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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.113「けんたいかん」

本日、8月17日、気づかいルーシーの初日が、ようやく、ようやく、あけました。
本来なら、8月3日に開幕するはずだったのだが、例の奴にコロッと襲われてしまい、無念すぎる東京公演、全中止。
作品を作りあげて、お客さんに観てもらえない。
演劇やってて、こんな無念なことってない。
この3年で何回かあり、もう二度と味わいたくないと思ったし、もう味わうことはないだろうと思っていた矢先の今回だ。
愕然、茫然とした。
中止に慣れるなんてことは微塵もあるはずもなく、これまでで一番食らった気がする。
気の落ち込んだ隙を突いて、コロコロがさらに個人攻撃をしてきた。
そして初感染。
症状としては、なんか、じわじわと噂に聞いてた症状の数々が次々とでてきた感じだろうか。想像してたのよりもしんどかった。
中でも、想定外にキツかったのが倦怠感だろうか。
倦怠感て。言われてもよくわからない。
周りから見たら、怠けてるとか、根性がゆるんでるとか、そんな風にしか見えないわけだし、当人の言い分も「なんか、めっちゃダルくて・・」なのだ。
めっちゃダルくて仕事がおろそかになるとか、許されることはきっとないのだろう。
でもね、「スーパーだるい」、一度なってみるといいす。
若い子の症状にも多いみたいで、コロナ後遺症の記事とか色々読んだが、倦怠感で本当に何もできなくなっても、周囲からの理解が一切なくて辛いと。気の持ちようだとか言われて、本当に辛かったと。
俺はわかるぞ。今なら君たちの状態がかなり理解できるぞ。
あのうねうねした漢字のごとく、体の芯にまとわりついて身動きと気力を完全に萎えさせてしまうのだ。
何か明確な、どこどこの神経が損傷してます!とかあると、とてもわかりやすくてありがたいのだけど、
ただの「とんでもなくダルイんです」じゃあ、なかなか言われた方も、真意を捉えるのは至難だろう。
この状況に乗じて、仮病で「倦怠感」を使う人も増えてくるだろう。
そのうちランキングされることだろう。
会社及び学校を休む理由ランキングで、二位:倦怠感 みたいな。
何か、後ろめたくなく、正式に認められるような指針ができると、救われる人はきっとかなりいることだろう。
ちなみに私の倦怠感はようやく薄まってくれました。
しかし、その間にすっ飛ばしてしまった仕事のメールなどは数知れず。
皆さんごめんなさい。
ほんと、めちゃダルかったんです。

今後の予定
「気づかいルーシー」(脚本・演出・出演)
地方公演は、9月10日まで、各地を回りますよ。
https://www.geigeki.jp/performance/theater306/

【著者プロフィール】

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。

 

 

▼▼前回の連載はこちら▼▼

http://enbu.co.jp/nikkanenbu/nozoe112/

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