「祭シリーズ」9年ぶりに出演!上口耕平インタビュー
年末の風物詩として親しまれている、る・ひまわり×明治座による「芝居、ミュージカル、時代劇、ショー、コント、2.5次元、殺陣、アイドル、歴史、キャラクター、うちわにペンライト、小劇場、ダンス、ネタ、花道にフライング」を詰め込んだエンターテイメント全部盛りの二部構成「祭シリーズ」が今年も12月28日~31日明治座で上演される。
今年のテーマは日本の歴史上、作品化難易度が最も高いと言われる「南北朝時代」を、世界一わかりやすいミュージカルで描く第一部オリジナ・るミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』と、室町時代の音楽番組として贈る第二部 ショー『猿楽の日1338 ~近頃都で流行るものフェスティバル~』となっている。
そんな足利尊氏を主人公とするオリジナルミュージカルで高師直を演じる上口耕平が、9年ぶりとなる「祭シリーズ」に参加する意気込みを、この公演のビジュアル姿で語ってくれた。
すごく豪華で濃い時間だった
──年末恒例の、この公演を観ないと年が明けないというファンの方がたくさんいらっしゃる「祭シリーズ」ですが、上口さんは久しぶりのご出演ということですね。
2014年以来なので、9年ぶりなんですよ。
──その久々の出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
2014年公演では本当に色々なことをしたなぁという記憶があります。それまで履いたことのなかったローラースケートを履いたり、毎日、毎公演全く違うことをするコーナーがあったり。それを明治座という場所でやる、すごく豪華で濃い時間だったなというイメージが強くて。当時僕も二十代だったので、だからこそ弾けられたところもあったと思うんですが、いまこの年になって、さてどこまで弾けられるかな?というのが自分でも楽しみになりました。逆に前回よりある意味もっと弾けてやろう、色々なことをしたいなと思いました。
──2014年公演で、特に思い出に残っていることはありますか?
たくさんあるのですが、自分のテーマカラーみたいなものが決まっていて、僕、自分の色のペンライトを振っていただいたのが初めてだったんです。そうしたら応援してくださる方が日に日に増えていって、こんなに嬉しいものなんだなと思ったのが、特に思い出深いです。初めての参戦でしたから最初は「誰だろう」、と思われた方もいらしたと思うんですよね。でもそういう目に見えるものがあって「祭シリーズにようこそ!」と受け入れていただいた、仲間になれたんだなぁ、と感じた瞬間がすごく嬉しかったです。あとは先ほども言いましたが、お芝居の中で毎日違うものが生まれていくコーナーもあって、まぁ、言えば無茶ぶりなんですけど(笑)、内心ヒヤヒヤしていたなかで、お客様がすごく笑ってくださった時の何とも言えない快感と言うのかな、自分がひと回り大きくなったと錯覚できたくらい、毎日の経験でハートが強くなれた年末でした。ちょうど二十代最後の年でもあったので、そこから三十代に突入できて縁起が良かったと思います。ここまで本当に色々な経験をさせていただけたので、いま三十代後半、四十代ちょっと手前というところで、またこの「祭シリーズ」に呼んでいただけたというのは、とても縁起がいいんじゃないかと思っています。そういう気持ちで挑んでいきたいです。
──今日のビジュアル撮影の扮装は、これも「祭シリーズ」の定番と言いますか、敢えて内容とリンクしていない面白さがありますが、扮装されていかがでしたか?
率直にこういうのは好きですね。こんな風に極端に白く塗るとか、奇抜なことは普段の生活ではできないので役者冥利に尽きます。体験していただけたら絶対わかってもらえると思うんですけど、結構最高の気分になるんです。
──そうなんですね!
本当に、一度お試しいただきたい!(周り笑い)いつもと違う自分になれるって、まぁ役者の仕事の大きな楽しさのひとつだと思いますが、それをより感じられるのが、こういう扮装での撮影ですよね。ビジュアルイメージのサンプルはいただいていたんですけど「これより更に白く塗りますから」と言われた時は、逆に嬉しかったですから。そんなに変身できるんだ!とテンションが上がりました!
──演劇キックを見てくださる方も、お写真を楽しんでいただけると思います。
これでもね、ビジュアル撮影時よりは少しだけ落としたんですけどね(笑)
高師直を掘り下げていきたい
──今年の作品は「太平記」から足利尊氏を主人公にしたオリジナルミュージカル、まだ上演台本は鋭意制作中ということなので(※取材は7月末)、演じる高師直について、歴史上の人物としてはどんな印象をお持ちですか?
高師直役ということで、改めて様々な資料を見たのですが、記述が色々あって。「太平記」に書かれている高師直は、ひと言で言うと非道な男なんですね。神も仏も関係ないとばかりに寺院を焼き払ったりもしている、かなりクレイジーな男という描写が多いんです。でも、他にも掘っていくと、そういう戦略にすごく葛藤したとか、上からの指示で勝つ為には仕方がないんだけれども、とても悩んでいたりなどの記述もたくさんあって面白い。それに「強きをくじき、弱きを助ける」ような政策も作っていましたし、歌人でもあって、残っている歌も素晴らしいんです。そういう幅の広い人なので、今回の作品の中で求められる高師直像がどんなものになるのか楽しみですし、ある意味自由に作れる部分もあるのかなと。ただもちろん一般的なイメージは「太平記」に書かれたものだし、寺院を焼き払うという行動をとったというのはあくまでも事実なので、どれほど葛藤があろうとも、最終的にそういうことができてしまう人間だ、というところは表現していきたいと思っています。
──南北朝時代というのはかなり複雑なので、歴史もののなかでも、戦国乱世や幕末ほどには作品化されていませんから、確かに自由度は高そうですよね。
本当に複雑な時代なので、僕も知識としてはまだまだこれから勉強していかないといけないのですが、ただ、やっぱりすごく興味深いのは、日本が分裂していた時代ということかなと。アメリカの南北戦争とか、東西冷戦とか、そういう状況は世界の歴史のなかで色々と起こってきたし、いまもそうしたニュースは入ってきますけれども、実際日本にもそうした時代があった、ということを改めて噛み締めていくと、いま世界で起こっていることも、他人事ではないと言うか、日々の心の揺れみたいなものが切迫して感じられて、役者としても人としてもすごく大切な考える時間になると思います。それはきっととてもクリエイティブな時間だと思うし、もっと身近なこととして捉えれば、どんなに小さな集団でも派閥があったり、所属があって、対立してしまうこともあるじゃないですか。ましてどちらを選択するか?ということが、人生に、命に関わっていった時代なんだと考えていくと、そこには大きな学びがあると思うので、そういう時代を描いた作品の中に突入できるのが楽しみです。
──「祭シリーズ」はそれこそお衣装のデザインなどを見ると、一見荒唐無稽というか、時代考証などは全く無視しているようでいて、実は歴史的な背景を踏まえていますものね。
そうなんですよ。だから今回演出の原田優一さんが、作品の中での高師直をどういう人物、どういう立ち位置で求めてこられるのか?にかかってくると思うのですが、きっとたくさんディスカッションもできると思うし、自分からも色々話していきたいです。
自由な気持ちで羽ばたいていけるんじゃないかな
──その原田優一さんが出演と共に演出を手掛けられることへの期待はどうですか?
出会ってからは長いのですが、Wキャストだったり、チームが違ったりして、きちんと共演できたのが今年初めてだったんです。普段から本当に仲良くさせてもらっていたので、それが意外でもあり新鮮でもありましたが、優ちゃん(原田)と敢えて呼ばせていただきますけれど、彼の演出を受けるというのは全く初めての経験なので、ちょっとまだ想像できないんです。どんな演出をするのか現場を見たことがないので。ただ、優ちゃんが演出した作品を観には行っていて、すごく面白かったし、細部に渡ってとてもきめ細かい拘りが見えたんですよね。「演出家・原田優一」には初めて出会うので、当たり前ですが仲良しの優ちゃんではなく、演出の原田さんとして、新たな人に出会う気持ちで稽古場に入ろうと思っています。ただ、灰皿とか投げられたらどうしようかなと(爆笑)、冗談ですよ!(笑)
──はい、わかります!これまで原田さんの演出を受けられた方からは、やはりご自身が俳優さんなので、俳優の生理をわかった演出をされる、とよく伺います。
それはわかってくれそうだなと思いますね。「そこ、動きにくいよね?」みたいなことはきっとすぐに気づいてくれるだろうと思いますから、役者目線を持ってくれていることはありがたいですし、逆に僕からどんなイメージを引き出してくれるのかがとても楽しみなので、もう僕としては裸の状態で稽古に入りたいです。
──また「祭シリーズ」の特徴のひとつでもありますが、多彩な共演者の方々が揃っていますね。
相葉裕樹くん、内藤大希くん、井澤勇貴くん、大山真志くんなどなど、何度も共演している人たちから「はじめまして」の方々までいらっしゃるのでワクワクします。特に、同世代や気心が知れている、僕のことをよく知ってくれている人たちが多いので心強いですし、最初からすごく肩の力が抜けた状態で、自由な気持ちで、お互い支え合って信頼し合って、羽ばたいていけるんじゃないかな?と思っています。
舞台上でのカウントダウンは特別な瞬間
──その舞台となる、明治座という劇場自体の印象はいかがですか?
僕は明治座の距離感がとても好きなんです。高さがあるのにすごく近いんですよね。大劇場なのに、皆さんの顔がかなり見える劇場ですので、こういう作品ってやっぱりお客様が笑ってくださったり、リアクションが大きいとこちらも相乗効果でどんどん気持ちがあがっていくので、あの空間に立てるのが単純に楽しみです。しかもこの「祭シリーズ」の「祭」っていう言葉と、明治座の空気感ってすごくハマるなと感じていて。それを9年ぶりにもう一度味わえることが嬉しいです。
──今年は久しぶりに年越しのカウントダウンも復活しますし。
そうなんですよね!もうそれが本当に嬉しくて!僕、結局舞台の上で皆さんと年越しのカウントダウンができるって、9年前に「祭シリーズ」に出させていただいて以来なんですよ。あの瞬間って結構特別なものなので、すごく楽しみです。あと、ガチャって言っていいんですか?ランダムで出るグッズになれるじゃないですか。今年はできるのかな?(スタッフからOKが出て)あぁ、嬉しいなぁ、普通、生きていてなかなか経験できないですからね、自分がガチャのカプセルから出てくる缶バッチになれるって!(笑)いま38歳なんですけど、まさかこの年でまたガチャになれるとは!
──缶バッチだけではなく、アクリルスタンドなど、何十種類、何百かもしれないくらい数がありますから、お目当てのものを引き当てるまで大変なんです!
嬉しいですね、僕を求めて回してくれる方がいてくださるなら、涙が出ます。ちょっと隠れて覗き見ながら応援したいくらいです!「頑張れ!出ろ!出ろ!」って(笑)
──色々な意味で楽しさの詰まったこの舞台がはじまる頃には、今年も終わるということになりますが、2023年上半期はどんな年でしたか?
昨年末から稀にみるほど充実していて、駆け抜けたというか、あっと言う間でした。色々な作品に参加させていただけて、多くの経験を積むことができた上半期でした。いまやっとひと息ついて座ったという感覚で、一つひとつを嚙みしめている感覚があるので、更にここからの下半期が楽しみですし、その締めにこの「祭シリーズ」があるのは、今年のラストに大きな花火を打ち上げるような気持ちになるんじゃないかなと思います。色々なお芝居、またミュージカルと経験していくごとに、どんどん自分のなかで大事にしたいものや、絶対に必要で向上させたいものが増えていくんですよね。いまはちょうどミュージカル作品の稽古中なのですが、芝居の稽古が主の期間なので、その中でもいつでも踊れる身体は作っていたいんです。やっぱり自分の根底にあるものはダンスなので、そういうパフォーマンスへの準備は常にしていたいですね。
──そんな上口さんのこれからの舞台も楽しみにしていますが、では年末の大花火「祭シリーズ」のファンの方たちにメッセージをお願いします。
約10年ぶりにやってきました!しっかりと作品の中に生きて、皆さんがエンジョイできることをたくさんお届けします。今年の年末は明治座でご一緒しましょう!是非観に来てください!
■PROFILE■
うえぐちこうへい〇和歌山県出身。02年ドラマ『ごくせん』(NTV)で俳優デビュー。高校時代から数々のダンスコンテストに入賞。キレのあるダンスには定評がある。近年はミュージカルを中心にジャンルを問わず活躍中。宝塚歌劇団の振付も手がけ、本年3月にはミュージカルドラマ『Play a Life』(CX)に出演、好評を博した。近年の主な出演作品に『BACKBEAT』『CLUB SEVEN 20th Anniversary』『ダブル・トラブル』『ヘアスプレー』『ドン・ジュアン』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『RENT』『ウエスト・サイド・ストーリー』など。8月~9月a new musical『ヴァグラント』出演中。
【公演情報】
祭シリーズvol.13
シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る
『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』
脚本:池田テツヒロ
演出:原田優一
音楽:かみむら周平
出演:相葉裕樹/内藤大希/
石川凌雅、松田岳、前川優希、井澤巧麻、広井雄士、井深克彦/
丘山晴己/井澤勇貴、伊藤裕一、加藤啓/大山真志、辻本祐樹/
原田優一/上口耕平/ROLLY/水夏希
第一部 オリジナ・るミュージカ・る「ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~」
第二部 ショー「猿楽の日1338 ~近頃都で流行るものフェスティバル~」
総合司会/鯨井康介
日替わりゲスト:
12/28(木)昼夜/平野良
12/29(金)昼夜/藤田玲
12/30(土)昼夜/蒼木陣
12/31(日)昼夜/安西慎太郎
●12/28~31◎明治座
※31日夜公演カウントダウンあり
〈料金〉S席13.500円 A席6.500円(※31日夜公演のみ S席14.000円 A席7.000円)
〈チケットに関するお問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時~17時)
〈公演に関するお問い合わせ〉る・ひまわり info_2023taihenki@le-himawari.co.jp
【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】
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