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スピラを救い、物語と向き合う、9時間のロングジャーニー! 新作歌舞伎『FFX』レポート

人気ゲーム『FINAL FANTASY(FF)』シリーズのなかで、世界累計出荷・DL数2,110万本以上という記録をもつ第10弾『FFX』は、今なおファンの多いゲームの金字塔だ。この名作が、新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』として20年ぶりによみがえり、3月4日からIHIステージアラウンド東京(豊洲)で上演されている(4月12日まで)。

出演者は、企画・演出でもある尾上菊之助をはじめ、中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、中村米吉、中村橋之助、尾上丑之助、上村吉太朗、中村芝のぶ、そして坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六に、声の出演として尾上菊五郎も参加し、バラエティ豊かで豪華なメンバーが揃った。

脚本は、NHKの連続テレビ小説『おちょやん』や『下町ロケット』などの人気ドラマを手掛けた八津弘幸、菊之助との共同演出は『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』や大規模なライブショーで手腕を発揮している金谷かほりと、頼もしいスタッフが集まった。

【あらすじ】
(前編)
人間だけでなく、様々な亜人種の住む世界・スピラ。スピラの人々は、千年前に突如出現した魔物「シン」の存在、死の恐怖にたえず怯えていた。訳あってスピラに迷い込んだ少年ティーダ(尾上菊之助)は、シンを倒す”究極の力”を手に入れる旅をする新米召喚士の少女ユウナ(中村米吉)と出会う。ユウナには、ガードと呼ばれる仲間がいた。シンに弟の命を奪われたワッカ(中村橋之助)、ワッカの弟の婚約者だったルールー(中村梅枝)、ユウナを幼少から知るロンゾ族のキマリ(坂東彦三郎)、ティーダの父ジェクト(坂東彌十郎)の盟友・アーロン(中村獅童)、ユウナのいとこでアルベド族の少女リュック(上村吉太朗)。いくつもの戦いや出会いを経て、彼らはシンをめぐる真実に近づいていく。その行く手を阻むのは、グアド族の族長で、スピラで広く信仰されるエボン教の幹部だが、歪んだ思考を持つシーモア(尾上松也)。ティーダたちとシーモアの闘いの行方は…。

(後編)
シーモアの恐ろしい野望がティーダたちを追い詰める。自分の目的を果たすためにユウナを誘拐し、政略結婚を企てるシーモア。ティーダたちは反撃に出るが、まんまと反逆者の汚名を着せられ、旅を続けられなくなってしまった。絶望するユウナの姿に、彼女を守り抜くと決意するティーダ。出会った時から惹かれ合っていた2人は、胸に秘めた恋心を通わせるのだった。やがて一行はシンを倒す旅を再開するが、さらなる衝撃が彼らを待っていた。シンの正体とは、ユウナの運命とは、そしてティーダを待ち受ける真実とは……。

筆者が観劇(前編・後編の通し)した日は、開幕から間もない3月初旬。ゲーム『FFX』と続編『FF X-2』を発売当時(インターナショナル版とリマスター版は未プレイ)にプレイして一通りクリアし、キャラクターではアーロンとジェクトを推し、リュック使いだったライターの目線からレポートする。

劇場内の客席に入ると、会場全体の半分近くあろうかという巨大スクリーンが目に飛び込んでくる。映し出されたのは、水面に浮かぶ、ゲーム『FF』のキャラクターデザイン・野村哲也が今回のために描き下ろしたキャラクターイラスト。この画面は撮影OKなので、開幕前や幕間には多くの人がスクリーン(舞台)に近寄って、スマホで撮っていた。ちなみに、上演中以外にスクリーンに映し出される画像はもう1種類ある。

独特の空気が漂うなか、歌舞伎ではおなじみのチョン!という柝(き)が入ると、「オオアカ屋!」の声とともに、23代目オオアカ屋として中村萬太郎が登場。歌舞伎らしい「口上」(挨拶)と初心者向けの歌舞伎のレクチャーを、客席の緊張をほぐしながら進めていく。国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で、おもに学生を相手に解説を勤めてきた経験がよくいきている。萬太郎は、オオアカ屋とルッツの2役。個人的にはもっと物語に絡む役も観たかったが、それだけ“語り部”オオアカ屋が責任重大ということだろう(後編では「口上」以外にも登場するのでお楽しみに)。

オオアカ屋と客席のやりとりによると、この日は8割がたが歌舞伎は初めてという観客で、『FFX』を知らない人もちらほらいた(筆者の隣は『FF』自体を知らない歌舞伎歴数十年の方だった)。『FFX』を入口にして歌舞伎へ来た人が、今日だけでもこれだけいることに、演者でもないのに緊張してくる。この方々に歌舞伎は受け入れてもらえるだろうか。これは『ワンピース』の時も『風の谷のナウシカ』の時も『NARUTO―ナルト―』の時も、客席で勝手に感じていたことである。

いよいよ本編スタート。スクリーンには、名曲「ザナルカンドにて」とともに、ゲームのオープニング画面が映し出される。切ないメロディが和楽器のテイストとぴったり。やがて菊之助の声で、ティーダの“あの台詞”が聞こえると、『FFX』をプレイした当時の記憶がどんどん蘇ってきた。これをはじめ、劇中では実際のゲーム映像やキャラクターの台詞が随所に登場する。製作発表で菊之助が、みんなが思い浮かべるような見どころは網羅されていると思うと話していたが、その看板には偽りなしだ。

尾上菊之助

ゲームではムービーの、冒頭のブリッツボールの試合は、客席を使った歌舞伎らしい演出。キャラクターでまず登場するのは、菊之助が演じる主人公のティーダ。『白浪五人男』の「稲瀬川勢揃い」の場面を思わせるような、歌舞伎味全開で、威勢のいい名乗りをあげて現れる。もしや最後までこの調子でいくのか…?と一抹の不安がよぎるが、基本的な会話は他のメインキャラクターも含め、ゲームと同じ現代語の台詞回し、というかゲームに即した台詞で、オリジナルのキャラクターらしい台詞の間(ま)や抑揚、話し方も尊重されていると感じたので、原作ファンはご安心ください。メインキャラクターには全員名乗るくだりがあるので、どんな自己紹介になるかお楽しみに。

拵え(衣裳・鬘)や小道具も、歌舞伎らしさを守りつつ原作の要素をしっかり残していて、アーロンの腰にぶら下がる酒瓶とルールーの懐のモーグリを見た時は、心の中で拍手した。モーグリは在庫があれば買えるので、お好きな方は連れて帰れます。

ついでに、台詞回しだけでなく演出面も、観る前は歌舞伎らしさ(様式やテイストなど)をどこまで加減(調整)するのかと想像していたが、歌舞伎でやる場面はとことん歌舞伎らしく、現代劇のように演じる場面はそのようにと、潔く住み分けていたと感じた。

バトルシーンやブリッツの場面はほぼ立廻りで表現。モンスターの姿や攻撃(オーバードライブも含め)を、歌舞伎の演出(着ぐるみなど)と映像、照明や音響などの舞台効果を融合させて見せる。この演出は場面によっては限界も感じたが、シーモアやユウナレスカ、そして「シン」などとの重要なバトルは、基本的に歌舞伎の殺陣に徹し、キャラクターの登場シーンとともに、歌舞伎の場面として際立っていた。背景にゲームの映像をかなり活用したことで、実際の舞台装置が見える範囲はかなり狭い場面もあった。映像と、実体をもつ舞台との繋ぎ目をどこまで自然に馴染ませられるかは、課題の1つかもしれない。

尾上松也 尾上菊之助

菊之助のティーダは、17歳の少年をどう演じるか気になるところだったが、ユウナに惚れるなと釘をさされて「約束できないよ」と軽口を叩いたり、ヘラヘラしているようで冷静に物事を見ていたり、強がっていてもアーロンに甘えていたり、ユウナにやっぱり恋をしたり、等身大の若者だったし、嘘がつけないところ、感情豊かなところ、悩むけど諦めないところ、ジェクトに対するコンプレックスや複雑な感情を持て余しているところなど、みんなが知っているティーダがちゃんとそこにいた。

ティーダの幼少期を演じるのは、菊之助の息子、丑之助。同じ場面に登場すると、やはりどこかリンクしている感じがする。丑之助は祈り子との2役。祈り子はゲームより早めの出番。幼いながら、物語の上で重要な長台詞を言い、立廻りもこなす堂々たる役者ぶりである。

尾上松也 中村獅童

獅童のアーロンは、ゲームより少し穏やかな印象を受けた。ジェクトとブラスカの思いを背負って、ティーダを守り、ユウナを支え、仲間を導く姿はゲームそのままだが、いぶし銀の伝説のガードというより、すべてを受け止める懐の深さ、わかりにくいが確かな優しさがあり、何よりアーロンも自分の物語と向き合う1人であることを感じた。それにしても太刀がデカい。ティーダの剣も相当だが、背丈にも及ぶほど長い太刀を操るのは本当に大変だと思う。あの一撃必殺の重量感を立廻りでぜひ感じてほしい。

松也のシーモアは、歌舞伎でいえば「国崩し」。頭脳明晰さ、冷酷さ、慇懃無礼さ、執拗さ、圧倒的な強さ、ハマり役である。原作では断片的な回想である父ジスカルや母とのやりとりが独立した場面として作られたことで、シーモアの「死」に対する歪んだ思考や執着がなぜ生まれたのか、利発な少年が闇に落ちた経緯が浮き彫りになり、シーモアの悲しみ、恨み、狂気があぶりだされた。シーモア戦は作品屈指の大立廻りで、バトルを追って変わる衣裳や化粧も含めて見ごたえ十分。ティーダvsシーモア、ユウナvsシーモア、アーロンvsシーモア、ジスカルvsシーモア…舞台版でもシーモアは要の役どころで、松也が大任を見事に果たしている。

中村梅枝 上村吉太朗 中村獅童 中村橋之助 坂東彦三郎

梅枝のルールーは、原作より姉さん女房という雰囲気があった。濃厚ながら嫌らしさのない色気、人や物事への洞察力、塩対応のようでいて隠せない面倒見の良さなどは、梅枝ルールーらしさかもしれない。ティーダと出会い、旅の途中で、亡き婚約者のことや挫折した旅などの苦い過去とゆっくり向き合いながら、ルールー自身も前向きさを取り戻していく様子が表れていた。

米吉のユウナは、可愛くて良い子で、誰もが応援したくなるヒロインぶり。おっとりした話し方でも芯を感じさせるところや、話す時に体をゆらす、首をかしげるしぐさなど、ゲームのユウナそのままである。父ブラスカへの思慕や敬愛も滲み出ている。事前に動画を見てはいたが、キーリカでの「異界送り」は、凛とした鈴の音や舞台効果と相まって実に幻想的で荘厳な場面だった(ただ、波に飲まれて壊滅する村の光景は少し辛かった)。ティーダと出会い、惹かれ合い、ともに成長していく様子がほほえましい。「素敵だね」の曲に乗せて、2人が連れ舞いで恋心を表現する「マカラーニャの泉」の場面は、歌舞伎らしいしっとりした恋模様となっていた。

中村米吉

橋之助のワッカは、若干小柄ではあるが、がっしりした骨太感がある(衣裳の効果もあるかも)。アーロンとはまた違った優しさ、裏表のなさ、正義感の強さ、ルールーの尻に敷かれているところ、間違いを素直に認めて謝るところなど、ワッカのスポーツマンシップが炸裂していた。梅枝のルールーと名コンビで、苦しい場面で息抜きになるような存在感があった。

リュックは、ゲームの『FFX』と同い年の吉太朗。台詞の歯切れなどに成長の余地があるが、元気いっぱいで、いつも仲間のために動き回り、思いやりがあって、とにかくユウナが大事!という気持ちが溢れていた。アルベド語が聞けたこと、バトルに絡んで“調合”という言葉が出たのは嬉しかった(でも、あの場面で使うならポーションでなくぜひエリクサーを…)。

ユウナレスカは中村芝のぶ。もともと実力派だが、『風の谷のナウシカ』でナウシカの母との2役で演じた庭の主で、新たな魅力を開花させた人だ。今回もティーダの母とユウナレスカの2役。夫に再会できぬまま世を去った母親と、悠久の時を経て人智を超える存在となった大召喚士を演じ分け、特に後者は短い出番でも異彩を放った。ゲームでの長いユウナレスカ戦を総括したような拵えに、スタッフの苦心がしのばれる。ユウナレスカ戦で、メンバーがそれぞれ肚を括っていく名シーンも健在。そして舞台版ならではだと思うが、原作にはないアーロンとユウナレスカの応酬が加えられ、この“再戦”がアーロンにとって非常に大きな意味を持つことが強調されていた(インターナショナル版やリマスター版の変更だったら申し訳ありません)。

彦三郎のキマリは、頭の先からつま先までキマリ。ごく自然な形で歌舞伎の隈取を化粧に活かし、スーツアクターもびっくりの衣裳(着ぐるみ)を着て、わしわし動き、長い槍を振り回し、全力でユウナを守る姿が頼もしい。キマリが自分から口を開くことはわずかだが、だからこそあの重低音ボイスで放たれる言葉は重たい。ガガゼト山での対決では、高潔なロンゾの戦士ぶりが光った。

錦之助のブラスカは、決して多くはない出番のなかで、アルベド族と結婚したと謗られても風に柳で受け流し、スピラの平和のため身を捧げた清廉な人柄、品のある佇まい、慈愛、折れない信念などをしっかり表現した。ユウナが尊敬してやまない大好きな父であり、荒くれ者と頑固者との苦しい旅を経てシンを倒した大召喚士であるブラスカの、少し物憂げでやわらかな微笑みが目に残る。

彌十郎のジェクトは、本当はティーダが可愛くて仕方がないのに、シャイで不器用なあまり正反対な態度をとり、息子とけんか別れになった父親を、柄をいかして大胆かつチャーミングに演じた。荒っぽいが、悪意がなく憎めないところがこの人らしさ。ゲームでは、ジェクトも基本的にはジスカルのように回想やスフィア(記録媒体)映像で現れる。舞台版でも、物語上で重要な一部のスフィアは登場し、映像はもちろん演者扮するキャラクターたちが再現しているので、こちらも乞うご期待。ティーダとの“最終対決”は、原作とは少し違う形だが、これはこれで「そう来たか…!」と膝を打った。ティーダとジェクトの物語をミニマルな立廻りで表現し、締めくくる、印象的な場面となった。

歌六のシドは“オヤジ”や“親分”のような言葉がぴったりの職人気質で、豪快で肝の据わった、情のあつい男。あの朗々たる声で啖呵を切って若い者とやり合う姿は、年はとっても現役感に満ちている。迫害されてきたアルベド族の悔しさ、娘のリュックや姪のユウナを心から案じる気持ち、古の機械への畏敬、エボンへの感情などを抱えながら、最終的にはユウナたちの心強い味方となってくれるスケールの大きさは、歌六ならでは。

松也シーモアをアシストしたのが、超歌舞伎などでも活躍中の澤村國矢のジスカル。エボンの老師でありグアドの族長たる風格、厳格さ、息子の将来を憂うからこその行動が招いた悲劇など、この人ならではの説得力があった。ジスカル以外にマイカ老師なども勤める。

ほかにも、ガッタとケルクの尾上菊史郎、シーモアの母の中村蝶紫、キノックの中村橋吾、ズークの市川蔦之助、ビランの中村吉兵衛、シェリンダの上村折乃助、トワメルの中村蝶八郎(100点のトワメルだと思う)、ゼイオンの尾上菊次、エンケの中村吉二郎、アニキの坂東彌風など、メインではないキャラクターたちも魅力的だった。尾上菊五郎のエボン=ジュは声のみの出演だが、真の意味でスピラを救うための最大の障壁として立ちはだかる大きさを感じさせた。

『FF』シリーズに欠かせない召喚獣も登場。シンと同じくゲーム映像が使われるほか、終盤ではまさに歌舞伎!という出で立ちで姿を見せてくれる。ユウナに力を貸してくれたシヴァ(菊史郎)、ヴァルファーレ(國矢)、ヨウジンボウwithダイゴロウ(橋吾)、イクシオン(蔦之助)、イフリート(吉兵衛)、バハムート(菊次)など、歌舞伎のフィルターを通すと召喚獣がどのように表現されるかにも注目してほしい。

好きなコンテンツが未知のコンテンツと出会う時、ファンが抱くのは、ともすると期待より不安が大きいかもしれない。愛着や思い入れがあるものを、誰しも傷つけられたくないからだ。歌舞伎初心者にとっても、『FF(X)』やゲームの初心者にとっても、新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』という挑戦は、当初はそういうものの1つだったかもしれないが、少なくとも本作が、歌舞伎も『FFX』も本気で愛した上でのプロダクションであることは観客に伝わったのではないだろうか。

歌舞伎として観ると、これにすべてが詰まっているとは言わないが、「口上」での幕開きから、見得や台詞回し、立廻り、ぶっ返りなどの演出、衣裳や鬘、音楽、舞踊など、歌舞伎を構成する主要なエッセンスやグルーヴ感、歌舞伎俳優の演技術や体の使い方など、「歌舞伎って、こういうものなんだ」という感触が、初めて観る人でも十分掴めるものになっていると思う。この初歌舞伎で歌舞伎に興味を持ってくれた人は、気になった俳優が出るからでも、作品の話が面白そうだからでも、スケジュールが合うからでもいいし、どの劇場でもどのランクの席でもいいので、ぜひ他の歌舞伎公演にも足を運んでほしい。そこに、もしかしたら一生の推しがいるかもしれない。推しは俳優かもしれないし、作者かもしれないし、歌舞伎という芸能そのものかもしれない。何に落ちるかはその時までわからないし、ハマらなかったらさよならすればいいのだ。本作で推しに出会えた人には、心からおめでとうとお伝えしたい。

『FFX』として観ると、あの大長編から、絶対に不可欠な部分や素晴らしい見どころをピックアップして(休憩含め)9時間に収めるために、どれだけのエピソードを削ったか。想像を絶する苦労だったろう。初めての人は、ゲーム自体への馴染みも含めて、登場人物の多さや独自の世界観、設定、用語などに戸惑ったかもしれない。ただ、細かいことを抜きに『FFX』の物語に素直に飛び込んで、そこで紡がれている人々の思いや願い、迷い、苦しみ、愛憎、生き様、過去や未来との向き合い方、苦渋の決断などに触れた時、ほかの数多の物語や自分自身の人生と、完全に同じでなくても通底するものを感じたのではなかろうか。彼らの物語のなかに、自分の物語のカケラを見つけた瞬間があったのではなかろうか。

『FFX』の世界では、ティーダやユウナをはじめ、パーティーの全員がそれぞれの過去や葛藤、困難を抱えながら、シンを倒すための旅路をゆき、道中で出会う存在もまた、それぞれの事情を抱えている。旅路の果てに待つものが、たとえ決して明るいだけの未来でなくても、誰も歩みを止めることはない。前編後編を通して観れば、ほぼ1日がかり。ティーダたちにとっても、観客にとっても、間違いなく長丁場である。彼らの物語がどんな結末を迎えるのか、想像し、あるいは思い出しながら、ぜひ客席で見届けてほしい。ユウナにガードがいるように、我々にも安心して背中を任せられる仲間(シートクッション)がいるのだから──。

【公演情報】
木下グループpresents新作歌舞伎『ファイナルファンタジーⅩ』
主な出演者:尾上菊之助 中村獅童 尾上松也
中村梅枝 中村萬太郎 中村米吉 中村橋之助 尾上丑之助 上村吉太朗 中村芝のぶ
坂東彦三郎 中村錦之助 坂東彌十郎 中村歌六/尾上菊五郎(声の出演)
※中村歌六、中村錦之助、尾上丑之助は後編のみの出演。
●2023/3/4~4/12◎IHIステージアラウンド東京(豊洲)
※休演日:3月8日(水)、15日(水)、22日(水)、29日(水)、4月5日(水)
〈前編・後編通しチケット料金〉SS席32,000円 S席28,000円 A席24,000円 B席19,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※SS席/非売品オリジナルCGビジュアルアクリルスタンド付き、S席/オリジナルCGビジュアルポスター付き
※SS席、S席の非売品特典グッズはご観劇日当日、劇場内でのお渡しとなります。
〈前編のみ後編のみチケット料金〉SS席18,000円 S席16,000円 A席14,000円 B席11,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈公式サイト〉https://ff10-kabuki.com
〈公式Twitter〉https://twitter.com/ff10_kabuki

 

【文/内河 文 写真/引地信彦】:

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