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CBGKシブゲキ!!presents『春母夏母秋母冬母』間もなく開幕! 深井順子・森下亮・土屋神葉・上西星来インタビュー

FUKAIPRODUCE羽衣により2018年初夏に 吉祥寺で初演された『春母夏母秋母冬母』が、CBGKシブゲキ!!presents公演として、2月13日から上演される。(19日まで)

本作は1組の男女が時を超え、性別も超えて織りなす物語。深夜の公園で遊ぶ「こなこ」と「ユキユキ」の中学生カップル。その中に「こなこ」と「ユキユキ」の、幼年期・思春期・壮年期のエピソードが挟み込まれ、それぞれの「母」との関係性も描き出される。1組の男優と女優が「こなこ」と「ユキユキ」、そしてその母親役などの様々な役を演じ分けるという構造で、脚本・演出・音楽をFUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が手がけている。

この二人芝居を、オリジナルキャストである1977年生まれの深井順子・森下亮の二人の俳優に加えて、1996年生まれの土屋神葉・上西星来という世代の違う二人が参加、新たな形で蘇らせる。公演は4パターン、オリジナルキャスト (森下亮×深井順子)、新キャスト (土屋神葉×上西星来)、新バージョンA(森下亮×上西星来)、新バージョンB(深井順子×土屋神葉)という形で上演されるのも大きな見どころだ。

この公演の出演者4人に、稽古の始まった時期に集まってもらって、作品への取り組みを聞いた。

土屋神葉 上西星来 深井順子 森下亮

二人三脚度の高さをすごく感じる二人芝居

──まずは再演の話を聞いていかがでした?

深井 初演時に森下さんと、「再演したいけどすぐには無理だろうね」と言ってたんです。とくに初演はFUKAIPRODUCE羽衣の劇団員が沢山関わっていて、舞台美術も手伝ってくれたりとか、劇団の総力戦みたいな形だったので。

森下 羽衣の本公演だったので、出演者は僕ら2人だけでしたが、10何人の劇団員全員が、スタッフとか何らかの形で参加してくれていたんです。

深井 雪をずっと降らせるのも劇団員で、時々降らせ過ぎてたりね(笑)。私の髪も劇団の子がやってくれて。

森下 作っている最中も奇跡的にうまくいったことがけっこうあって、公演がたった8回なのは寂しいなという思いと、あまりにも奇跡的な仕上がりだったので、再演はきっと叶わないだろうなという思いとがあったんです。「次は深井順子50歳記念とかになるのかな」と言ってたぐらいで(笑)。

──これはお二人と作・演出の糸井幸之介さん,三人の40歳記念公演だったそうですね。

深井 そうなんです。私は37とか38歳くらいから40歳記念公演をやると決めてて、私が41歳になる直前に実現できました。

──そんな作品に初めて参加する土屋さんと上西さんですが、前回公演は?

上西 DVDで拝見しました。最初に題名だけ聞いたときは重い話なのかなと思っていました。でも観てみたらこんなにクスクス笑える作品だったんだと。そこにまずびっくりして。それから歌が沢山あって「音楽劇なんだ!」と。これを自分がちゃんと出来たら素敵だろうなと思いました。

土屋 僕も今回、出演が決まってからDVDを観たのですが、自分が演じるという気持ちがまずあったので、これを本当に自分はできるのだろうかと思いながら観ていました。でも面白いなと思ったのは、出演者は2人だけなのに、1つの世界から色々な世界に広がっていって、その中で、たとえば森下さんが母役と警官を、まるで落語家のように演じ分けていて。

深井 落語家はあんなに立ったり座ったりしないけどね(笑)。

土屋 (笑)その演じ方がすごくリアリティがあって、こんな人いるなという感じで、果たして自分にそれができるのかなと。

深井 大丈夫、できてる。

土屋 よかった(笑)。僕は糸井さんの作品は音楽劇『Love’s Labour’s Lost』に続いて二回目なのですが、また糸井さんの作品に出られることもうれしかったです。

──初演のお二人は、二人芝居ということの大変さはいかがでした?

深井 私はその前に一人芝居を演じていて、50分か60分の芝居で、しかも歌も全然なくて台詞だけで、本当にたいへんだった覚えがあるので、二人芝居ならすごく気がラクだわと。何かあったらフォローしてもらえるし(笑)。

森下 二人芝居は初めてだったんですが、お互いの二人三脚度の高さをすごく感じました。たいへんだったのは、一度出たらほとんど出ずっぱりでほんのちょっとしかハケられないことで、お客様から見えないように水分を補給したり(笑)。

深井 そう!それも出来ないときは、自分の口の中の水分を必死で集めて喉をうるおしてたの(笑)。

──二人きりということでお互いの信頼関係も大事でしょうね。

深井 どうでしょう(笑)。

森下 ははは(笑)。

深井 前から一緒に出るたびに面白い俳優さんだなとは思っていたんですが、この芝居で改めて「なんて哀しみのある人なんだろう」と。ブラックホールというか。

森下 ブラックホールなんだ(笑)。

深井 哀しみの塊です(笑)。

自由で、出てくるものを生かす糸井演出

──若手のお二人の稽古を見ていかがですか?

深井 アプローチも違うし、年齢も違うし、声も違いますから、見ていて刺激を受けますね。でも紡ぎ出す世界は根本的には変わらないと思いますし、糸井くんの言葉をこのお二人がどう届けていくかがすごく楽しみです。私は糸井くんの言葉が大好きなので、できれば一字一句間違えないで伝えたいと思っていて。だから二人もがんばって!

土屋・上西 はい。

森下 これまでのキャリアなどはそれぞれ違う4人で、神葉くんは声優をやったり、星来ちゃんはアイドルだったりするわけですが、それを生かして、深井さんのような純正な糸井芝居の人とはまた違ったアプローチでくる。そこがとても面白いなと。同じ言葉を言っているのに、こんなに違って聞こえるというのがとても新鮮ですね。

深井 良いところは盗んでしまおう(笑)。

森下 お互いね(笑)。でも同じことをしても絶対に違うことになるからね。

──稽古をしてみて改めて感じる初演のお二人のすごさなどは?

上西 たとえば「笑う」と書いてあるとしたら、その笑いのバリエーションがすごく多いんです。

深井 糸井くんは飽き性なので、全部違う表現じゃないとダメなの。飽きさせないために全部変えているんです。

上西 技術もちょっと教えていただきました。ここに力を入れるといいよとか。でも全然できてないのでもっと練習します。

土屋 僕は先にDVDを観ていたので、最初は「本物だ!」と思ってすごく緊張しました(笑)。でも「とりあえず歌ってみよう」という稽古で、すごく楽しくキー取りができたので、「あ、これはお芝居も自由にさせてもらえそうだな」と思っていたら、実際に稽古も伸び伸びとやらせてもらって、すごく楽しいです。

深井 すごい自由だもんね。

森下 音にちゃんと填めていかなくてはいけないなど基本的なルールはありますけど、その中でいかにやるかは自由なので。糸井さんも彼らから出てくるものを生かそうと思っているし、そこにそれぞれがやる意味があると思うんですよね。稽古初日に初めて4人で歌ってみたら本当に楽しくて、これまで深井さんとしか歌ったことがなかったので、神葉くんと星来ちゃんと一緒に歌ったとき、これはいけるぞと思いました。

深井 私、初演のとき最初のこなことお母さんのシーンができなくて、ずっと悩んでたんですけど、上西さんはいきなりポンとやれちゃってて、すごいなと。

上西 自分ではよくわかってないのですが(笑)。

深井 ウソをつかないで自然に喋ることができている。糸井くんはウソとかすぐ見抜くから。

上西 自由にするのは本当は苦手なほうなんです。以前、出演した舞台で台詞や動きのひとつひとつを演出家さんに細かくご指導していただいたことがあり、演出家さんの意図に添って何度も稽古を重ねていくのですが、それがすごく難しかったんです。でもそれはそれですごく勉強になったし、それがあったから今回「こんなに自分が言いたい言い方で台詞を言っていいんだ」ということがすごく楽しくて、稽古も楽しみながらやれています。

自分と母について、それぞれが考えながら

──作品のテーマの話になりますが、母と子という誰にでも思い当たるようなことが沢山入っています。「母」というテーマは深井さんから出たそうですね。

深井 40歳記念公演をやろうとしたときは、まだ母が生きていたのですが、他作品などでとてもお世話になっている木ノ下歌舞伎の木ノ下(裕一)さんが、「深井さんはお母さんの話をすると響いてくるものが違う。お母さんについての物語を作ってみたら」と糸井くんに言ってくれて、それでこの話になったんです。糸井くんは私より私の母と仲が良いくらいだったので、作品のところどころに母の面影が入っています。

森下 僕自身も深井さんのお母さんには色々とお世話になったのですが、随所に深井さんのお母さんを感じるところがいっぱいあります。そのお母さんを背負うことへの思いも自分の中でありました。でも深井さんのお母さんをそのまま演じるわけではなく、自分の母のことも考えたり、これまであまり考えてなかった母と自分について、それこそ赤ちゃんの頃から今に至るまでを色々考えることになったし、そこから役や演じ方もできていったという感じです。

深井 私は、そういう森下さんの中に自分の母を見たし、今回は神葉さんの中にもそれを見ることができるわけで、それはとても幸せだなと思います。もう絶対に会えないんですけど、芝居の最中にずっとそこに居てくれる感覚があって。お客様の感じもいつもとすごく違うんです。たぶんそれぞれのお母さんを重ねて観てくださっているのだろうなと思いました。

土屋 僕も今回は母親役をやるというので、自分と母親の色々なことを思い起こしていて、あの時はこういう気持ちだったのだろうなとか想像しながら。

深井 頭撫でるところでそれ感じたから言ったよね。

土屋 深井さんが気づいてくれてうれしかったです。小さなことなんですが、自分の大切な経験をお芝居に生かしたいと思って。母親を演じるなんて初めての経験で、それをやれることはすごく幸せだなと。自分がどう育ってきたかということを今一度考えさせてもらっている感じです。最後のシーンで歌う歌詞があるんですが、そこの歌詞の意味についてすごく考えたんです。端的に言ってしまうと人間ってみんな死んだら塵になるけど、残された人間の記憶の中では消えないということなのかなと思うし、それをお母さんの側からも歌うのがすごく前向きだなと。

深井 そうなの。糸井くんの作品って前向きだし、最後が柔らかく優しく終わるんです。

上西 私はこの作品の母ということについては、自分の母のことではなく、自分が母になったらと考えていて。同い年の友達でももう母親になっている友達がいるのですが、その子だったらどうなんだろうとか、自分たちの世代の母親ってどういうものなんだろうとか。

森下 そこは我々にはない視点だね。

深井 上西さんの世代の母親像ってすごく新鮮だと思う。

カンパニー全員で良い千秋楽を迎えるために

──今回、日替わりで組み合わせも変わるのですが、今、稽古をしていていかがですか?

深井 神葉くんと一緒のときなんか色々衝撃です(笑)。笑ってしまって糸井くんに怒られたり。

森下 「今、こなこじゃなく深井順子で笑ったよね」とかね(笑)。

深井 神葉くん、私がちょっとふざけた口調で喋ってもすぐ同じ口調で返してくれるし、すごいです。

森下 星来ちゃんは、さっき言っていた同世代の母親という感覚が入っていて、もしかして星来ちゃんが母親になったらこんな感じかなという若いお母さんのイメージもある。確かに劇中で出てくる若い時代の母は、星来ちゃんに実年齢も近いわけだから、ひょいという感じで引っ張り出してきて、そこはとてもリアルだし、いいなと思いますね。

──そういう意味では4つのバージョンをぜひ観ていただきたいですね。

深井 上西さんと私のバージョンも作ればよかったね。

森下 どっちがどちらをやるの?

深井 私、ユキユキできるよ(笑)。

──改めてこの舞台への意気込みをいただければ。

土屋 千秋楽までどう進化するかがすごく楽しみで、それに尽きると言ってもいいのですが、とにかく楽しみながらしっかりとゴールインしたいなと。絶対に面白いから早く観てほしいし、でもちょっと不安もあるのでまだ始まってほしくないし、早く終わった後の景色も見てみたいし(笑)。

上西 楽しく伸び伸びできるのが一番だと思っていて、それプラス詰めが甘いと言われないように、最後までちゃんと。

深井 詰めが甘いって言われるの?

上西 というか自分の中でもっとこうやっておけばよかったとか、もう1歩進めればよかったと思うことがあるので、最後まで突き詰めてやりたいなと。それから二人芝居とは言っても4人一緒なので、このカンパニー全員で良い千秋楽を迎えられたらいいなと思っています。

深井 今、上西さんが言ったように、二人芝居なのに4人でタッグを組んでいる感じが強くて、稽古も楽しいです。今回は台本も音楽も全部できているから、糸井くんも稽古場でご機嫌で(笑)。普通は再演だと全部書き直す人なんですけど、それをやらないのはすごく気に入っているんだろうなと。そんな作品にまた出られることがすごくうれしいし、今回初めて観てくださるお客様もいるので、どんなふうに感じてくださるかとても楽しみです。

森下 もともと僕は羽衣の大ファンだったんですけど、この二人芝居に出たことで、改めて糸井さんの書く歌詞の素晴らしさを感じたし、これはその集大成だと思っています。とくに母親と子供の話なので、観る方たち全員にきっとひっかかるものがあると思っていて、全国の方々に観てほしいですね。

深井 海外でも大丈夫だと思う。母が行きたがっていたパリに一緒に行こうよ(笑)。

森下 行きたいね! 4つのバージョン、どれも楽しめるのでぜひ色々観てください。

■PROFILE■

ふかいじゅんこ○FUKAIPRODUCE 羽衣主宰。1977 年東京生まれ。96 年から 99 年まで劇団唐組に在籍。04 年に、糸井幸之介の生み出す唯一無二の“妙ージカル”を上演するための団体、FUKAIPRODUCE 羽衣を設立。設立以降、全公演に出演、及びプロデュースを行う。演劇公演のみならず09年からLIVE活動を開始。また近年は、中高生向けのワークショップの講師や、野田地図『エッグ』『MIWA』に出演するなど、活動の範囲を広げている。2014 年より多摩美術大学にて非常勤講師を務める。

もりしたりょう○クロムモリブデン所属。1977年大阪府出身。97年にクロムモリブデンに入団。以降、看板俳優として活躍。舞台客演も多数。2019年は、serial number『コンドーム0.01』、劇団た組『在庫に限りはありますが』、T-works『THE Negotiation』、キ上の空論『紺屋の明後日』を含め、10本の舞台に立つなど引く手あまたである。また、NTV『あなたの番です。反撃編』、Eテレ『シャキーン!」など映像分野でも活躍している。

つちやしんば○1996年東京都出身。15年に劇団ひまわりに入団。16年に声優デビューし、その後も多くの作品で活躍。アニメ『ボールルームヘようこそ』では、主役の富士田多々良を演じる。最近の舞台出演としては、劇団岸野組『付喪、転じて仇となる』、明治座『麒麟にの・る』など。今回の『春母夏母秋母冬母』で、糸井作品への参加は2度目。

じょうにしせいら○1996年愛知県出身。東京パフォーマンスドールのメンバー。15年より、雑誌Rayの専属モデルを務める。また、舞台については、東京パフォーマンスドールとして、13年~14年PLAY×LIVE『1×0』シリーズに出演、15年『ダブリンの鐘つきカビ人間』でヒロインおさえを演じ、19年リーディングシアター『キオスク』に出演。アイドル、モデル、女優など多面的に活躍中。

【公演情報】

CBGKシブゲキ!!presents『春母夏母秋母冬母』
脚本・演出・音楽◇糸井幸之介(FUKAIPRODUCE羽衣)
出演◇深井順子(FUKAIPRODUCE羽衣) 森下亮(クロムモリブデン) 土屋神葉 (劇団ひまわり) 上西星来(東京パフォーマンスドール)
●2/13~19◎CBGKシブゲキ!!
〈料金〉前売・当日:5,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉 CBGKシブゲキ!!  03-6415-3363   info@cbgk.jp
〈公式サイト〉https://cbgk2020.wixsite.com/cbgk-haruhaha
 

 

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】

 

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