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『ウエアハウス─double─』で二人芝居に挑む!平野良、小林且弥インタビュー

演出家・鈴木勝秀の26年に渡る実験的シリーズ「ウエアハウス」。その最新作 『ウエアハウス─double─』が1月25日~2月2日、新国立劇場小劇場にて上演される。

このシリーズは エドワード・オールビーの戯曲『動物園物語』をモチーフに、鈴木勝秀が創作する濃密な世界。今回は平野良と小林且弥が二人芝居として取り組む舞台となる。閉鎖された教会の地下にある“憩いの部屋”で、各々が詩や小説、戯曲などを暗唱するサークルに参加しているヒガシヤマ(平野)が、一人、アレン・ギンズバーグの長編詩「吠える」をひたすら練習しているところから舞台は始まる。そんな彼のもとに謎の男・ルイケ(小林)が現れ、たまたま出会った見知らぬ同士の、極当たり前の会話が交わされていくと思ううちに…と、ドラマが怒涛のように転がっていく物語だ。

そんな、息もつかせぬ二人芝居を繰り広げる、平野良と小林且弥が作品への意気込みや、鈴木勝秀演出、更に共に初めてだという二人芝居を繰り広げる互いの魅力までを語り合ってくれた。

小林且弥 平野良

ある意味でどうにでもなる演劇の強度がある

──非常に濃密な会話劇ですが、作品に感じていることから教えてください。

平野 最初に台本を頂いた時には、開いたあと1回閉じました(笑)。

小林 あー、そうだよね!(笑)。

平野 年末の明治座の変『麒麟にの・る』でW主演をやらせて頂いている最中に台本が届いたので! パッと開いて、そっと閉じて(笑)しばらく押し入れにしまいました。これは今は見られないなと(笑)。

小林 ホント、そう(笑)。

平野 台詞量も膨大ですし、流れと言うのか、作品の世界観もこれは今は見られないというところからはじまりました。滔々と話す会話劇のように見えて、ものすごく色々な要素がないですか?

小林 うん、すごく入っている。

平野 そもそも詩の朗読をするサークル活動をしている人物が、朗読の練習をしているところから始まるんですけど、それもひとつひとつどんどん変化していく。こう言っているんだけど、実はこう思っているとかもそうですし、互いのイニシアチブも刻々と変わっていくので。

小林 作品の持っている強度が強いんだと思います。強度って何かと言われたら、人それぞれ、その答えは様々だと思うんですけど、今回の『ウエアハウス』について言えば、僕が意味する強度という言葉にすごく当てはまるというか。。ある意味でどうにでもなると言ってもいいのかも。プロセスも自由だし、完全に壁を取り払うこともできるし、一方でそのまま演じることも可能な空気感。どうにでも色を変えることができるという、強度を感じます。それは作品自体にご都合主義からは程遠い距離があり、俳優を自然と導いてくれるようなプロセスが描かれてるから。

──基本的に、お客様がお二人を取り囲んでいる形ですよね?袖に引っ込むということがない。

平野 そうです。出ずっぱりになります。

小林 舞台のプロセニアムの向こうでではなく、お客様の中の円形で演じるというのが、この作品には絶対に合っていると思います。

──その中で、演じる人物に対して大切にしていることは?

平野 二人共ある種のエキセントリックさがあるし、人って必ずそういう面は秘めていると思うんですが、バッと観て頂いた時には、僕の演じる「ヒガシヤマ」の方がお客様に近いような気はしています。僕は昔電気屋さんで働いていたんですが、そこに買い物に来てくれていたお客さんを役作りの参考にしています。

──そう単純ではないでしょうが、それは、一見しては一般社会に普通にいる人のようにということですか?

平野 そうですね。そういう普通の人にも「おっ?」という部分が見える時があるでしょう?その感覚です。

小林 「ルイケ」は何をしにここに来たのか?が見えていない人で。その目的が、演劇が進むに連れて見えてくるので、ともすると異邦人っぽく演じてしまいかねないのですが、できるだけそうではなく、すぐそこにいる人、こういう人たちがあなたのすぐ近くにもいますよ、という風に演じたいなと思っています。

平野 もちろんストーリーありきなんですけれども、でも、そこまでストーリーに依存していない作品で、人なんだろうなと。

小林 あぁそうだね、人ありきの作品だと思う。

走り出したら止まらない二人芝居

──お二人共、二人芝居へのご出演は初めてとのことですが。

平野 初めてで、大変ではあるんです。ものすごく大変なんですが、楽しいと言えば楽しいなとも。

小林 今この瞬間手放しで「楽しいですよ!」とは言えないんだけれども(笑)。そう言えるようにしていきたいなとは思っていて。まず話しかけられたら次は絶対自分だから!(笑)。その絶対的なるものが、二人芝居なんだ!と。これはひょっとしたらまだ一人の方が楽なんじゃないか?と思うくらい(笑)。

平野 あぁ、まあね!(笑)

小林 だって一人なら黙っちゃったとしても、また自分の間合いで話しだせば良いじゃない!これが二人になると、良(平野)が喋ったら俺が喋る。俺が喋ったら良が喋る。ここが絶対的だからね!

平野 それが不自由でもあり、自由でもあるのかな。いつも不自由に感じていることは今回自由だし。いつも自由に感じていることが今回は少し不自由かなと思っていて。それこそ楽しい会話をしている最中にひとつ台詞が飛んじゃったら、今回は絶対におかしいですものね!

小林 あー、そうだなぁ。

平野 「あっ?」ってなってしまったら、次の台詞に戻す為には、相当バイパスを通ってこないと戻せないと思う。

小林 一回走り出したら止まらないからね!

──その止まらないお芝居の作・演出をしていらっしゃる鈴木勝秀さんについてはどうですか?

小林 スズカツさん(鈴木)は常にどう規制を破ろうかを図ってる方だと思うんです。ひとつの動作を事細かに演出でつけていくということは今回なさらない。何かのボタンをハメていく時にも、決して最初から「こうしてください」とはおっしゃらない。どのタイミングで言うかを図っている時もあれば、現場で生まれてきたものを優先してそっとしまう場合もある。基本的にスズカツさんって、世間ではもちろん「演劇人」なんだろうけれども、僕は彼には決められたカテゴリーがないような方な気もしていて。この作品も映像でやろうと思えば絶対にいけると思うんです。

平野 あ、すごく面白いと思います!

小林 だから本当に畑のない人、既成のカテゴリーなんて関係ないだろう?みたいなところでやっていらっしゃることに、毎回すごく刺激をもらいます。それは演出を受ける度に感じますね。

平野 僕は舞台で演出して頂くのは初めてなんですが、1年半くらい前にリーディングをさせて頂いていて。その時はあまりたくさんお話はなさらなかったんです。「これはこういう風にやりたいんです」という最低限のルールを示されただけで「あぁいいですね、では本番よろしくお願いします」のような感じで。でもそれはリーディングだからだろうと思っていたので、舞台の演出をされる時には怖いのかな?と想像していたので「こんなに陽気におしゃべりされる方なんだ!」がまず衝撃でした!すごくおしゃべりになりますよね?

小林 そうだけど、いや、俺はスズカツさんが怒るの見たことないからさ(笑)。

平野 そうなんですね!

小林 と言うのか、たぶんね、怒っている時も笑ってるの(笑)。一応ここは形として怒った方が良いのかな?で、やっている感じがする。だって前ね「本番どうでも良い」って言っていたもの!(笑)。「稽古の中で見たいものが見られたらもうそれで良い」と。それって、自分がもし演出をする側に立って想像してみると、稽古を経て、例えば本番で役者の台詞が飛びましたがあったとしても、それで腹が立つか?と言ったら僕も別に腹立たないと思う。もちろん烈火の如く怒る人もいますし、演出家として自分の名前が出ている以上は、作品に傷をつけられたくないと感じる人もいるんだろうけれども、僕自身はきっとそう感じない。だって本番開いたらもう役者に渡している訳だから。

──確かにそうおっしゃる演出家さんも多くいらっしゃいますね。幕が開いたらもう自分にできることは何もないと。

小林 そうなんですよね。だから非常にいつも穏やかですね。

平野 穏やかにたくさん話してくださるのでありがたいです。

本当に芝居が好きなんだなと

──お二人は今回6年振りの共演とお聞きしましたが。

小林 舞台はだよね。

平野 『歳末明治座る・フェア~年末だよ!みんな集合!!~』以来です。

小林 『る・フェア』って6年前なの?なんだか、まだ6年なんだって気がする。

平野 しかもその時には絡んでないですよね?

小林 絡んでない。

平野 そもそも同じ場面にいた記憶がないです!

小林 良がものすごく早口でパーッと喋ってハケていくのを、上から見ていたのは覚えてる(笑)。

──それ以来ということは、今回とは舞台の作り方も対照的なのかな?と思いますが。

小林 いやね、平野良は本当に凄いですよ!

平野 なんですか、それ(笑)。

小林 だってその同じ明治座の年末祭シリーズで、去年の12月31日までW主演をやっていたんですよ!それからほんの4日で台詞入ってたんです!俺なんて12月からはじめて3週間くらいかけて徐々に徐々に覚えていったのに、こいつは本当にヤバいです、化け物です!

平野 違うんですよ! 年末祭がカウントダウンで新年を迎えた元旦に終わり、2日は休みで、3日がこの舞台の顔合わせだったんです。その3日に「俺はもう台詞入れてるからな!」って圧かけて来たんです!

小林 違うよ!俺は「不安になるから10日まで台詞入れるなよ!」って言ったんだよ!

平野 違う、違う!「俺は入れてるからな!」って先輩の圧が凄かったから(笑)、3日終わった後に「これはヤバい」と思って、もう必死で!

──押し入れに入れていた台本を出したと。

平野 そう、もうずっと読み続けて!

小林 だからって、普通そんな簡単に入る量の台詞じゃないんだから! もうね、こいつは半端じゃない、なんかヤバいことやってるに違いない!(笑)

平野 ヤバいことって、何やったら台詞が入るんですか!?(笑)

小林 俺が訊いてるの!(笑)もう本当に良は凄いです!

──そんなお二人がお互いに感じる魅力は?

平野 僕はこの世界に入ることに両親が反対だったこともあって、中学生の頃から自分で道を探したので。

小林 自発的に?

平野 そうです。もちろん簡単ではなかったし、紆余曲折もあり離れていた時期もあるんですけど、とにかくお芝居が好きでお芝居がやりたい!という気持ちが強くあって。だからこそ本当に芝居が好きな人しか、お芝居はやってはいけないと思っているし、本気で芝居が好きな人、芝居と真剣に向き合っている人というのが本能的にわかるところがあるんです。それをコバカツさん(小林)には、10年前初めて出会った時からビシビシと感じました。とても真剣にお芝居に向き合ってきていて、センスもあって、尚かつ未だに「芝居ってなんだろう?」と考え続けている方という印象でした。自分の感覚を決して無下にしないし、それでいてものすごく緻密に考えていらっしゃる。ですから今回も最初の台詞を発した瞬間に、色や匂いが充満するようなお芝居をされるので、良いな、ステキだなと思っています。

小林 今、良が自発的に、しかも芝居をやりたいと明確に思っていたというのを聞いて改めて凄いなと思ったんですけど、僕は実はそこまでハッキリ芝居をやりたいという思いがないまま入ってしまったところがあって。だからこそはじめて数年は相当痛い目に合っているんです。それで現場を重ねる毎に、結局良と同じところに行きついたんですけど、芝居って本当に芝居が好きな人しかやってはいけないんだなと感じました。じゃあ自分はどうしたか?と言うと、一生懸命芝居を好きになろうとしました。それをずっと頑張ってやってきたからこそ、俺は良の芝居に、この人は本当に芝居が好きなんだ!を感じます。しかもすごくクレバーだから、パッとわかっちゃうところがあるにもかかわらず、わかっちゃったからって何?と自問自答を続けている。すぐにわかったところを更に取っ払おうとしているのが伝わるんです。俺の中から出てきたものはこうなんだけれども、それは単に自分がやりたいだけのものになっていないか?を常に自分に問いかけて選択している。だから僕も含めて、彼のお芝居が好きな役者さんはとても多いと思います。お芝居に携わった人で良の芝居が嫌いな人はおそらく一人もいないだろうなと思うくらい、癖になるお芝居をする人ですね。僕なんか例えば身長がデカくて、パッと見、変な人なんだけど(笑)。

平野 変なってなんですか?(笑)

小林 いや、怖そうだとかよく言われるから(笑)。でもそれって逆に見た目にフックがあるんですよね。でも良って見た目、ある意味で普通でしょう?でもそこに持久力と吸引力があるから、惹き付けられた人を離さない。だから今回本当に良が相手で良かった!この芝居。

──では、今回の舞台を楽しみにしている方達にメッセージをお願いします。

平野 スズカツさんもおっしゃっていたのですが、作品である以上好き嫌いは当然出るとは思うのですが、でも演劇が、お芝居が心底好きな僕にとっては大好きな世界観、演劇空間が広がっている作品です。わかりやすい起承転結に帰着するエンターティメントとは違いますが、とても文学的なのに、日常や、自分自身や、自分の周りの人を想起できる作品でもあります。ですから一人で観て頂いてももちろん楽しめるのですが、観た後に動き出すもののある純文学のような要素があるので、同じ作品を観た方同士で話し合っても面白いと思います。きっとお一人お一人受け止め方に差異があるし、差異があると感じることも楽しんで頂けると思うので、是非遊びにきてください!

小林 ほぼ同じです。

平野 いや待って、それで終わらないで!(笑)

小林 だって、平野良の今のまとめが本当に良かったから!そうですね、それにプラス、もちろんご覧になり方は自由なんですけど、この作品は、観劇する、舞台を観に来るという感じとは少し違うのかな?と思っていて。目撃しに来て欲しい!という気持ちがあります!最後には笑って劇場を後にできる舞台を創りますので、是非目撃しに来てください!

ひらのりょう〇神奈川県出身。1999年テレビドラマ「三年B組金八先生」に出演。以後、テレビ、バラエティ、舞台と活動の幅を広げている。近年の主な舞台作品に『文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌』ミュージカル『憂国のモリアーティ』舞台『アオアシ』ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ明治座の変『麒麟にの・る』等があり、4月ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』への出演が控えている。

こばやしかつや〇山口県出身。01年モデルとしてデビューし、02年に俳優デビュー。以後、テレビ、映画、CM、舞台と幅広い活躍を続けている。近年の主な舞台作品に『幕末太陽傳』『僕のリヴァ・る』『英雄の運命』『魔王コント』『僕のド・るーク』等がある。

【公演情報】
『ウエアハウス─double─』
脚本・演出:鈴木勝秀
出演:平野良、小林且弥
●1/25~2/2◎新国立劇場小劇場
〈料金〉8,000円(全席指定・税込)
〈アフタートーク〉
・1月26日(日)12:00 平野良、小林且弥、鈴木勝秀
・1月27日(月)19:00 安西慎太郎、平野良、小林且弥
〈公式サイト〉http://le-himawari.co.jp

 

【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】

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