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世田谷パブリックシアター『メアリ・スチュアート』制作発表会見レポート

スコットランド女王メアリと、イングランド女王エリザベス一世の対立を軸に、二人の間を奔走する男たちとの駆け引きをも浮き彫りにしつつ、刻一刻と迫る処刑を前にして己の裁判を不当なものとして正当性を訴えるメアリと、その処刑を決行するか否かと心乱れるエリザベスの苦悩が描かれる舞台『メアリ・スチュアート』。来年1月27日から東京・世田谷パブリックシアターにて上演される本作の制作発表会見が12月10日、都内で行われ、出演する長谷川京子、シルビア・グラブ、吉田栄作、三浦涼介、鷲尾真知子、山崎一、藤木孝が演出の森新太郎と共に出席した。

まずは演出の森から本作を手掛ける事になった背景として、「私がかつて所属していた演劇集団円で上演した作品。若い時に劇団の書庫から借りたこの台本を返さずにいたのが今回上演となります作品です」と笑いを誘う。「コインランドリーで時間をつぶさないと、とこの台本を持って読んでいたら、なんて凄い戯曲なんだろうと思い、洗濯が終わった後も延々読みふけっていたんです。これは今の日本の話じゃないか、と感じます。原作は二人の女王の周りでうごめく男たちが野心や保身を持って右往左往している、時には笑えてしまうくらい。また二人の女王がお互いいちばん分かりあえる関係でありながらも最後まで分かりあう事が出来ない皮肉さもある」と本作の面白さを語った。

長谷川は、タイトルロールの悲劇の女王・メアリ役を演じる事について「非常なる大役をいただいて、背筋が伸びる思いです。この会見の前に稽古が3日間行われたんですが、その3日間はビビり過ぎていた私がリラックスするように森さんが作ってくれた期間でした」と緊張しつつも笑顔を見せる。「二人の女王が周りの男たちよりいちばん男前だったというところに落ち着く、と感じており、森さんからは自分の癖であったり、今までなんとなくごまかしていた細かい痛いところを毎日突かれていて、心が折れないように毎日、精進して頑張っています」と意気込みを見せた。

エリザベス女王役のシルビアは「台本と向き合いながら、あまりの台詞の量にものすごく怯えています」と弱音を吐くと、隣に座る三浦が「そうそう」と言いたげにシルビアを観ながら微笑んでいた。「ミュージカルやストレートプレイでもコメディ作品に出る事が多かった身としてはこの作品を演じきれるのか、今でも不安です。先ほど長谷川さんが話した3日間の稽古は長谷川さんだけでなく私にとっての稽古でもあると。ものすごいキャストの中に入ってしまったなと(笑)。でもどれだけ厳しい環境であっても耐えていこうと思っています」と苦笑いしつつもその言葉に力を込めていた。

二人の女王から寵愛を受ける策略家のレスター伯ロバート・ダドリー役の吉田は「たまたま幸運な事に最近の映画でメアリとエリザベスを描いたもの(『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』)があったので、それを観てみたらものすごく見入ってしまって。歴史の背景や世界観が参考になりました。映画の中で話がとんだ部分があるのですが、そのとんだ部分をこの舞台でやりますので、是非お楽しみに」と期待を持たせた。

若者ならではの一途な想いがやがて常軌を逸し、狂気をはらんでいくサー・エドワード・モーティマー役を務める三浦。この役は原作者のフリードリヒ・シラーが生み出した架空の人物である。三浦は「この3日間の稽古ですでに心が折れかけてます」と口にすると今度はシルビアが笑い声を上げる。「膨大な台詞量ではありますが、森さんの指導のもと、先輩方に指導していただき、精一杯僕なりのモーティマーを演じたい」と心境を述べた。

メアリの乳母であり産まれた時から処刑される最期までメアリに付き添うハンナ・ケネディ役の鷲尾は「この作品に出演する事は私にとって新たな挑戦だと思っています。この作品は200年前に書かれ、描かれている時代は400年前だそうですが、人って変わらないなあと本当に思います。愚かしく切ない。ここに出てくる人たちは自分の事しか考えない人ばかりです。でもそこにはその人なりの理由がある訳です。私はメアリを愛して愛し抜けるかが私の大テーマです」と役に想いを馳せていた。

山崎が演じる大蔵卿バーリーはウィリアム・セシルという名でも知られる人物。エリザベスの重鎮であるバーリーについて、山崎は「すごく嫌な奴なんですよ。とにかく冷酷でメアリから見たら極右的で強硬派。メアリをとことん追い詰めていくんですが、森さんの『日本の政治と似ている』との言葉でここからいろいろ生まれるんだろうな、とほくそ笑んでいます」とニヤリ。

イングランドのシュローズベリー伯タルボット役の藤木は「この台本を読んでまず感じた事はスリル、スピード、サスペンス。そしてワクワクドキドキ。これは役者だけでなく観てくださったお客様も感じてくださること。それをお稽古の中でどれだけ耕していけるか、森さんについていきます」とベテランの余裕を見せていた。

長谷川は9年ぶりの舞台出演、しかも大役のオファーについて「一瞬、どうしようかなと思ったが、自分の性分的に『山を越えないという選択肢はない』というのがあって(笑)。やれると思ってキャスティングしてくださったのなら、絶対にできるという自分の中に根拠のない自信がある」と笑いながら心境を述べた。これに対して森は長谷川から「色気やスゴみを読み合わせからビシビシと感じた。プラスで長谷川さんは、裏に脆さみたいみたいなものもある。メアリは強いだけじゃなくて、ちょっとプライドの高さが折れる原因になったりするんです。メアリは長谷川さんに頼んで正解だった」と長谷川の背中を押すようにコメントした。

「舞台美術、大道具などは今のところほとんどないものを想定している。役者の肉体で作り上げる作品になるだろう」と森がキャストたちに激を飛ばして、この作品への熱を感じさせ、会見は終了した。

 

【公演情報】
『メアリ・スチュアート』
作:フリードリヒ・シラー
上演台本:スティーブン・スペンダー
翻訳:安西徹雄
演出:森新太郎
出演:長谷川京子  シルビア・グラブ 三浦涼介 吉田栄作/
山本 亨 青山達三 青山伊津美 黒田大輔 星 智也
池下重大 冨永 竜 玲央バルトナー 鈴木崇乃 金松彩夏/
鷲尾真知子 山崎 一 藤木 孝
●2020/1/27~2/16◎世田谷パブリックシアター
〈料金〉一般 S席(1階席・2階席) 8,000円 A席(3階席)4,800円/高校生以下 S席4,000円  A席2,400円/U24  S席 4,000円  A席 2,400円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)ほか各種割引あり
〈お問い合わせ〉 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515
〈公式HP〉https://setagaya-pt.jp/performances/marystuart20200102.html

 

【取材・文・撮影/こむらさき】

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