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四姉妹の闘いの熱量をそのまま届けたい!『阿修羅のごとく』木野花インタビュー

向田邦子の代表作として知られる『阿修羅のごとく』が、倉持裕の脚色、木野花の演出、そして小泉今日子、小林聡美、安藤玉恵、夏帆らの出演で、9月9日からシアタートラムで上演中だ。(10月2日まで、その後、10月8日~10日に兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールで上演)

向田邦子といえば、70年代に『だいこんの花』『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』など、数々の人気ドラマを生み出した昭和を代表する脚本家。なかでも『阿修羅のごとく』は、79年に加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンが四姉妹で共演、視聴者に鮮烈な印象を残した。映画版は森田芳光が監督、また商業演劇として04年と13年に舞台化されている。

今回の脚本は倉持裕が担当、向田のセリフはほぼそのまま生かし、シーンと登場人物を大幅にカット、四姉妹のバトルに焦点を当てる。演出は女優としても活躍する木野花。79年当時、このドラマをリアルタイムで目撃していたと語る木野花が、向田作品の世界をどう舞台に立ち上げるのだろうか!「えんぶ10月号」に掲載されたインタビューを紹介する。

センターステージで格闘技に立ち会うように

──まず、この作品の演出を引き受けた理由から聞かせてください。

最初は簡単には手を出せないなという思いがあったんです。私は向田邦子さんが書かれたものが好きで、沢山読んでいて、特別な思いがありましたから。それにドラマがとにかく素晴らしかった。ドラマという範疇を超えるような、文学作品の世界をそのまま観ているような凄さがありました。でも恐いからこそやってみたい、やってみようと。

──脚本が倉持裕さんということも、安心材料になったそうですね。

倉持さんの作品はそんなに数多く観ているわけではないのですが、名作をリライトするのが上手な方なので、きっと演劇として面白いものにしてくれるだろうと。ただ、脚本化にあたって、絶対カットしたくないシーンや台詞、このシーンはこう観せたいというようなことまで注文したので、倉持さんがよく引き受けてくれたなと(笑)。しかもそれを全部クリアしてくださって、なおかつ演劇的に観せられるように書いてくださったんです。感謝しています。

──演劇的という意味では、舞台もセンターステージになるとか。

全方向から観られる舞台になっています。イメージとして相撲とかプロレスとか、ああいう格闘技にしたかったんです。ただの台詞劇にしてしまったら、四姉妹の闘いのあの熱量は出ない。わざわざ演劇にするからには、「阿修羅」を目の前で見せたいんです。観客が四姉妹の生々しい闘いに立ち会うような臨場感ある空間にして、「阿修羅」という目には見えないものが、四姉妹の姿を借りて浮き上がってくるといいなと思っています。

女としての部分でお互いに牙を剥く

──四姉妹の闘いという意味では、向田さんは女性たちを容赦なく描いていますね。

女性作家だからといってむやみに女性の味方に付くということはなくて、結構厳しく突き放して書いているんですよね。我がままなところや勝手なところも優しさや弱さと一緒に書いている。逆に男性への目線は優しくて、嫌な男が出てこない(笑)。父親とか次女の夫とか浮気する男たちを、ダメなんだけど愛すべき存在として書いている。また時代もそういう男たちを許していましたからね。今はモラルやハラスメントに厳しい時代になりましたが、でも女性の中にある修羅はずっと変わらないし、向田さんもそれはなくならないものとして書いたのだと思います。阿修羅は人間の心の中にいて、いつ姿を現すかわからない。それとどう向き合っていくの? と向田さんは問いかけている気がします。

──今回の四姉妹のキャストですが、それぞれ向田さんの世界の匂いを感じます。

良いでしょう(笑)。長女役の小泉(今日子)さんも次女の(小林)聡美さんも、女性としての年輪も加わって、いい大人の女になってきたなぁと(笑)。向田さんの世界にぴったりだと思っています。三女の安藤玉恵さんはどういう役でもできそうで頼もしい女優さんだし、四女の夏帆さんは、姉さん達とは違う考え方を選ぶ咲子を体当たりで演じてくれたら凄いだろうなと、楽しみにしています。

──四姉妹は基本的には仲が良いのに、時として凄い喧嘩にもなるところがリアルですね。

「若草物語」などのいわゆる姉妹もののパターンも押さえつつ、女としての部分でお互いに牙を剥く。そこが向田作品ならではで、生臭いんです(笑)。だから喧嘩するシーンも凄まじい。ドラマではあの上品な八千草薫さんが鰻重を投げつけるとか(笑)、そういうシーンもト書きで細かく書いてあるところが、向田さんの脚本の面白いところですよね。

「阿修羅」を受け止めながら力強く生きてと

──今回のキャスティングでもう1つ興味深いのは、四姉妹の相手となる男性の役を、岩井秀人さんと山崎一さんがそれぞれ2役で演じますね。

岩井さんは、三女の恋人になる私立探偵と四女の恋人のボクサー役で、両方ともアウトローな境遇ですけど、性格は真逆な役。山崎さんは長女の不倫相手の料亭の旦那と、次女の夫で浮気しているサラリーマン役。それぞれ似たような状況を違うキャラクターで演じるという、それこそ演劇ならではの仕掛けを楽しんでいただけると思います。

──まさに見どころ満載の舞台ですね。最後に観に来られる方へのメッセージをいただけますか。

この芝居を観てまず元気になって欲しいです。「阿修羅」は誰の中にもあるものだから逃げてもしょうがない。四姉妹のようにそれを受け止めながら力強く生きてと。今回時代を今にしないで、あえて昭和のあの時代のままでやるのは、四姉妹の生きる熱量をそのまま届けたかったから。四姉妹は原作を読めば読むほど闘ってるんです。建前と闘い、相手と闘い、自分と闘ってジタバタしてるんです。必死でね。そうして生きていくしかないってことだけは分かっている。

──今は当時に比べたら表に出す熱量が薄くなっているような時代ですが、人間が抱えているものはそんなに変わりないと。

そう思います。昭和と今の違いを楽しみながら、変わらないものは何なのか、気づいたり考えたり共感してもらえたらいいなと思っています。

■PROFILE■
きのはな○青森県出身。1974年に女性だけの劇団「青い鳥」を結成。80年代小劇場ブームの旗手的存在となる。退団後は女優・演出家として活躍。最近の出演作品は、映画『劇場版 おいしい給食 卒業』『そして、バトンは渡された』『砕け散るところを見せてあげる』『MOTHER マザー』、ドラマ『旅屋おかえり』『おいしい給食 season2』『婚姻届に判を捺しただけですが』、舞台『ラビットホール』『鴎外の怪談』『月影花之丞大逆転』『さるすべり~コロナノコロ』など。2019年、映画『愛しアイリーン』(田恵輔監督)で第92回キネマ旬報助演女優賞を受賞。

【公演情報】
モチロンプロデュース『阿修羅のごとく』
作:向田邦子
脚色:倉持裕
演出:木野花
出演:小泉今日子 小林聡美 安藤玉恵 夏帆 ・ 岩井秀人 山崎一
●9/9~10/2◎東京公演 シアタートラム
●10/8~10◎兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈公式サイト〉https://otonakeikaku.net/stage/2420/
〈お問い合わせ〉 大人計画 03-3327-4312(平日11:00~19:00)

【配信情報】
《PIA LIVE STREAM》
2022年9月14日(水)18:00の回
配信チケット料金:4,000円(税込)
チケット取り扱い:チケットぴあ https://w.pia.jp/t/ashura/
アーカイブ:生配信終了後、9月18日(日)23:59までアーカイブ配信をご覧いただけます。
チケットを購入された方は、ご購入時から上記日程まで何度でもご視聴いただけます。
※チケット販売は9月18日(日)20:00までとなりますので、ご注意ください。
詳細に関しては PIA LIVE STREAM公式サイト「ご利用ガイド」ページをご確認ください。
■ご視聴に関するお問合せ(平日 10:00-18:00)017-718-3572  メール:event@linkst.jp
公演日当日の問合せ対応は該当公演(土日祝含む)の終演後1時間程度で終了とさせていただきます。

《WOWOW オンデマンド》
配信日時:2022年9月14日(水)18:00~
2022年9月18日(日)23:59までアーカイブ視聴可
配信場所:WOWOWオンデマンドにてライブ配信
視聴料金:WOWOWにご加入中の方は無料
詳細:https://www.wowow.co.jp/join/streaming/

 

 

【構成・文/宮田華子 撮影/中田智章】

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