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シス・カンパニー公演『ミネオラ・ツインズ』間もなく開幕!  大原櫻子インタビュー

藤田俊太郎が演出を手掛け、大原櫻子・八嶋智人・小泉今日子らが出演するシス・カンパニー公演、『ミネオラ・ツインズ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~』が、1月7日~31日、東京・スパイラルホールで上演される。

本作はタイトルに『ミネオラ・ツインズ』とあるように、ニューヨーク郊外の小さな町ミネオラで生まれ育った一卵性双生児の姉妹、マーナとマイラが主人公となっている。背景となる時代は、ベトナム戦争の泥沼にあえぐニクソン政権下の1969年から始まり、パパ・ブッシュ政権下の1989年へ移って行く。その中でジェンダー、セクシュアリティ、人種、格差などの価値観も、時代とともに大きく変化する。

そんな激動の時代に真逆の道を歩んできた双子の姉妹。2人を通して、女性たちが何を考え、何を体験してきたかを、痛烈な風刺を込めて描いたダークコメディがこの作品だ。

作者ポーラ・ヴォーゲルは、この運命の双生児姉妹を、1人の女優がカツラと衣装を目まぐるしく変えながら演じ分けるよう、戯曲冒頭に指定している。そして、「常にホルモンの影響による興奮状態で演じて欲しい」とも書いている。

まさに無理難題の詰まったこの作品で、双生児姉妹を演じるのは大原櫻子。ミュージカルでは美声で酔わせる彼女が、気鋭の演出家・藤田俊太郎のもと、八嶋智人と小泉今日子という力強い共演者を得て、ストレートプレイに正面から挑む。そんな大原櫻子に、本作への抱負を語ってもらった。

作者ポーラ・ヴォーゲルが伝えようとしたメッセージ

──大原さんは双生児の姉妹役で、ほぼ出ずっぱりで二役を演じ分けます。この大変な役をよく引き受けましたね。

まず作品の内容がとても面白かったことと、役者としてはこれほど演じ甲斐のある役はめったにないし、勝負したい作品だと感じました。それにこの作品はアメリカの政治情勢が背景になっていますが、ジェンダーや差別の問題などは今の日本にも遠い話ではないし、この作品の中で作者のポーラ・ヴォーゲルが伝えようとしたメッセージを、観てくださる方にぜひ届けたいと思いました。

──双子のマーナ役とマイラ役ですから、単純に考えても2人分の台詞です。

台詞は膨大です(笑)。台本をいただいてから、少しずつでも覚えようと思って、稽古が始まる何か月も前から身体に入れようとしていました。

──マーナとマイラは、まったく対照的な性格ですね。

保守的なマーナとリベラル派のマイラという形で、当時のアメリカ社会をそのまま反映しているのが面白いですね。とくにマイラは10代の頃はいろいろな男性と次々に付き合っていたのが、大人になったら性的嗜好も変わってきたり…。本当に自由な生き方でびっくりします。

──一方、典型的なアメリカの良き主婦タイプに見えたマーナも、過激な保守派に変貌するという大きな変化があります。

そのあたりもとても劇的だと思います。一見マイラのほうが過激で何をするかわからない人に見えていたけれど、実は良い子のように見えていたマーナのほうが過激で、政治の世界で狂気みたいなものを表に出して、大きく変わっていく。たぶん人間のそういう裏表のような部分に、作者のポーラ・ヴォーゲルがこの作品を書いた意味みたいなものがあるのかなと思っています。

藤田さんが演出する作品では俳優が生き生きと素敵に出ている

──藤田俊太郎さんの演出は初めてだそうですね。どんな感じの演出ですか?

稽古に入る前に、台本の読み合わせをさせていただき、そのとき初めてご一緒したのですが、まず役者に考えさせてくださる方だなと。私が「これはどういう意味なのでしょうか?」と質問をすると、「大原さんはどう思いますか?」と。そこで「私はこう考えます」と答える。そういう形で話し合いながら作っていかれる方で、俳優からいろいろ引き出してくださる演出家さんだと思います。

──大原さんが出演したミュージカル『Fun Home ファン・ホーム  ある家族の悲喜劇』(2018年)の演出を手がけた小川絵梨子さんも、俳優との対話で作る演出家と言われています。

そうですね。絵梨子さんも俳優とよくコミュニケーションされる方です。絵梨子さんも藤田さんも、海外で演劇を勉強されたり、作品を作ったりという経験のある方たちなので、お芝居の作り方も論理的ですし、共通のところがあると思います。

──藤田さんの演出した舞台は何か観ていますか?

いくつか拝見しています。いつも感じるのは、出演している俳優さんが皆さん素敵に出ていらっしゃるなと。それは藤田さんがその人の中にある考えとか、生き生きとした部分をうまく引き出していらっしゃるからだと思うんです。だから作りものではない、生きた人間がそこにいる。英国で作って昨年日本でも上演されたミュージカル『VIOLET』を観劇したときなど、「私もこれに出たい!」と思いながら拝見していました。

──共演の小泉今日子さんとも初めてですね。

初めてです。小泉さんはマーナの婚約者のジムという男性の役と、マイラの恋人のサラという女性役の二役で、すごく面白いキャスティングですよね。

──男女の二役を演じ分けるのはなかなか大変でしょうね。

それが、藤田さんは本読みで、「男性を演じるからといって無理に声を低くしなくていい」とおっしゃっていました。そして「外側から作り込まなくても男性とわかるようにしたい」と。小泉さんの演技力でそのままでも素敵な男性になると思います。

──八嶋智人さんとも初共演ですね。八嶋さんはマーナの息子ケニーと、マイラの息子ベンの二役です。

ケニーとベンは面白いことに、青年になるとそれぞれ自分の母親とは反対の思想になっていって、母親と対立するんです。そういうちょっと皮肉なところが、ポーラ・ヴォーゲルならではのブラックコメディだなと思います。

──この作品は全部で5人という少人数のカンパニーですが、これまでに少人数での舞台は?

ここまで少ないのは初めてですね。この作品は大変じゃない人は1人もいないので、みんなで話し合いながら構築していくことが大事だと思っていますし、少人数の良さを生かして沢山コミュニケーションをとりながら、みんなで作りあげた世界観をお見せできると思います。

この作品はコメディですから、笑って、考えて、楽しんでください

──歌の世界やミュージカルでは実績のある大原さんですが、今回はストレートプレイでまったく歌う場面がない舞台ですね。

こういうお芝居らしい作品に出たかったのでとても嬉しいです。

──大原さんの歌は大きな武器だと思いますが、歌を歌えることでよかったなと思う部分は?

ミュージカルの中で歌を歌うことは、たぶんそのときの感情の拡大だと思うんです。それによって、より分かりやすく伝わるのを感じます。それに音楽は台詞に感情を乗せてくれますし、とくに高音でパーンと張り上げる楽曲などは、自分が歌えているかどうかは別にして、「あ、拡大しやすいな」と思います。そういうふうに表現の方法が広がるのに役立っているなと思います。

──この作品との出会いを経て、表現者として大原さんがこれから目指すものは?

作者のポーラ・ヴォーゲルさんが、「この芝居は常にホルモンの影響による興奮状態で演じて欲しい」と書いていらっしゃるのですが、それは先ほど話に出た「歌で拡大されているもの」が常にある状態かなと思っているんです。でも、だからこそ逆に、演じる中で抜くことが大事なのではないかと。どこで力を抜くかを考えることが必要だと思っています。以前観た舞台で、なぜか物語やテーマが入ってこなくて、どうしてなのかな?と思ったことがあって。結局それは出演者の方たちのエネルギーがパンパンで、観ていてお腹がいっぱいになってしまったからだったんです。そのとき、観ている方のためにもうまく力を抜く部分が必要だなと思いました。この作品も初めて台本を読んだとき、「これはずっと力が入りそうだな」と感じたんです。そして、それでは伝えたいものがちゃんと伝わらないかもしれないと。ある程度抜くからこそ伝わるシーンもあるので、そのバランスをちゃんと考えながら演じようと思いました。たぶんそれは、これから私が歌やお芝居をやっていくうえで、すごく大事なことだろうなと思っています。

──お芝居が好きとずっと言ってきた大原さんにとって、この作品はまた1つ大きな経験になりそうですね。

すごく素敵な機会をいただいた嬉しさと同時に、正直怖さもあります。内容がちょっと複雑なのでちゃんと届けられるかなと。私は難しいお芝居でも、お客様にわからないと思わせてしまうのは違うなと思っているんです。そのためには自分が作品をきちんと理解することが大事だと思っていて。私自身、あるお芝居を観に行って、意味がよくわからないまま帰ってきたことがあるのですが、あとで出演者の人と話をする機会があって、その人もよくわからないまま演じていたと聞いて納得したんです。出演者が理解したうえで演じていれば絶対に観ている人には届くと、私は思っているので、この作品もちゃんと理解したうえでお客様に届けたいと思っています。

──最後に改めて作品のアピールをいただけますか。

私自身にとってきっと大切な作品になると思っています。もしかしたらアメリカの50年代とか政治の話などは、若い世代の方たちにはあまり馴染みがないかもしれませんが、でもそこに出てくるジェンダーの話とか暴力とか愛とか差別などには、きっと何かを感じていただけると思います。若い世代の方にも、主人公と同じくらいの世代の方にも、ぜひ観ていただければ嬉しいです。そして、この作品はコメディですから、笑って、考えて、楽しんでいただければといいなと思っています。

おおはらさくらこ○東京都出身。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで 5,000人の中から抜擢され、映画&CD同時デビューを果たす。以降、歌手活動と並行して、俳優として数々のテレビドラマや舞台へ出演。最近の主な出演作は、【舞台】『新感線☆RS『メタルマクベス』disc2 』、『怪人と探偵』、『両国花錦闘士』、【映画】『あの日のオルガン』、『犬部』。2021年10月期のドラマ『つまり好きって言いたいんだけど、』で主演。また『CONCERT TOUR2021”Which?”』も展開した。

【公演情報】
シス・カンパニー公演
『ミネオラ・ツインズ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~』
作:ポーラ・ヴォーゲル
翻訳:徐賀世子
演出:藤田俊太郎
大原櫻子・八嶋智人・小泉今日子
王下貴司  斉藤悠
●2022/1/7~31◎スパイラルホール (東京・青山)
〈料金〉10,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※開場は開演の45分前
〈お問い合わせ〉シス・カンパニー 03-5423-5906(平日11:00~19:00)
〈公式サイト〉https://www.siscompany.com/mineola/
〈公式Twitter 〉@sis_japan

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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