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アラフィフの俳優ふたりが演じる少年時代の大冒険!『モジョ ミキボー』浅野雅博&石橋徹郎インタビュー

演劇は、幕が上がるまでどんな内容かわからないことが多い。その中でもし面白さの目安のひとつにできるものがあるとしたら、それはいかに再演を重ねてきたか、だろう。同じ作品を再び上演することは動員面でリスクもはらむ。それでも上演が繰り返されるのは、それだけ多くの観客に愛される輝きを持った作品であるということだ。

12月14日(土)より開幕するイマシバシノアヤウサ『モジョ ミキボー』は今回で3度目の上演となる。初演は2010年。再演は2013年。初演時は小劇場界では異例の1ヶ月にわたるロングラン公演を打ち、第3回小田島雄志・翻訳戯曲賞に輝いた。

プロテスタントとカトリックが激しく衝突を繰り返した北アイルランド紛争真っ只中の1970年。異なる宗教の家庭で育ったふたりの少年の友情と冒険の物語を、今度はシアタートラムで、五十路に手が届く役者ふたりで熱量たっぷりに演じ上げる。

3度目の上演でなおも広がるこの戯曲の面白さとは何なのか。演じる文学座の浅野雅博と石橋徹郎に話を聞いた。

浅野雅博

石橋徹郎

いつかまたこの作品をやらなきゃいけないという気持ちがあった

──まずは今回、三たび『モジョ ミキボー』を上演しようと決めた経緯から聞かせてください。

浅野 いつかまたやらなきゃいけない、という気持ちはずっとあったんです。初演、再演と下北沢のOFF OFFシアターという小さな劇場でやってきて。それこそオフ・オフ・ブロードウェイからオフ・ブロードウェイに上がるような感じで、より大きな劇場で熟成されたものを見せられたらなとは考えていました。

石橋 それで、どういう場所がいいだろうねという話をして、いちばんこの『モジョ ミキボー』の世界にぴったりだと思ったのが、シアタートラムでした。

──おふたりで17役を演じるわけですが、驚いたのがほとんどその場で役を演じ分けていくんですね。そうすると、どうしても役が変わるごとにブチブチと感情が切れることになる。役者にとっては相当な枷になるのではと思ったのですが。

浅野 おかげで初演はかなり四苦八苦でした。自分が喋ったあとに、またすぐ違う役の台詞が続いていたりするんですよ。最初に台本を読んだときは、「これどうやってやるの?」って思いましたから(笑)。

──確かに台本を読んだとき、とてもふたり劇とは思えませんでした(笑)。

浅野 初演、再演とやり続けて、ようやく自分の中に入ってきているような感覚です。もし今回が初演だったら、いきなりトラムに乗っけようとは絶対思えなかったでしょうね(笑)。

石橋 しかも単に声色を変えるだけじゃなく、ちゃんと気持ちで切り替えようと思ったら、体の支えから瞬発力、集中力まで、いろんなものがないとできない。相当体力がないと太刀打ちできない台本だと思います。

──稽古を拝見していて、たったひと言の台詞で空気を変えられていることに感動しました。

浅野 そこは僕らの力もそうだし、あとはスタッフさんの力も重要で。明かりもシチュエーションに合わせてどんどん変わっていくんですよ。おかげで観ている人も場面が切り替わったのがすぐにわかると思います。この作品をやると、演劇ってやっぱり総合芸術なんだなと感じられて、すごく楽しいですね。

石橋 しかもスタッフさんもほとんどの方が初演のときと同じメンバーなんです。初演から9年経ちましたけど、こうやって全員で重ねていけるのはうれしいですね。思えば、初演のとき、僕はまだ39歳。それが今は49歳ですから。

浅野 その当時ですでにヒーヒー言ってたからね(笑)。もう今回は本読みの段階から疲れるだろうなと。

子どもの世界をいい大人が演じるところが面白い

──改めて、どんなところにこの作品の魅力を感じていますか?

浅野 子どもが主役っていうのがいいんですよね、屈託なくて。横たわっている問題は根深いんですけど、その中で子どもたちが無邪気な笑顔でいるから切なくもなるし、笑うこともできる。しかもそんな子どもの世界をいい大人が演じるところが面白いですよね。台本にも30代後半から40代前半の俳優が演じてほしいって書いてあって。やっぱりよくできているなって思います。

石橋 そこが演劇ならではというか。この作品は映画にもなっているんですけど、映画では子ども時代は子役が演じているんですよ。演劇だからこそ、おじさんが子どもまで演じられる。おじさんがひとり出てきて、昔のことを思い出すところから始まって。そのおじさんがそのまま子どもになるっていうところが面白さだと思います。

浅野 出てくる大人もきちんと子どもの目線から描かれているんですよね。大人から見たら普通のおじさんなのに、子どもの目線から見ると、ものすごく強烈に映ることってあるじゃないですか。そういう子どもの頃の感情を彷彿とさせてくれる戯曲ですね。

石橋 台詞も子ども同士の会話であるような、内容のないくだらないことばかりを言っているようなんだけど、その言葉のもとにそこはかとなく何かが流れている。そういうところも含めて、すごくうまく構成されているなと思います。

──キャパ80席のOFF OFFシアターからキャパ225席のシアタートラムとなると、同じ作品でもずいぶん変わりますよね。どんなところが進化していますか?

浅野 OFF OFFに比べて高さがありますからね。その高さを活かした演出は考えています。それがどんなものかは見てのお楽しみにさせてください(笑)。

石橋 舞台も奥行きがあるので、そこをどうするかは、演出の鵜山(仁)さんと美術の乘峯(雅寛)さんが考えているところで。OFF OFFシアターでトライしたことをより豊かにしたような、面白い装置プランになる予定です。

自由に生きている姿に、潜在的なシンパシーを感じた

──3度目の上演ということで、おふたりにとっても新しい発見はありますか?

石橋 くだらない台詞の中に、暗喩や隠喩みたいなものが入っているんですけど、子どもの役ですからそれを意識しすぎるとおかしなことになっちゃうなと今までは思っていたんですね。でも今回はたまに客観的な視線を入れてみようかなと。たとえばナレーターの役から子どもの役に戻ったかと思いきや、「あれ? 今、子どもじゃないのかな?」とお客さんが気になるような風情を、あからさまじゃないですけど、俳優本人の意識として持ってみようかと稽古で試しているところです。

浅野 ただ、この作品の持つ雰囲気を壊すつもりはないです。プラスアルファで変わっていくところはあったとしても、まったく違うものになるはずはないので。『モジョ ミキボー』は、楽しくて、笑えて、感動する芝居をつくりたいと思った僕たちが、最初に「これだ」と思った原点のような作品。だから、あくまで楽しいエンターテイメントであることは忘れずにいたいです。

石橋 作品の中に『明日に向って撃て!』が出てくるんですけど、この映画に登場するブッチとサンダンスはどちらも個性的な一匹狼で、孤独なふたりが出会い、ふたりきりで逃げたところから物語は動いていく。このお話もそうなんですよ。モジョもミキボーもそれぞれ居心地のいいコミュニティにずっといれば良かった。でもふたりはそのコミュニティを飛び出て、宗教の壁を超えて、友達になった。この禁じられた関係は、ある意味、『ロミオとジュリエット』みたいなところがありますよね。

──大人たちのせいで、子どもたちの友情が引き裂かれてしまう切なさがありますよね。

石橋 橋を隔てて、ふたつの宗教が敵対し合うあの街で、俺たちの本当の気持ちは何なんだと。本当に好きな人は誰なんだというせめぎ合いをモジョもミキボーも抱えていた。きっと単にカッコいいから『明日に向って撃て!』に憧れているわけじゃないんですよね。アウトローでも自由に生きているブッチとサンダンスの姿に、潜在的なシンパシーを感じていたんじゃないかと思うんです。

──ラストシーンは特にぐっときました。

石橋 最後はお客さん一人ひとりがそれぞれいいように受け止めてくれたらなと。たぶん最後に残る感情は人それぞれだと思うから。観た方がぴったりとハマるものを見つけて持って帰ってくれたらうれしいです。

【公演情報】
イマシバシノアヤウサ
『モジョ ミキボー』
作◇オーウェン・マカファーティ
翻訳◇平川大作
演出◇鵜山仁
出演◇浅野雅博 石橋徹郎
●12/14~21◎シアタートラム
〈料金〉一般/前売5,000円 当日5,500円 学生/前売・当日3,500円 U15(15歳まで) 前売・当日1,000円(全席指定・税込) 
※12月14日プレビュー公演のみ一般 前売3,500円 当日4,000円
〈お問い合わせ〉imashibashinoayausa@gmail.com
〈公式サイト〉https://stage.corich.jp/stage/102850

 

【取材・文・撮影/横川良明】

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