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柳下大インタビュー。念願の劇団☆新感線の舞台で締めくくった2018年を振り返る!

若手演技派俳優として、2018年も舞台での活躍がめざましかった柳下 大。
まず1月開幕の『Shakespeare’s R&J ~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』では、注目の若手俳優による4人芝居。続いて4月開幕のRock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』では、オリジナルミュージカルの初演に挑んだ。また6月開幕の二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』では、ベテラン勢のなかで最年少キャストとして、社会派の話題作に出演。そして12月31日まで出演したのは、彼の夢でもあった劇団☆新感線の作品、ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3。
その『メタルマクベス』の千秋楽を目の前にした2018年の年の瀬に、充実の1年の活動を振り返ってもらった。

2つの「ロミオとジュリエット」で
シェイクスピアに正解はないと

──2018年は舞台4作品に出演して、そのなかでも『ロミオとジュリエット』を題材にしたものが2作品、『マクベス』を題材にしたものと、シェイクスピア作品が多かったですね。
そうですね。ただシェイクスピアではあるのですが、ある意味、変形型の舞台ばかりでした。でも、それによってシェイクスピアのいろいろな解釈の仕方、表現の仕方を改めて感じましたし、原作がもともと持っている“強さ”のようなものも感じました。結果的にいろんなジャンルの芝居をやらせてもらったなと思います。今までにやったことのないジャンルが多かった印象です。
──1、2月の『Shakespeare’s R&J ~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』は、2003年にロンドンで初演されたジョー・カラルコの脚色の「Shakespeare’s R&J」の日本版。厳格なカソリックの全寮制男子校の寄宿舎で暮らしている4人の男子学生が、夜にこっそりベッドを抜け出し、読むことを禁じられた『ロミオとジュリエット』のリーディングをする、というものでした。
まず本がすごく難しかったです。だから演出の田中(麻衣子)さんと僕たち4人(矢崎広、小川ゲン、佐野岳)で、“僕たちなりの答え”を出そうと、試行錯誤してやっていたのを覚えています。
──どのように作っていったのですか?
田中さんは演じる僕たちの気持ちに歩み寄ってくださるので、稽古場では自分の解釈を提示して「どう見えますか?」という話をよくしました。だから本当に「みんなで一緒に作っていった」というような感覚が大きいです。
──柳下さんは「学生2」という役で、ジュリエットを中心に演じましたね。
そうですね。ジュリエットを演じているんだけど、「学生2がジュリエットをやっている」という感覚が強いお芝居で。そこに苦労しましたし、不思議な作品だったなと思います。

──続けて4月には再び『ロミオとジュリエット』を題材にした、Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』に出演しました。これは石丸さち子さんが『ロミオとジュリエット』を題材にして脚本・作詞・演出を手掛けたオリジナルミュージカルで、登場人物も時代背景も現代的で、結末も石丸さんならではでしたね。柳下さんのマキューシオ役をモチーフにしたポドフ役が合っていました。
石丸さんは蜷川幸雄さんの演出助手をしていた方で、蜷川さんも「『ロミオとジュリエット』はマキューシオの話だ」とおっしゃったことがあるそうです。シェイクスピア自身も、マキューシオをやってほしい役者さんを口説くときに、タイトルを聞かれて『マキューシオ』と答えたという話もあるそうで、そういうこともあって、石丸さんもマキューシオには思い入れがあったようです。
──観客にとっても、心に残る役だったと思います。
シェイクスピアっていろんな読み方、捉え方ができるし、どれが正解というのもないと思うんです。そのなかで、『5DAYS』のマキューシオ(ポドフ)の感情として色濃く出されたのは、ロミオ(ハワル)を想う気持ちで、どれくらい想っているのかとか、LOVEとLIKEの割合とか、その加減が難しかったですね。今回は、石丸さんの脚本と演出なので、ああいうふうになりましたけど、演出や役者によって全く変わる物語だと思いました。
──石丸さんの演出は熱いですし、内側も抉り出されますよね。
稽古場で一番熱演してくれる方です(笑)。僕はずっと試されてる感じがしていました。「こうして」とか「こうしなさい」というより、「何を思ってるの?あなた」という感じの稽古でしたから。そのなかで僕は、もちろん石丸さんは本を書いたわけだから役について一番わかっている方なのですが、だからこそ「そこを超えなきゃな」という気持ちがありました。だから石丸さんに「そういう面もあったのね」と思ってもらえるように、と考えてやっていました。「ポドフのことは僕が一番知っています」という状態にならないと、あれだけ熱がある方の演出は受けられないので。
──和田俊輔さんの音楽もまた合ってましたね。ポドフの歌もメロディ、歌詞含めとても印象的でした。ただ稽古場で柳下さんが「歌うのは苦手」ともおっしゃっていたのも覚えています。
いえ、僕は歌うのは好きなんですよ。柳下 大として歌うのは好き。でも、これは勉強不足なだけですが、ミュージカルの歌い方はやっぱり難しいんですよね。ただ石丸さんも、ミュージカル的な歌い方を求めたわけじゃなかったから。“技術で歌う”というよりも“気持ちで歌う”という感じでやれました。

永井愛の“言葉”の凄さと
先輩たちの力を感じる日々

──6月から9月にかけて二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』に出演されました。これもまた評判がよかった作品ですね。
楽しかったです。少人数の芝居で、大人の方々と一緒にお芝居できて。二兎社は前作の『ザ・空気』でも演劇賞をいくつも受賞していて(作・演出の永井愛は第25回読売演劇大賞の最優秀演出家賞、二兎社は優秀作品賞、キャストの若村麻由美は優秀女優賞をそれぞれ受賞)、この『ザ・空気ver.2』も永井さんの本がすごくよく出来ていて、単純に台詞を喋っているだけで伝わるのがわかりました。
──そういう感覚はいつ感じましたか?
本番が始まってからですね。僕は大手新聞社の若手記者、小林の役でしたが、僕自身はそこまで世の中のことをわかっていないので、台詞の内容も「そういうことがあったんだ」と思うことが、最初はたくさんあったんです。でも、幕が開いてみると、観にきたお客さんたちは、そういう台詞の中に永井さんの仕掛けたもの一つひとつに反応して笑っている。そういうのを目の当たりにして、「すごいな!」と思いました。
──小林記者は、最初は正義感に燃えているのですが、最後は空気を読んで変節していく。でも柳下さんが持っている素直さが生きて、憎めない青年になっていました。小林として役作りは?
小林記者の29年間を、学校ではこうで、就職先でこういうことがあって……というふうに考えたりしたのですけど、それよりも、書いてあることをちゃんとお客さんに伝えようと。それができれば小林のことも伝わる本になっていたと思いますし、舞台の上でなにが起きているか、みんながなにを思って喋っているか、それぞれの“言葉”を伝えることが一番大事な舞台だったと思います。
──永井さんはどんな演出をされるのですか?
明確なんです。ご自分で書きながら演出もしているし。実は台本が書き終わったのは本番1週間前だったのですが、永井さんのなかでは既に見えているから、「こういう人」「こういう感じで喋って」と、具体的なイメージを言ってくださるので、あとはそれを自分のなかで膨らませていく感じでした。
──5人だけの舞台で、共演者は安田成美さんや眞島秀和さん、馬渕英里何さん、松尾貴史さんと年上のキャストばかりでした。
皆さんすごい方ばかりですから、お芝居を見ているだけで楽しかったですし、「こういう力のある人たちが俳優として残っていくんだな」と感じました。そういうなかで、一番年下で参加させてもらった自分の一生懸命さと、まだ駆け出し記者の小林がうまく重なったんじゃないかなと思っています。永井愛さんとの出会いは、とても得るものが多かったし、これからの自分にとって大きな意味があったと思っています。

憧れの新感線でもがきながら
探し続けた「自分らしさ」

──そして年末には、ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3で、憧れの新感線の舞台に、グレコ役で出演しました。
出演が決まったときは本当に嬉しかったです。
──実際に稽古が始まってどうでしたか?
理想と現実のギャップに戸惑ったっていう感じでした。そこでやられているのは、自分が観てきた“新感線の舞台”の稽古なんですが、そこに自分のピースがなかなかはまらないっていう。
──新感線の作品を観ているときに、「ここに自分がいたら」という想像をしたことはあったのですか?
それが全く想像できていなかったんです。ただ好きで観ていたというか。「いつか出てみたいな」という感覚だったんですよね。それも「アンサンブルで出てみたい」くらいのイメージで、もし役をもらっても自分ができるのかというクオリティの表現がされていましたから。だから稽古中は苦しかったです。次の日が休みだと、出演者仲間を誘ってヤケ酒してました(笑)。
──演出のいのうえひでのりさんとのコミュニケーションは?
それが、すごい人の演出を受けてると思ってるのでテンパっちゃって(笑)。とにかく「やって」と言われたことを必死でやってるつもりなんですけど、テンパりすぎてるから全然違うことになってたりするんです。劇団員の皆さんは「いのうえさんに聞きに行っていいんだよ」と言ってくださるんですけど、それもなかなか行けなくて。粟根まことさんと吉田メタルさんとは共演経験があったので、いろいろ話してくださったり、橋本じゅんさんも気にかけてくださったりしたんですけど、僕、新感線メンバーが好きで憧れているから……。もうよくわからない状態でしたね。稽古映像を観ると、全然できてない自分もわかるし。
──それでも幕は開くわけでしょう?
そう。だから幕が開いても、自分のなかで「こういうことを求められてるけど、できてない」というのがあって。公演中も毎公演録画を確認して、少しずつでもいいから一つ一つやっていこうとしていた感じです。そんなとき事務所の社長が観に来てくれて「もっとあなたらしくやりなさい」と言われて、確かに自分らしさは全然出てないなと思って。そこから「自分らしさってなんだろう」とか、この作品に役に立つためのグレコって?とか考え出しました。本当だったら稽古が始まるときに考えるようなことなのに、本番が始まってやっと考えられるようになった。余裕がなかったんですよね。

──グレコ役としての見せ場もありましたし、パワーもあって、そんなに悩んでいたようには見えませんでした。
今はだいぶラクになりました。それには1つきっかけがあって、ちょうど折り返しくらいの頃、なんとなく自分でも課題が明確になってきたし、ひとまず最低ラインにはいけたかなというところにきて、逆になんか不安になって、これまで色々な作品でお世話になっている演出家の宮田慶子さんに観に来ていただいたんです。宮田さんと会った瞬間、思わず泣きそうになりました(笑)。でも宮田さんが「大丈夫、ちゃんとあなたがやれることやってるから」と言ってくださって。それを聞いてふっきれて、そこからはラクになりました。
──ちなみに「新感線でこれができて楽しかった!」というのは?
新感線の殺陣が好きだから、それができるのは楽しかったですね。毎日チェックしてもらって、チェック事項も少しずつ減っていきました。
──そうやって積み重ねることで、最初に自分のピースがなかなかハマらないと感じたことが、ハマっていった感覚はありますか?
そういう感覚はあります。この作品が終わったら達成感はすごいだろうなと。ただ、目標が一旦なくなる気はしています。
──ちょうど30歳の節目に、そういう作品に出られてよかったですね。
そうですね。でも今はあと1週間ありますから、ちょっとでもよくしたいです。そうしなきゃ出た意味がないと思うし。出るからには「できてる」じゃなくて「めっっちゃいい!」じゃないといけないと思うから。
──最後に2019年の目標は?
年が明けてからゆっくり考えます(笑)。

やなぎしたとも○神奈川県出身。06年、俳優デビュー。以降、映像や舞台で活躍中。最近の出演作は、ドラマはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』BSスカパー!藤沢周平シリーズ『果し合い』MHKドラマ『みをつくし料理帖』NHKプレミアムドラマ『主婦カツ!』舞台は『熱海殺人事件 Battle Royal』『アダムス・ファミリー』『真田十勇士』『オーファンズ』『浮標』『お気に召すまま』ミュージカル『手紙』『牡丹燈籠』『Shakespeare’s R&J』Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3など。

 

【取材・文/中川實穂 撮影/田中亜紀】

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