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ミュージカル『マチルダ』上演中! 美術・衣裳デザインのロブ・ハウウェル インタビュー

ロブ・ハウウェル

両岸から架けた橋がうまく渡った、ラッキーなコラボレーション

3月末より東急シアターオーブで上演中のミュージカル、『マチルダ』。ロアルド・ダールの原作に基づく勇気が湧いてくるストーリー、ティム・ミンチンによる遊び心あふれる音楽、そして日本版キャスト陣の丁寧な演技と共に、大きな見どころとなっているのが、楽曲や振付とシームレスに溶け合った舞台美術だ。「お見事!」と言いたくなるシーンの数々の誕生秘話を、プレビュー公演中に来日した美術・衣裳デザインのロブ・ハウウェルに聞いた。

子ども役はパペットかもしれなかった!?

──まずは、本作に参加されることになった経緯を教えてください。

演出のマシュー(・ウォーチャス)とは、もう20年来の付き合いになります。本作について彼と話し合いを始めたのは、まだ音楽を誰が手掛けるかも決まっていない頃。子どもの役を演じるのは本物の子どもなのか大人なのか、それともパペットを使うのがいいのかといった基本的なところから、アイデアを出し合って作品のトーンを決めていきました。それから徐々にチームが結成され、ワークショップを重ねながら創作していったわけですが、ラッキーなことに私たちはお互いを信頼し合っていたので、何が誰のアイデアだったかはもう覚えていないんですよ。このようなビッグ・プロジェクトでは、開幕する頃にはチームが仲違いしていることも多いのですが(笑)、私たちは12年経った今でも友達なんです。

――あの印象的なタイルの美術も、話し合いの中で自然と生まれたアイデアなのですか?

あれについては私のアイデアだったと思います。最初は学校の机をモチーフにしようと思って、4か月ほどそのプランで進めていたのですが、机は色を塗った瞬間に机らしさを失ってしまう。これはグッドではあるけれどベストではないからやめようと思った時、空から降ってきたのがアルファベット・タイルのアイデアでした。タイルならばカラフルにしやすいですし、アルファベットというのは、どの年代の観客にとっても遊び道具になり得るもの。家族で観に来た方々が、思い思いの単語を頭に浮かべて楽しめるのではないかと思いました。そして実は、あのアルファベットは組み合わせると物語に登場する単語たちになるという、開演前から物語が始まっているような仕掛けにもなっているんですよ。

(インターナショナルツアー版のセットより)

──タイルと並んで印象深い装置と言えば、やはり《WHEN I GROW UP/いつか》のシーンで使われるブランコ。あのシーンは、どのように生まれたものなのでしょうか。

確かあれは、ティムの音楽がまずあったんじゃないかな。物語を進める上で必要なナンバーではないけれど、二幕のオープニングに相応しいということでみんなの意見が一致し、どう見せるべきかを考えていきました。物語に登場する校庭には恐ろしさが必要だから、物語に関わらないここでは楽しい校庭を作ろう、ということでブランコになったのですが…誰が言い出したかは、やはり覚えていないですね(笑)。音楽ありきと言っても、ブランコを使うことになってからティムが書き換えた部分もありますし、それはどのシーンの音楽、美術、振付、照明にも言えること。最高のシーンを作るためにみんなでアイデアを出し合い、生まれたアイデアをもとに、それぞれが柔軟に対応しながら作ったのが『マチルダ』なんです。)

撮影:田中亜紀

ロアルド・ダールの遊び心を大切に

──お話を伺っていると、天才たちによる理想的なコラボレーションという感じがします。

いえいえ、本当にラッキーだったんですよ。コラボレーションというのは、川の両岸から橋を架けるようなもの。誰もが真ん中で出会えることを願って作業するわけですが、立ち往生することだってありますから(笑)。

──なるほど(笑)。衣裳のデザインは、ある程度の土台ができてからの作業ですか?

そうですね、作品のトーンが決まってから、色のボリュームを上げ下げするようにデザインしていきました。トランチブル校長については、色というよりシルエットのボリュームを上げた感じですね。ただのモンスターではなく、楽しんでもらえるモンスターにしたくて遊び心を加えました。遊び心は、ダール自身が大事にしていたものでもあると思っています。

──そうして作った作品を、この日本公演で改めてご覧になった感想をお聞かせください

日本に来るのは初めてなので、観客の反応が全く予想できずにいたのですが、熱い喝采をいただくことができました。プレビュー初日には拍手が鳴りやまず、2度目のカーテンコールの稽古なんてしていなかったから慌ててしまったほど(笑)。細かい反応はもちろん違いましたが、作品のメッセージはイギリスやアメリカと同じように届いた、と感じられる素晴らしい経験でした。プレビュー中にもいくつか手直しをしましたし、今すぐは直さないけれどいつかは…という事項をメモした“秘密のノート”もありますので(笑)、作品はこれからもどんどん良くなっていくと思います。

──最後に日本の観客に向けて、お誘いのメッセージをお願いします!

『マチルダ』は、ひとことで言うなら、小さな者が大きな者をやっつける物語。その展開はもちろんダール独自のものですが、テーマは普遍的で、誰にとっても馴染み深いものだと思います。そうした物語を、ティムのキャッチーな音楽と、お話してきたようなビジュアルで描き出しているのがこのミュージカル。チケットを売るのは私の仕事ではないけれど、買ってみるのも悪くない、というのが一般的な見解だと思いますよ!(笑)
(取材・文 町田麻子)

【公演情報】
ミュージカル『マチルダ』
脚本:デニス・ケリー
音楽・歌詞:ティム・ミンチン
脚色・演出:マシュー・ウォーチャス
振付:ピーター・ダーリング
デザイン:ロブ・ハウウェル
オーケストレーション・追加音楽:クリストファー・ナイチンゲール
照明:ヒュー・ヴァンストーン
音響:サイモン・ベーカー
イリュージョン:ポール・キーヴ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
出演:マチルダ:嘉村咲良、熊野みのり、寺田美蘭、三上野乃花(クワトロキャスト)
ミス・トランチブル校長:大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成(トリプルキャスト)
ミス・ハニー:咲妃みゆ、昆夏美(Wキャスト)
ミセス・ワームウッド:霧矢大夢、大塚千弘(Wキャスト)
ミスター・ワームウッド:田代万里生、斎藤司(トレンディエンジェル)(Wキャスト)
ミセス・フェルプス:岡まゆみ/ 池田有希子(Wキャスト)
●2023/3/22~24◎東京プレビュー公演 東急シアターオーブ
●2023/3/25~5/6◎東京本公演 東急シアターオーブ
〈料金〉S席14,000円 A席10,000円 B席5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ホリプロチケットセンター:03-3490-4949 受付/11:00~18:00(平日*土日祝休)
●2023/5/28~6/4◎大阪公演 梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席14,000円 A席9,500円 B席5,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00~18:00)
〈公演サイト〉https://matilda2023.jp/

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