【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.72「かくすう」
子供の名前を考える際に、一つ気にしたことがあって、それが総画数だった。
画数による姓名判断とかそういうのは全く興味がないのだけど、
総画数の多さだけは気を付けようと決めていた。
というのも、自分が、なかなかの総画数の多さゆえに、子供の頃に随分と苦労したからだ。
44画あった。
44画をカクカクと書いている間に、他の子は一問目、下手したら二問目、三問目などに取り掛かっている、テストなんかでは。
はじめてフルネームをフル漢字で書けるようになったのも、他の子たちよりも遅かった気がする。遅くても大目に見てもらってた気がする。
44画もあるものね、せいじくんは。
そんなわけで、子供の名前は、せめて自分よりは少なくしてあげようと。まあ、教訓ってやつです。
そして決まった名前が、37画!
セーフ。ちょっと危うかったけど、まあ、セーフ。俺よりも7画も少ないじゃないか。
ってな感じで我が子と悠々と過ごしていた先日、私めの母親がボソッと言って来た。
「せいじは、画数が多くて苦労したってよく言ってたから、子供には少なめにしてあげるんだろうと思ってたけど、自分より多くするなんてね。」
「いやいや何をおっしゃいますかお母さま。我が子は私より7画も少ないですよ?」
「いやいやあなたより多いわよ。とんだサディストだよ」
「いやいや・・」
などと半ばキレ気味に数え直すと、私より3画多かった。
37じゃなくて47。10数え間違えていた。
すまぬ。土下座。
【著者プロフィール】
ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。
【今後の予定】
年内に鹿児島に行こう。
▼▼前回の連載はこちら▼▼
http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe-71/
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