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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第111回「テレビドラマの撮影用語」

ヴィレッヂプロデュース2020 Series Another Style「浦島さん」「カチカチ山」の稽古も始まり、ようやくのことで演劇の現場に戻ってこられました。4月の頭に舞台稽古だけを行った博多座を後にしてから五ヶ月。いや、五ヶ月間演劇に関わらなかったコトは以前にも何度もありますが、とにかくこの五ヶ月は長かったですねぇ。万全の対策を取った稽古場から万全の対策を取った劇場へと進めることを祈っております。

とはいえ、五ヶ月の間、全く演技をしなかったというワケではありません。意外なところでお仕事をさせて頂きました。それは、これまで余り出ることのなかったテレビドラマのお仕事です。
TBSが誇る人気ドラマ「半沢直樹」の7年振りとなる続編に、一話だけ、ちょこっとだけではありますが出演させて頂きました。実はこのドラマには本来ならば本番や稽古中で出演できなかったであろう演劇人を多数起用して頂いております。例えばcube presents「欲望のみ」の本番中のはずだった古田新太くん(三笠役)、板垣雄亮さん(司会者役)、八十田勇一さん(永田兄役)、山西惇さん(永田役)など、残念ながら公演中止になってしまったからこそ出演できた演劇人たちがたくさんおります。誠にありがたい話です。

一口に演技の仕事といっても様々な形態があります。判りやすいトコロでいえば、映画・ドラマ・演劇などでしょうか。いずれも俳優にとっては演技をする現場ですが、それぞれに手法も慣習も微妙に異なります。いや、本質的には同じなのですが、テクニックは変わってきます。同じ「走る競技」でも長距離走と短距離走が違うように、あるいは「ラケットで打つ競技」でも卓球とテニスとバドミントンが違うように、自ずとそれぞれに特化したノウハウがあるというコトです。
だからこそ映像の現場でも演劇の現場でも素晴らしい結果を残せる堺雅人さんや古田新太くんは凄いなあと純粋に思うのです。

さて、演劇の現場ではそこそこ数をこなしている私も、映像の現場では慣れないことも多く、今でも戸惑うことがたくさんあります。今日はそんな中から、特に撮影時の段取りについての用語などをご紹介いたしましょう。
まず、珍しい例からですが、稽古がある場合があります。各週の頭に、セットも何も無いスタジオのリハーサルルームなどで、今週撮影する全シーンをリハーサルするのです。NHKの大河ドラマなどで採用されているシステムですが、他のドラマではなかなかそこまでする現場は少ないですね。

通常のドラマの場合、現場に入るとその日に撮影するシーンだけを抜き出した「割本(わりほん・わりぼん)」という台本が用意されています。ここには直前に決まった微妙なセリフ変更なども書かれていますからセリフの確認も重要なのですが、さらに台本の上部に細かく「カメラ割り」が書かれています。カメラ割りとは、そのセリフの時にどのカメラのショットを、どのような構図で使うのかというコトです。2Sなら二人のツーショット、BSならバストショット、他にもドリー(カメラのレール上移動)やパン(カメラの横首振り)などのカメラの動きなど、監督の考えたカット割りが書き込まれていますので、どのように撮られるのかが判ります。
撮影が始まるとまず「ドライリハーサル」(=ドライ、または段取り)が行われます。この時には全スタッフが器材を持たずに台本だけ持って、そのシーンを頭から最後まで演じる俳優たちを確認します。その時点で監督からの演技指導や俳優からの提案などが行われ、何度かドライを繰り返し、確定するとそれから全スタッフが仕事に掛かります。照明を置いたりカメラを設置したり。その間、俳優たちはセリフの確認をしたりメイクを直したりします。

次は「カメラリハーサル」(=カメリハ)です。実際の照明の中で実際にカメラを向けながら、ドライと同じ事をします。ここで照明の明るさや立ち位置の微調整などが行われ、確認が済むと「テスト」(=ランスルー)に移ります。
テストは本番と同じ事をして最終確認をする段階でして、これで問題が無ければ「本番」の撮影が行われます。ただ、時間が無い場合や短いシーンなどの場合、テストの段階でついでに録画をして本番を兼ねる場合もあり、これを「テスト本番」といいます。

しかし、本番は一度だけではありません。映画は基本的には一台のカメラで撮影されますが、ドラマでは同時に3~4台のカメラで様々なアングルから撮影しています。しかしそれでもアングルが足りないので、カメラの位置を変えて何度か本番を繰り返します。
さらに、カメラ目線のアップを撮ったりするために、さっきまで私が立っていた位置にカメラを据え、私はカメラの後ろに立って、セリフだけ喋って相手役とやりとりしながら部分的な撮影をします。
さらにさらに、小道具を持った手元だけとか、背中越しのショットとか、細かいインサートのシーンを全て撮り終えると「埋まり」といってそのシーンの撮影が終了します。わずか1分くらいのシーンを撮影するのに2~3時間は掛かるのですよ。これを全シーンに渡って行うのです。

如何でしょうか。ドラマの撮影の流れが大まかにでもお判り頂けたでしょうか。もちろん撮影に辿り着くまでに各スタッフの準備や打ち合わせが山ほどあり、しかも撮影は三ヶ月以上も続くのです。スタッフもキャストも強靱な身体とメンタルが必要だと思います。そりゃ大変だもの。

「半沢直樹」での私の出番は第五話だけでしたが、第六話からは宮野真守さんがご出演です。そんな宮野さんも私も出演しております「浦島さん」「カチカチ山」は10月に東京建物BrilliaHALLにて。全ステージのライブ配信もありますので、どうぞよろしくお願い致します!

新宿にある我が事務所ヴィレッヂの近所で行われていた明治通りバイパスの工事。結構な大工事です。

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

 

 

【出演予定】
ヴィレッヂプロデュース 2020 Series Another Style
『浦島さん』『カチカチ山』 太宰 治著「お伽草紙」より
原作: 太宰 治「お伽草紙」(新潮文庫版)
脚色:『浦島さん』倉持 裕/『カチカチ山』青木 豪
演出: いのうえひでのり
出演:
『浦島さん』 福士蒼汰 羽野晶紀 粟根まこと
『カチカチ山』宮野真守 井上小百合
●10/4~17◎東京建物Brillia HALL
上演時間:約70分予定・休憩なし
〈料金〉S席8,000円 A席7,000円(全席指定・税込)
※枚数制限 お1人様1公演1枚まで
〈チケット発売日〉2020年9月5日(土)午前10:00~
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京
0570-00-3337(平日12:00~15:00)
〈公式サイト〉http://www.vi-shinkansen.co.jp/ura-kachi/

【配信情報】
★全ステージのLIVE配信を予定。
配信サービス PIA LIVE STREAM
〈配信料金〉 2,500円(税込)
〈配信チケット購入〉チケットぴあ
※配信チケットの発売日や配信の詳細は公式サイトにて後日発表。
〈公式サイト〉http://www.vi-shinkansen.co.jp/ura-kachi/

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