お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

丸美屋食品ミュージカル『アニー』ゲネプロレポート

東京・新国立 中劇場にて、 4月24日~ 5月10日に上演予定だった丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、残念ながら東京都の緊急事態宣言発令の影響で、4月24日に行われた2公演のみの上演となった。

初日公演が千秋楽になるという異例の事態となり、1年越しの公演を叶えるべく励んできたキャストの心境を思うと残念という言葉では表現できない。せめてこの2公演だけでも思い切り楽しんだに違いないと願わずにいられない。

公演に先立ち、荒井美虹がアニーを演じるチーム・バケツによるマスコミ向けのゲネプロが行われたので、その模様をお伝えする。(舞台写真のアニーはすべて德山しずく)

物語の舞台は1933年のニューヨーク。世界大恐慌直後で誰もが希望を失っている中、11歳の女の子アニーは元気に毎日を過ごしている。11年前、孤児院の前に置き去りにされたというのに、いつか両親が迎えに来てくれると信じ、明るく前向きに生きている。

ある日、ふとしたことで大富豪オリバー・ウォーバックス(藤本隆宏)の秘書グレース(笠松はる)に気に入られたアニーは、クリスマス休暇の2週間をウォーバックスのもとで過ごすことに。ウォーバックスはアニーの明るさに惹かれ養女にしたいと考える。しかし本当の両親と暮らす夢を諦められないアニーの心情を察したウォーバックスは、懸賞金をかけて彼女の両親を捜すことにする。ところが、それを知った孤児院の院長ハニガン(マルシア)と弟ルースター(栗山航)、その恋人のリリー(河西智美)は、懸賞金目当てに悪だくみを始めるのだが…。

今年は新型コロナウイルス感染症対応のため、内容や演出を例年とは変更して、90分休憩なしの特別バージョンで上演されることが事前に告知されていた。従来バージョンからいくつかのシーンやミュージカルナンバーが省略されているものの、物語がコンパクトに整理されたことから、より分かりやすくなり、アニーが明るく前向きな少女というだけでなく、厳しい時代をたくましく生き抜く少女という側面がより強く垣間見れた。

そんなアニーを演じる荒井美虹は、表情豊かで細やかな演技が印象的だった。大人っぽさが随所に感じられ、冒頭でぐずるモリーをなだめるシーンでは「母の慈愛」のようなものがにじみ出ているほどだ。

そして大富豪・ウォーバックスと出会い、臆することなく対等に接する一方で、時に甘え、子どもっぽさを見せるところも上手い。またウォーバックスと心を通わせ踊るシーンでは、キレがあり、軽やかなダンスを披露。歌だけでなくダンスも伸びしろがあると将来が楽しみになった。

アニーの人生を大きく変えるウォーバックスを演じるのは藤本隆宏。2017年から同役に挑んでいるが、公演を重ねるごとにウォーバックス像に深みが増し、時折見せるユニークな姿にも磨きがかかっていた。特別バージョンである本公演では、アニーの魅力に気付く様を短時間で表現しなければならないところが一番難しかったのでは…と感じたのだが、アニーと出会って数分で距離を縮めていくところをナチュラルに表現していた。お金を稼ぐことしか考えてこなかったウォーバックスが、アニーと出会うことで、本来彼が持っていた優しさに気付いていくところは、何度見ても心が温かくなる。

ウォーバックスを秘書として支える、品があってしっかり者の女性・グレースを演じるのが笠松はる。今回が『アニー』初登場となるが、ウォーバックスを支え、時に意見をする知的な女性を好演している。アニーを幸せにしたいという思いはもちろんのこと、ウォーバックスがアニーへ抱く思いも成就させたいと願うグレースの姿を上手く表現。何よりも劇団四季で主要な役を演じてきただけあって、その美しい歌声が心地よい。

逆にアニーにいつもイライラさせられているハニガンを演じるのはマルシア。2017年に同役を演じて以来の登場となる。孤児たちの世話をする毎日にウンザリし、子どもたちをいびり酒浸りのハニガンを迫力満点に演じ、時折見せる美脚でセクシーさもアピールしている。…がその一方で、「大好きです! ハニガンさん」と心にもないことを言う子どもたちに「嘘をつくな!」と怒鳴る姿は「ひょっとしてハニガンも寂しい人なのかも…」と感じさせる哀愁がある。思わず吹き出してしまうほどの大仰な演技にマルシアのハニガン役への熱い想いが感じられた。

そして本作で、最初から最後まで悪を貫くルースター役の栗山航とその恋人・リリー役の河西智美も存在感を示している。刑務所を出たばかりなのに、懲りることなくアニーを使って悪だくみをするルースターを演じる栗山は、姉・ハニガンとリリーの間に挟まれ、どちらにもいい顔をする姿は「詐欺師」そのものだ。

河西もルースターとともに悪だくみに加担する小賢しいリリーを熱演。「ルースターはじゃまな者を消すのが得意」と残酷なせりふもサラッと言ってしまう悪女キャラクターだ。元AKB48として可愛らしいイメージのある河西の新境地を見たような気がする。

そしてハニガン、ルースター、リリーの「悪の3人組」がアニーを使って大金を手に入れようと気合を入れる息の合ったダンスシーンも健在だ。

物語の展開が従来とは異なる特別バージョンだが、名曲「Tomorrow」の歌詞でもある「明日は幸せ」に込められた想いは変わらない本作。いつの日か、この特別バージョンと再び出会えることを願いたい。

 

【コメント】
アニー役:荒井美虹
昨年、公演中止が決まった時にはがっかりしましたが、「来年はできるのでは⁉」と期待がありました。
私が出演する”チーム・バケツ”は明るく、おもしろいチームです。暗い世の中ですが、お客様にはミュージカル『アニー』を観て明るく、
元気になって、笑顔で帰ってもらいたいです!

アニー役:德山しずく
ドキドキしている半面、公演がとても楽しみです。私が出演している”チーム・モップ”は、負けず嫌いで、努力家なチームです。
昨年の分まで前向きに、一生懸命にお稽古を頑張ってきました。ミュージカル『アニー』は観ていて楽しくなる舞台です。
ぜひ劇場に観に来てください!

ウォーバックス役:藤本隆宏
昨年は、あと数シーンの稽古を残しての公演中止の決定。残念な気持ちでいっぱいでしたが、舞台に立てなかった事でわかる、「学び」もたくさんありました。そんな思いを込めて、昨年の分まで、精一杯演じてまいります。演出も内容も特別バージョンですが、ミュージカル『アニー』の持っている力は変わりません。
ご観劇の皆様と共に、たくさんの夢や希望を共感できるステージになるよう全力で頑張ります。
今年しか観ることのできないアニーを是非お楽しみください!

ハニガン役:マルシア
2021年のミュージカル『アニー』はきっと特別な『アニー』になることでしょう。
ステージからの私達の思い、そして、お客様の思い、今の時代だからこそ更に響くメッセージがあるに違いないです。
アニーの前向きな生き方から得るものがきっときっとあなたへ…
そしてハニガンは更に暴れるでしょう!
よろしくお願い致します!楽しんでね。

グレース役:笠松はる
歴史あるこの作品に参加でき大変光栄です。
お稽古は感染症対策を徹底し、幕を開けたい一心で皆でがんばってきました。
『アニー』という作品には、コロナ禍で不安を抱える今の我々に、より響くメッセージがあると感じます。昨年の公演中止を乗り越えた子供達のパワーと共に、今こそ「明日を生きる希望」をお客様に感じていただけますよう、私も丁寧にグレース役を努めたいと思います。

ルースター役:栗山航
トゥモロー♪トゥモロー♪と気持ちの良く、透き通ったアニーの歌声が響き渡る稽古場。それは1年前の稽古でした。それから公演中止が決定し、皆でとても悔しい時間を過ごしました。そして今年、万全の体制で挑みます!キャストもスタッフも例年よりも少ないです。しかし!シーンを厳選し、内容を凝縮した特別バージョンということも忘れてしまうくらい、パワフルに、華やかに、賑やかに!!2年分の『アニー』をぶつけていきます!!

リリー役:河西智美
初日を迎えることが当たり前では無いんだ。と痛感したこの1年でしたが、今日という日を無事にカンパニーの皆さんと迎えられたことがなにより本当に嬉しいです!
Annieで頭がいっぱいの毎日がとても楽しくて幸せで、ずーっと終わって欲しくないですが、やっとお客様にお届けできるんだ!と思うとさらにわくわくしています!
今までとは何もかもが違う毎日ですが、明日への希望を持ち続けるAnnieのパワーとエネルギーをたくさん感じて頂けたら幸いです。

【公演情報】
丸美屋食品ミュージカル『アニー』
演出:山田和也
出演:荒井美虹 德山しずく 藤本隆宏 マルシア 笠松はる 栗山航 河西智美
※本公演は中止になりました。
【取材、文/咲田真菜 写真/ANNIE©NTV】

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報