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最後の追悼公演はお祭りで終わらせる!「つかこうへい Lonely 13 Blues」石田明・高橋龍輝・久保田創 インタビュー


つかこうへいの十三回忌となる本年、最後の追悼公演として「つかこうへい Lonely 13 Blues」と銘打ち、つかのホームグラウンドである紀伊國屋ホールで『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』と『初級革命講座 飛龍伝』が連続公演として上演されることになり、7月8日には『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』の幕が開き、熱い舞台が繰り広げられている(18日まで)。
続いて23日〜25日までは『初級革命講座 飛龍伝』が控えている。

『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』は1987年に『蒲田行進曲』の完結編として発表され、銀ちゃん自身が危険な「階段落ち」に挑戦するという衝撃的な内容になっている。今回の舞台は、2020年に上演が予定されていたが、コロナ禍により朗読劇に変更して上演したもので、待望の完全版がついに姿を現すことになった。

また『初級革命講座  飛龍伝』は、1974年に初演。伝説の石「飛龍」で機動隊と闘った元全学連の闘士・熊田留吉と元機動隊員の山崎一平の愛憎にも似た関わりを描く少人数での作品だったが、『飛龍伝’90』から大劇場用に群衆劇としてショーアップ。以来、つかの代表作の1つとして繰り返し上演されている。

この連続公演に挑む石田明、高橋龍輝、久保田創が2つの作品と役柄、そしてつか作品について語り合った「えんぶ8月号」の誌面を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

高橋龍輝・石田明・久保田創

「俺はただの大部屋とは違うんです」という思い

──まず『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』(以下『銀ちゃん』)ですが、石田さんはこの作品は?

石田 初めてです。ただ、つかさんの作品はほとんど知らなかったんですが、『蒲田行進曲』だけは映画を観てたんです。だからいつも味方(良介)と「一緒に『蒲田』やりたいね」と言ってて。味方は2020年の朗読劇でやれたんですが、僕はスケジュールの都合で出られなかった。ヤスは植田(圭輔)くんで、僕は公演を観てすぐ植ちゃんに電話したんです。「よかったよ! でも俺はもっとやるからね!」と(笑)。

──今回は念願の舞台なのですね。高橋さんは俳優の若山馬之助役です。

高橋 当時の時代劇の大スターなので、そのスター性を面白おかしく出せればいいなと。実は今、『初級革命講座  飛龍伝』(以下『飛龍伝』)だけで頭がパンパンで、『銀ちゃん』まで考えられなくて。

久保田 『飛龍伝』はすごい台詞量だからね。龍輝は舞台映えがするので、中村屋喜三郎の(細貝)圭ちゃんと2人並ぶと、その対比も含めてかっこいいと思うよ。

──そういうスターたちを撮る監督が久保田さんです。

久保田 朗読劇でも同じ役をやったのですが、今回は新作のつもりですし、監督という作り手の立場ということでは、物語の見え方なども演出の岡村さんと相談できるので、うまく作品とリンクしていけばいいなと思っています。

──久保田さんは北区つかこうへい劇団出身で、つかさんをずっと見てきたと思いますが。

久保田 いろいろ思い出しますね。入団して初めて演出を受けたのが『蒲田行進曲 城崎非情編』(06年)で、銀ちゃんは錦織(一清)さんでヤスは風間俊介さん、僕は大部屋中の大部屋で、本番の台詞は「はい」だけで、銀ちゃんに「久保田、ローレックスを持ってこい」と言われて、ローレックスをみんなにばらまく役でした(笑)。

──『銀ちゃん』では、ヤスは一幕で姿を消すのかと思ったら、またドラマチックに登場しますね。

石田 いや一幕しか出てこない可能性もあります。ヤスは生きてるんですが、僕が生きてないかもしれないので(笑)。稽古で一幕の最後を1回やっただけで、「これ死ねるやつやな」と(笑)。

久保田 「監督、ちゃんと撮れましたか!」バタン、ですね(笑)。

──ヤスは背負っているものが重いので、演じるにもエネルギーが要るでしょうね。

石田 愛なんですよね。小夏とルリ子に対しても銀ちゃんに対しても、映画に対しても愛が強い。その、愛が強いゆえのヤスの葛藤を見事に出せたら、植ちゃんをぎゃふんと言わせることができるかなと。

──植田さんではなく沢山のお客様をぎゃふんと。

石田 いや、大部屋の話なので近くにいる役者を意識しながらやったほうがいいので。僕はヤスの「俺はただの大部屋とは違うんです」という台詞が好きで、「俺だけは違う」という思いがヤスをそこに立たせている。銀ちゃんと仲が良いことも自慢で「お前ら飯食ってこい。あ、ヤスお前だけ残れ」と言われると「ほらね」と思うし。だから僕は今回、歴代のヤスの方たち、平田満さんも柄本明さんも、みんな大部屋役者に見立てて、「俺はただの大部屋とは違うんだ」と言ってやります(笑)。

「銀ちゃんが死んだ。いまだに信じられないでいる」

──もう1作の『飛龍伝』ですが、高橋さんは山崎役と知っていかがでした?

高橋 5月の『フラガール』の稽古最終日に、岡村さんから「プレゼントだ」と台本を渡されて「やったー!」と喜んだんですが、家に帰って開いて…すぐ閉じました(笑)。

──7年前に出演した『いつも心に太陽を』が『飛龍伝』と同時上演でしたね。

高橋 そのとき観ているんですが、自分の公演のことしか記憶になくて。でも最後に上からゴンドラで降りてくるシーンだけ覚えてます。かっこよかった。

──熊田役はそのときと同じ吉田智則さんです。

高橋 楽しみですけど、恐いですね。台詞さえ入れば大丈夫なんですが、なかなか入らなくて。この前も友だちの前で台詞を言ってたら、「何喋ってるの?」と聞かれて、「石の名前を言ってるんだ」と答えたら、「石の名前?アタマ大丈夫か?」って(笑)。でも覚えていくと楽しいんですけどね。

──久保田さんも『飛龍伝』に出演します。

久保田 役がまだ決まってなくて、今は他の公演に出ている智則さんの代わりに熊田役で稽古してます。岡村さんが「智則と競わせてお客さんに選んでもらうか」とか言ってて(笑)、もちろん「出ろ」と言われたらいつでも出ます。

石田 俺も出るよ(笑)。智則さんとはやり合ってみたかったから。熊田でも山崎でも台本持って出ます(笑)。

高橋 やめてください(笑)。

──『飛龍伝』は争奪戦ですね。最後に追悼公演への思いを伺いたいのですが。

石田 『蒲田』という作品は、つかさんを知らない人たちにも名前が知られていますが、この物語をこの先もちゃんと伝えるためにも、味方を筆頭に全員でお客様のど芯に、どストライクで届けたいと思っています。死に物狂いでやります。『飛龍伝』のほうは全員の寝首かいてやります(笑)。

高橋 『銀ちゃん』は楽しくやりたいです。『飛龍伝』は台詞が入ったら誰にも負けないです。勝負するのは大好きなので誰にも譲らないつもりで突っ走ります。

石田 あの台詞量をフルアクセルでやったらほんま死ぬよ。空気吸うヒマもないから。

高橋 わからない言葉とかいっぱいあるんですが、僕はとにかくフルマックスで突き進むしかできないので。

石田 龍輝の良さはそこだからね。『新・熱海』でも、合ってるのか間違ってるのかも、何言ってるのかもわからないんだけど、台本に寄り添わなくても台本に勝てる出し方ってあるんだなと。それが『飛龍伝』の山崎でできたら物語がまた一歩深くなるかもしれないね。あの時代は考えて生きてたら駄目で、頭の良さとか関係なく、ただただ行動しなきゃいけない時代だったと思う。だから龍輝みたいに行動で示せる人間が山崎に最も合ってるのかなと。

高橋 ありがとうございます。そういう気持ちで頑張ります。

久保田 僕は追悼公演と付くものにはほとんど出ているんですが、でもいまだに実感が湧かないんです。岡村さんが『銀ちゃん』を演出したとき、「久保田、書いてみるか?」と言ってくれて、上演台本の一行目の「銀ちゃんが死んだ。いまだに信じられないでいる」という、あれは僕が気持ちのままに書いた言葉なんです。お葬式が実感がないまま始まってしまったみたいな気持ちでずっときて、でも13回忌は追悼の終わりだと岡村さんは言うし、終わるからには先に繋げていかなくてはと石田さんは言う。それはこの12年間にそういう人が現れたということで、石田さんも龍輝もそうだし、ここからまた新しいスタートをするぞということだと思うんです。だからお祭りになったらいいなと。つかさんもそういうことが好きだったから。『銀ちゃん』でお葬式で始まって、『飛龍伝』でお祭りで終わる、そういう公演にしたいですね。

高橋龍輝・石田明・久保田創

いしだあきら〇大阪府出身。2000年にお笑いコンビ「NON STYLE」を結成。07年に「爆笑オンエアバトル」9代目チャンピオン。同年に「M-1グランプリ」で優勝を果たすなど、高い評価を得ている。脚本家・俳優としても活躍中。最近の出演舞台は、『飛龍伝2020』ミュージカル『衛生』『トキワ荘のアオハル』『熱海殺人事件ラストレジェンド~旋律のダブルスタンバイ~』など。

たかはしりゅうき○宮城県出身。2008年『ミュージカル テニスの王子様』(越前リョーマ役)でデビュー。映画の主演やドラマなどで活躍。一時活動休止後、2019年1月にダンスボーカルグルーブで活動再開。最近の出演舞台は、『あずみ~戦国編~』『フラガール -dance for smile-』『修羅雪姫-復活祭50th- 修羅雪と八人の悪党』『新・熱海殺人事件~ラストスプリング』など。

くぼたそう○千葉県出身。北区つかこうへい劇団出身。劇団時代から外部出演でも活躍。最近の出演舞台は、『新・幕末あ純情伝』FAKE NEWS、『あずみ~戦国編~』『銀幕の果てに』『飛龍伝 2020』、朗読『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』『フラガール – dance for smile – 』など。また『修羅雪姫』(2021年)と『修羅雪姫-復活祭50th- 修羅雪と八人の悪党』(2022年)では脚本も手掛けた。

【公演情報】
十三回忌追悼公演『つかこうへいLonely 13 Blues』
『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:味方良介 石田明
北野日奈子 細貝圭 中本大賀(円神)高橋龍輝 佐久本宝:河本祐貴 久保田創
●7/8~18◎紀伊國屋ホール

『初級革命講座 飛龍伝』
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:高橋龍輝 吉田智則 佐々木ありさ 久保田創
●7/23~25◎紀伊國屋ホール

〈お問い合わせ〉Mitt 03-6265-3201(平日 12:00~17:00)
〈公式サイト〉http://www.rup.co.jp/

※この公演はTBSテレビで放映されます。8/28(日) 午後10:00〜深夜0:00

 

【構成・文/宮田華子 撮影/岩田えり】

 

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