【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.96「海外」
外国を海外と呼ぶのは島国特有のあれとして、
海外に行きたい欲が増すばかりの最近である。
そんなにしょっちゅう行ってたわけでもないのだけど、行けないと言われれば行きたくなるもので。
ふと、小銭入れがぶっ壊れはじめている。
でもそれも捨てづらくなっている。海外で買ったものだから。もう何年も行けないのかもと思うと、この小銭入れすらも「貴重な海外」な気がしてきて手放し辛くなってくる。
自転車の鍵につけていたホルダーが車輪に巻き込まれて吹っ飛んでなくなった。
それもやはり海外で買った物で、その時も、海外がまた一つ離れていってしまったみたいでひとしおの寂しさを感じたものだ。
なんでそんなに海外に行きたいのだ?海外に何があるのだ?
大した理由は何もない。
思えば、私の物心は海外から始まっている。物心ついた頃には英語を喋っていた。だからむしろ、今の方が、海外にいるような感じなのかもしれない。てことは、海外に行きたいというよりも、戻りたい、そういうことなのかもしれない。そんなわけない。
しかし今度、公演で大阪に行かせていただくのだが、なんかそれだけでも気分が上がる自分に気づく。
海外に行けない分、県外の価値が、自分の中で以前にも増して上がっている気がする。
この際、県外を色々と巡るのも悪くない気がする。
今一番行ってみたい県外はー、、、沖縄。やっぱ海外感求めてんじゃねーかって。
いやなんか好きなんですね、南国の木が。
鹿児島の原風景なのかもしれない。
【著者プロフィール】
ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された
【今後の予定】
・舞台「ぼくの名前はズッキーニ」
脚本・演出:ノゾエ征爾
2021年2月28日(日)~3月14日(日) @東京・よみうり大手町ホール
3月19日(金)~21(日) @大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
https://www.ktv.jp/zucchini/
▼▼前回の連載はこちら▼▼
http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe95/
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