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【池谷のぶえの「人生相談の館」】第32回 入江雅人さん(俳優・作家・演出家)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

月影番外地その6「あれよとサニーは死んだのさ」のお稽古中です。
13年ぶりの月影。

木野花さんとは、その間共演はあったものの演出を受けるのは15年ぶり。
高田聖子さんとは、その間観劇しあったり、ごはんを食べたりしていたものの13年ぶりの共演。
入江雅人さんとは、7年前に演出していただいたものの、初めての共演。
竹井亮介さんとは、劇場や飲み屋さんでペコリとご挨拶するものの、初めての共演。
川上友里ちゃんとは、お客としてあんぐり口を開けて観ていただけで、初めての共演。
大鶴佐助くんとは、これまたあんぐり口を開けて観ていただけで、初めての共演。

先輩方とは長い年月を経てやっとご一緒でき、同年代や若い方たちとはやっとご一緒できました。

改めて書き出してみると、いずれもなかなかの年月を必要としていて、こうしてご縁あってご一緒できるということの尊さを、改めて感じます。

自分の寿命が平均年齢くらいまでだとしても、とっくに折り返えしてはいるわけですし、いまご一緒している方々だって、この先またいつご一緒できるなんてわからない。もちろん二度とご一緒できないかもしれない。

そうしたことが肌身に感じてくるようになるお年頃になると、いままで舞台をやってこられたご恩を何かで返したくなってきたのが今年夏前。
いまの自分にできることは何なのか。何か伝えたり、教えたり、語れたりできるものはあるのだろうか…いろいろ心を過ったものの、お仕事でバタバタし始めたりで結局何もできないまま、秋。

でもふと、思った。
今回の劇場であるスズナリは私が20歳の頃、悪人会議「ふくすけ」を観て「わああああああ!かっこいい!」と衝撃を受けた場所だ。

うん恩返し、とりいそぎそれなんじゃないだろうか。
20歳の私が受け取ったのは「わあああああ!かっこいい!」という感覚だったけれども、観てくれた人たちに光を見せることじゃないんだろうか、恩返し。

この先舞台を続けたい人も、舞台とは関係のない生活をしている人も、ちょっと先にぽつんと灯りが見えたら、ちょっと先に進める時がありますよね。

さて、意識高い系女優のコラムみたいになってきたので、「おしり」と「乳首」のセッションをどうぞ。

おしりおしり乳首おしり乳首おしりおしりおしりおしりおしり乳首乳首おしり乳首おしり乳首乳首乳首乳首おしりおしりおしりおーしりしり乳首おーしりしり乳首ちっくびちくびちっくびちくびおしり乳首…乳首…光る…そして…おしり乳首おしりおっしりちっくびちーくび乳首おしりおーしりしりしり
(長い静寂)
おしりちちちちちちくびちちちちおしりおしり乳首おしり乳首うー!おしり!(雷鳴)
(暗転)

カーテンコール
おしりと乳首を演じました、池谷のぶえ!

盛大な拍手、ありがとうございました。
涙ぐんでる方もいらっしゃいますね、ありがとう。
光…見えましたか?
次回セッションはまた意識高い系女優コラムになりそうな危機が迫った時に!

今回のご相談は、現在お稽古ご一緒中のこの方です。

*****

ヨーグルンの事を語り合える数少ない女優さんである池谷さんに相談です。
僕は、20代の頃から、ずっと一人芝居をやっています。
去年から新たに「パンクスタイル」 というシリーズを始めました。
公演の全てを一人でやるというコンセプトで予約管理、当日パンフの製作、会場の設営や受付、照明や音響など舞台のスタッフワークを全部僕一人でやってます。
もはや、これ以上やれることは、無いと思うのですが、先月出演したgood morningN°5は、開演前に役者が飲み物やおつまみ、グッズを販売してます。
僕も何か売りたいのですが、商品を仕入れたりするのは、面倒ですし、仕入れても一人で運ぶのは、大変です。売りたいグッズもありません。
だけど、もっと無茶がしたいのです!一人でやれる限界に挑戦したいのです!
毎回、千秋楽の後は、お客さんに椅子の片付けを手伝ってもらって世界一速いバラシを実現しているのですが、先月の「パンクスタイル 7」では、その作業の後、皆で一本締めをしました。これが、限界です。これ以上、やれることが、思いつきません!!
来てくれたお客様が、呆れるような馬鹿馬鹿しい業務や、心に残るあたたかい業務、観客参加型でも何でもかまいません。
とにかく僕にやれることをお教え下さい。
月影の稽古場で突飛なアイデアを口にする池谷さんに「この人なら、とんでもないことを考えてくれるんじゃないだろうか!」と密かに期待しています。
さらには、かつて猫ニャーの、演劇の枠を超えた活動もご存知かと思います。
演劇界で、まだ誰もやったことのないような未知の領域へのナビゲーションをお願い致します!あるいは、「もういい!充分だよっ!」と抱きしめるように止めてください!
宜しくお願いします。

入江雅人さん(俳優・作家・演出家)

*****

入江さんとは、いつ知り合いになったのかはっきりした記念日がわからないまま、いつのまにかぬるりと出会ってましたね。でも、とある共通の許せない方について盛り上がり、同じように感じてくれてる先輩に出会えて嬉しかった覚えがあります。

出会えたものの、共演の機会は全くなく、いくつかの作品を合同で上演する企画で別チームになってみたり、さあいよいよ次は共演かな? と思いきや、まさかの入江さん演出作品に参加してみたり…今回やっと、初共演することができます。

そして、みなさまご存知のように、入江さんはずっと一人芝居を精力的に上演されていて、最近ではついに、会場押さえ、告知、宣伝、予約管理、会場設営、受付、当日パンフづくり、客入れ、音響、照明、上演、会場の片付け等、すべてを一人で担う「パンクスタイル」という公演形式に挑戦中。
そして、一人で担うことのさらなる先はないか?…というのが、今回のご相談なわけです。

「もういい!充分だよっ!」と、すぐさま抱きしめて今回のご相談を終わりたいところですが…だって、本当にもう充分じゃないですか!

しかし、抱きしめるだけならいつでもできますので、可能な限り考えてみましょう。

「来てくれたお客様が、呆れるような馬鹿馬鹿しい業務や、心に残るあたたかい業務、観客参加型でも何でもかまいません」

とのことですが、

子猫5匹、赤ちゃん3人ほどにご協力いただき、開場中にお客さんもご協力のもと全力で寝かしつけたらお芝居がスタートします。起きてしまったら、また寝かしつけてから再開してください。心あたたまる公演になります。

私のいつか叶えたい劇中効果として、大概ラストのカタルシスとして舞い散る雪や花びらの効果を、オープニングからずっと降らしたお芝居をやってみたいのです。そうなった場合、人はいつカタルシスを感じるのだろうと。お客さんの会場入りから雪や花びらを作ってもらい、オープニングからエンディングまでお客さんに降らしてもらうのはどうでしょうか。きっと、やってる方はずっと気持ちいです。

先日のgood morningN°5を観劇した際、オープニングで入江さんがずーっと黙っているシーンがあったのですが、ハプニングでお客さんの着信音楽が鳴ってしまいました。
その時の入江さんがぬぅ…と立ち上がった様が、今年の3位内に入るくらい面白かったので、何十種類かの効果音をお客さんに渡しておいて、それによってお話しが進んで行くコーナーなども観てみたいです。

また、10円玉をおでこに押し付けて一番長く落ちなかった人が勝ち、というゲームを劇団時代にやったことがあるのですが、思いのほか盛り上がります。
開演と同時にお客さん各自で10円玉を額に張り付けていただき、終演後まで張り付いていた方に落ちた10円たちをプレゼントというのも、こちらが一切損をせず盛り上がります。

しかし、こうして考えていると、もっともっと未開の地に足を踏み入れたくなりますね。

前回のパンクスタイルで、会場の片付け→一本締めまで到達したとのこと。
もはや、一人でできる外的な部分はあらかた完了しているかに思います。
さらなる先を目指すには、内的な部分を突き詰めていくしかありません。
一人芝居であるという感覚をより研ぎ澄ましていくのです。一人だ…自分は限りなく一人だ…という感覚を。

一人芝居をやっている間に、お客さんになぞなぞを100問解きながら観てもらう。
お客さん全員でジグソーパズルを完成させてもらっている間中、一人芝居をする。
ミュージカルを上演中の舞台で、同時進行で一人芝居をする。
行列ができるパンケーキ屋さんを舞台上に開店し、その隣で一人芝居をする。

書き出してみただけで、既に完全な孤独を感じております…。
こういうことではないですね。もう少し現実的な方法を模索しましょう。

では、こちらはいかがでしょうか?

昔、どちらかの劇団では終演後に、次回公演の予告編を上演していたと聞いたことがあります。
他劇団のチラシの中から気になる演目を選び、全く内容を知らないその予告編を一人芝居で上演し、終演後にその劇団の公演チケットを受付で入江さんが売る…というのはいかがですか?

なんなら、チケットの売り上げによって他劇団から報酬を得、それを次回のパンクスタイルに活用していくというのもありです。

自分の公演のチケットは自分たちで売る…という演劇界のセオリーさえも、ぜひ入江さんの一人芝居のパンクさで覆していただきたいと思います。

■ラッキー待ち受け

私も2年ほど前に出版イベントを開催した際、生まれて初めて一人芝居をやってみたことがあります。その時は、一人芝居先輩の入江さんから「自分の芝居を動画で撮ってチェックしたらいいよ」とTwitterでアドバイスをいただいたりしました。
しかし、私にとっては、一人でお稽古するのが果てしなく面白くなく、書きたい物語も特になく、やはり人と会話したい…という想いが強いということを再認識し、しばらくは一人芝居をやることと距離を置くことにしました。改めて、一人芝居を何十年と続けている入江さんを尊敬します。
距離を置く…というより、二度とやるべきではないと確信を持てた、イベント時の写真をラッキー待ち受けに捧げます。

■入江雅人さん今後の予定
月影番外地その6「あれよとサニーは死んだのさ」
作:ノゾエ征爾 演出:木野花
出演:高田聖子/池谷のぶえ/川上友里/大鶴佐助/竹井亮介/入江雅人
12/3(火)~12(木)@下北沢ザ・スズナリ
tsukikagebangaichi.blog.fc2.com/

入江雅人グレート一人芝居「パンクスタイル8」
12/25(水)~27(金)@千歳船橋APOCシアター
Twitter→ @iriemasato

「年忘れ!スタンダップコメディ・ネクストFes.」
12/30(月)18時開演@下北沢小劇場楽園
https://event.1242.com/event1/1826

下北沢演劇祭参加作品
KAKUTAプロデュース「往転(オウテン)」
作・演出:桑原裕子
2020年2/20(木)~3/1(日)@下北沢本多劇場
http://www.kakuta.tv/

【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
月影番外地 その6「あれよとサニーは死んだのさ」(作:ノゾエ征爾、演出:木野花)
12月3日(火)~12日(木) 下北沢 ザ・スズナリ

【テレビ】
NHK「LIFE! presents 忍べ!右左エ門 ~THE SKY ATTACK~」12月26日(木)22:00~
NHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」準レギュラー
TBS 「G線上のあなたと私」毎週火曜22:00~ 小暮洋子役

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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