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令和元年の締め括りに相応しいポップでキュートな快作!『ロカビリー☆ジャック』上演中!

売れない歌手がスターになる夢を叶える為に、悪魔と契約を交わしたことからはじまる切なくもポップな青春エンターテイメント『ロカビリー☆ジャック』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(30日まで)。

『ロカビリー☆ジャック』は、2013年、2015年にシアタークリエで大ヒットしたオリジナルミュージカル『SONG WRITERS』の作・作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞と、演出の岸谷五朗が再びタッグを組み、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続に加え、ミュージカル作品初参加となる斉藤和義の魅力的な音楽で紡がれた新作ミュージカル。1950年代に誕生し、エルヴィス・プレスリーら人気シンガーの登場で一世を風靡したロカビリー音楽に魅せられた青年が、スターになる夢を諦めきれずにとった行動から、周りの人間たちを巻き込んだ思わぬドラマが展開していく作品となっている。

【STORY】
ロカビリーに魅せられた売れない歌手ジャック(屋良朝幸)は、彼に幼い頃から憧れて慕い、トラック運転手からマネージャーへと転身したビル(海宝直人)と共にラスベガスに乗り込む。だが、ロカビリー音楽自体が下火になっていた上に、女癖が悪く“愛”という概念を理解できないジャックの歌は、聴衆の心を掴むことができない。今日も客が片手に満たず、その客入りの悪さにビルの懇願も空しく、ジャックはクラブボスのサマンサ(平野綾)から契約を解除されてしまう。場末のステージでくすぶっている鬱屈から歌うことに誠実になれないでいるジャックを奮起させようと、ビルは単身ニューヨークへとマネージャー修行の旅に出ていく。ステージも失い、唯一の友にも去られ、自暴自棄になって酔いつぶれたジャックの前に、なんと悪魔(吉野圭吾)が現れる。彼は“愛”を歌えないジャックにシンガーとしての成功を約束する代わりに、彼の中に“愛”が生まれ大きく育った時、命と共に愛をもらう…という契約を持ちかける。死をも覚悟していたジャックは、人生で一時でもスターになるためならばと、悪魔と契約を交わしてしまう。

それから一年、ジャックはビルのマネージメントの下、ロカビリーシンガーとしてニューヨークで成功の階段を駆け上がっていた。そんなジャックの前に一人の女性シンガー・ルーシー(昆夏美)が現れる。ルーシーは、自ら解雇したジャックがスターとなったことを疎ましく思うサマンサが、起死回生の売り出しを図っている新人歌手だった。出会った一瞬で恋に落ちるジャックとルーシー。だが、その様子を見ていた悪魔が「意外と早く“愛”を味わえそうだ…」とほくそ笑む姿に、ジャックは狼狽して……

 

悪魔が堂々と登場してくる舞台は、アメリカンコミックのような原色の氾濫する、ポップな世界観の中で展開されていく。キャストの動きにもコミカルにカリカチュアされたものが多いし、楽屋オチ的な小ネタもあれば、世界的大ヒットを飛ばしたグランドミュージカルのパロディーもあって、客席で大爆笑させられることもしばしばだ。

だが、それらが決してワルフザケにならないバランスがきちんと保たれていて、可笑しみの中に人の心の鬱屈や切なさ、愛の力をストレートに訴える洒落た台詞が織り込まれ、森雪之丞と岸谷五朗の美質が、見事にマッチしているのが感動的だ。こうしたオシャレな世界観を、日本人があくまでも重くならずに軽快に演じて、空回りにもオーバーアクトにもならず、所謂「スべる」ことも皆無なステージに接すると、オリジナルミュージカルの成熟を目の当たりにした思いで、なんとも嬉しい。そこに斉藤和義のブルージーでロックで、むせび泣きもすれば、高らかにシャウトもする多彩な楽曲が散りばめられている効果は絶大で、ちゃんとミュージカルでありつつ、時にショーストップの拍手を贈っても構わないような、コンサートの醍醐味も加味された、この舞台独特の楽しさが弾ける力になっていた。

そんな弾むステージを快調なテンポのまま届けてくれるキャストも、実力派が揃ったならではのパワーを感じさせている。

ジャックの屋良朝幸は、持ち前のスター性で理想の自分になれずに苛立ち、虚勢を張っているジャックの意地と、身勝手な行動をもチャーミングに見せたのはもちろん、数々のミュージカルナンバーを多彩に歌い、かつ得意中の得意のダンス力を融合させた動きとで魅了する。ジャックの心境の変化が劇中で手に取るようにわかる芝居心も素晴らしく、ジャックの行動にハラハラしながらいつの間にか応援しているという、この作品の主人公に必要不可欠な「愛すべき男」を表出していて大きな見応えがあった。

そのジャックに献身的に寄り添うビルの海宝直人は、数々のグランドミュージカルで示して来た、優れた歌唱力と古典的な二枚目像という武器だけでなく、身体能力にも優れていることをこの舞台で鮮やかに見せている。それが実はかなり難しいだろうコミックのような動きの面白さを支えていて、深い芝居心も役柄によく生きた。何よりもやはりジャックを思う「永遠の憧れ」「愛しい嘘」のビッグナンバーは必聴もので、ミュージカルスターとしてだけでなく、アーティストとしても活躍している海宝の資質がこの作品の重要なピースになっている。

ルーシーの昆夏美は、最早言うまでもない歌唱力だけでなく、とりわけ演技力の幅広さが必要な役柄を支え切っていて感嘆させられた。かなり振り切っている役の行動が突飛にならない、とびっきりのキュートさはもちろんだが、あっと驚く昆夏美を観ることもできるという意味でも、このステージは貴重。是非本編でそのびっくりを堪能して欲しい。

ラスベガススのクラブの女ボス・サマンサの平野綾は、どこかにファニーさも秘めた愛らしい容姿からは想像もつかないドスの効いた演技に目を引き付けられる。ストーリー自体も二転三転していくが、サマンサという女性にもあれよあれよの展開が待っていて、終わってみれば何故この役柄が平野にキャスティングされたのかに納得が行くスペシャルなパフォーマンス。サマンサの片腕テッドの青柳塁斗の何気ない芝居から飛び出す、アクロバティックな動きの見事さにも注目して欲しい。

そして悪魔の吉野圭吾が、怖いようで可笑しい、でも可笑しいか思うとゾクッと怖いという役柄の中の巧みな振り幅で、余人に代え難い存在感を示している。特に登場時のインパクトは絶大で、ミュージカル好きなら爆笑間違いなしの場面となっているから乞うご期待!他にもひょっとしたら作品のキーパーソン?の岡千絵はもちろん、真瀬はるか、中村百花をはじめとした周りを固めるメンバーも充実。人っていいな、友情や愛ってやっぱりキラキラして素敵だな、と素直に感じることのできる、令和元年を締めくくるクリスマスシーズンに相応しいチャーミングな作品に仕上がった。

初日を控えた通し舞台稽古を前に囲み取材が行われ、作・作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞、作曲の斉藤和義、演出の岸谷五朗、キャストを代表して屋良朝幸と海宝直人が、囲み取材で公演への抱負を語った。

【囲み取材】

──岸谷さんそのままもう出られそうですね!

屋良 気づいたら出て来そうですよね!

──岸谷さん出ていないんですか?衣装だと思っていました!

岸谷 出ていないんですよ!

海宝 役者に負けてない!

──本当にゴージャスなメンバーですね!

屋良 そうですね!(岸谷)五朗さん(森)雪之丞さんとは一緒にやってきていましたが、今、隣に斉藤和義さんがいる現実がちょっとよくわからない(笑)。一緒に並べるものなのか~と思って。

岸谷 なんでいるんだろうと!

屋良 本当に!

──こういう会見は斉藤さん初めてですよね!

斉藤 映画なんかで何度かありましたけれど、ミュージカルでは初めてです。

──どんな感じがしますか?

屋良 まさか(斉藤)和義さんが書いてくださる音楽を歌えるということは、想像もつかなかったですからすごく嬉しいです。

──最初はテーマ曲だけということだったと小耳に挟みましたが。

 いえ、そういうことではなくて、なるべくたくさんとお願いしていたのですが、まずテーマ曲でどんな感じかなと思ったら、本当に素晴らしい曲を書いてくれたので、あとは時間が許す限りというお願いに。

斉藤 お待たせしてしまったのですが。

 最後は週に1曲くらいバンバンバンと来て、凄かったです。

──結果9曲ということに?

斉藤 そうです。

──お稽古も見られたとのことですが、ご自分の曲がミュージカルになって。

斉藤 何か不思議でしたね。家でちまちま作ったものが、こんな風に歌って踊ってわーっとなっていて(笑)。

屋良 和義さんが来てくださった時には、結構皆和義さんのリアクションを気にしてました。どうなのかな?と思って見ていたのですが、わりと無表情で(笑)。

 一番前の席だったからね。

斉藤 稽古場の審査員席みたいな(爆笑)。

岸谷 審査員席か!(笑)

斉藤 (目の前を示して)ここまでくるから、どこを見ていいか……

屋良 距離がめちゃめちゃ近いから。

斉藤 そう、どうして良いかわからなかった(笑)。でも楽しかったですよ。

──実際に屋良さんの歌っている姿はいかがでしたか?

斉藤 歌っているのもですし、台詞も動きも、わーっていう感じでした。すごい!と思って。楽しみだなと思いましたね。

屋良 ありがとうございます。

──演出家の岸谷さんとしては、この顔触れでやると言うのは演出のし甲斐があったのでは?

岸谷 本当です!稽古場で素晴らしい一ヶ月半を過ごして、キュートな新作がまたひとつ出来上がったという印象です。

──カンパニーの皆さんとは?

岸谷 雪之丞さんとは毎晩飲んでいるんですけど(笑)。屋良っちという舞台俳優は本当に素晴らしくて、全てをできて、全てを備えている、勉強してきた力を持った実力派なので、何の役を渡しても安心です。

──今回はロカビリー歌手ということですが。

岸谷 カッコ良かったです!

──森さんからご覧になった屋良さんの成長は?

 ちょっと台詞が長いから切ろうか?と言っていたところも、屋良君が良すぎてこのまま残そうと。長い台詞もあるけどカッコ良くて、気持ちがちゃんと乗り移ると言うのが素晴らしいです。

──1年に何本も舞台をやっていて、その度に役を変えるのは大変ではないですか?

屋良 でもずっとそこで生きてきましたから、そこが大変と言うよりも、今回の舞台に関しては五朗さんと雪之丞さんに(前回タッグを組んだ『SONG WRITERS』から)三年半の間でどう成長したかを見せたくて。僕の中では『SONG WRITERS』という作品が衝撃的で、色々なものを頂けたんですよ。だから今回それ以上のものをと、家にいる段階からすごく練習して。中でも今まで僕は色々な作品をやってきて思ったことがなかったという感情がひとつあって、もちろん仕上がった中で早くお客様に見せたいなというのはあるのですが、初めて稽古が終わって欲しくないと思いました。それくらい稽古場が楽し過ぎて、稽古の最終日には「今日で終わっちゃうんだ」と一人ちょっと寂しくなっていました。こんなに稽古したいなと思えるのって、なかなかなかないので、そう思わせて頂けたのは嬉しかったです。

──どんな部分でそう感じたのですか?

屋良 やっぱり五朗さんって作って壊して、作って壊してというやり方なのですが、その中でも自分が考えてきたこともちゃんと受け入れてくれて「じゃあこうしよう!」というディスカッションがあるんです。それで自分にはない引き出しを付け加えてくださったり、五朗さん要素の笑いもたくさんあるので、毎日笑ってたよね?

海宝 そうですね!本当に楽しかったです。

屋良 最後の通し稽古までも皆で闘っているっていうのが、もっと闘いたい!と思わせてくれて。それが本当に楽しかったですね。

──それをいよいよ披露していく訳で、今度はお客様が楽しめるのですね。

屋良 そうですね。ですから本番に入っても日々成長だと思っているし、千秋楽までどんな変化が出てくるのかがすごく楽しみです。

──では、本番でもまたディスカッションを繰り返して変えていったりなども?

岸谷 もちろんです!本番中もどんどん変わっていきますので。

──展開も早いのですか?

岸谷 そうですね。芝居の展開も早いですし、楽曲数が本当に多いですから。また、海宝直人も色々な作品に出ているのを観ていて、一緒にものを作りたかった人間ですが、斉藤和義の曲が夜中の2時とか3時にあがってくる訳ですよ(笑)。でまた、雪さん(森)がすぐ感想をくれるんですけど(笑)斉藤和義ですから、一人でギター1本で歌っているその楽曲の魅力がものすごいんです。例えば「ちょうちょ」を歌っていても成立するくらい(爆笑)いや、例えばね!(笑)それくらい斉藤和義の世界が凄いんです。そうすると普通これは稽古場で違う俳優たちが歌った時にまずガッカリするはずなんです。斉藤和義が強すぎるから。ところが直人が初めて稽古場で歌った時に泣きました。プラス屋良っちとの演技が入って海宝なりの歌をバッと立ち稽古でやった時に「こいつら只者じゃないな」と思いました。ミュージカルを愛してきた男たちだなと。その辺も是非楽しみにして頂いて。これを斉藤和義がこうやって歌っていたんだな…が想像できたりもするので。

 女の子の歌もあるからね。

岸谷 そうですね。

 女の子の言葉で歌っていてるところも、サマになって。

岸谷 だって「ちょうちょ」を歌っていてもね!(爆笑)。

──海宝さんはその点いかがでしたか?

海宝 最初にデモを頂いた時に、この斉藤さんの世界観を自分が歌うということの想像がつかなくて!これをどうやってミュージカルの中に、お芝居に落とし込んで歌っていくかを、出演者の昆(夏美)ちゃんとも話したのですが、僕は今回は演劇と音楽とでどんな魅力を目指して行くかを、歌唱指導の福井小百合さんとも色々話して作っていきました。ですから、従来のミュージカルの曲とはまた違う楽しみ方もできるのではないかなと思います。

──歌い方を変えたりもしているのですか?

海宝 そうなんですよ。小百合さんとも話しながら「もう少しここはミュージカル寄りではなくて、アーティスティックに歌っていいんじゃない?」ですとか「ここはミュージカルでいいかも」というやりとりをたくさんして「それはちょっとミュージカルっぽいんじゃない?」というような話も(笑)。

屋良 ミュージカルなんですけどね(笑)。

海宝 そうそう(笑)そういうのもすごく新鮮で楽しい稽古でした。

──でもそれは大変でしたね!

海宝 やり甲斐のある稽古でした。

──屋良さんは歌については?

屋良 僕も和義さんのデモをもらった時に、男が惚れる歌い方じゃないですか。今まで僕が歌ってきた音楽とは本当に真逆だし、ロカビリーっていうのもこれまでなかったですから、やはりすごく聞きました。和義さんの良さをどう盗んで、それをどう腑に落とすか。そっくりそのままは歌えないので、自分らしく行くにはどうしたらいいのか?を一番悩みましたね。

──また、ダンスの方は?

屋良 ダンスもあります。

岸谷 屋良っち、ヤバいダンスしますよ!

屋良 僕の好きなストリートダンスというものは、この作品の時代にはないんですけれども、敢えてそこをクロスオーバーさせて、作品の中に組み込んでくれる五朗さんの懐の広さが出ていたりもするので、そこは思いっきりやらせて頂いています。

──見どころは尽きませんね!

屋良 見どころしかないですね!

──では改めましてファンの皆さんにメッセージをお願いします。

屋良 本当に皆さんにたくさんのご期待を頂いていると思いますが、確実にその期待を遥かに上回る作品ができたと思っていますので、楽しんで、曲を覚えて一緒に参加してくれても良い作品だと思いますので、是非劇場に遊びに来てください!お待ちしています!

尚、クリスマスシーズンにピッタリの愛を描いた作品に相応しく、『ロカビリー☆ジャック』クリスマスウィークの開催も決定!12月19日、20日、24日、25日の公演回、合計6公演で、通常のカーテンコールに加えてクリスマスver.スペシャルカーテンコールが実施される。更にクリスマス本番の24日、25日の3公演限定で、非売品の特製マスキングテープの来場者全員プレゼントも用意されていて、令和元年という記念すべきクリスマスに、舞台から贈られる貴重なクリスマスプレゼントとなりそうだ。

【公演情報】
『ロカビリー☆ジャック』
作・作詞・楽曲プロデュース◇森雪之丞
作曲◇斉藤和義 さかいゆう 福田裕彦
演出◇岸谷五朗
出演◇屋良朝幸 海宝直人 昆夏美 青柳塁斗 岡千絵/平野綾 吉野圭吾 他
●12/5~30◎日比谷シアタークリエ
〈料金〉11,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半~17時半)
〈公式ホームページ〉http://www.tohostage.com/rockabilly_jack/

 

【構成・文・撮影/橘涼香】

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