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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第144回「再演に出演する心構え」

劇団☆新感線「ミナト町純情オセロ」が終わって一ヶ月。比較的ノンビリした日々を過ごしながら、でもやるべきコトは色々とあって暇なんだか忙しいんだかよく判らない日々です。

さて、私が次に出演する舞台は、7月22日(土)〜30日(日)にサンシャイン劇場にて上演されますNAPPOS PRODUCE「嵐になるまで待って」です。主に成井豊さんの作・演出によって、演劇集団キャラメルボックスさんでこれまでに5回も上演されてきた人気の作品です。
私も何度か劇場で拝見しているので、内容はよく判っています。しかし、出演するのは初めてですので様々な期待と不安が錯綜している段階です。
今年前半に出演する作品二本がどちらも再演というのは中々に珍しい状況でして、心構えも中々に難しいモノなのです。

この連載でも以前に「再演」について解説致しましたね。http://enbu.co.jp/nikkanenbu/awane104/。では、再演に出演するコトになった俳優の心構えというのはどのようなモノなのでしょうか。今日はその辺りを解説してみたいと思います。なお、ややこしいので何度も再演されている作品の場合でも、それまでの上演を「初演」、次の上演を「再演」という意味でまとめて表記してしまいますよ。

再演に出演する場合、大きく分けて三つのパターンが考えられます。1…初演にも出演している場合。2…初演は見ているけど出演は初めての場合。3…初演は見ていないし出演も初めての場合。大体この三つにまとめられるのでは無いでしょうか。他のパターンもあるかもしれないけどさ。まあ、この三パターンで考えてみましょう。

まず、1の《初演にも出演していて再演に参加する》場合。例えば今春の「ミナト町純情オセロ」がこのパターンです。
これは簡単です。初演を踏まえた上で、また気持ちを新たにして再演に臨めば良いのですから。特に、同じ役を演じるのならば尚更です。もちろん、脚本も演出も共演者もちょっとずつ変わっていたりしますが、大筋は同じですから初演の記憶を頼りにしてより高みを目指せば良いのです。
ちなみに、初演とは別の役を演じる場合でも似たような心持ちです。公演に参加していれば作品の内容は把握しているので、たとえ違う役でも取っかかりはあるんですよ。例えば劇団☆新感線の「髑髏城の七人」の場合、28年間でなんやかんやで11バージョンも上演されておりますし、私も色んな役で出演したりしていなかったりします。毎回脚本も演出も共演者もごっそり変わりますが根幹は共通しているので、違う役で参加した時でもこれまでの公演の経験を糧にして取り組めるのです。

では、ちょっと飛ばして3の《初演は見ていないし出演も初めて》の場合。こちらもある意味では簡単です。いや、簡単ではないのですが、通常の出演と同じように新鮮に取り組めば良いのです。初演を見ていないのだから参考にはできません。いや、むしろ、初演の時に同じ役の人がどのように演じたかをなるべく聞かないようにします。
例えば2020年に私が出演した「オリエント急行殺人事件」の場合。この作品は2019年に初演されたのですが、不勉強ながら私は拝見しておりませんでした。
私が演じたラチェット/アーバスノット大佐を初演で演じたのは田口トモロヲさん。個性的でパンクなトモロヲさんならばどのように演じたのか。もちろん詳しくは知りませんが、なんとなくある程度は予測できるのですが、あえて詳しくは聞きませんでした。だって、影響されちゃうから。自分にとっては新作ですからね。あくまでも自分が演じるならどうなるかだけを考えて取り組みました。

でね、難しいのは2の《初演は見ているけど出演するのは初めて》の場合。これがね、難しいんですよ。何しろ見ちゃっていますから。お手本を見ちゃってますからね。なんていうか、やりにくいんですよ。
もちろん作品に取り組むに当たってはフラットに真摯に向き合うのですが、初演の時にはこんな風に演じていたなぁというのはなんとなく記憶の片隅に残ってしまっているのです。意識しないようにしていても、どうしても脳裏にチラついてしまうのですよ。これがまあ不安というか、そこはかとないプレッシャーになるのです。
でもまあ、心配はしていません。稽古しているウチにそういった不安は消えていってしまうでしょうから大丈夫だと思います。

7月の「嵐になるまで待って」は私にとって《見てはいるけど出演するのは初めて》の作品です。成井さんの代表作だしファンも多い作品です。しかも私は2〜3回も見ちゃってるんですよ。しかも私が演じる広瀬教授役を演じていたのは西川浩幸さんですからね。やり口だってよく判ってるんですよ。台本を読んだだけで西川さんの口調が蘇ってきます。でも気にしないでいきましょう。
さあ、この再演(6演目だけど)はどのようになるのでしょうか。それは見てのお楽しみです!

本文とは関係ありませんが、新宿区の切手の博物館で見つけた楳図かずお先生バージョンのポスト。インパクトでか!

粟根まこと

【著者プロフィール】
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

 

【粟根まこと出演予定】

NAPPOS PRODUCE 『嵐になるまで待って』
2023年7月22日〜30日◎サンシャイン劇場

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▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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