【池谷のぶえの「人生相談の館」】第23回　細川洋平さん（俳優）と久保貫太郎さん（俳優）

2019/02/20 池谷のぶえ『人生相談の館』 / 日刊☆えんぶ連載 , 池谷のぶえ , 細川洋平 , 久保貫太郎

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

こまつ座「どうぶつ会議」も無事閉幕。
12月のお稽古から年をまたいでの公演だったので、公演が終わってやっと年が明けた感を味わいました。
しかし、舞台が終わるのを待っていたかのように、怒涛の映像ラッシュ。

甲府、茅ケ崎、宇都宮、日立、鎌倉…途中で松本に寄り道したり、都内での撮影も挟みながら約2週間、駆け抜けました…2週間前にやっと年が明けた感だったのに、既にもう来年なんじゃないかという気がするくらい濃密な2週間。

なので、「どうぶつ会議」の終わった余韻に浸る暇もなかったわけですが、お稽古前には「ほとんど知らない方ばかりで、アウェイだ！」とか散々喚いていたわりには、最後は3次会のカラオケにまで行ってみなさんとのお別れを名残惜しみながらの朝帰り。
ひとつの作品を一緒につくるというのは、予想もつかない未来も待っているのですね。

さて、予想もつかないつながりで、元同じ劇団(演劇弁当猫ニャー)のかわいい後輩たちが、一人は初のミュージカルに、一人は自主企画の立ち上げに、この春挑戦します。

かつては、意味不明のナンセンス・コメディばっかりやっていた人たちが、なんだか立派な俳優さんたちのようなことになって来ました。
今回は、そんな彼らからのご相談です。

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のぶえさん、こんにちは。
演劇、映画、アニメ、読書が大好きな細川です。
この度は元・劇団の後輩として、人生相談に乗っていただけるとのことで大変うれしく思います。

僕は今、上に書いたようにインドアな趣味しか持っていません。これまでは一人でこっそり趣味人生を楽しんでいました。でも最近、外に出るような趣味がほしいなと思いはじめてしまいまして……。そうです。ほしいのは健康的な汗をかいたり笑顔が爽やかだったりする、いわゆる、“アウトドア”な趣味です。 そこで、僕にふさわしいアウトドア的な趣味を考えていただけないでしょうか。
新しい物を揃えるのは好きです。
日焼けはしたくないので、日焼けをしない趣味か、日焼け止めを塗れば大丈夫なものでお願いします。
あと、普段遊べるようなお友達がほとんどいないので、一人でもできる趣味だととてもうれしいです。
不惑を過ぎたこれからの人生を、ささやかながら、楽しく過ごせたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。

細川洋平さん（俳優・「ほろびて」主宰）

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この相談を読んでいる途中から、なぜだか自転車に乗っている細川くんがハッキリと浮かんできました。

どうしましょう…私、人の未来とかが見える何か特別な力でも手に入れてしまったのでしょうか？

池谷のぶえさん(女優)

…と、誰かに相談したいくらいに、もはや自転車以外思い浮かびません。
ゆくゆくはレースに出るくらいの趣味に発展しても素敵ですが、そんなに極めなくとも、そして屋外じゃなくても、スポーツジムのエアロバイクでもいいでしょう。とにかく、ペダルを漕ぐのです。

ペダルを漕ぐことで、そんな気分にも浸れますし、なんといっても、自転車漕ぎは膝の運動に良いそうです。

40を過ぎると、いままで自分が知っていた身体ではなくなってきます。私もつい最近、立て続けに膝トラブルに見舞われて、初めて膝って消耗品なんだ…と実感しました。

劇団の先輩だった期間は、特に何も伝授してあげられることがありませんでしたが、いまならはっきり教えられることがあります。

健康第一！

これにつきます。健康でないと、趣味すらままなりません。
なので、ぜひ健康に直結する趣味をおすすめします。

そしてたぶん細川くんは、坂道と自転車が出て来るようなキュンとするアニメが好きでしょう？

なんなら、「あ、先輩！」と細川くんを発見してくれる後輩女子などを坂道下に配置して、「おう！　乗ってくか？」という趣味を満喫してください。

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池谷さん、こんばんわ。
いつもお世話になっております。

真剣に悩んでいます。
40歳をこえ、床につくまでの『やる事タスク』がしんどくてたまりません。
床に入るまで、「戸締りは大丈夫か、ガスは消えているか、布団は綺麗でホコリがないか、加湿器の水量は、クリームは塗るべき所に全て塗ったか、喉のケアは十分したか、湿布は貼ったか、カイロは用意したか、足裏のマッサージ、明日の時間と場所の確認、目覚ましのセット、洋服の用意、アラーム音がなるかチェック、もう一回ガスの確認、アイマスク、耳栓、マスク、最後にフードをかぶって……(全部本当です)」

こんな事してると普通に1時間くらい経過するので、毎日寝るまでがとても憂鬱です。
さらに毎日家を出る際には、同じ量のタスクが待っています。

昔のルーズだった頃の自分を思い出し、たまにうたた寝などを試みるのですが、頭がしっかりし過ぎてて、体が全く寝てくれません。
歳とともにこんな感じになってきたのですが、この癖はどうしたらよいでしょうか？

久保貫太郎さん（俳優/「久保と人間」主宰/元・演劇弁当猫ニャー）

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私が思っているくぼかんのイメージとはまったく違う日々のタスクに、こりゃ大変だ…と驚いております。

私が知っている劇団時代のくぼかんは、ファミレスのそれなりにしっかりした味付けのお料理に、さらにケチャップやマヨネーズやソースをつけて豪快に食べているくぼかんです。
もしかして、ケチャップやマヨネーズやソースも、タスクだったのでしょうか。

確認や準備をすることはとても素晴らしいことですが、歳とともにそうなっていったとなると、今後ますますタスクが増える可能性もありますよね？
少し先を生きている先輩から言うと、この先、タスク以外にもやること増えるばかりです。

とにかく、病院関係の出来事が増えます。
そして、病院にお世話にならないための、日々のケアが増えます。
そのケアが、割と時間を使います。

ですから、いまからこれ以上タスクを増やさないようにしていかなければ、くぼかんはタスクとケアのためだけに生きて行くことになります。
もう、今度やる自主企画「久保と人間」も、「タスクとケア」にならざるを得なくなります。

とりあえず、人に迷惑をかけることと命に係わること以外は除外しましょう。
「戸締りは大丈夫か、ガスは消えているか、明日の時間と場所の確認、目覚ましのセット、アラーム音がなるかチェック、喉のケアはしたか」
これさえやれば、明日はなんとかなります。

そして、数年内にはそこに、生きて行くためにどうしても必要なタスクが加わるはずです。今日からは、その余白を空けていくという新しいタスクを行ってください。

劇団時代も大してかまってやれず、さらに、劇団を解散した後はそれぞれの居場所を自ら開拓してきた2人です。
いまさら先輩面して言えることなどないなぁ…とも思いますが、20代で出会った2人も、もう40を過ぎたと言うではありませんか。