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【池谷のぶえの「人生相談の館」】第51回 薬丸翔さん(俳優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

イキウメ「外の道」、無事初日の幕が開きました。
この大変な状況の中、直接劇場に足をお運びいただけることは大変ありがたいことです。

このまま何とか大千穐楽まで完走するために、コロナとの闘いもありますが、自分との闘いもあります。

その後の自律神経の奴めとの生活ですが、いい女か囚人のタイムスケジュールに、さらに不眠というオプションも加わって、もう…闘いフェス!!

私の性質として、「歩くために、右足の次に左足を出しました!」くらいのことでもすぐTwitterに書きたくなってしまうようなこらえ性がない人間なので、闘いフェスについてもダダ漏れにしているのですが、それを目にした思いもよらない方々から、いろいろなアドバイスもいただきました。

多くのみなさんは、いろんなこともひっそりと抱えながら、そして闘いながら、笑顔で生きているのだな…と、改めて己のこらえ性のなさを深く反省しているところです。
といいつつ、またすぐやらかします。「息を吸うために、息を吸いました!」とか、SNSに吐き出します。どうか、引き続きおつきあいいただくか、見放していただくか、よろしくお願いいたします。

さて、今回のご相談は、現在舞台でご一緒中のこの方からです。

*****

のぶえさん、お疲れ様です。
この度、このようなお声がけを頂いたので、少しばかり人生相談をさせて頂いてもよろしいでしょうか?
よろしいでしょうか?はい、いいですよ。もなく、長文を送らせて頂く、そんな傲慢さをお許し頂きたく思います。
このまま好き勝手に前置きを書いていたら、前置きが2万文字ぐらいいってしまいそうなので、無理矢理舵を切って本題に移らさせて頂くことをお許しください。
冒頭4行で2回も許しを乞う形になってしまったこと、お許しください。
あ、3回目、、、

僕は昔から『わからない』ということが恐怖で仕方ありません。
例えば、何か不都合な問題が起きた時、どうなるか『わからない』と言われた時、本当に怖くて、ザワザワします。
何か仕事のことで、マネージャーと深く話し込んだ時、「なんとなくこうだろう」と相手が完璧には『わからない』状態で進むということが恐怖で仕方なく、「お互いの『わからない』ことが解消されるまでとことん話しましょう」とここ何年も伝えてきました。
ただ、不都合なことが起きた時は、「こう好転していくかも知れない」と自分の中で整理するようにしてます。
こんな面倒くさい作業に付き合ってくれてるマネージャーには心底感謝しています。
30歳になって、何度もそう言う状況を経験して、『わからない』恐怖症とはなんとかいい距離感で付き合って合わせてもらっています。

しかし、世の中には『わからない』を楽しめる人がいるという、俄かに信じがたい都市伝説の様な人間がいると言う話を風の噂で聞きました。
核心をつかない作品や、未完の作品などに想いを馳せ、想像する時間が楽しいといった様な僕が喉から手が出る程ほしい能力を持つ人間がいると。
僕も、そんなことを考えた結果答えに辿り着いた気がした時はとても快感を感じます。
が、やはりそれを考えている時は、楽しい時間ではなく苦行なのです。
苦行を経て、快感。
この流れは世間的にも多く存在する事柄ですし、いいとは思うのですが、やはり、『わからない』という時間を楽しめたら、もっと楽しい時間が増えるので、羨ましくて仕方ありません。
僕が先日読んだ、数学者の方の本には、未だ答えの出ていない数式を解いていて、行き詰まった時、気分転換で他の答えの出ていない数式を解くそうです。

もう、パニックです。

今回のイキウメの「外の道」は誰も答えを知らないことを追求、開拓していくという面がある作品だと思います。
しかもそれが答えがなさそうな雰囲気がするものでもあります。
とても苦手な作業をしている実感があります。
のぶえさんも、稽古場で飽き飽きする程、僕がシーンについて発言している瞬間を何度も見ていると思います。
それはこういう僕の性質から来ているのかもと、この文章を書きながら思いました。

のぶえさんからのお言葉を頂けるのは、恐らく6月下旬になると思います。
公演的にはもう終わりを目前に控えている時でしょうか?
公演で『わからない』を1ヶ月間経験したご褒美として、この相談の「答え」を聞かせて頂ければ幸いです。

長文、乱文失礼しました。

薬丸翔さん(俳優)
****

「このまま好き勝手に前置きを書いていたら、前置きが2万文字ぐらいいってしまいそうなので…」という前置きにも表れているように、薬丸くんは本当によくしゃべります。
もちろん、周りを気にせずただただしゃべるのではありません(そんなん困る!笑)。

初めて薬丸くんと直接的に出会ったのはとあるワークショップの現場で、その時の発表の際、特にセリフがなかったものの、佇まいに漂うとらえどころのない不思議な雰囲気と、ほんのりとした狂気を醸し出す薬丸翔という俳優に、とても興味を持ちました。

次に出会ったのは、イキウメ主宰の忘年会(もちろん、忘年会というものが出来ていたころの時代です)。
はしゃいだ私は終電を逃し、もうタクシーで帰っちまえ!と、二次会に突入。もちろん、みなさんはぽつぽつと終電で帰っていく中、薬丸くんだけが最後までお酒につきあってくれたのでした。本人はお酒を飲まないにもかかわらず。そして、ほぼほぼ初対面にもかかわらず。

ワークショップでは、寡黙な人。忘年会では、穏やかに話につきあってくれる人。
そんな印象をはぐくみながら2年の月日が経ち、がっつりとお稽古を重ねる日々を過ごし、こんなにしゃべるんかい!! という現在です。笑

でも、今回のご相談をいただいて、薬丸くんにとってしゃべるということはきっと、わかるためへの、そして、わかってもらうためへの大切なプロセスなのですね。

私はどちらかというと外面的にそんなに積極的にしゃべらない方だと思いますが、心の中ではいつもしゃべっていて、Twitterなどにはそれがだだ洩れします。そして、私も「わかりたい」人間です。わからないものを楽しむ…ということが苦手な方だと思います。だから、薬丸くんの気持ちが少しはわかる。

でも、薬丸くんは私なんかより、もっとわかりたい気持ちが強いんだろうなぁ…とも、文章を読んでいて感じます。それは確かに日々大変ね。そりゃ、わからないことを楽しめる方々に憧れてしまいますよね。

今回の作品のお稽古も、ネガティブ・ケイパビリティという、わからないものをわからないままにしておく…答えの出ない事態に耐える力を要するお稽古でしたものね。薬丸くんにとっては、なかなか痺れる時間だったと思います。

でもね、私も半世紀生きてきて思うのは、長く生きていけばもっとどんどんいろんなことがわかっていくものだと思っていたけど、答えというものはたくさんある…ということだけがわかってきて、しかもそれらが本当に正解なのかなんてのは実はわからない、もしくは、時間が経ってみたら少しはわかるかもしれない程度…と感じるのです。

パニック?笑

ご相談文から見ると、わかった時の快感を得たい気持ちも多分にあるような気がしますので、それはそれで、苦行を経過せねばならないリスクとともに、今後も「わかる」ことを追求せざるを得ないかもしれませんが、いまからでも少しずつ、「わからないということがとりあえずわかった! 明日、もしくはちょっと先の薬丸翔はわかるかもしれないから、ちょっと寝かせておこう」みたいなことを何回かに一回、発動してみてもいいかと思います。
何年か、何十年か先の薬丸くんがちょっぴり楽になるための、貯金みたいなものでしょうか。

あとは、想像力や妄想力でしょうか。それさえあれば、いくらでも点と点をつなげることができます。なので、無理やりにでも「わかる」という場所まで行ける。
でも、それは自分の想像力や妄想力だけで行ける範囲なので、「わかる」国の大きさは知れています。

そこで大切なのは、薬丸くんの周りにいるたくさんの人たちのそれぞれの想像力や、妄想力を分けてもらうことだと思います。
そして分けてもらったらどうなるか? きっと、それらをまとめようとするとわからなくなると思います。笑

わかりたいと思うと、わからないことが増えて思えるということなのかもしれません。

禅問答のようになってまいりました…まさしくお稽古場の延長ですね。

でも、答えを導きだそうとわーっ!としゃべり出す薬丸くんは薬丸くんで魅力的なので(本人は苦しみもがいているのかもしれませんが…)、それがなくなってしまうのは、なんだか寂しい気がします。

スピリチュアルな方向性で書くわけではないことを前置きに、そして、なんとなく今回の公演ともリンクするのですが、最近自分をほっぽり投げてみています。
池谷のぶえに何が起こるのか? 池谷のぶえはどんな気持ちになるのか? 池谷のぶえは何をしたいと思うのか? 池谷のぶえファンクラブのように池谷のぶえを見守っています。

これはただ見守るだけなので、なんだか人生に振り回されている池谷のぶえと、振り回されていない池谷のぶえがいることになります。楽です。

わからないことをわかりたいのにわからなくて辛くなったら、薬丸翔がわからないことをわかりたいのにわからなくて辛くなってるな…と見守ってみてあげて下さい。薬丸翔のことを、もっとわかりたくなると思いますが。

 

■ラッキー待ち受け
このコラムを書いている時期にも、ちょうど前川さんから新たなミッションがありましたね。わからないなりに手探りでみんなで手繰り寄せたゴールは、なんだか素敵でしたよね。いろんな人とわからないを共有するのもいいものだなぁ…と、今回沁みました。まだまだミッションがありそうですが、この公演が終わった後何かがわかるためにも、完走できるようがんばりましょうね。
ラッキー待ち受けは、何だかわからないものです。二つに分かれていて、やわらかいです…薬丸くん、これは何ですか?

■薬丸翔さん今後の予定
イキウメ「外の道」
作・演出:前川知大
出演:浜田信也/安井順平/盛隆二/森下創/大窪人衛
池谷のぶえ/薬丸翔/豊田エリー/清水緑
5/28(金)~6/20(日)@シアタートラム
6/26(土)、27(日)@サンケイホテルプリーゼ
7/3(土)@穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
7/11(日)@北九州芸術劇場 中劇場
詳細 → イキウメWeb https://www.ikiume.jp

 

【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]

【舞台】
イキウメ「外の道」(作・演出:前川知大)
東京:2021年5月28日(金)~6月20日(日) シアタートラム
大阪:2021年6月26日(土)、27日(日)  サンケイホールブリーゼ
豊橋:2021年7月3日(土) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
北九州:2021年7月11日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
https://www.ikiume.jp

【テレビ】
ABCテレビ・テレビ朝日 ドラマL「ジモトに帰れないワケあり男子の14の事情」#14
テレビ朝日(関東) 2021年6月19日(土) 26:30〜  /  ABCテレビ(関西) 2021年6月20日(日) 23:25〜
https://www.asahi.co.jp/jimodan/

【テレビ】
Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
毎週火曜 18:45~18:54
声:銭天堂の店主・紅子役
https://www.nhk.jp/p/zenitendo/ts/4NX2MRW758/

【映画】
「100日間生きたワニ」(監督・脚本:上田慎一郎・ふくだみゆき)
2021年7月9日(金) 公開
https://100wani-movie.com

【動画公開】イキウメ「外の道WIP」
https://sotonomichi.jp

【コラム】
福岡のエンタメ情報誌 シアタービューフクオカ「めずらしく体調のいい日に」
https://tvf-web.com

【動画配信】紙芝居風ラジオドラマ
紙立体映画館「ローマの休日」

https://www.youtube.com/watch?v=-9NMgpRPYPk

「roomaの休日」zoom風収録風景バージョン
https://www.youtube.com/watch?v=6R_3w_dLiE4

【動画配信】無観客配信ライブ 入江雅人×池谷のぶえ 二人朗読「ローリングサンダーリーディング」
https://live.line.me/channels/2632380

 

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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