【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.75「見てまう」
わざわざ覗き込んだわけではない。
見上げたらこうだったのだ。
なにせこの人形は10メートルほどもあるわけで。
そりゃ真下にも行くし、見上げもする。
わりとちゃんとしたパンツまで履いてるなんて思わないし。
ただ普通に見ただけなのに、悪い事のようにされることがままある。
変わった車とか、変わった服装とか、変わった行動とか。
勿論こっちだって、意志を持ってのそれなのかくらいは見分ける。
見分けた上で、見てヨシとなって、普通に少し見ているだけなのに、
たまに、見られることを不快そうにされる。
不快そうにされて、不快になる。
二度と見てやるもんか。と強く決意して、やがて目の端でしか人を見なくなるのだ。
そうしていくと、眼はやがて魚眼のような力も持ち始めるのだろうか。
どうでもいいか。
夏が来てます。
【著者プロフィール】
ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。
【今後の予定】
・脚本・演出・出演
世田谷パブリックシアター@ホーム公演
「チャチャチャのチャーリー ~10周年だよ、チャーリー誕生秘話~」
https://setagaya-pt.jp/performances/201906athome.html
▼▼前回の連載はこちら▼▼
http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe74/
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