年末恒例「祭シリーズ」初のミュージカルに挑む!内藤大希・平野良・原田優一 インタビュー
泣けて笑えて、歌って踊って、空も飛ぶ。多種多様なエンターテイメントをこれでもかと詰め込んだ公演として、今や年末の風物詩となっている、る・ひまわり×明治座による「祭シリーズ」。
2020年栄えある10周年を迎え、観客動員10万人を突破したシリーズが、2021年11年目の新たなスタートを切るにあたり、「シン る・ひま」と題してのミュージカル化が実現!
日本の歴史のなかに残されたミステリーをオリジナルの解釈で描く本編を「グランドミュージカル」「ロックミュージカル」「2.5次元ミュージカル」等々の要素を全て取り入れ、新たなミュージカル作品として上演する。
第一部の芝居は、源頼朝と北条義時を中心に描く『明治座で逆風に帆を張・る!!』。第二部は、夢と魔法の明治座の地下王国「カマクーランド」で繰り広げられるショーで、船長が様々なキャラクター、ユニットのもとに案内する『ジャングルジャナイトクルーズ』。年越しの新たな祭典となる。
そんな舞台で源頼朝を演じる内藤大希、北条義時を演じる平野良、そして全編の演出と、九条兼実としての出演も果たす原田優一が、「祭シリーズ」の歩みと醍醐味、互いの魅力を語り合ってくれた。
怖いものがなくなってくる
──年末恒例の「祭シリーズ」ですが、これまで「祭シリーズ」を作り上げてきた皆様は、このシリーズを改めてどう感じていらっしゃいますか?
原田 「祭シリーズ」はお芝居でありショーであり、キャストもスタッフもその年の集大成として「祭りだ!」という感じでやっている、ひとつのジャンルとして確立している公演だなと思っています。ここで経験させてもらったことが今まで大きな糧になってきましたし、言い換えれば怖いものがなくなってくる感じです(笑)。ムチャぶりもありますし、上演時間も含めて、試練ではあるんだけれども、やっぱりここで年に1回ファミリー、仲間として温かい空気で「また会えたね」と集まれることで、自分も成長させてもらってきた場所ですね。
内藤 それまで明治座さんに立たせていただく機会がなかったので、最初に出演のお話をうかがった時にはとても嬉しかったのをよく覚えています。実際に舞台に立ってみたら、盆があって、花道がある舞台機構をフルに使っていて、そういう機会をいただけていることがまずすごくありがたいです。そしてこの「祭シリーズ」自体を応援してくださる方達がとても多いので、そのなかで自分がどんな形で皆さんと一緒に戦えるのか?と考えるのも楽しかったですし、本編には出られなかった年にもゲストで呼んでいただいているので、一年に一度明治座さんに立たせていただける。この嬉しい気持ちをお客様に還元できたらと思っています。
平野 最初は歴史ある明治座さんで、こんなにもある意味馬鹿馬鹿しく振り切ることができるんだ!という驚きと、新鮮さがありました。そこから今回で11周年ということは、この「祭シリーズ」自体にも伝統といえるようなものが生まれているのが感慨深いです。今や「年末の風物詩」とまで言っていただけていて、「明治座でこんなことを!?」との違和感もなくなっていますから。最初は小劇場の役者さんが中心で、もう本当にノリノリのおじ様方がたくさんいて、キスとハグで笑わせようとしている座組だったところから(笑)、色々なジャンルの人たちが加わっていって、遂にこのメンバーでミュージカルというところまできたのかと思いますし、「本当にミュージカル俳優を呼んで歌わせようとしているの!?贅沢だな」って。どこかで「今やっていることはちょっと上品だな」と思ってしまうくらいです(笑)。
原田 慣れって怖いよね!(笑)
平野 でもまぁ根本は年末に、皆様色々なことがあった一年だったと思いますが、お芝居で心をいっぱい動かしていただいて、二部で思いっきり笑ってもらう。一年の笑い締めと、新年の笑い初めをしていただくということに、スタッフ、キャスト一同真面目に取り組んでいるのがいいところだと思います。ベテラン、中堅、若手関係なく全力でぶつかっていて、その熱は変わっていない、人が生でやるエネルギーが続いているのが素晴らしいですね。
時間と感情をいかようにも表現できる
──いま、平野さんからもお話がありましたが、その「祭シリーズ」が今回ミュージカルになるということですが。
原田 普段ミュージカルの世界で活動させていただいているのに、お話を伺った最初には「ミュージカルですか?!」と聞き返してしまいました(笑)。でもこれまでも考えてみれば、僕が最初に演出をさせていただいた『麒麟にの・る』の時にも結構歌ってもらっていて、ミュージカルの要素は既にあったんですね。ただ今回は「ミュージカル」と正面から謳う訳ですから、壮大なエンターテイメントができたらいいなと思っています。扱っている時代もそうですし、登場するキャラクターも歴史上の人物なので、そこには敬意を払って、あまり崩し過ぎずに芝居をしながらも、邪魔にならないようなエンターテイメントができたらと。考えたらミュージカルって矛盾している部分がすごく多いですよね。しっかり芝居を見せたいのに歌っちゃうんだ(笑)、みたいなところがあるじゃないですか。でもその矛盾がエンターテイメントとして成立した時に、すごく武器になる。ですから、欲はたくさんありますが、音楽という武器を使ってお芝居を素敵なエンタメとして成立できればいいなと思っています。
内藤 僕は既にミュージカルをやっていたイメージがあって。
原田 あー、そうだよね!
内藤 だから逆に初ミュージカルなんだ!と思ったのですが、今までは1幕ラストの重唱も2声しかなかったんです。でも「ミュージカル」として取り組むということは3声もあるのかな?ですとか、違うメロディーを歌い合ったりもするのかな?など、ミュージカル要素が楽しみです。
平野 掛け合いはありそうだよね!そういう可能性が広がるのはすごく楽しみですし、歌は1曲のなかで色々な表現ができる。一瞬の出来事を歌い上げることもあれば、長い間に起こったことも1曲で伝えられる、時間をいかようにも使えますよね。しかも、同じ会話でも台詞で交わすのと、歌で掛け合うのとでは全く違う効果がありますから、感情も大きく動かせるので。ただ、僕の場合はミュージカル作品の経験がそれほど多くないですから、不安も大きいんですが。
原田 でも良くん(平野)と最初に共演したのはミュージカルだよ?『FACTORY GIRLS』の時。
平野 そうですね。
原田 良くんの声大好きなんだ。
平野 ありがとうございます!そう言ってもらえるのは嬉しい反面、俳優としてはやはり不安な部分もありますが、一人間としてはこの企画はすごく楽しみで、早く観たいな!という気持ちが大きいです。新メンバーもいますので、今までとは少しギアが違うものが出来上がるんじゃないかなとも思っています。
全幅の信頼をおいた者同士
──新たな「祭シリーズ」の出発に期待が高まりますが、せっかくお三方にお集まりいただいたので、是非お互いの魅力を語っていただきたいのですが。
原田 大希(内藤)くんに関してはなんといっても人に愛される。それも嫌味がなく愛されるってすごい才能だなと思っています。彼には無償の愛を渡したくなるんですよ。何をやっても「はいはい、そうか、そうか」って(笑)。でもそういう大希くんが決意を持ったお芝居をした時って、こうなるのか!という大きなギャップがあって。舞台上にいる大希くんと、普段接している大希くんがガラッと変わるところが魅力の役者さんだなと思います。もちろん歌唱力もすごいし、歌を聞いて情景がわかる、言葉が伝わる、歌ったねという感じがないと言いますか、芝居の延長で見事に歌えるのが、ミュージカルとしてとても心地良いなと思います。良くん(平野)に関しては全幅の信頼をおいています。わたし自身が一平野良ファンなんですよ。何でも器用にこなすし、あたかもサラッとやってのけている、器用な俳優さんだと思わせますが、その裏ではあまり外には見せないながらやっぱり努力家さんだと思います。努力を続ける才能がある。そういう意味でもとても信頼できますし、舞台に居る様もとても素敵ですから、またご一緒できること、本番を見られることも含めて嬉しいですね。
内藤 優一さん(原田)は本当に尊敬する先輩で、初めての現場でも座組のなかに優一さんの名前を見ただけで「あぁ、大丈夫だ」と安心できます。プレイヤーとしてもとても素敵ですし、こうして演出もされて、ご自分で意欲的に活動されている姿も尊敬しています。お客様に向けて話す時も、言葉の選び方も、丁寧な物腰も、自分には到底できないもので。プレイヤーとしての遊び心も忘れずに、そうしたこともそつなくこなされる人間力に憧れます。良くんについては、僕「3年B組金八先生」の良くんが出ていたシリーズがすごく好きだったんです!
平野 本当に?
内藤 そう、今でもあの教室のあの席に座っている良くんが浮かぶくらいだから、初めて共演できる!となった時にはすごく嬉しかったんですが、あまり絡みがない役で。今回良くんと一緒にお芝居をできるのが本当に楽しみです。良くんの持っている雰囲気も芝居力も自分にはないものだし、歌も台詞のように歌える。良くんは謙遜しますけれども、それってなかなかできないことなんです。台詞のように歌えるってすごい武器なので、芸歴もそうですし、こうして良くんと二人で主演をと言っていただけてとても心強いです。
平野 もう10年以上前になると思うんだけど、僕は大希が出たミュージカルを観にいっているんです。知り合いがいっぱい出ていたので。その時、圧倒的な存在感がありながら、大希特有のあったかい太陽みたいな感覚があったのに驚きました。普通、抜群の存在感ってどこかで硬さも帯びるものだと思うんですが、ふわっと柔らかいままに舞台上ですごい求心力があって「すごいな!」と思ったのをいまでもよく覚えています。それから10年以上、色々なミュージカルに出てきているから、正直、怖いなとも思っていて。いまもこうしてふわっとしているのに、舞台上でスイッチが入るとガラッと変わるから。アルデンテというか。
原田 芯があるからね!(笑)
平野 そうそう、アルデンテ俳優(笑)。だから舞台上で会った時にすごく楽しいだろうというのが想像できますし、源頼朝と北条義時ですから役柄としては真逆になるのかなと思いますが、お互いがお互いを理解し合いながらきっとやっていける。衣装をどこにかけるか?とか、そういうことも話し合いながら進んでいけるだろうと思えるのが楽しみですね。優一さんについては、もうコメントすることさえおこがましい気持ちがあって。
原田 なんで(笑)。
平野 いえ、僕個人的に、僕の2歳上の世代の方々と、8歳下の人たちはバケモノ揃いだと思っているんです。双方の方から見るとちょうど10年スパンなんですけど、ここがもうすごい方たちばかりで、みんなすごいけどみんな頭おかしいみたいな(爆笑)。名前はちょっと控えますけど(笑)もう全員尊敬できる方達ばかりで。優一さんには初めて『FACTORY GIRLS』でご一緒した時にその話もしたのですが、まず稽古の段階で「こういう可能性もあるよね?」という持ち込みの球数の多さが素晴らしくて。優一さんのシーンになると、稽古場の全員が優一さんに注目するんです。どんなことをするんだろうって皆が見る。それくらい素晴らしいお芝居と歌とプランニングだなあと思いました。その次に『麒麟にの・る』で演出をしていただいたのですが、やっぱり俳優に寄り添ってくれるんです。もちろん外から見たらこう見えるよ、ということはしっかり指摘してくださるのですが、あくまでも俳優のことを考えてくれる。ですから演出家としてもすごく信頼できる方ですね。特に稽古場に早めに来て真剣に考えてくださっている姿を見ると、僕は落ちちゃうんです!「あー考えてくれている!」って(笑)。悩んでくれている姿により信頼度があがるので、いまは何も不安がないです。
──皆さんがお互いに感じていらっしゃるリスペクトが伝わってきますし、赤澤ムックさんの脚本も常々本当に素晴らしいものばかりなので、この「祭シリーズ」の初ミュージカルは必ず面白いものになる!という期待でいっぱいです。
原田 そうですね。『麒麟にの・る』で赤澤ムックさんの脚本、わたしの演出ということで初めてタッグを組ませていただいて、今回が2作品目なのですが、ムックさんのお人柄もですし、温かいのにサッと入れてくる薔薇の棘のような世界観も大好きです。現在台本も鋭意制作中なので、どういう風に仕上がってくるかをとても楽しみにしています。また、ミュージカルに欠かせないのは音楽家で、オレノグラフィティさんがやってくださいます。オレノさんの音楽で演出をさせていただくのは3作目で、ジャンルを問わず書いてくださるのが面白いです。ご本人も芝居をする方なので、音楽も芝居に寄ってくださる、キャッチーでありつつ、台詞感や世界観を壊さず、かつ刺激を持ち込んでくれる。そういう脚本と音楽のお二人共が独自の世界観を持っている方なので、それとわたしで合わさって今回どういうものができるのかなというのを、すごく楽しみにしています。
──では主演のお二人からは、年末恒例の舞台を楽しみにされているお客様にメッセージをいただけますか?
平野 既視感のある新しいものが見られるだろうと思っています。懐かしさもあるんだけれども、新しさもある攻め方ができる。ですから今までもずっとこの年末のシリーズを楽しみにしていたと言ってくださっている方にはもちろん、今回ミュージカルということで初めて観てみようか?と考えてくださっている方にも、どちらにもフィットする作品になると思います。ですから、もし今回、今までのシリーズを知らないしどうしようかな?と悩んでいる方はチャンスですので「一緒に仲間になろう!」とお伝えしたいです。特に去年の公演が終わった時に、もっと積極的に第二部はファンサしていこう!とみんなで決めたので、是非期待していただきたいです!
内藤 本当に、本編はもちろんなんですけれども、二部ではその時の旬のものを組み込んでお送りしていて。以前、韓国アーティスト風のアイドルのシーンでは、本当に韓国人の振付の先生が来てくださって、めちゃめちゃ怖かったんです!できない奴は切り捨てる!みたいな雰囲気で。「あぁ、できないんだ、じゃあしょうがない、君たちの為に振りを簡単にするから」って。
平野 あれすごかったよな!
内藤 もう何時間もレッスンして真面目に大変だったんです!フライヤーを見ていただいてもわかると思うんですが、本編になんの関わりもないのにすごく凝った衣装を用意してくださったり!その大人の本気、コアな情熱にとても感化されるし、それに応えたい、より一層パワーを乗せて返したいと毎年思っています。やっぱり明治座でミュージカルをするということに、特別なものを感じているので、持っている力をフルに活用していきますので、楽しみにしていて下さい!
■PROFILE■
ないとうたいき〇神奈川県出身。幼少時より現在まで数々のミュージカル、ストレートプレイ、コンサート等、幅広い舞台で活躍を続けている。近年の主な舞台出演作品に、ミュージカル『レ・ミゼラブル』(2017・2019・2021マリウス役)、ミュージカル『パレード』、カムカムミニキーナ『燦燦七拍子~幕末エクスプレス1867』(主演)、『Fly By Night~君がいた』(主演)、ミュージカル『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』『THE BLANK!~ 近松門左衛門 空白の十年~』、『歳が暮れ・るYO 明治座大合戦祭』など。2022年3月~ミュージカル『メリー・ポピンズ』への出演が控えている。
ひらのりょう〇神奈川県出身。1999年ドラマ『3年B組金八先生』第5シリーズで映像デビュー。2017年から『2.5次元ナビ!』のMCを務める。主な出演作はミュージカル『テニスの王子様』『お気に召すまま』『さよならソルシエ』『シラノ・ド・ベルジュラック』『憂国のモリアーティ』シリーズ、『封神演義─開戦の前奏曲─』朗読劇『ハンサム落語』シリーズ、舞台『一郎ちゃんが行く』『源氏物語~夢浮橋~』『インフェルノ』『東海道四谷怪談』『文豪とアルケミスト』シリーズ、『ハイスクール!奇面組』シリーズ、『真・三国志無双~荊州争奪戦IF~』など。
はらだゆういち〇埼玉県出身。9歳よりTV、舞台、映画、ライブ、ダンス・イベントに多数出演。安定感のあるソフトな歌声と、二枚目から個性的なキャラクターまで、幅広い役をこなせる逸材として、ミュージカルを中心に活動中。『KAKAI 歌会』、オフブロードウェイミュージカル『bare』等、構成・演出にも積極的で好評を得ている。主な出演作に『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』『ラ・カージュ・オ・フォール』『マリー・アントワネット』『ダブル・トラブル』等がある。
【公演情報】
シン る・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張・る!!』
第一部 オリジナ・る ミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張・る!!』
脚本◇赤澤ムック
演出◇原田優一
音楽◇オレノグラフィティ
出演◇内藤大希(W主演)、平野良(W主演)/
佐奈宏紀/松田岳、前川優希、櫻井圭登、井深克彦、鯨井康介/
大山真志、伊藤裕一、spi、原田優一/
小野田龍之介(Wキャスト)・おばたのお兄さん(Wキャスト)、三木眞一郎(Wキャスト)・松村雄基(Wキャスト)/
粟根まこと、辻本祐樹/
坂元健児/
水夏希
第二部 ショー『ジャングルジャナイトクルーズ』
◆日替わりゲスト
12/28(火)昼:安西慎太郎 夜:安西慎太郎&小林且弥
12/29(水)昼:木ノ本嶺浩 夜:浅野内匠頭&片岡源五右衛門(安西慎太郎&木ノ本嶺浩)
12/30(木)昼:佐藤貴史&加藤啓 夜:毛利亘宏(少年社中)&林剛史
12/31(金)昼:中村太郎 夜:安西慎太郎
●12/28~31◎明治座
〈料金〉S席(1,2階席)13,500円(※12月31日17:30公演のみ14,000円) A席(3階席)6,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※上演時間3時間30分予定。12月31日17:30公演でフライングカウントダウン実施。
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
〈公式サイト〉https://shin-lehima.com/
【取材・文/橘涼香 撮影/中村嘉昭】
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