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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第130回「千秋楽の二回公演」

劇団☆新感線の「神州無頼街」も無事に大阪公演が終わり、まもなく静岡公演が始まります。このような社会情勢ですから、何事もなく公演を終えるためには様々な事柄に注意を払わなければなりません。無事に最後の東京公演千秋楽まで行えるように一層気を引き締めてまいりたいと思います。

そんな「神州無頼街」の大阪公演千秋楽(千秋楽と言うのは公演の最終日のコトですよ)は昼と夜の二回公演でした。新感線で千秋楽が二回公演というのは久しぶりです。覚えている限りでは「髑髏城の七人 Season風」がそうでしたが、私は参加していなかったので個人的には本当に久しぶりというコトになります。今日はこの「千秋楽の二回公演」がどんなものなのか、というのをじっくりと解説してみたいと思います。

新感線の公演は上演時間が長いので、一日二回公演は結構大変なんですよ。体力的にも精神的にもキャストもスタッフも。しかも公演期間も長いので、徐々に疲労が蓄積していきます。そんな疲労がピークに達するのが千秋楽。そんな千秋楽に二回公演! これがねえ、実にツライのですよ。
大体、舞台俳優というものは無意識に体力配分をしております。そんな気がします。もちろん毎ステージ全力で取り組んではいるのですが、完全に無意識に、そう、意識せずに、身体が勝手に、体力を配分しているのです。ヘビーな舞台ほど、全ステージでベストを尽くせるように千秋楽に向けて身体が勝手に体調を調整してしまっています。
千秋楽が終わって、ホッとしながら「これ、あと一日あったら体力的に無理だったわ」なんて言い合ったりすることもあるのですが、これはおそらく千秋楽に体力を出し切る様に身体が勝手に配分しているのだと思います。いや、舞台俳優全員がそうかどうかは判りませんけどね。個人の感想というヤツです。

ことほど左様に千秋楽は大変だってコトですよ。そんな千秋楽に2ステージとは! いや、これが興行というものですからね。もちろん、キチンとそれぞれのステージに全力を尽くします。

さて、ではそもそも、千秋楽が昼公演だけで終わる興行が多いのは何故でしょうか。千秋楽に設定されるコトの多い日曜日だと夜公演の集客が難しいというコトもあるのでしょうが、やはり何といっても《バラシがあるから》だというのが最大の理由ではないでしょうか。
公演の規模にもよりますが、舞台のバラシ、つまり全てを撤収して元の状態にして劇場さんにお返しするという作業には時間が掛かることが多いのです。かつて、劇団☆新感線の初東京公演の時、200席規模の小劇場にもかかわらず、夜の9時からバラシを始めたのに8時間経ってもバラシが終わらなかった(朝の5時になったら次の劇団の搬入が始まるのです)というのは有名なエピソードです。劇場の規模に対して信じられない物量を持ち込んでしまったからなのですが、まあそれほどまでにバラシというのは大変なんだよというコトなのです。いや、この例は極端に過ぎますね。

千秋楽が昼公演だけの場合、そのステージが終わりますとバラシが始まります。小劇場や劇団公演の場合は俳優部もバラシに参加するコトもあるのですが、今の新感線では俳優部は楽屋を片付ければ帰らされます。ここからはプロの時間。大勢のバラシスタッフが投入され、場合によっては大量のバイトさんまで駆り出されてバラシ作業に入ります。持ち込んだ全ての器材をバラして梱包して搬出します。プロが手際よくやっても数時間は掛かるのです。
ここで手間取って遅くなってしまうと追加料金などを取られてしまう場合もありますから、なんとしても規定時間までには終わらせたい。そのために千秋楽は昼公演で終わるコトが多いのですよ。

ただし、公演期間が短いけれどもステージ数を増やしたい場合などには千秋楽に2ステージが設定される場合もあります。追加料金を支払ってでもステージ数を増やしたい場合も同様です。また、翌日の劇場スケジュールが押さえられれば、千秋楽が2ステージでも翌日にゆっくりとバラシをすることも出来ます。このように、カンパニーによってそれぞれ異なる事情から千秋楽の2ステージが設定されたりするのです。

我々演劇人としてもできる限り多くの皆様にご観劇頂きたい。でも2ステージはツライ。そんなせめぎ合いの中でスケジュールは決定されていくのですね。皆様におかれましては、こちらの事情など気にせずに、目の前の舞台をお楽しみ頂けますれば幸いです。全力でお迎え致しますよ!

とかいいながら、「神州無頼街」では最後の東京公演の千秋楽も二回公演なんだよな~。

富士市文化会館ロゼシアターの前で見つけた富士市のコピー「いただきへの、はじまり 富士市」。いいコピーだよね。

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

 

 

【出演予定】

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『神州無頼街』
3/17~29◎オリックス劇場
4/9~12◎富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
4/26~5/28◎東京建物Brillia HALL

 

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