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熱狂のカーニバルとダンス&ソングの競演!『SAMBA NIGHT 2022』上演中!

カーニバルの一夜を舞台に、「運命の宝石」の争奪戦を描く DIAMOND☆DOGS (以下D☆D)のダンス&ソングショー『SAMBA NIGHT 2022』が、銀座の博品館劇場で上演中だ(29日まで)。

『SAMBA NIGHT 』は、2009年、2011年に上演されたD☆Dの作り上げる熱いショーステージ。約10年ぶりの三演目となる今回の2022年版は、リーダー東山義久を除く中塚皓平、和田泰右、咲山類、廣瀬真平、新開理雄、HomerのD☆Dメンバーに、宝塚屈指の名ダンサーと謳われた宇月颯、同じく名ダンサーの誉れ高く、昨年11月に宝塚を退団後の本格的な初舞台となる沙月愛奈をはじめ、やはり高いダンス力で様々な舞台で大活躍している米原幸佑、木戸邑弥、穴沢裕介、豊かな歌唱力に定評がある常川藍里、そしてD☆D元メンバー小寺利光の豪華ゲストが集結。ダンス&ソングの畳みかける二幕構成のステージが展開されていく。

 

SHOW1は、リオデジャネイロで繰り広げられるカーニバルの一夜に、女性リーダーTOSHI(宇月颯)が率いるSapphire Moon=青の盗賊団と、陽気で楽天的なボスこーへい(中塚皓平)が率いるSunny Ruby=赤の窃盗団が、運命の宝石jewel(沙月愛奈)をめぐって、争奪戦を繰り広げるSTORY性の強いステージになっている。

ダンスを主体にしている舞台だから台詞はないのだが、二組の窃盗団を構成するメンバー、それぞれのキャラクターがびっくりするほど立っていて、人間関係がよくわかり、スピンオフの小説が書けるやに思えるほど。さらにポイント、ポイントでは歌も入ってくるから、歌詞で物語が補強されてもいて、ダンスの迫力だけでなくドラマからも目が離せない。ダンスそのもののジャンルは異なるが、踊りで物語を伝えるという意味では、著名なバレエ作品を観ている時に近いわかりやすさと満足感があって、ぐいぐいと惹きつけられた。キャストが優れたダンサーとしてだけではなく、芝居やミュージカルの経験も豊富なことが生きているのだろう。その物語性の強さが非常に面白かった。

続くSHOW2は、各自の得意分野を盛り込んだ多彩なダンスや、歌によるセッションが続く。宝塚時代は男役だった宇月と、娘役だった沙月による熱いタンゴや、D☆Dメンバーだけの場面や、ゲストとの実に多彩な組み合わせでカラーの違う場面が繰り広げられ、あっという間に時間が過ぎていく。

特に今回面白かったのは、近年ダンサー5人、シンガー2人というくくりが、シンガーの咲山類と新開理雄も踊れば、ダンサーの廣瀬真平も歌うというように、ボーダーレスになっていたD☆Dの役割分担がほぼ取り払われたことで、咲山とゲストの常川藍里のデュエットや、咲山、宇月、小寺3人のハーモニーもあるなど、新鮮な組み合わせが次々に登場して目に耳に楽しい。ストリングの響きが豊かなやはり元D☆Dメンバーでボーカリスト、コンポーザーとして広く活躍しているTAKAのサウンドは、モダン、ジャズ、タンゴ、ヒップホップとあらゆるジャンルのダンスが登場するD☆Dの舞台に抜群にマッチしていて、舞台をさらに豊かに広げる役割りを担っている。照明効果も実に美しく、どの場面にも胸が躍った。

そんな舞台を務めたキャストをSHOW1のチームごとに追っていくと、まず青の窃盗団TOSHIの宇月颯が、冷静な女性リーダーをシャープに、どこかミステリアスに演じている。ちょっとしたしぐさや、目の動きでチームを率いていることがよく伝わり、統率力抜群。メンバーがこのリーダーに心酔していることに説得力があった。SHOW2では宝塚時代も、腰を落とす振りでは誰よりも深く舞台をえぐるように踊るダンサーだったことを、改めて思い出させるイキの良い踊りっぷりで、もうひとつの武器だった歌唱力も披露。舞台に躍動している様が心地よかった。

そのTOSHIの右腕的存在だなと思わせるゆうやの木戸邑弥は、クールな参謀でありつつ、いざとなればTOSHIを身を挺して守るという決意も感じさせて強い存在感を放つ。展開の早い舞台でいまものすごく美しいものが目の端を通っていった、と注視すると必ず木戸だったというほどの抜群のビジュアルの良さもドラマ性を高める要因になっている。明るく弾けるSHOW2で踊りまくりながら見せる、破顔一笑のまぶしさとのギャップも楽しい。

ホマのHomerは、いかにも喧嘩っ早いアクティブ系の魅力が、チームのなかでも際立っている。D☆Dに加入する前は、芝居をほとんどやっていなかったというのが、最早信じられないほど、得意中の得意のアクロバティックなダンスだけでなく、芝居心にあふれていて、二つの窃盗団の激突シーンなどでも、ドラマとして踊っていることが表情からよく伝わって頼もしい。SHOW2と共に振付も多く担い、得難い存在になっている。

しんぺーの廣瀬真平は、D☆D加入当初のアイドル系の雰囲気が、いつの間にかコミカルチックに大きく振れていて、このキャラクターも如何にもお調子者で、ある意味空気を読まないマイペースぶりが強い個性につながって面白く見せる。持ち前の高い跳躍力も健在で、SHOW2ではシンガーとしても活躍。これからさらにどんな進化を見せていくのか目が離せない。

ゆっけの穴沢裕介は、リーダーのTOSHIへの憧れが強く、なんとか褒めてもらいたいと思うあまりに失敗を繰り返す青チームのなかでのキュートな存在感を発揮。喜怒哀楽の表現がわかりやすく、ドラマを豊かにした。さらに踊った時のポテンシャルの高さが、これだけのダンサー揃いの面々のなかでも際立っているのが素晴らしく、SHOW2を含め何度となく目を奪われた。

赤の窃盗団のリーダーこーへいの中塚皓平は、赤の窃盗団自体が幼いころからの友人同士で、リーダーと言う名前で雑用全般も引き受けます!とでもいった、むしろメンバーに遊ばれているリーダー像がなんとも中塚らしい。この人がD☆Dに加入してからしばらく、舞台に登場したとき、一瞬東山義久と見間違えたことが何度もあった華やかなスターダンサーだから、東山不在の今回のステージで中塚がリーダー役を務めることにも納得感が大きい。だが、東山が舞台のどこで踊っていても、そこがセンターだと感じさせるカリスマ性を持つのとはひと味違う、後列に入ればみんなと一緒に舞台を盛り立てるという、どちらが良い悪いではなく中塚独自の個性が、こうしたキャラクターに生きていて楽しい。SHOW2では、D☆Dを率いる強い責任感、どこか張り詰めたものも感じさせ、すさまじいソロダンスの気迫が心に残った。

コースケの米原幸佑は、赤チームの切り込み隊長的な熱血ぶりに、底抜けの陽気さが加わってリオデジャネイロの物語だというもともとのストーリーを体現する存在。のびのびとした思い切りのよいダンスがなんとも小気味よく、D☆Dメンバーで構成されている赤チームに自然体で馴染んでいる。SHOW2では様々なダンスを披露するが、踊っていると舞台で大きく見えるのも実力の証だろう。

タイの和田泰右はD☆D再始動以来のお兄ちゃん感に加えて、さらに前向きな明るさを発揮する様が、日増しに個性を深めている。全員が横並びのひとつのチームに感じさせる赤の窃盗団のなかでも、こーへいで遊びながらちゃんとバックアップもしている、立ち位置が絶妙だった。SHOW2の賑やかな開幕を先導する場面も、アドリブ満載。ダンスにもますます軽妙さが加わって独自の魅力を放っている。

りおの新開理雄は、赤チームのマスコット的存在に、本人のキャラクターがベストマッチ。何をやっても失敗ばかりなのに、決して誰もりおをお荷物に感じていない、赤チームの連帯を象徴する存在として、良いアクセントになっている。SHOW2を通じてほとんどのダンス場面に入って果敢に踊っていて、D☆Dの新しい可能性を感じさせた。

彼ら人間たちを、ひいてはこの世界を創造している存在なのか?と思わせるトシの小寺利光は、作品の歴史も知るD☆DOBとして、この舞台の精神的支柱になっていることと、演じているキャラクターがぴったりと合い、幕開けから作品の世界観を作り上げている。SHOW2でも武器のタップダンスではなく、歌にあらゆるダンスにと大活躍。ここにいることがやはりなんともしっくりくる安定感が舞台を底支えした。

窃盗団が追う「運命の宝石」jewelの沙月愛奈は、美しさはもちろん、世界に名だたる宝石たちが、常に人々の運命を狂わせてきた歴史を彷彿とさせる、妖しさも醸し出して舞台に独特の空気を広げることに成功している。一転SHOW2では華やかなラテン、得意のモダンダンスの世界、さらに宇月との情熱のタンゴデュエットと、沙月がいたればこその様々な場面を披露。宝塚歌劇団退団後の本格的初舞台を見事に飾った。

あいりの常川藍里は、天使か悪魔か?という窃盗団の人間たちに対して二面性を持つ役柄で、持ち前の歌唱力を発揮。咲山類とのハーモニーが思った以上によくあっていて、物語世界を歌詞でさらに深める役割りを十二分に果たしている。SHOW2では様々なダンスシーンにも参加し、歌って踊れる力量で魅了した。

そして、るいの咲山類は、あいりと同じ天使か悪魔かという存在だが、人間たちを見渡している在りようが、D☆Dの兄貴分として、メンバーを見守っている咲山の立場と絶妙にリンクしていて非常に効果的。SHOW2も含めて、唯一無二の歌声にますます磨きがかかっているが、ここにも入るのか!と思わせるダンス力も身につけていて、パフォーマーとしてさらに充実しているのが頼もしい限りだった。

D☆Dのステージとしても休憩を入れた2幕構成は久しぶりだったが、その2幕仕立てに納得の効果があり、なんとも癖になるリピートしたい公演になっていて、博品館劇場で繰り広げられる熱いSAMBA NIGHTを堪能できるステージだった。

【公演情報】
『SAMBA NIGHT 2022』
構成・演出・振付:D☆D
音楽:TAKA
出演:宇月颯 沙月愛奈
米原幸佑 木戸邑弥 小寺利光
常川藍里 穴沢裕介
DIAMOND☆DOGS
[中塚皓平 和田泰右 咲山類 廣瀬真平 新開理雄 Homer]
●5/24~29◎)博品館劇場
〈料金〉8,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博品館1F TICKET PARK 03-3571-1003
〈公式サイト〉https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/

【ライブ配信情報】
●5/26 18:30開演(※見逃し配信中。本編のみ)
●5/29 14:00開演
〔視聴券料金〕各公演3,800円(税込)
〔販売サイト〕https://eplus.jp/sambanight2022/
〔販売期間〕 5月20日(金)10:00~視聴終了日21:00まで
※ 視聴可能期間最終日1日前よりクレジットカード限定
・見逃し配信
5月26日(木)18:30公演終了翌日午後準備出来次第~5月29日(日)23:59
5月29日(日)14:00公演終了翌日午後準備出来次第~6月1日(水)23:59
※ 著作権の都合上、見逃し配信ではごく一部に音が途切れる箇所あり

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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