 

【今後の予定】
ワタナベエンターテインメントDiverse Theater『物理学者たち』
原作◇フリードリヒ・デュレンマット
上演台本・演出◇ノゾエ征爾
2021年9月19日~26日◎本多劇場

▼▼前回の連載はこちら▼▼

http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe098/

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