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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第125回「本付き・ランニングスタッフ」

劇団☆新感線「狐晴明九尾狩」は東京公演に続いて大阪公演が始まり、残りも一週間ほどになりました。劇団公演としましては二作続けて途中中止となってしまっていましたので、このまま千秋楽まで辿り着ければ久しぶりの完走となります。気を抜かずに気をつけて頑張っていきたいと思います。

久しぶりにフルスペック新感線の公演に参加してみて、改めて感じたのがスタッフの多さです。もちろん、普通の公演でも皆さまの想像以上のスタッフが関わっているのですが、新感線の場合はさらに多いのです。単純に出演者が多いからメンテナンスをするスタッフも大勢必要になりますし、劇場の規模が大きいから必要な器材も増えるからでもあります。
しかし、それだけが理由ではありません。なんかね、馬鹿みたいに物量が多いのよ。通常の演劇では使用されないような特殊な器材とか、一瞬しか登場しないのにやたらと体積を取る小道具とか、まあとにかく物量が多いのです。ですので、それを扱うためのスタッフの数も増えてしまうと言うワケです。

一般的な演劇の例を挙げて、稽古場での流れを見てみましょう。稽古の序盤にはそれほど多くのスタッフはおりません。ずーっといる演出家、演出助手、制作部に加えて、舞台監督を中心とした演出部が数人です。しかし、稽古の合間には各スタッフとの打ち合わせが頻繁に行われます。
稽古が進むと演出部の数が徐々に増えていき、小道具部が加わり、音効部が参加し、稽古場の隅(あるいは別室)では小道具や衣装が作り始められます。さらに稽古中盤になると、振付師・殺陣師による振付があったりもします。
これが稽古終盤になるともっと大変なコトになります。通し稽古が始まる頃には小道具も出揃い、本物に近い仮のセットも組まれ、照明部も参加してプランを練り始めます。本番と同じ衣裳を着た稽古もあったりして、衣裳部やヘアメイク部も参加します。場合によっては映像部や特効部などが参加することもあります。もう稽古場はてんやわんやです。

如何でしょうか。演劇の稽古がいかに大人数のスタッフによって支えられているかがお判り頂けましたでしょうか。でも、今日お話ししたいのは、この話ではないのです。ないんかい!

これほど大量にいるスタッフさんたちですが、大きく分けますと、本番にも付く「本付き」スタッフとそれ以外とに分けられます。この「本付き」というのが今回ご紹介したい用語です。「ランニングスタッフ」と呼ばれる場合もあります。「劇場での本番に毎日参加して舞台を進行させるスタッフ」という意味ですね。

スタッフにもその役職によって様々な関わり方があります。プランを立てる人、製作する人、そして本番で運用する人(本付き)です。美術や照明、衣裳などを考えるプランナーもいれば、そのセットや衣裳や音楽などを作る人がいて、本番でセットを動かしたり衣裳を洗濯したりする人々もいるってコトですよ。
劇場での仕込みが始まりますと、それはもうホントに大人数が集まります。ここまで書いてきたプランナー、製作者、本付きなど、ほぼ全てのスタッフが一堂に会します。例えば美術部を例にとってお話ししましょうか。
工房で作られたセットがトラックで運び込まれ、劇場スタッフの管理の下で搬入されます。美術プランナーと大道具さんと舞台監督が打ち合わせながらセットを組み上げていきます。そして、本番でセットを動かす演出部が大道具部から引き渡しを受けます。もちろん現場に合わせた修整があればその場で調整されます。
このような引き継ぎが全セクションで行われるのですよ。そりゃもう大変です。ですが、《場当たり》から《ゲネプロ》という舞台稽古を経て初日が開けると、たくさんいたプランナーや製作者たちは劇場を去り、本付きスタッフのみが残って千秋楽まで舞台を運用していくのです。

我々俳優部としては、この本付きスタッフと長い公演期間を共にしていくワケですので、できる限り意思疎通をしながらスムースな本番を目指します。場合によっては細かな調整や変更をお願いしたりするコトもあります。
実際に舞台で動いてみるとちょっと動きにくいので、衣裳の裾を一寸だけ短くしてもらうとか、モニター音が聞こえにくいので一寸だけ音量を上げてもらうとか。信頼関係のあるスタッフだからこそ、細かい調整を繰り返しながらベストな状態に近づけていけるのです。

というワケでね、本付きスタッフの皆さんのお顔とお名前を覚えるのは俳優部にとって死活問題でもあるのですよ。ですので本付きスタッフさんを覚えていて当然なんです。当然なんですが、新感線の場合は先ほども書きました通りあまりにも多くのスタッフさんがいらっしゃいます。正直言いまして覚えきれない! 覚えたくても覚えられない!特に、客席上部のセンタールームにいるコトの多い照明部さんとか、本番のみの参加となる綱元さんとか、旅公演先で現地発注となるスタッフさんとかは覚えきらないコトも多いのですよ。
誠に申し訳ないとは思うのですが、こちらがやれることにも限りがあります。可能な限り頑張りますので、どうぞご容赦頂けますと助かります。
というワケで、明日の本番もどうぞよろしくお願い致します!

オリックス劇場近所の喫茶店「ドーン」。もちろん「夜明け」という意味の「DAWN」なのですが、カタカナで書かれると喪黒福造みがあるよね。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

 

 

【出演予定】
劇団☆新感線『狐晴明九尾狩』
9/17~10/17◎TBS赤坂ACTシアター
10/27~11/11◎オリックス劇場

 

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