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クリスマスミュージカルの決定版に!『ELF The Musical』一路真輝・沙央くらまインタビュー

2003年ウィル・フェレル主演で全米大ヒットを記録したファンタジックコメディ映画「Elf」。人間の赤ちゃんがクリスマスプレゼントの袋に紛れ込んでしまっているのに気づかず、連れて帰ってきてしまったサンタクロースが、妖精に託して育てた男の子が成長。自分が人間であることに気づいて、はるばるニューヨークを目指し…という、まさにクリスマス一色のファンタジーワールドだ。

そんな映画の大ヒット受け、作品はニューヨークブロードウェイでミュージカル化。その後全米ツアー、ロンドンでの上演と、今やアメリカではクリスマスを代表するミュージカルの人気作品となっている。

2019年12月、そんな作品『ELF The Musical』がいよいよ日本のクリスマスシーズンに本邦初演の幕を開けることになり、サンタクロースに育てられたバディに浜中文一、バディの義理の弟マイケルに松本幸大(宇宙Six/ジャニーズJr.)をはじめとした強力なキャストが集結。イルミネーションに街中が輝く、クリスマスシーズンに相応しい華やかな舞台を展開する。その舞台でマイケルの母親エミリーを演じる一路真輝と、ヒロイン・ジョヴィを演じる沙央くらまが作品への意気込みや、クリスマスの思い出、また同じ宝塚歌劇団男役出身という出自を持つ二人ならではの、宝塚の男役が女優へと転身する時の心境や、互いへの信頼感を語り合ってくれた。

沙央くらま 一路真輝

強力なカンパニーで創るクリスマスファンタジー

──クリスマスを代表する大人気ミュージカル、待望の日本初演となりますが。

一路 私はサンタクロースに育てられた浜中文一君演じるバディの義理のお母さんで、マイケルの母のエミリー役をやらせて頂きます。バディの本当のお母さんは亡くなっていて、私が吉田メタルさん演じるバディのお父さんウォルターの後妻に入って、マイケルを生んだという設定ですね。映画版ではマイケルは小さな男の子が演じていましたが、今回は16歳になっていて、松本幸大さんが演じます。ですから16歳の高校生のお母さんです。仕事をしながら家庭も守るしっかり者の母親のイメージで作ります。

沙央 私はバディの恋人のジョヴィを演じさせて頂きます。ストーリーとしては映画版とほぼ同じなのですが、舞台版のジョヴィは少しイメージが変えてあって。でも今回の上演では、演出の児玉明子先生がジョヴィを映画バージョンのちょっとオタクっぽい感じの女の子のイメージの方に近づけていらっしゃいます。今どきの女の子ではなくて、恋愛では失敗ばかりで、職場では可笑しな子と思われている。そんなジョビィが、エルフに育てられて人間界にやってきた、どうしたって普通の人間とはちょっと違う変わり者のバディと惹かれ合うという感じです。  。

──それは楽しい掛け合いになっていきそうですね。今お話に出ました、浜中さん松本さんをはじめ、共演者の皆様も豪華ですが。

一路 本当に!私は、浜中君とは『ガラスの仮面』で再演も含め二年ぐらいご一緒していたのですが、その時には結構シャイなイメージがあったんです。でもそのあと様々な舞台の主役をやっていらして、しっかり頑張っているというのを耳にしていましたので、どんな成長を遂げているのかなというのが、義理の母としてもとても楽しみです(笑)

沙央 私は「はじめまして」の方達が多いのですが、東山義久さんとは『CLUB SEVEN ZEROII』でご一緒させて頂いていて。しかもショーの中で恋人役が多かったので、仲良くしてくださったお兄ちゃんみたいな存在の方が、また一緒なので頼もしいです。

一路 東山君はね、私が『エリザベート』をやっているときにトートダンサーだったの。そこでズバ抜けて光ってた!! まだ20代だったと思う。その彼がもう40代だと聞いてびっくりしてしまって!ちょっとそこに一番衝撃を受けたかも知れない(笑)。

──東山さんは来年『ミス・サイゴン』でエンジニア役を演じますね。

一路 そうなんですよ!本当に頑張っていて、素晴らしいです。そして私の旦那様の秘書を演じる鳳翔大さんも宝塚出身の方ですが、私は「はじめまして」なんだけど、くらまちゃんは?

沙央 彼女は私の一学年下級生で、雪組時代に一緒だったんです!とてもご縁があって、卒業してからも一緒に宝塚を観に行ったりしています!

一路 あぁ、それは良かった!じゃあ、これで宝塚チームは安泰ね!

沙央 三人共雪組つながりなので、バッチリですね!

外の世界と宝塚が歩み寄ってきている

──お二人は、これまでに交流などは?

一路 宝塚時代は全く時期が違いますので交流はなかったのですが、くらまちゃんは宝塚を退団してどのくらいになった?

沙央 去年の2月に卒業させて頂いたので、1年8ヶ月くらい経ちました。

一路 その退団したての頃に、偶然共通の知り合いがいて、訪ねてきてくれたんだよね。

沙央 はい、『キス・ミー・ケイト』に一路さんが出ていらした時に、ご挨拶に伺ったんですが、辞めたての私を「どう?卒業したてで大丈夫?」と心配してくださって、連絡先を交換してくださったんです。同期生の早霧せいなや龍真咲はお話しさせて頂いた事があったみたいで、とても素敵な方だというお話はずっと聞いていたんですけど、私は全く面識がなかったのに、「心配なことがあったらいつでも相談にのるわよ」と言ってくださったのが本当に嬉しくて。今回共演できるというご縁が頂けて、それをまず何よりもお伝えしたかったんです。ありがとうございます!

一路 とんでもないです(笑)。でもこうしてご縁がつながっていくのは嬉しいですね。

──やはり、宝塚を退団直後の後輩のことは、心にかかるものですか?

一路 もちろんそれもありますが、やはりご縁だと思います。バッと連絡先を交換するというふうに誰とでもなるという訳ではない中で、楽屋に来てくれた時に自然にそういう話になって、しかもこんなに早く共演できるってね。それこそまさお君(龍の愛称)ともお会いすれば親しくお話しするけど、共演機会はまだないし、これは本当にめぐり合わせなので、すごく面白いなと思いました。

──沙央さんは女優として活動を始められて、今いかがですか?

沙央 私は宝塚時代も女性役はやっていたほうだと思うんですけれども、それでもやっぱり女優としてずっと女性役を演じるのと同じではないので。

一路 宝塚ではどんな女性役をやっていたの?

沙央 小池(修一郎)先生の作品ではだいたい女役だったんです。『ロミオとジュリエット』の乳母、『PUCK』のヘレネ、あと、卒業前に『All for One』という作品でも女役をさせて頂いています。

一路 だからあんまり違和感ないのね。今日の扮装もとても可愛いもの。

沙央 ありがとうございます!でもやっぱり、まだまだ慣れなくて不安なことも多い中で、宝塚出身の方がいらっしゃる舞台というのはすごくありがたいなと思います。『CLUB SEVEN』では北翔海莉さんとご一緒させて頂いたんですけれど、その後の舞台では私一人だったので、甘えるというのとは全く違うんですが、それでもあぁこんなに安心感が違うのかと。

──そうおっしゃる方はとても多いですね。一路さんは沙央さんをご覧になって、ご自身が宝塚退団後に女優になってからのことを思い出されたりもしますか?

一路 私は四半世紀近く経ってますから!(笑)退団して23年なので、あまり覚えてないんですけど(笑)。でも私が退団した20年以上前には、宝塚を退団したらすべてを新しくしなさいという時代だったんです。一歩あるいても、ひと声を出しても「それは宝塚っぽいよ!NG!」のような時代でした。でも今は宝塚の卒業生を、その出自ごと受け入れてくれる時代になっていますし、宝塚自体も昔ほど「宝塚クサさ」がなくなっていると思うんです。

──確かに宝塚という世界全体がナチュラルになっていますね。

一路 だから両者が歩み寄っているなと、私は見ていて思えるので、舞台上ではくらまちゃんもそんなに意識しなくても大丈夫だと思います。

──宝塚が100周年を迎えた頃から、OGさんたちの公演も増えて、男役芸を封印!という感じではなく、サッと男役に戻れるということを皆さん示されていますし。

一路 そうなんですよ!私なんて、退団して10年間は男役の歌は歌いませんって言っていました。やっぱり自分自身も宝塚時代に引き戻されたり、ファンの方達もやっと男役ではない私に慣れてきたのに、また男役をやると混乱させてしまうだろうとか、色々な意味で10年はやらないと思っていて。でもその後、私は子供を産んで育てて4年間全く仕事をしなかったんですが、復帰後に『エリザベートガラコンサート』があり、そこから吹っ切れて男役の歌も歌うようになりました。でもそういう封印しなきゃ!というような時期は、今は必要ないのかなって思うの。どう?

沙央 そうですね。そこまで意識しなくても良いのかな?とは思います。

一路 男性の俳優さんにも宝塚の男役みたいな人が増えたしね!そういう俳優さんが相手だと、娘役のトップがポンと組んでも全く違和感がない。昔だとリアルな俳優を相手にするには、男役出身者くらいの迫力がないと釣り合わなかったんですけど、今は男の子がシュッ!としているから、娘役さんがそのまま寄り添ってピッタリ合う時代になってきている。多様性を感じますね。だからくらまちゃんも舞台に関することで、困ったり心配したりすることはさほどないと思いますが、普段の色々なことがね。宝塚ってすぐ隣に、同期生や上級生下級生がいて、いつも同じ仲間で公演して家庭的なところがあるけれど、退団すると一人で大きな海に泳いでいる感じになったりして、寂しくないかな?と心配なんです。でも今回は宝塚チームでまとまれるからね!

沙央 はい!すごく心強いですし、楽しみです!

ひと時、現実から離れる為の水先案内人として

──クリスマスにちなんだ作品ということで、お二人自身のクリスマスの思い出もお聞きしたいのですが。

沙央 私は宝塚のお稽古場でクリスマスを迎える日は、先生方も一緒にその公演のメンバーでプレゼント交換をしていたんです。全員で輪になって歌いながらプレゼントを配って、手元に届いたものは誰からのですか?というイベントをするのが毎年の恒例だったので、やっぱりその思い出が一番印象深いです。

一路 今、子供がいるとむしろハロウィンのほうが大きな行事なんです。仮装もするので準備が大変で!ですから私はこのミュージカルに出させて頂くのをきっかけに、クリスマスに重点を置いて生活していこうと思います!

──サンタクロースは信じていましたか?

沙央 私は祖母が一緒に暮らしていて、小学生の頃だったと思うんですが、私が「サンタさん来るかな」と言ったら、祖母に「いないわよ」と言われた記憶があります(笑)。

一路 あぁでもね、子供たちはサンタさんを信じているふりをして、親から二つプレゼントを貰おうとしてますね(笑)、そういう悪知恵はいっぱい持ってる(笑)。でも私、サンタさんはいると思っているんです、フィンランドに。だから娘にも「サンタさんはフィンランドにいるから、いつか会いに行こうね」といつも言っています。

沙央 そんなお母さま素敵ですね!

一路 毎年のクリスマスプレゼントは、日本のサンタ協会からフィンランドに連絡して、そこで連携とって持ってきてくれるんだよって教えていたの。

沙央 日本のサンタ協会!?すごいです!

一路 そしたら娘がサンタさんへ「お髭を置いて行ってください」って手紙を書いていたの!それで私も一生懸命何がお髭に見えるだろうって考えたら、手芸用の白い綿があったのでそれを、裂いて伸ばして置いておいた!(笑)

沙央 予想外ですよね、お子さんの考えることって!

一路 敵もさる者でね(笑)。でもだから、小学生のうちはそうやってああでもないこうでもないと信じさせていましたし、今でもフィンランドに行けばいるよって言っています。

──そういう夢って、世の中に必要でもありますよね。

一路 だからきっと皆様もこの時期にこの作品をご覧になって、童心に返ったり、どこかでまたサンタさんをね、いないとわかっているけれども、でももしかしたら?と思える、そういう気持ちになって頂けるのではないかなと。

沙央 そうですね。私も弟がボストンにいてオペラをやっているのですが、アメリカではこのミュージカルはすごく有名で、必ずクリスマスシーズンに家族でこの作品を観ることが浸透しているよと言われました。だから日本でもこのミュージカルがクリスマスの定番になったら絶対に素敵だろうなと思って!

──それは本当に素敵ですね。その第一歩である今回の上演をとても楽しみにしていますが、では改めて意気込みとメッセージをお願いします。

沙央 夢が詰まっている、とても素敵な作品です。やはりクリスマスシーズンにクリスマスを味わいながら自分も過ごせるのはすごく幸せだなと思いますし、エンターテイメントの世界でも現実的な作品や斬新なものが増えている中で、こんなに温かくてハートフルな作品がクリスマスシーズンにありまので、お子様やご家族、お友達や恋人同士でお誘い合わせていらして下さい!この温かい作品を私たちも楽しみつつ、皆様にも楽しんでいただけたらと思っています。

一路 12月ってやっぱりとても気忙しいと思うのですけれども、現実がせわしないからこそ、これを見に行くと予定を決めて下さったら、その日だけはクリスマスの気分を満喫して現実から離れられる。私達のお仕事って、皆様がひと時現実から離れるための水先案内みたいなものだと思っているので、今回のサンタさん、クリスマスというテーマに絞られた作品は、私たちがやっている仕事が集約されたような空間になると思います。それに出られるのはとても幸せなことですし、特別な空間を皆様とご一緒できるので、楽しんで頂きたいですね。街中にイルミネーションが溢れるので、イルミネーションの中を歩いてこの作品を見に来て、またイルミネーションの中帰っていくのはとっても素敵な時間になると思いますので、是非劇場にいらして下さい!

──楽しみにしています!ぜひこのカンパニーでクリスマスのプレゼント交換を!

沙央 あ、でもクリスマスの前に大阪公演が終わってしまう!

一路 じゃあ千秋楽にやろう!

■PROFILE■

いちろまき〇愛知県出身。82年宝塚歌劇団に入団。93年雪組トップスターに。『ベルサイユのばら』『風と共に去りぬ』など話題の作品に出演。96年日本初演となったミュージカル『エリザベート』のトート役で宝塚を退団。同年ミュージカル『王様と私』のアンナ役で女優デビュー。舞台、テレビ等で幅広く活躍している。近年の主な出演作品に『ガラスの仮面』『キス・ミー・ケイト』『細雪』『リハーサルのあとで』など。第22回菊田一夫演劇賞、第12回読売演劇大賞優秀女優賞、第37回松尾芸能賞を受賞。

さおうくらま〇東京都出身。2001年宝塚歌劇団に入団。宙組『ベルサイユのばら2001』で初舞台を踏み、以降雪組、月組、専科に在席。老若男女、幅広い役柄を演じきれる高い演技力と歌唱力を持った男役スターとして活躍。2018年惜しまれつつ宝塚歌劇を退団後は、テレビ、映画、舞台で女優として多彩に活躍中。近年の主な舞台作品に『CLUB SEVEN ZEROII』『ラヴズ・レイバーズ・ロスト─恋の骨折り損─』等がある。

【公演情報】
『ELF The Musical』
原作◇映画『エルフ~サンタの国からやってきた~』
脚本◇Thomas Meehan、Bob Martin
音楽◇Matthew Sklar
歌詞◇Chad Beguelin
演出◇児玉明子
音楽監督・編曲・訳詞◇宮崎誠
出演◇浜中文一 松本幸大(宇宙Six / ジャニーズJr.)
沙央くらま
東山義久 吉田メタル 鳳翔大
ブラザートム
一路真輝 ほか
●12/6~15◎東京・品川プリンスホテル ステラボール
〈料金〉9.900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12時~18時)
●12/21~22◎大阪・森ノ宮ピロティホール
〈料金〉9.900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(10時~18時)
〈公式サイト〉http://www.eif-themusical.jp

 

【取材・文/橘涼香 撮影/田中亜紀】

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