お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

11/6より座・高円寺1にて新作を上演!脚本家・演出家 大西弘記(TOKYOハンバーグ主宰)インタビュー

2006年の旗揚げより、家族や職場など身近の人たちの生活から垣間見える小さなドラマを掬い上げ、丁寧な脚本と演出で、”強い普遍性と現代リアルのバランスを保つ”作品を上演してきた大西弘記率いるTOKYOハンバーグ。
近年は、青年劇場や人形劇団ひとみ座など外部への脚本提供や演出も多い大西弘記。今年、第25回劇作家協会新人戯曲賞最終候補に選ばれた彼が、覚悟を決めて取り組んだ最新作とは――。

 

社会に流されないために

――今回はどんな内容になりますか?
近未来型黙示録寓話劇と銘打っているのですが、現在、存在しているある少数民族への差別についてと、そのことの未来を描いています。この作品を書くきっかけになったのが、2年くらい前に見たある動画で。訴えている内容もそうですが、悲愴な表情が目に焼き付いて…。すぐに書ける題材ではなかったので、インプットをたくさんして、満を持して、今年、上演することにしました。
――台本を読ませていただいたのですが、最初、2041年という未来が舞台となっていて、タイトルにもある「人間と似たもの」にまつわるお話が展開していきます。科学的な事柄が多くて、SF色を強く感じました。
今回、けっこうエグい問題について触れているので、フィクションを入れるともっと身近に感じてもらえるかなと。まずそういう事実があることを知って、自分のことのように思ってもらえるように。僕がそういうことを書くのは、僕自身が無関心にならないためですね。社会とか当たり前のように思われているものに対して、なにかしら抗って生きてて。諦めたら楽なんだろうなとかいっぱいあるんですけど。そうならないために、社会に流されないためにこういうこと書いています。

人間って、何なんだろう

――ヘビーな内容ですが、劇団員や出演者からのリアクションは?
しんどそうですよ。僕が選ぶ題材に対して口は出しませんけど、その役と向き合う上で、色々調べるだろうし。中には心をすり減らしていかないとできないような役もあるから、演劇嫌いにならないか、僕のこと嫌いにならないかなと心配です(笑)。でも嫌いになったら仕方ないですけどね。だからいつも舞台をやるときは、永遠なんてものはないから、これが最後かもしれない、という気持ちでやっています。
――今作は、少数民族に対する差別や「人間に似たもの」など様々なモチーフがありますが、大西さんの中で一番大きなものは何でしょうか?
優劣ですね。人間が差別をしていくときの理由の一つになるというか。人間って、何なんだろうなって普段からすごく考えています。
――サイトの公演ページには、以下の文章が並んでいます。(以下TOKYOハンバーグ公式サイトより)

私たち人間に優劣があるのなら
“優”として生まれてきた人間がいつの時代でも人類を発展させてきた。
​私たち人間に優劣があるのなら
“劣”に分類される人間たちは果たしてこの地球上に必要なのだろうか。​​
私たち人間に優劣があるのなら
〝優劣〟 を無くすために私たち人間は生きてゆかなければならない。​

だから私は“優”の人間として“劣”の人間を
滅ぼさなければならないと思った。​

人間が人間を滅ぼすのは人間が人間としての
自覚を持つ前から繰り返されてきたことであり、
それは人間が地球上に存在する限り終わることはないだろう。
​​
それが人間の本能というもの。​

2019年の霜月、
TOKYOハンバーグが織り成す近未来型黙示録寓話劇​
彼女が言った。私は哀しい時に泣くけれど、
貴方は嬉しい時も泣く。どうしてと。

――謎解きみたいですね。
今回は割とキツめに書いています。いつもは共有とか共感とか、舞台と客席が繋がるようなイメージで作品を作っていますが、今回は、劇場の天井をぶち破って外へ出て行くような作品を作りたいと思っています。おこがましく言うと、共有共感ではなくて、感化……。演劇にはそういう力があると思っていて。ぼくがそれをできるかどうかは別ですが。でも、ぼくは演劇の力を信じているし、信じられなくなったら、きっと演劇を辞めるんだろうなと思っています。信じることが楽しいんです。つらくて苦しいですけどね。

演劇人としての挑戦

――最後に意気込みをお聞かせ下さい。
自分には攻めるしかないと常々思っていて、演劇人としての挑戦とはどういうことだろうと考えました。ぼくの挑戦は、ある対象に対して怒りを持ってそのことを書き続けること。今作は、怒りと慈しみの物語なので、ちゃんとぼくの頭の中に生まれたものを、形にして見せたいです。
演劇は過去を再生する力も、現代を録画する力も、未来を想像する力もあるので、そこがすごいと感じていて。今回、そこに、自分が演劇の面白いと思っているところと向き合っている実感があります。それは書くことだけではなく、演出もです。別に奇をてらってるわけではないですが、いつもと違うことをしています。俳優たちにはだいぶ負担になっている部分もありますが。でも作品の内容を分かってくれているので、そうした方が面白いとみんな納得してくれて。座組はとっても良い感じですね。問題と向き合って、自分達がどんな作品やってるのかということが身につまされてる……。きっとそういうものをやるときって怖いだろうし、慎重になるんだろうけど。俳優たちはみんな良い顔して稽古してるし、そこに感動しています。
自分の頭の中のイメージなんて作品全体からしたら3割くらいで、今は現場でみんなと作っていて。みんながアイデアを出してくれるので、企み企み……。楽しい場になっています。

【公演情報】
TOKYOハンバーグ『人間と、人間と似たものと。』
11/6~10◎座・高円寺1
作・演出◇大西弘記
出演◇脇田康弘 内谷正文 小林大輔 永田涼香 小林英樹 橘麦 宇鉄菊三 他
http://tokyohamburg.com/next/

 

【取材・文・撮影/矢崎亜希子】

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報