【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第117回「二人一役」
二月中旬に上演されまして私も出演いたしました悪い芝居「今日もしんでるあいしてる」が無事に終了いたしました。客席50%使用ながらほぼ全日が満席となりまして、たくさんのご来場ありがとうございました。
このような社会情勢でも舞台が上演できる喜びを噛みしめながらの公演となりました。いやあ、やっぱり舞台って良いよね。大変だけど、楽しいんだもの。
さて、前回は二階建て舞台についてお話し致しました。「今日もしんでるあいしてる」では舞台の真ん中に直径3mくらいの丸いカーテンで仕切られたセットがありまして、その後ろには丸いカーテンレールの高さまで上げられた二階部分があり、舞台上から階段で上がれるようになっていました。
幅は90cmしかありませんでしたが、別空間として使ったり移動の道中として使ったりできます。また、下をくぐって出てくることもでき、ハンガーを掛けて衣裳を吊ったりもできました。この二階部分によって実に立体的な使い方が可能となり、多彩な舞台表現ができていました。これもまた、変則的な二階建て舞台と言えましょう。
前回が二階建て舞台、前々回が一人二役と、「二」のつく用語をご紹介して参りましたので、今回も「二」の付く用語を。それは「二人一役」です。
ん? 一人二役じゃなくて二人一役? ええ、そうなんです。「今日もしんでるあいしてる」では、柿喰う客の牧田哲也さんと私の二人が恥毬鼓動(本名:九木大)という人物を演じたのです。これが二人一役です。二人で一人物を演じるので二人一役というのです。
公演期間の長いミュージカルなどでは二人や三人のキャストが日替わりで同じ役を演じたりしますが、こちらはダブルキャスト(やトリプルキャスト)といいまして、あまり二人一役とはいいません。二人一役は主に同じ作品中で二人によって演じられる時に使われる用語です。
映画やドラマでは、主人公の子供時代を子役さんが演じるコトがありますよね。あれが二人一役の一例です。「今日もしんでるあいしてる」では恥毬鼓動の青年時代を牧田さん、老年時代を私が演じておりましたが、ここからが演劇の面白いトコロ。牧田さんが演じていた鼓動が実は老年期だったり、私が青年期を演じたり、あるいは二人が同時に登場してまさに二人で一役を演じたり。こういう表現ができるのは演劇ならではだなあ。
ちょっと変わった例では、懐かしのアニメ「マジンガーZ」の悪役・あしゅら男爵は右半身が女性で左半身が男性だったので、声優が二人いました。これも二人一役の一例でしょう。
また、テリー・ギリアム監督の「Dr.パルナサスの鏡」という映画では、主演のヒース・レジャーが撮影中に急逝したため、鏡の中の別世界では別の姿になるという設定に変更して、鏡の中の主人公をジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの三人が演じました。これなんかは四人一役といえるでしょう。
このように映画やドラマ、アニメではよく見られる二人一役ですが、舞台となるとなかなかありません。今回は牧田さんとお互いの演技を見合ったり、舞台上で息を合わしたり、二人一役ならではの面白さを経験しました。
映画やドラマ、アニメも面白いんですが、やっぱり舞台ならではの面白さが私は好きなんだなあとか思いましたよ。試行錯誤とか、トライ&エラーとか、日々の進化とか、ステージごとの変化とか、なんかそういう面白さがあるんですよね。これからも舞台の楽しさを体験していきたいと思います。
とかいいながら、しばらくは舞台に上がることはなさそうです。このような社会情勢の中でも昨年の秋から今年の初春まで、途切れることなく舞台を務めさせて頂きましたが、ここに来てパッタリと仕事が無くなりました。
次に舞台上で皆さまとお会いできるのはいつになるのでしょうか。その日を夢見ながら、しばらくはゲーム三昧の日々を送りたいと思います。ではまた。
ようやく手に入れましたよPS5。ようやく抽選に当たりましたよPS5。ようやく本家から定価で買えましたよPS5。ようし遊ぶぞ!
【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
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