国民的大人気コミックを初の舞台化『キングダム』に出演!山口祐一郎インタビュー
紀元前、春秋戦国時代。未だ一度も統一されたことのない苛烈な戦乱の中にある中国を舞台に、戦災孤児の少年・信と玉座を追われ、のちの始皇帝となる若き王・嬴政(えいせい)。たった二人の少年が時代の荒波にもまれながらも、友との約束のため、そして己の夢のために史上初の中華統一を目指す様を描いた大人気コミック『キングダム』初の舞台化が、2023年2月5日~27日帝国劇場で幕を開ける(3月大阪・梅田芸術劇場メインホール、4月福岡・博多座、5月札幌・札幌文化芸術劇場hitaruでも上演)。
『キングダム』は、漫画家・原泰久のデビュー作として2006 年に「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載が始まり、次第に人気を獲得し大ヒットとなった作品。既刊66巻の累計発行部数は9200万部を突破(2022 年 9 月現在)し、2013 年には原が第 17 回手塚文化賞マンガ大賞を受賞。現在も、TV アニメ第4シリーズが放送中で、2019 年 4 月には待望の実写版映画が公開。山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、長澤まさみ、大沢たかお等豪華俳優陣による、原作の再現度と高いエンターテイメント性が評価され、2022 年 7 月には『キングダム 2遥かなる大地へ』も公開されるなど、様々なメディアミックスを経て、社会現象といえる盛り上がりを巻き起こし続けている。
そんな作品の待望の舞台化が、藤沢文翁・脚本、 山田和也・ 演出、 KOHTA YAMAMOTO・音楽のスタッフ陣と、信役に三浦宏規と高野洸。嬴政・漂役に小関裕太と牧島輝をはじめとした、帝国劇場初主演のフレッシュな陣容をはじめとした、強力なキャスト陣が集結。新たに生まれ出る舞台『キングダム』にいま、大きな注目が集まっている。
その舞台で、秦国六大将軍の一人で、別格の存在感をもち、“怪鳥”の異名の通り謎めいた行動で嬴政派と王弟派を翻弄する将軍・王騎を演じる山口祐一郎が、新たな作品に臨む思いを語ってくれた。
知らないのは許されない作品になっている
──王騎役として出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。
いま『ヘアスプレー』という作品で三浦宏規さんと共演させていただいていますが、長年舞台をやっていてこれほど違いを感じる役者さんを目の当たりにしたことはないと思ったほどなんです。三浦宏規さんの周りには重力がないんですね。歌や芝居にも全く型がなく、伸び伸びとやっていらっしゃる。その様子を見ながらお稽古をしていて、ずっと喜びと驚きがありました。更に舞台上でご一緒している時にこのお話をお伺いしたので、宏規さんとまた公演できる!という嬉しい気持ちがありました。
──『キングダム』という作品のどこに魅力を感じていらっしゃいますか?
いま既刊66巻の累計発行部数が9千2百万部を突破したということで、日本の人口は1億2千万人ですよね?それで9千2百万部っていったいどういうことなの!?(笑)と強く思いました。この島国で一社会人として生活している身で、知らないのは許されない作品になっているんだなと感じ、コミックを全巻読ませていただき、アニメも全話見させていただきました。元々実写版映画の第1作は、ヨーロッパに向かう飛行機のなかで観て、とても面白くて2回観たんです。ですからコロナ禍の前のことですね。そこから2年10ヶ月コロナ禍が続いていて、山口祐一郎君は(笑)少なくも週1回、多い時には週3回PCR検査を受けていて、一度も陽性になっていないんです。何しろ陽性になったらキャスト、出演者、そしてお客様が待っていてくださる舞台が閉まってしまうので、友人から「実はかなりのプレッシャーがかかっていると自覚した方がいい」と言われたのですが、そういう日々が2年10ヶ月続いています。ですから7月に公開された第二弾の映画も、万一濃厚接触者になってはいけないので、映画館で観ることは叶いませんでした。そういう時に、何故いま舞台をやるんだろうと考えると、『ヘアスプレー』も本来やるはずだった2020年よりも、いま2022年の方がより作品の輝きがこの社会に的確に対応できているんです。そして、2025年に帝国劇場が建て替えの為に一時休館することが発表された。劇場がクローズするということは、その何年かあとに、新装なった帝国劇場がオープンする日がくる。そこできっとこの作品が、オープニングシーズンにラインナップされるだろうと。そういう作品になったらいいですし、たまたまいまその時代に生まれ合わせた自分の運も感じます。この新しい帝国劇場を覗いてみたいなという気持ちが、モチベーションになっているのがありがたいですね。いま三浦宏規くんと話していると、宏規くんは未来の話をするんです。一方僕は過去の話をするんです。そうしたなかで初めて「新しくなった帝劇でまた宏規くんとやりたいね」という話ができるようになったことが嬉しいです。
自分のことって実は自分が一番知らない
──その帝国劇場に『キングダム』で初めて立つ俳優さんも多くいらっしゃいますが、山口さんご自身が初めて帝劇に立たれた時の思い出やエピソードを教えていただけますか?
それはここにいらっしゃる皆さんと、3泊4日くらいでどこかの山荘に行ってお話しないと(笑)。『キングダム』を描かれている原泰久さんもはじめはこんなに物語が長くなるとは思っていらっしゃらなかったそうですが、描き進めるうちにどんどん伸びていったと。しかも登場人物たちの行動の理由の半分は自分でわかっているけれども、半分は何故自分の手がこう動いていくのかを説明できないそうです。それと同じくらい僕が帝劇に初めて立った時のことは、言葉として表現できる感想だけではないんですね。そこから四半世紀ですし、今回三浦宏規さんという、これからの四半世紀をおそらく引っ張っていくお一人になるだろうという方に出会った。彼が演じる信は少年から大将軍になっていくのですが、彼が少年の時に僕はおじさんです(笑)。とすると彼が大将軍になった時には?という(爆笑)。最近本当に優しいお知らせをたくさんいただくんです。「月に2回無料でお風呂に入れます」とか「健康診断を無料で受けられますとか」(笑)。本当に世の中の人に優しくしていただいているいま、やっぱり3泊4日くらいないと、とても話しきれないです。
──王騎役を映画では大沢たかおさんが演じられていますが、山口さんは舞台でどう王騎を表現したいと思われていますか?
実写版を拝見して、大沢さんはじめ皆さんの身体から色々な思いが発せられているのを素敵だなと思いましたし、原さんの原作によって一人ひとりの俳優さんがご自身の魅力に気づくんだろうなと。ですから自分もこのお稽古を通じて、この作品の皆さんのなかで、王騎はこういう存在なんだなと気づいていくと思います。若い時には作品のテーマはとか、役柄はこうあるべきということに、言葉が適切でないかもしれませんが、やっぱりある意味縛られていたように思います。でもとても多くあることなのですが、お客様から全く違う感想のお手紙をいただくんですね。自分が思っていたキャラクターの役割とは違うポイントで幸せになりました…というようなお手紙をいただきます。ですから1人の人間が考える役柄と、ご覧になる皆さんが受ける印象とは全く変わっていきますし、日を追ってもそれは異なるので、自分でも回を重ねて振り返った時に、あぁ、この役はこういう人だったのかと気づけるくらい、真っ白な気持ちで、役と求められるものに向かっていきたいなと思います。『ヘアスプレー』では200㎏ほどある女性を演じていますが、自分のことって自分が一番知っているようでいて、実は一番知らないんですね。でも四半世紀ご一緒している演出家の山田和也さんがキャスティングしてくださったことから、初めて女性の役を演じたら、いまこうしてお話していても気持ちは半分お母さんなんです(笑)。ですからその同じ山田さんが、山口さんに王騎が合う、素敵な王騎を演じられますよ、と言ってくださるのならば、この仕事をしようと思いました。ですから山田さんや、三浦宏規くん、いまご一緒しているのでつい三浦くんの名前を出してしまいますが、高野洸くんをはじめ皆さんと、様々なトライをしていきたいと思っています。
■PROFILE■
やまぐち・ゆういちろう○鹿児島県出身。『ジーザス・クライスト=スーパースター』のタイトルロールでデビュー。1997年『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役を皮切りに、数々の東宝ミュージカルに出演。主な出演作に、舞台:『笑う男』『モーツァルト!』『王家の紋章』『オトコ・フ タリ』『ダンス オブ ヴァンパイア』『レベッカ』『マディソン郡の橋』『レディ・ベス』『貴婦人の訪問』『エリザベート』『オペラ座の怪人』、『ウエストサイド物語』『CATS』TV:「定年女子」(NHK BS プレミアム)、NHK 大河ドラマ「篤姫」など。2022 年9~11月ミュージカル『ヘアスプレー』出演中。
【公演情報】
舞台『キングダム』
原作:原泰久(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
脚本:藤沢文翁
演出:山田和也
音楽:KOHTA YAMAMOTO
出演
信 :三浦宏規/高野 洸
嬴政・漂 :小関裕太/牧島 輝
河了貂 :川島海荷/華 優希
楊端和 :梅澤美波(乃木坂 46)/美弥るりか
壁 :有澤樟太郎/梶 裕貴
成蟜 :鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズ Jr.)/神里優希
左慈 :早乙女友貴
バジオウ :元木聖也
紫夏 :朴 璐美/石川由依
昌文君 :小西遼生
王騎 :山口祐一郎
●2023/2/5~2/27◎帝国劇場
〈料金〉S席15.000円 A席10.000円 B席5.000円
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777 ※一般前売開始:2022年12月3日
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/kingdom/
●3月大阪・梅田芸術劇場メインホール
●4月福岡・博多座
●5月札幌・札幌文化芸術劇場hitaru
【取材・文・撮影/橘涼香】
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