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犯人を捕まえたいという執念を頭に置いて! 舞台『殺人の告白』堂珍嘉邦インタビュー

 

韓国で大ヒットし、日本でも『22年目の告白︲私が殺人犯です︲』というタイトルでリメイクされた『殺人の告白』が舞台化を果たす。犯人不明のまま時効を迎えた連続殺人事件。遺族の悲しみが癒えぬ中、自ら「私が殺人犯だ」と名乗りを上げた男が事件の全容を記した本を出版し、ベストセラーを巻き起こす。本当にこの男が犯人なのか。なぜ今になって罪を告白したのか。その背景には、観る者の予想を上回る真実が隠されていた。

事件を追う刑事チェ・ヒョングを演じるのは、堂珍嘉邦。堂珍にとって今回が初のストレートプレイとなる。憎悪。復讐。妄執。殺意。様々な感情が渦巻く世界で、どんな芝居を見せてくれるだろうか。「えんぶ6月号」に掲載された堂珍嘉邦のインタビューをご紹介する。

初のストレートプレイどれだけやれるのか気持ちが引き締まる

──原作である韓国映画の感想を聞かせてください。

こうしたサスペンス系の作品を観るときって、犯人が誰かをまず予想するじゃないですか。でもこの作品に関してはまんまと騙されました(笑)。個人的に韓国のエンタメ映画って大量にフラグを立てて最後に大どんでん返しでひっくり返すイメージがありますが、まさにそのイメージ通りの作品でしたね。

──派手なカーチェイスもあり、スピード感たっぷりの作品です。あのスケールをどう舞台化するのか、想像しきれないところがあります。

今日、(脚本・演出の)ヨリコ ジュンさんと少しお話をさせてもらったのですが、映像を駆使した見せ方を考えているとのことでした。でもこの作品のメインはアクションではなく、愛する人を殺された悲しみや犯人に対する恨みつらみといった人間ドラマ。そうしたメンタルの部分を大事に演じられればと今の段階では考えています。

──堂珍さんが演じるのは、事件を追うチェ・ヒョング刑事です。どんなところが演じる上での核となりそうでしょうか。

何としても犯人を捕まえたいという執念ですね。事件があってからずっと彼は一度もその執念を切らしたことがなかった。僕もその執念を常に頭に置いて、本番が始まったら一瞬たりとも緊張を切らすことなく、張りつめた状態で舞台の上に立ち続けなければいけないんだろうなと思っています。あと、下準備という意味ではちょっとフィジカル的なところも頑張りたいなと。今、体を絞っているんですけど。ヒョングの置かれている立場は、僕たちが生きている平和な日常とはまったく違う世界。ちょっとげっそりしているくらい痩せている方が合うのかなと。そんなところから、犯人逮捕に執念を燃やす悲壮な雰囲気をうまく出していければ。

──堂珍さんにとっては初のストレートプレイ。歌というご自身の武器を置いて芝居に臨むことになります。

まだ初舞台を踏んだばかりの頃だと、絶対歌わないと無理ですと言ってたと思うんですよ。でも今このタイミングなら、これも新しいチャレンジかなと。

──では、そんなに怖いという気持ちはない?

今のところ恐怖心は特にないです。むしろストレートプレイならではの長台詞があるなら、それも楽しみかもしれないくらい。長台詞って、長時間あの場の空気を占領することになるので、それはやっぱり快感ですよね。もちろん台詞だけでお客さんの気持ちを掴むには、背筋の通った部分がないとできないと思うし、そこは大変かもしれないですけど。物音ひとつ立てるのもためらわれるような空気の中で、自分がどれだけやれるのか。今から気持ちが引き締まるところがあります。

自分のことを俳優とは思っていない

──初舞台から10年余りの時が流れました。今、堂珍さんの活動の中で「俳優」というのはどういう位置付けでしょうか。

僕は自分のことを俳優とは思っていなくて。これまで大きな舞台に何度か立たせてもらいましたけど、実は初舞台の『醒めながら見る夢』以外は海外の戯曲ばかりで、ある意味海外でつくられた作品を日本版にリメイクするというかたちだったから、動きに関しては決まっていることが多かったんですよ。役者さんによっては、何でこのタイミングでこう動くのかがわからないと嫌がる方もいるんですけど、僕は決められたことをやる方がやりやすくて。たぶんそれは音楽をやっているからかもしれない。あらかじめ決められている動きに感情を乗せる作業は、出来上がった曲に合わせて歌詞をつけるのに似ていて、あまり気に掛けることがなかったんです。でも、今回は動きの面も含めてゼロからつくっていかなくちゃいけない。今まで以上に試行錯誤することになるかもしれないけど、ゼロから何かをつくり出していく充実感があるので、体調に気をつけながら稽古に臨みたいです。

──これだけハードな役が、ご自身では俳優とは思っていないという堂珍さんに来ることについてはどうお感じになっていますか。

でも振り返ってみると、今までの役もチャレンジングなものが多かったんですよね。初舞台の『醒めながら見る夢』は亡くなった恋人が亡霊として現れる役で、『RENT』はドラッグ依存症で、HIVに感染する役。『アナスタシア』は幼い子どもを殺した罪の意識から父親が自殺した軍人の役。そして、昨年の『ジャック・ザ・リッパー』は連続猟奇殺人鬼という役でした。そう考えると、今回のヒョングも複雑な背景を背負っているけど、いわゆるファンタジーではないし、ゴーストが見えるわけでもなければドラッグに溺れるわけでもない、現実感のある役なので、そこはあまり気負いすぎずにやれたらなと思います。

──本作は、壮絶なラストが待っています。

どんな顔をして終わりを迎えればいいんだろうっていう気持ちしか今はないですね。でも、それでいいのかもしれないなと。

──韓国版でヒョングを演じたチョン・ジェヨンから影響を受けるところはありそうですか。

おそらく意識はしていないです。誤解を恐れずに言うと、お芝居ってなるようにしかならないんですよ。そこはオーガニック志向というか(笑)。こうやってこうしたら、こうなりましたっていう、最終的にはもう結果論でしかない。そこが俳優じゃないって自分で思う理由なのかもしれないですけど。

──いつか「俳優・堂珍嘉邦」という肩書きに馴染める日が来ると思いますか。

どうだろう(笑)。僕が自分のことを役者と名乗るのは、役者の人に失礼だと思うところがあって。でもやりがいはあります。特に僕は舞台が好きで。スモークがたかれて、静まり返った暗い劇場の中、ライトを浴びて、衣装を着て、自分じゃない誰かを演じるのは楽しい。お芝居は、嘘か本当かわからない世界。その中でリアリティのある感情こそが、観る人の心を突き刺す。そこに関しては真摯に取り組み続けたいと思います。

 

■PROFILE■
どうちんよしくに○広島県出身。テレビ東京のオーディション番組『ASAYAN』の男性ボーカリストオーディションを経て、2001年3月7日に“CHEMISTRY”としてデビュー。現在まで総売り上げ1,800万枚を誇る日本を代表するアーティストとなる。並行してソロ・アーティストとしても活動し、ライブだけではなく、役者、トークゲスト、ラジオMCなど多岐にわたり活躍。主な作品に、ブロードウェイミュージカル『アナスタシア』、ミュージカル『RENT』最新作にミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』などがある。

【公演情報】
舞台『殺人の告白』
原作:Jung Byung-gil
脚本・演出・映像:ヨリコ ジュン
協力:SHOW BOX
出演:ユナク 堂珍嘉邦/
小南光司  岡田夢以 日向野祥 白又敦  加藤里保菜/
大林素子 前川泰之  岡田浩暉
●6/17~26◎サンシャイン劇場
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京0570-00-3337(平日12:00~15:00)
〈公式サイト〉http://s-kokuhaku-stage.com/

 

【取材・文◇横川良明 撮影◇岩田えり ヘアメイク◇関東沙織】

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