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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第129回「平面図・立面図・エレベーション」

もう三月ですね。劇団☆新感線の「神州無頼街」は3/17に大阪公演から始まり、その後富士市、東京と回ります。どんどんと初日が近づいて参りました。一年半前に上演予定だった作品が、中止から延期となって、ようやく上演できる運びとなりました。
一年半の凍結期間を経て、さらにパワーアップした作品としてお楽しみ頂けると思います。どうぞご期待下さいませ。

さて、その「神州無頼街」なのですが、舞台セットがちょっとややこしい形になっております。いや、基本はシンプルなんだけど、ちょっと覚えにくいというか。もちろん今はまだ詳しくは書けませんが、シーンによってセットの形が大きく違うために、演者として把握するのが難しくなっております。
とはいえ、新感線の場合はかなり本物に近い仮セットを用意して頂けるので混乱も少ないのですが、カンパニーによってはそうはいかない場合もありますからね。セットの形を想像で補わなければならない場合も多いのです。
階段や段差、壁や扉やパネル。こういった舞台装置をすべて床に貼ったビニールテープで表現してしまう現場というのもあったりするのですよ。そうなったら、もう全てが「あるテイ」です。あるつもりです。しかし想像力にも限界があるのですよ。

そんな時に役立つのが「平面図」や「立面図(断面図)」そして「エレベーション(正面図)」という各種の図面でして、これらが今回ご紹介したい演劇用語なのです。なのですが、正直言いますと建築用語でもあるのでして、よく考えれば舞台セットだって建築の一種ですから当然の話です。でも、演劇用語としての特殊性もあるのですよ。

平面図とは舞台を真上から見た図でして、舞台を全体的に把握する時に便利です。下が客席側、上が舞台奥側、右側が上手ソデ側、左が下手ソデ側となり、そこに舞台セットのパーツが描かれています。これを見れば舞台の間口(客席側の広さ)や奥行きが判り、どこにどのようなセットが置かれているかが把握できます。
稽古の序盤にはスタッフ・キャストで平面図を見ながら、アクティングエリアを確認したり出ハケの導線を考えたりします。舞台監督さんがメジャーで測りながら床にビニールテープを貼ったりできるのも、この平面図のお陰です。

そして立面図(断面図)というのはセットの各パーツを横から見た図面です。それぞれのパーツがどのくらいの高さがあるのか、そしてどのような形をしているかは立面図から判ります。
壁の高さをイメージしたり、出っ張りなどを確認したりする時にはなくてはならないモノです。

この辺りはまさに建築業界が使っている用語と一緒ですね。いわば舞台の設計図です。正しい縮尺で、mm単位の正確さで描かれておりますので、全スタッフが拠り所とする図面なのです。

これらの図面を見ながらスタッフさんもキャストも舞台セットを想像しながら稽古するのですが、図面は平たいのでイマイチ把握しづらいのですよね。そりゃそうだ。図面なんだから平たいのは当然です。セットを作る人にとっては充分なのでしょうが、その中で動き回る演者にとってはイメージしにくいものでもあるのです。そんな時に重要になるのが「エレベーション」なのですよ!

エレベーションとは「高さ」を意味する英語ですが、建築業界では正面図のコトを差します。つまり建物を正面から見た図ですね。外観がよく判るので重要な図面なのですが、演劇業界ではちょっと意味が変わります。なぜならば舞台セットでは建物の中身を見せるので、外観は無いからです。
建物の壁を剥がして中を見てみたらどうなるでしょう。例えばシルバニアファミリーの家やリカちゃんハウスでは壁の一面が無くて中が見えていますよね。アレを真横から見ていると思って下さい。すると家の中の様子が良く見えます。

そう、舞台で言うところのエレベーションとは、舞台セットを客席中央から見た透視図法で描いた図面なのです。大抵の場合は色もちゃんと塗られていて、人の大きさがシルエットで描かれていたりもします。
エレベーションを見れば、客席からどのように見えるのか、演者との関係がどうなるのかを直感的に捉えることが出来るのです。これならばイメージしやすいですよね。

このように、実物のセットが無い稽古場でも、様々な種類の図面を見ることによって舞台を把握することが出来ます。さらに、カンパニーによっては舞台模型を用意してもらえる場合もありまして、そうなればさらに確実に舞台をイメージできるのです。ありがたい話です。

さあ、「神州無頼街」の舞台セットはどのような形をしているのでしょうか。それは劇場でのお楽しみです。

渋谷にある、ちょっとどうかと思う建築。ペイントされ放題。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

 

 

【出演予定】

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『神州無頼街』
3/17~29◎オリックス劇場
4/9~12◎富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
4/26~5/28◎東京建物Brillia HALL

 

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