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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第109回「映像配信とライブ配信」

本来ならこの7月から劇団☆新感線「神州無頼街」の稽古に入っているハズの私ですが、残念ながら公演中止となってしまったため、相変わらずの無為の日々です。いや、何もしていない訳ではありません。コッソリと、様々な企画が進行しております。

そんな私も含めて世のほとんどの人が新しい日常に直面しております。我々の演劇業界に近いところに限って言えば、COVID-19の流行は演劇、ライブ、講演等のライブエンタテインメントだけでなく、映画・放送業界にも大きな影響を及ぼし、報道番組ではリモート取材やリモートコメンタリーが普通になってきました。バラエティ番組でも過去放送の総集編や振り返り企画がいっとき多くなり、その後に自宅からのリモート収録が増え、最近では別のスタジオなどに分散して繋いでみたり、距離を取ってアクリル板で仕切りを作って同一スタジオで収録したりと、様々な方法で問題の解決を試みているようです。色々と模索中のようですね。

映画やドラマの現場では、この4月、5月は撮影が一時停止され、放送では過去の人気ドラマがオンエアされていたりしましたよね。周りの俳優仲間からの情報では、最近になって撮影が再開されたようですが、現場では直前までのフェイスシールド着用が義務づけられ、本番でようやく外し、撮影が終わった後に自分のフェイスシールドをドコに置いたか忘れてあたふたするというのが近頃の「あるある」だそうです。

映画・放送業界も大変ですが、我々演劇業界も大変です。映画はスクリーン、放送はテレビという映し出すモノがありますが、演劇の場合は舞台を生で見て頂くことが大前提ですので、余計に大変なんです。いや、音楽ライブ業界はもっと大変だろうと思うのですが。

音楽業界といえば、サザンオールスターズさんの無観客ライブ配信が凄かったようですね。無観客を逆手に取ったど派手な演出や、総視聴者数が推定50万人という規模の大きさが凄いですが、これはサザンだからこそできたコトだと思います。誰にでもできるとこではありません。

そんな苦境の中、演劇業界でも様々な手法でお客様に楽しんで頂こうとそれぞれが策を巡らせております。なかでも驚いたのが、ゴーチ・ブラザーズさんが実地検証を始めた配達演劇「THEATER A/way」です。注文があるとトラックで駆けつけ、開け放たれたトラックの後方に舞台が設えられ、一人芝居が上演されるという試みです。これも新たな演劇の形なのかもしれません。

そんな中、演劇業界で増えてきた手法が、「過去作品の映像配信」や「ライブ配信」です。過去作品の映像配信は、文字通り映像を配信することでして、過去に収録された作品を有料/無料でネット配信することです。特に、この4~6月に上演を予定していた団体が、公演中止を余儀なくされた代替手段として、過去作品を配信することが多かったようです。

劇団☆新感線でも春興行の2/3と、夏秋興行が全公演中止となってしまったため、ニコニコ動画に新感線チャンネルを開設し、ディスクになっていない秘蔵映像を週替わりで配信しておりました。

それとは別に、過去に収録したものではなく、リアルタイムにライブ配信する作品も増えてきました。リモート会議用のソフトなどを使って同時接続して、それを不特定多数の方々に見て頂いたり、同時に収録もしてアーカイブとして見られるようにしたり、様々な手段を使って楽しめる作品を作った団体もありました。

また、新たな動きとして、新作を上演するはずだった劇場からのライブ配信を行う団体もあります。例えば福田転球・大堀こういち・長塚圭史・山内圭哉の「新ロイヤル大衆舎」は、本公演を行う予定だったザ・スズナリから、過去の名作戯曲の読み語りという形式でライブ配信を行い、しかも感染対策を施した上でごく少数のお客様に劇場で見て頂くという、今現在考え得る最良の興行を行ったそうです。この方法ならば、スタッフさんにも劇場さんにも仕事が発生しますからね。そうなんです。我々俳優には肉体という元手があればなんとかなりますが、スタッフさんや劇場さんには器材や会場を保守保管するための莫大な元手が必要なので、もっと大変なんです。

また、ライブ配信ではなくとも、稽古場で作成した動画を公開したり、同時接続での読み合わせを公開したり、オンラインで演劇講座を開いたり、様々なアイデアを凝らして演劇に関わる団体や個人が創作の現場を広げているのが頼もしくも心強くもあります。

いやあ、みんな色々と考えているなあ。この7月からはPARCO劇場さんを始めとして、いくつかの劇場に灯りが戻ってくるようです。もちろん様々な感染対策を施した上で、更にライブ配信などの手段も併用していくようです。この業界も模索中です。ていうか、全人類が模索中です。

劇団☆新感線も、私も、様々に模索中ではありますが、何らかの形で皆様にお楽しみ頂けるように奮闘中であります。演劇公演がないと「えんぶ」さんも困りますしね。

という原稿を書いていたら、新感線の古田新太くんも参加するはずだった「欲望のみ」の替わりに「CUBE produce PRE AFTER CORONA SHOW」として、映像作品とリーディング公演を行うことになったようです。ケラさん流の「演劇のようなもの」がどうなるのか。これは気になりますよね。もちろん古田くんも出演しますよ。

そんなこんなの新しい日常の日々。皆様もどうぞお気を付けながら日常を取り戻していって下さいませ。

本文とは関係ありませんが、福岡空港で見つけたマンホール。真ん中をよーく見ると「航空局」という文字が飛行機の形になっています。

 

【著者プロフィール】
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

 

 

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