お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

パルテノン多摩『オイディプス王』三浦涼介インタビュー

人はどうあるべきなのか? を教えてくれる作品

人間の不条理と、根底で交錯する深い愛と憎しみを叙情的な台詞で描き、衝撃の展開が連続するギリシャ悲劇の傑作ソポクレス作『オイディプス王』が、石丸さち子演出、三浦涼介主演により、パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念公演として上演される。

紀元前より約2500年にわたり観客を惹きつけてやまない、世界最高峰の悲劇と称される『オイディプス王』、日本でも幾度となく上演され時代を象徴する俳優陣が挑んできた大作だ。そんな演劇世界のおおいなる山とも言える作品で、主演のタイトルロール、オイディプス王を演じる三浦涼介が、作品に向ける思いと演出家石丸さち子への信頼、更に自身が演じる上で大切にしていることを語ってくれた「えんぶ6月号」のインタビューをご紹介する。

石丸さんとならこの大作への挑戦も大丈夫だと思えた

──ギリシャ悲劇の最高峰とも呼ばれる『オイディプス王』に、主演でというオファーを受けた時の気持ちから教えてください。

いろいろな作品のお話しをいただく度に、僕でいいのだろうか、できるのだろうか、という思いと対峙するところから、僕はいつもスタートするのですが、今回は演出が石丸さち子さんだとお聞きした時点で、石丸さんについていけば大丈夫だ、この不安も全部消えて舞台に立てると想像できたので、ありがたくオファーをお受けしようと思いました。

──石丸さんの演出に対する、そうした絶大な信頼はどんな形で育まれたのですか?

これまでたくさんの演出家の方にお会いして、その時々に多くのことを教えていただきいまの僕があるのですが、まずお芝居が楽しいとはじめに思えたのが石丸さんの師でもある蜷川幸雄さんとの出会いでした。それまでも自分なりに真摯にやってきたつもりでしたが、ある時蜷川さんが、僕の芝居を見て演出席で泣いていらしたんです。僕はそれまで演出家が、自分の創っている芝居を見て泣くことがあるとは考えもつかなかったので、演出家がこんなに感動してくださるなら、お客様の前に立てる、大丈夫だと思わせてもらえた瞬間でした。それからずっと芝居に取り組んでいくなかで、石丸さんと初めてお仕事をさせていただいたのがミュージカル『マタ・ハリ』でした。コロナ禍でリモートでの稽古が続いた時があって、僕の家の環境上音楽を流して歌を歌うという作業ができなかったので、歌詞をセリフで読む形で芝居をさせてもらったんです。その途中でイヤホンから誰かの泣き声が聞こえてきて。最初は相手役の女優さんだと思っていたのですが、それが石丸さんだったんです。その時「あ、この感覚!」と蜷川さんとの思い出が蘇ってきました。その公演は再演でしたから、多くのキャストの方が続投されているカンパニーに新キャストとして入らせてもらっていた僕には、やはり色々不安もあったのですが、この人についていけば大丈夫だ! と思えたんです。ミュージカルって基本的に譜面のなかで決められた動きが多くて、この歌までにここまで移動しないといけない、というような約束事がよくあるんです。でも何故そこで動くのか動機が見つからないこともあって、それをなんとか自分で埋めていく作業がすごく大変だったりするのですが、石丸さんはまず自由にやってみようと言ってくださるんです。その上で、いいところを絶対に逃さずに「今のここがよかったからこれは生かしながら、こうやってみたらどうだろう」というような形で、役者の感性を最大限に取り入れつつ、どうしたら役の感情としてここまで動けるか? を一緒に考えて作ってくださるんです。それが本当に心強かったし、楽しかったので、石丸さんとなら今回の大作への挑戦も絶対に大丈夫だ、という思いは強いです。

──そういう意味では今回の『オイディプス王』はより自由度の高い芝居になっていくのかなと思いますが、作品と、演じるオイディプスについては改めてどのように感じていますか?

なんという運命の物語なんだろうかと思いましたし、戯曲がとても緻密で、さらっと言っていた台詞があとあとの悲劇に関わってくることがたくさんあるんですね。あまり勉強は好きじゃないんですけど(笑)、色々と調べている時間もすごく有意義で。膨大な台詞量なのに、不思議なほど台詞に追われているという感覚はないですし、純粋に戯曲を読んでいる段階から楽しいです。役柄については、すごく頭の回転が速くて、民衆のために自から重い扉を開こうとして動き始めたことで、最終的に辛い真実、自らが負っている運命を知ってしまうという人物だなと。それはオイディプスだけではなくて、出てくる人達の誰もが良かれと思って行動しているし、なんとか良い方向に持っていこうとしているのにも関わらず、運命に抗えない切なさがあります。でもだからこそ、いまとても便利な時代になっていて、あらゆる情報が一瞬で手に入りますけれど、結局何が真実なのかは自分の目で見極めるしかないですよね。それは結局オイディプスも同じことで、心で感じる、心の目でちゃんと見るということができていたなら、この結果にはならなかったという、いつの時代にも人間はどうあるべきなのか?を教えてもらえる作品だなと思っています。

日々舞台の上で新しいものを見つけたい

──そうした作品に出演するにあたって、三浦さんが特に大切にしたいことはなんですか?

やっぱり相手のために芝居をしたいと思います。自分がやりたいように演じるというのではなくて、その日、その日で生の舞台の芝居って同じ台本で、同じセットで、同じ舞台で演じていても、全く同じということはないですよね。例えば昨日までこの台詞では相手が目を逸らしていたのに、今日は逸らさなかったとしたら、そこからもう芝居は変わります。決して段取りじゃなく、その日の新たなゴールにたどり着いて、新しいものを見つけられてどんどん広がっていく、その感覚がとても大切だと思うので、常に相手のお芝居をキャッチしていきたいです。今回も素晴らしい共演者の方々が揃ったカンパニーですし、コロナ禍で稽古にも様々な制限があって、なかなか皆さんと交流できなかったところから、少しは良い方向に行ってくれるのではないかという期待もあるので、カンパニー一丸となって精一杯務めていきたいです。僕はお芝居をしている時だけは強くなれる、不思議と無敵になれるという感覚もあるほどなのですが、一人では何もできないですし、今回も主役だから、タイトルロールだからということも全く意識していません。ただ役としてこの作品のなかで生きていきたいですし、ご一緒させていただく皆さんに置いていかれないように頑張っていきますので、古典で難しいかなと考えすぎず、気楽に劇場に遊びにきていただけたらと思っています。

【プロフィール】
みうらりょうすけ○東京都出身。『仮面ライダーオーズ/OOO』のアンク役で人気を博し、以後多くの映像作品に出演。歌手としても活躍するほか、多数のミュージカル作品などに出演し高い評価を得ている。近年の主な出演作品に、ミュージカル『1789 –バスティーユの恋人たち-』『ロミオ&ジュリエット』『エリザベート』『マタ・ハリ』『銀河鉄道999 THE MUSICAL』などがある。

【公演情報】
パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念
『オイディプス王』
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎
演出:石丸さち子
出演:三浦涼介 大空ゆうひ  荒木宏文/
浅野雅博  外山誠二 吉見一豊 今井朋彦/
悠未ひろ 大久保祥太郎 相馬一貴
岡野一平  津賀保乃  林田航平 小田龍哉
丸山厚人 福間むつみ ほか
●7/8~17(休演日3日含む)◎パルテノン多摩・大ホール
〈お問い合わせ〉パルテノン多摩 042-376-8181(10:00~19:00 休館日を除く)
https://www.parthenon.or.jp/ticket/
●8/19◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
〈お問い合わせ〉兵庫県立芸術文化センター0798-68-0255(月曜以外10:00~17:00)
〈公式サイト〉https://www.parthenon.or.jp/event/202307anniversary

 

【インタビュー・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報