【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第102回「ドレリハ」
さあ、川原正嗣さん主演の舞台「BURAI2」の幕が上がりましたよ! アクションサスペンスコメディということで、格好良くてハラハラできて楽しい作品に仕上がりました。12/4から12/8まで、東池袋のあうるすぽっとですよ!
その稽古の終盤、作・演出の米山和仁さんが「明日はドレリハをします」と宣いました。このドレリハというのが今回ご紹介したい専門用語です。
ドレリハというのはドレスリハーサルの略でして、衣装を着た通し稽古という意味です。本来は英語圏で言うところの舞台稽古の最終リハーサルのコトで、以前にもこの連載で書いた「ゲネプロ」と同じ意味なのですが、日本では「稽古場での衣装を着けた通し稽古」という意味でも使われる様です。様です、というのは、私も今まであまり聞いたことのない用語だったものですから。今まで私の周りでは「衣裳付き通し稽古」と呼んでいました。
衣装を着た通し稽古がどれほど重要なのか。そのあたりをご説明したいと思います。演劇の稽古は通常は動きやすい稽古着で行われます。たくさん動くし汗もかくし、色々と試行錯誤も行いますから、ジャージとかの動きやすい格好の方が楽なのですね。 しかし、実際の舞台では衣装を着ます。場合によってはゴテゴテした衣装とか動きの制限される和服とかになる場合もあるのですね。そうなると、実際に衣装を着てみなくては判らないコトもたくさんあります。この衣装ではこんなに速くは動けないなとか、この殺陣は衣装の制限が多くてできないとか、そういった問題点をあらかじめ知っておくことも大事です。それを確認するのがドレリハなんです。
それを確認するために稽古中から浴衣を着たりマントを模した布をまとったりして稽古をする場合もありますが、やはり素材の重さとか大きさが違いますから、本物の衣装で確認することはとても重要なのです。
そしてもう一つ重要な確認があります。それは早替えです。短時間で衣装を着替えなくてはならない場合に、実際にその短時間で早替えができるかどうかというのも重要な確認点です。劇場に入ってから「やっぱり無理でした」となっても間に合いませんから、稽古場の段階で間に合うかどうか、間に合わない場合は衣装を簡略化するなどの修整をするのかを確認するのがドレリハの注意点なのです。
実際に「BURAI2」では多くの早替えがありますから、ドレリハを行うことで問題点を洗い出す必要があったのです。ボタンをやめてマジックテープにするとか、ネクタイをゴム止めにするとか、様々な改善点を洗い出しました。
このような準備を経て本番を迎えるワケです。ドレリハを行うためには結構な準備時間が発生しますが、それでもやらなければならない重要な稽古です。
と、ここまでドレリハの重要性を書いてきましたが、実を言いますと、劇団☆新感線の公演では稽古場では本格的な衣裳付き通し稽古は行われません。なぜならば準備が大変すぎるのと、物理的に稽古場では狭すぎるからです。
新感線の公演って、莫大な量の衣装とカツラが必要です。一人あたりの着替え量が膨大なのです。稽古場でそれをしようとすると、場所も人手も足りません。ですので、劇場に入ってからの場当たり稽古でその部分をみっちりと行うのです。それはもう、物凄い時間を掛けて。こういう現場は結構少ないと思いますが、それがウチの劇団のやり方なのです。
その代わりに以前にも書きました衣装パレードの日に、動きも含めて確認しておきます。実際に衣装もカツラも付けて、予定された動きができるか、早替えができるかどうかをシミュレーションしておくのです。コレをしておくことによって、ドレリハがなくても出演者達が自分の動きのイメージを掴むことが容易になるのです。ま、劇場に入ってから色々大変なのは同じなんですけども。
そんなこんなの「BURAI2」。しっかりドレリハもして万全です。舞台稽古も順調です。きっとお楽しみ頂けると思いますので、どうぞ劇場にお越し下さいませ!
本文とは関係ありませんが、渋谷の宮下公園って今、こんなになっているんですね。高層公園?
【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演情報】
ブシプロ「BURAI2」12/4(水)~8(日)あうるすぽっと
https://burai2.com/
◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ12月号」は全国書店で11/9発売!
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
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