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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.114「きょうふ」

怖がりすぎる息子(秋には4歳)が少々心配で。
普段は私を怪獣やワルモノに見立てて、あらゆる攻撃をしかけてくる息子である。こっち向きに静止して合図したら振り向けとか、ここから攻撃するからやられろとか、もっとやられた声をしっかり出せとか、反撃はするなとか、稽古場での私より細やかな演出をつけてくる上に、怪獣に対してはめっぽう無敵なのであるが、フィクションと現実はどうも違うようで。
おもちゃ売り場に怪獣が見えると一目散に逃げよる。
ヒーローたちのところに行きたいのだけど、その横に怪獣たちがいたりすると、一向に近づけないのだ。この怪獣がいかに何もしてこないかを、どんなに手を替え品を替え諭しても、一切寄って来ない。幸い、そうすると、ヒーローを手に取れないので「買って買って」も言いようがなくなるので助かるっちゃ助かるのだが。その分、それ絶対にそんなに欲しくないだろうっておもちゃを買ってくれと言い出したりするのだが。
ハロウィンの巨大な死神人形が設置されているスーパーにおいては、5メートルほど離れた通路でも通ろうとしなかった。
食材売り場に行きたいのだけど、その死神を避けて通るにはかなりな遠回りが必要で、それはそれは面倒だった。
どうしてこんなに怖がるようになったのか。
そんなことをちょっと気にかけていた先日、友人の個展のクロージングパーティーにお誘いいただいた。
その日は帰宅がかなり夜遅くなってしまい、まだいるかなあ?と思いながら自転車を走らせると、いた。友人はかなり奇抜なファッションなので、遠くからでもすぐに道端のテーブルで談笑しているのが見えた。
目の前まで行き、友人の隣やまたその隣には、さらに奇抜な装いの方々がいることに気づいた。頭に大きな赤と青のボンボンを付けているおじさまとか。

ビクっとして、スーッと通りすぎた。単純になんか、怖かった。心臓が高鳴った。少し先で自転車を止めて、彼らを茂みの影から覗き見ながら、もう今日は来れなかったことにして帰ろうと本気で考えた。数分グルグル考えた。結局は、感情のこもらない声でどうもー、、、となんとか近寄っていったのであるが。以降はもう全然、最高に楽しかったのであるが。
その時に、息子のルーツを自分に見た気がした。
大学生の頃、簡易キャンプグッズを携えて自転車で一人旅したはいいものの、野宿する予定が、暗すぎる公園が怖くて民宿の扉を叩いた日のこと。
映画「リング」を観てからは長いこと鏡を見ることができなくなった日々のこと。
もっと幼い頃は、ドラキュラに襲われる恐怖から一ミリの隙間もないように布団の中に全身入って息を殺して寝ていた日々のこと。
海の深いところも怖い。いつサメか何か得体の知れない生き物に足をガブリされるか分かったもんじゃない。
ジェットコースターは微塵も怖くない。あれはもう見たまんまのあれだから。

恐怖。それは想像。必要以上の想像が必要以上の恐怖心をかき立てる。
でも大丈夫だよ息子。それでもなんとかここまで生きてこれた。
恐怖も悪いものばかりじゃない。特に創作における恐怖は、嫌いじゃない。これだけは避けるのではなく近寄らなくてはダメなものと大事にしている。

でも息子よ、あの鳥にはちょっと怖がって欲しかった。無遠慮に近寄ってくる君に、鳥はどれだけ恐怖を覚えたことだろう。

【著者プロフィール】

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。

 

【今後の予定】
ジョンソン&ジャクソン『どうやらビターソウル』(出演)
東京公演 2022年11月9日(水)~11月20日(日)@ザ・スズナリ
大阪公演 11月25日(金)~27日(日)@A B Cホール

 

 

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