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河合雪之丞と篠井英介、二人の女方が初競演!六月花形新派公演『夜の蝶』取材会レポート

昭和を代表する作家が描いた“夜の蝶”たちの美しく熾烈な戦いの幕が開く──!
小説家であり劇作家でもあった川口松太郎は発表した『夜の蝶』は、直木賞の第一回受賞作であり、高い人気から映画化、舞台化された傑作である。
舞台化の戯曲は川口自身の手によるもので、新派の名優・花柳章太郎と初代水谷八重子により昭和32年(1957年)10月に初演、その直後の12月には歌舞伎俳優の坂東玉三郎と当代の水谷八重子(当時は良重)によって早くも再演され、大ブームとなった。

この作品が、喜多村緑郎、河合雪之丞という新派の人気俳優をはじめ、ドラマでもお馴染みの山村紅葉、今回が初参加の篠井英介らの出演で、脚本・演出もあらたに6月6日より三越劇場で上演されることになった(28日まで)。

【あらすじ】

銀座随一の高級クラブ「リスボン」のマダム・葉子(河合雪之丞)は近頃機嫌が悪い。京都で舞妓あがりのお菊(篠井英介)が、銀座に京の雰囲気を売りに趣向を凝らしたバーを構えると噂に聞き、気になって仕方がない。一方、高級クラブ「お菊」は、大物政治家・白沢一郎(喜多村緑郎)の後援で、葉子やその妹分・お景(瀬戸摩純)、銀座のマダムたちの羨望と嫉妬を尻目に華々しく開店。京都風の戦術が大評判となり、お菊は妹分・お春(山村紅葉)と手を取り合って喜ぶ。銀座一の「リスボン」と話題沸騰の「お菊」の対立。銀座の夜の世界を舞台に、二人のマダムが女の戦いを繰り広げる──。

マダム・葉子には歌舞伎や新派でキャリアを積んだ女方・河合雪之丞。対立するお菊には大劇場から小劇場まで幅広く活躍する現代演劇の女方・篠井英介。まさに2人の女方の初共演(競演)となる。

5月上旬、この取材会が都内で行われた。出席者は、成瀬芳一(脚色・演出)、喜多村緑郎、河合雪之丞、山村紅葉、篠井英介。それぞれの挨拶の後、質疑応答に移った。

【挨拶】

成瀬芳一 昭和32年に書かれた作品。新派には待合や芸者衆の芝居も多かったですが、高度成長期に向かっていく、スピーディに物事が進んでいくような時代に変わっていく時でしたので、川口先生も、芸者の世界から、行けばもうホステスさんたちがいて、スピーディに楽しめるバーの世界を、いち早く取り込んで書かれたのが『夜の蝶』と言われています。いわゆる“夜の蝶”が、夜の世界で水商売などの仕事をしている方を指すというのが、川口先生のこの本が出来てから呼ばれてきた言葉らしく、それが作品のタイトルでなく一般名詞になるほどブームになった作品です。でも時代もだいぶ経っているので、今の時代に合わせて、三越劇場には珍しく、盆(廻り舞台)がない三越劇場で屋体が廻るというのをお客さんに見て頂き、楽しんで頂く舞台を作りたい。作品の元々にあったバーの世界を、マダムの対決と共に、男性社会の対立も含めて新たに書き直したので、以前の作品とは変わっていると思いますが、そのなかで、独特の新派という集団の空気感も織り交ぜながら見て頂くような作品ができればと思います。

喜多村緑郎 元号が令和に変わって初めての新派公演ですが、昭和30年代に初演されたものということで、平成をまたいで昭和のものとなれば、今や新派のなかでは『夜の蝶』も古典になったのではないかと。その古典を洗い上げ、現代の皆様に通ずる新しいお芝居にしようという、僕や(河合)雪之丞が普段から考えている“古典の掘り起こし”を令和の最初にできるのは非常に嬉しい。篠井さんとは今回初共演で、紅葉さんとは何度もやらせて頂いて、半分新派に片足を突っ込んでいる感じですが(笑)。大阪で(藤山)直美お姉さんと大阪松竹座でお芝居をしていますが、今日が初稽古と記者発表があるということで「夜の蝶ならぬ、夜のS字結腸にならんように頑張りや」というエールを受けて参りました(笑)。S字結腸にならないよう、頑張ってこの公演を成功させたいと思います。

河合雪之丞 葉子のお役は実在されたモデルさんがいらして、この間、ある銀座のお店に宣伝用のスポットを撮りに伺った時、そこのママさんが「私が銀座に出た頃、まだおそめのママはいらっしゃったわ」と仰っていました。まだ実際にモデルの方を見た方がいらっしゃるんだと、近しい感情を覚えました。私と篠井さんの女方同士で『夜の蝶』をやるのは、今まで花柳先生と水谷先生がやられた時は、葉子が花柳先生、お菊が水谷先生。その後、玉三郎さんと今の水谷八重子さんがやられた時は、玉三郎さんがお菊で八重子さんが葉子。どちらかが女方でどちらかが女優さんという形で上演されてきましたが、二人とも女方というのは初めてで、また新しい『夜の蝶』をご覧頂けるのではないかと思います。篠井さんと私はずっと対立するお役なので、役に入り込むために、稽古場から一切口をきかないでおこうと思います(笑)。

山村紅葉 お春という、京都から東京・銀座に乗り込んでくるお菊ママについてきて、私であるためにちょっと変えて頂いた、ちょっとコミカルな役です。前はとても綺麗なチーママの役だったと思いますが、私はお金にしっかりした金庫番みたいな感じの女の人で、ちょっとほっこりして頂けたらいいなというお役です。母(山村美紗)が生きていた時は、祇園のお茶屋さん、芸妓ちゃん舞妓ちゃんとも親しくさせて頂いていたし、祇園もだいぶ連れていって頂いたし、母が亡くなってからも祇園と銀座にはずいぶん遺産もつぎ込みまして、それをやっと活かせるようになったかなと(笑)。京言葉でもありますし、ちょっとリラックスしてできるかなと思います。

篠井英介 そんな、雪之丞さん、仲良くしてくださいよ(笑)。130年の歴史がある新派で、僕は田舎は石川県ですが、上京してからは歌舞伎と新派、文楽を見て歩いてすごく幸せでした。その憧れていた新派に、小劇団出身の僕が女方として呼ばれ、雪之丞さんや喜多村さん、紅葉さんたちとご一緒できるのは、長生きするとすごいことが起きるものだなぁと。なので、図々しい顔をして今日もお稽古場にいても、内心は「不思議なものだな世の中は」と思っています。令和になって、新派でこの作品で、この組み合わせでご覧頂けるのは、演劇好きの方にとってはかなり面白味のある出来事だと思います。ぜひそれをご自分の目で確かめに来て頂きたいです。

【質疑応答】

──元号が変わってからの新たな意気込みをお願いします。

山村 新しい元号になって新しい時代がまた始まりますが、「昔のほうがよかった」「昔もよかった」ということがいっぱいあると思います。今は個々だったりしますが、昔は私たち女優の世界でもとても密で、しょっちゅうご飯を食べに行ったり、人間関係がとても密な分、ライバルであったり嫉妬心であったり色々な感情が生まれて、だからこそお互いに切磋琢磨するような良い面があったと思います。そういう昭和の濃い部分、良い部分が描かれているのかなと思いますし、これは銀座のクラブのホステスたちの話ですが、一般的な女性の社会にも当てはまることかなと。新しい元号で良き昭和を振り返るという意味で、素敵な作品だと思います。

篠井 意気込みというより、細々とこの先もやっていきたいと思っていたところにこのお話だったので、若い人たちに甘えて、助けてもらって、支えてもらって、今度の公演もやっていきたい。令和という時代、僕はお芝居が好きなので、自分の活躍は二の次で、古典も新しいものもミュージカルも翻訳劇も、どんな風に変化していくのか見守りたいと思っています。

河合 自分が昭和生まれ。祖母が明治生まれで、明治はずいぶん昔のことと思っていましたが、昭和もずいぶん昔なんだなと。そんな時に、昭和という、日本が盛り上がっていた一時代を振り返るのは素晴らしいことですし、ぜひ平成生まれの方にもご覧頂ければと思います。高度経済成長の日本の銀座で色々なものが生まれました。そういう時代の作品を改元すぐの時期に上演できるのはすごく嬉しい。紅葉さんとは何回も共演し、しょっちゅうご飯も行きますが、篠井さんとは初めて共演させて頂きます。私自身、歌舞伎の女方さんじゃない女方さんと共演するのは初めてなので、本当に楽しみにお稽古に入らせて頂きます。

喜多村 元号ってすごいなと今回思いました。1957年のお芝居を2019年にやるというとピンときませんが、平成を飛び越えて昭和のものをやるというだけで重く感じたり、これは他の国では感じられない、日本だけのものなんだなと感じました。年表で未来の人たちが、例えば「令和新派史」だったら、この『夜の蝶』が必ず線の横(最初)に来る。そのお芝居に参加できるのが嬉しいし、改めて責任を感じます。

──雪之丞さんが、歌舞伎以外の女方と一緒にやるのは初めてと仰いましたが、緑郎さんも新たな女方さんとの絡みについてはいかがですか?

喜多村 複雑ですよね。女優さん、歌舞伎の女方さん、英(太郎)先生という新派の女方さん、今度は新劇の女方さん。こんなにたくさんの女方さんと、しかも今回は篠井さんとのラブシーンもありますので、これだけの女方さんと絡んだんだぞというのは誇りに思います。

──ラブシーンがあるんですか?

喜多村 あるんですよ。あんまり深くは言えませんが(笑)。取り合いになるというくらいだから、ひとつやふたつはあるでしょうね。

──昭和30年代という時代に対して抱いているイメージや、それをふまえてどんな風にその時代感を醸そうと考えていますか?

喜多村 僕はまだ生まれる前ですが、“夜の蝶”というのは、並木通りのクラブ街へいくと若いホステスさんでも使っているくらいメジャーな名詞。クラブの知り合いのママさんに『夜の蝶』をやるんだよ、と言うと、『夜の蝶』をやるの?と、皆さん若くても知ってらっしゃいます。台詞の中にも時代感を匂わせる、風刺された台詞がいっぱい出てきます。オリンピックに向かっていってる東京も、昭和の東京と今の東京とリンクしていると思うので、元気な日本を元気に新派でやりたいです。

河合 私たちが生まれる10年くらい前のお話で、日本が一丸となって前進していくような時代だったと思います。東京の都心部以外では、道路が舗装されていないところがあったり、その中で道路拡張を進めたり、経済もどんどん発展していく時代というイメージ。その発展に欠かせなかったのが銀座の社交場だったんじゃないか、そういうところは考えながらやりたいです。当時は銀座より築地のほうが一流だったようで、銀座も社会と一緒に大きくなっていった頃らしいので、そうした雰囲気を今回の舞台でも味わって頂けるのではないかと思います。

篠井 ずっと観客だった私は、新派になぜ惹かれるのかと思った時、自分がそんな時代に生きていたわけじゃないのに、何か懐かしさや胸をしめつけられる気持ちになって、日本人だなと思わせてもらえるところ、それは情愛や情感なんですよね。今日の読みあわせで気づきましたが、このお芝居も女の戦い、男たちの政治、高度成長期の勢い、それは日々生きている人たちの生き様ですが、結局なぜこれを川口松太郎先生が描いたかというと、そこに個々に情愛が流れている。ここ(葉子とお菊)もライバルだから言い合ったりしますが、芯に情愛がある。僕(お菊)も白沢が好きだし、白沢なりに女たちを愛し大事に思っている。ここ(お菊とお春)は姉妹みたい。見ている方たちは、一生懸命目の前のことを何とかしようと生きている人たちの後ろに流れている情愛、情感が愛おしい。今のTVドラマのホステスの世界の冷たさ、怖さとは基本的に違うなと思いました。女の戦いもあるけれど、どこかに優しい温かい血が生まれていることを面白く見せながらも、当時のお客さん、今のお客さんにも「人って愚かで可愛いな、優しいものだな」と最終的に心に響けば新派らしいお芝居になるんじゃないかと思います。

山村 昭和35年が設定だとすると、ちょうど私が生まれた年。当時、普通は赤ちゃんの沐浴は木のたらいでしたが、プラスチックのベビーバスが初めて出て、母が「高かったけど買ってあげた」と。家にお風呂ができ、普通は銭湯に行かなきゃいけなかったから助かったとか、TVが珍しかったので皆さんが見に来て、オリンピックの時にご近所の方がいらして盛り上がったのを思い出したり、家に電話があって取り次ぎに走っていったり。あの時もオリンピックがもうすぐあって、新幹線が通って、東京タワーができて、戦後じゃない新しい輝く未来に向かっている、みんながすごく夢と希望にあふれた時でした。今もオリンピックを前に、元号も変わり、これからまた新しい素晴らしいことがあるんじゃないかという予感がしているので、時代は変わりますが共通のエネルギーを感じて頂ければと思います。

──お二人は、女方として色々お役をされてきたと思いますが、お互いの共通点や相違点は感じられたことはありますか?

河合 篠井さんが当時、花組芝居で女方をされていて、色んなお芝居で大きな話題になりました。私も当時見に行きたくて、どうにかチケットを買おうと思い、3回チャレンジしても1回もとれないくらい人気でした。女方さんは作り込もうとして不自然になることがありますが、本当に自然体だと感じたので、私も作り込まずにやったほうがいいのかなと考えました。これからのお稽古が、一切口はききませんが、楽しみです(笑)。

篠井 僕はたくさん歌舞伎時代、新派になってからも拝見しているので、こんなに綺麗な、ある種現代的な、古風ですがお人形さんのような。やっぱり現代人の体型ですからね。昔の歌舞伎の役者さんたちを見ると、立役さんでも女方さんでも、頭身が違うじゃないですか(笑)。緑郎さんもそうですが「今の若者が綺麗な女方さんが出てきた」と感心して見ていました。僕にとっては、歌舞伎の女方だった雪之丞さんも新派の雪之丞さんも、どこか遠い存在だったので、今ご一緒というのは全然実感がない。今日やっていても「大丈夫なのかな?」と。自分は女方として、30年ぐらいはやってきて、それを礎にするしかないので、足を引っ張らないようにと思っています。

【公演情報】

六月花形新派公演 『夜の蝶』

出演◇喜多村緑郎 河合雪之丞 山村紅葉 篠井英介 瀬戸真澄ほか

●6/6~28◎三越劇場 

〈料金〉9,000円(全席指定・税込)

〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または03-6745-0888

〈アフタートーク〉公演終了後にアフタートークあり。

  6/10 11:00~喜多村緑郎・河合雪之丞・篠井英介  

  6/18 11:00~喜多村緑郎・河合雪之丞・瀬戸摩純・山村紅葉

〈公演HP〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/shinpa201906/

 

【取材・文・撮影/内河 文】

 

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