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いよいよ開幕!OSK日本歌劇団「春のおどり」製作発表記者会見レポート!

2022年に栄えある創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団公演、レビュー「春のおどり」が3月26日~28日、新橋演舞場で上演される。

演目はOSK日本歌劇団が最も得意とする、和洋レビューの二本立て。尾上流四代目家元・尾上菊之丞の構成・演出・振付による『ツクヨミ~the moon~』と、荻田ワールドと称される独特の美学を持つ荻田浩一作・演出による『Victoria!』という、全く異なる豪華絢爛な和洋の世界が繰り広げられる。

本来は2020年5月に上演予定だった演目だが、新型コロナウィルス感染拡大を受けて延期となり、その期間に練り上げられた作品は更にブラッシュアップ。新橋演舞場の大舞台を彩る。

またこの作品は、2019年からOSK日本歌劇団のトップスターとして歌劇団を牽引してきた「唯一無二の男役」と讃えられる桐生麻耶のトップスターラストステージとなっている。

そんな作品の製作発表記者会見が都内で行われ、この公演ののちに特別専科に移籍し、男役としての新境地を更に目指していくOSK日本歌劇団トップスターの桐生麻耶と、主催の松竹株式会社代表取締役副社長・安孫子正が登壇。公演への抱負を語った。

【登壇者挨拶】

安孫子 いよいよOSKの今年の東京公演が3月26日~28日新橋演舞場で上演されます。OSKは来年創立100周年を迎えます。OSK日本歌劇団は松竹の創業者・白井松次郎の手によって、大正11年に誕生した劇団で、今年99年の歴史を重ねます。その間事情がありまして、松竹の手を離れた時期もございまして、近鉄さんにOSKお任せしたのですが、様々なことが重なり解散せざるを得なくなったということがございました。その時当時の団員23名の方達がOSKの存続の為に署名活動をしておりまして、たまたま京都で松竹の人間がその署名活動の様子に行き会ったのがひとつのきっかけとなりまして、是非OSKの公演を大阪松竹座で行うようにということで、平成16年間から毎年松竹座でOSKの公演をすることになりました。最初の年はその23名からはじまったのですが、今は60数名の歌劇団となりまして、来年は遂に100周年を迎えることになっております。その23名で署名活動をしていた中では、(桐生に)若手でいらしたんですよね?

桐生 若手に近いです。

安孫子 そういう桐生さんが先輩たちと存続活動に貢献されて、今日があるということで、本当にOSKの苦しい時を知って、解散危機を乗り越え、松竹座も応援することによって、存続して今日を迎えているという、OSK生き残りの精神を受け継いだトップとして桐生さんが活躍をされて参りました。昨年はコロナ禍の為に公演ができませんでしたけれども、今回新橋演舞場では1年ぶりの公演ということになりました。今年1月大阪の松竹座で公演致しましたものを基に新橋演舞場でも公演する。OSKは踊りを得意とする劇団でございますから、和洋両方のおどりをご覧頂いてお客様にご満足頂ける舞台をお届け致します。第一部は尾上流四代目家元・尾上菊之丞さんの『ツクヨミ~the moon~』という和をテーマにしたおどり、第二部は荻田浩一さんの『Victoria!』でおどりをご披露致します。松竹座での公演も実に素晴らしいものでした。トップスターをこの公演で勇退される桐生さんの魅力が十分に表現されておりました。是非OSKレビューの面白さをお伝え頂ければ。そしてこのレビューを追求してきたOSK日本歌劇団が来年100周年を迎えるということで、頑張ってこのレビューの灯を消さず、更に大きなものにしていきたいと思っております。

そういう意味でもこの99年目の節目の公演が素晴らしいものになり、100年を迎える足掛かりになるように応援していただきたいと思います。また大変嬉しいことに、OSKではトップスターという立場になられますと、務めたあとで退団ということが常でありましたが、来年100年、これから先のOSKのことを考えるにあたって、どうしても桐生さんには残っていただきたいという思いがございました。桐生さんがそれを受け入れて下さり、特別専科として劇団に残って、活躍しながら後進の指導にも当たって下さるというのは、本当にありがたいことだと思っております。解散危機の苦しい状態から、今日まで来ているところの気持ちを若い人にどんどん伝えていただきたい、また精神面、技術面のことも伝えていって欲しいと思っておりますので、それを併せまして応援をどうぞよろしくお願い致します。

桐生 皆様コロナの大変な中で、お集りいただき本当にありがとうございます。今回の公演は先ほどもおっしゃったように1年前に公演するはずだったのですが、今回2021年3月26日~28日の開催となりました。何よりも東京にきてOSK日本歌劇団の公演ができるということを、劇団員一同とっても幸せに思っておりますし、普段からも舞台ができることを決して当たり前だとは思っていないのですけれども、今回世の中がこうした状況になって、準備期間やこのようなお時間も含めて、たくさんの方が動いて下さってこの舞台が成立するんだなということを、改めて感じることができた時間でもありました。来年は100周年を迎えるOSK、もっともっと多くの方に知っていただけるような劇団になりたいと思っております。まずは3月26日の初日からしっかりと千秋楽まで務めたいと思います。是非ご声援よろしくお願い致します。

【質疑応答】

──大阪公演を1月に終えられたその手応えはいかがでしたか?

桐生 手応えは、初日の緞帳が開いた時のお客様の雰囲気ですね。ご声援は拍手のみという中で、本当に大きな拍手をいただいて。マスクをしての観劇ですから目しか見えない分、その瞳から感じるエネルギーの大きさが私達にとっては大変プラスになりました。

──作品の見どころを教えて下さい。

桐生 第一部『ツクヨミ~the moon~』に関しては、私のお役が三つありまして、蘇我入鹿からはじまって、伊達政宗があって、最後に堀部安兵衛なんです。菊之丞先生が「ひとつをメインですることができる役柄を三つ持ってくることに楽しさがある」とのことで、「短い時間の間にその役の一番ピークの場面を持ってくるようにしたい」とおっしゃっていたので、50分という短い間に、三つの味を楽しめると言いますか、全くキャラクターが違う人物なので、そこを楽しんで頂けるのではないかなと思っています。またテイスト的にもミュージカル調になっていたり、ロック調になっていたりなど、様々な色がお楽しみいただけると思っています。第二部に関しては、OSKの王道のレビューを楽しんでいただけるかな?と思っておりまして、個人的には自分が所属している劇団ながらもラインダンスがとても大好きで、OSKのラインダンスは本当に見どころのひとつだと思っています。もしお許しが出るのであれば、今でもラインダンスに出たいくらいなんです!(笑)体力的な問題もありますが、それは夢として持っていたいと思っています。

──是非出ていただきたいです!

桐生 ですよね!(笑)いつの日かと願いを諦めずにいようと思います。

──コロナ禍の中で劇団員の皆様がマスクを手作りされたことも話題になりましたが。

桐生 自粛期間に入りはじめてすぐの頃だったのですが、劇団員全員でマスクを手作りしました。家にミシンがある人はミシンで、ない人は手縫いでということで、私はちなみに手縫いで作らせていただきました。何かしていないと気持ちが持たないという状況の中でもありましたので、マスクを必要としていらした方々から感謝のお声をたくさんいただきましたが、こちらこそ「ありがとうございます」という状態でした。私たちは普段から公演の度に、ちょっとしたヘア飾りですとか、小物類を手作りしていますので、その中でも今までで一番丁寧に縫った、ひと針ひと針に思いを込めて縫わせていただきました。「無事届きました」というお手紙をたくさんいただいたのですが、OSKをそれまでご存知なかった方々も多くいらっしゃいましたし、それをきっかけにしてOSKに関心を持っていただけたりと、マスクが輪になってたくさんのご縁が広がりました。私達はメッセージも添えてお送りさせていただきましたので、「そのメッセージがとても嬉しかった」というお手紙も多く、いまそのお手紙は会社に保管してあるのですが、折々に劇団員が読んで、そういう思いを忘れずに舞台につなげようと思っています。

──今回トップスターとしてのラストステージということで、これまでの思い出と、これから特別専科としてやってみたいことはありますか?

桐生 トップになって一つひとつ与えていただいた作品は全て心に残っていますが、何よりもこのような立場を与えていただけるとは私は思っていなかったので「ありがとうございます」という思いが一番です。会社の方に呼ばれた時に「退団しなさい」と言われるのか「トップになりなさい」と言われるのかどちらかだなと思って場に臨みましたが、「退団しなさい」の可能性が多いだろうと思っていたほどだったので、色々な方々の思いがあってはじめて、今、私はこの立場に立たせていただいているので、そのありがたさを舞台上で返せるように、しっかり芸事を磨いていく、もちろん劇団員を引っ張っていくことを含めて務めようと思ったのが、印象に残っています。特別専科にいってからは、この立場に立ったからこそ見えた景色というものもありますので、OSKが100周年、そこから先にも、たくさんの方に知っていただいて、純粋に楽しいと思っていただく為には、まず観てもらうということが一番ですので、その力にどこかでなれたらなと思っています。

──トップになったからこそ見えた景色というのはどんなものですか?また、解散危機を乗り越え、このコロナ危機もありますが、そのような中でのお気持ち、後輩に伝えたいことは?

桐生 トップという立場になって見えた景色というのは、ひとつの舞台を創るにあたって限りない方々が動いて成り立つんだというところですね。若い時というのはやっぱりそれにはなかなか気づけない、経験を積まないとわからないところです。舞台上ではとにかくまず真ん中にいなければならないので、ご覧になる方のフォーカスがなるべくそこから外れない、若手にもたくさん素敵な子がいますから、そこを観てくださったとしても、その真ん中にいるんだという責任があると思っていました。と言っても、それにとらわれ過ぎてしまうと、責任の重さに押しつぶされてしまいますので、あまり考えないようにしてはいましたが、多くの方に支えられていないと立てない場所なのではないかと思いました。だからこそ強くいられたんだと思います。

OSKの歴史の中で近鉄からの解散危機がありましたが、それもやはり同じで、支えて下さった方々がいらっしゃるからこそ今がある。松竹座の「春のおどり」を2004年からさせていただきましたが、その「春のおどり」がなかったら、いまこうしてOSK日本歌劇団は皆様にお会いできていないのではないか?という気持ちもあります。本当に助けていただきましたので、恩返しという意味では、やっぱり色々な方にOSKを知っていただいて、チケットを買っていただけて、楽しかった!と思っていただける。そのオーソドックスなところが一番難しいと思いますので、それを頑張っていきたいです。コロナというのは誰も予想しなかったことすが、99年の歴史の中ではこのようなことも数々あったと思いますし、その中で支え合いながら今があるので、それも自分たちのプラスになれたらと思っています。

後輩たちについては、OSKは皆打たれ強いんです。舞台が好きで入ってきているという根本と向き合って話せば必ず届くはずなので。でもいくら言葉で言っても、自分たちが経験しないと本当には理解が難しいので、そこを見守れたらいいなと思っています。口うるさく何かを言うのではなくて、そういう必要な時がくるのかなと、その時に必要とされる人間でいられたらと思います。

──100周年に見据えている思いは?

桐生 なかなか100周年に出られる確率ってないはずですし、ひとつ思うことは、続けてきて下さった上級生の方々があっての今の私たちだという思いです。90年史というものがありまして、それを調べてOSKの歴史を改めて知ったり、OGの方々とお会いしてお話することもあります。そういう続けてきて下さった方々の思いも含めて、しっかりと舞台を務めていきたいです。やはり100周年に関して言えば、つないで来て下さった上級生の方々、解散の際の署名活動で署名してくださった多くの皆様、本当にたくさんの方々に支えてもらっての今のOSKなんだという思いがあります。

──ラストステージに際して、桐生さんにとって舞台とは?OSKとは?

桐生 私にとって舞台は「生きる糧」です。生まれて初めて自分で「これがしたい」と思ったことなので、これがなかったら今どうなっていただろうと思います。OSKも同じです。私にとっては母親であり父親である存在がOSKです。

──トップスターから退団せずに特別専科に残るというケースはなかったというお話がありましたが、その決断をされたのは?

桐生 今までのOSKでトップスターになった方で残られた方はいないので、私が初めてになりますから、私自身にもこれから先の道というのがまた見えていないというところはあります。先ほど安孫子副社長がおっしゃったように、100周年に向けて、100周年からその先に向けて、私が在団することによって、何か少しでも舞台の力になれればということがひとつ。また自分自身が舞台をしたい。OSKの歌劇の舞台をまだやりたいということですね。それはこのような立場になったからこそ見えたことのひとつです。しっかりと必要とされる舞台人で居続けたいなと思っています。

──次期トップスターの楊琳さんに送る言葉は。

桐生 楊が入ってきた時から知っていて、どちらかと言うと息子のような存在で。弟じゃないんです(笑)。彼女の心の変化も見てきましたから、言えることは「一人ではできない」ということです。周りに支えてくれる劇団員がいて、支えてくれるスタッフの方々がいて、たくさんの方に囲まれて自分がそこに存在することができるので、立場に負けることなく変わらずに、立ち続けていって欲しいです。

【公演情報】

OSK日本歌劇団
レビュー「春のおどり」
第一部『ツクヨミ~the moon~』
構成・演出・振付:尾上菊之丞
第二部『Victoria!』
作・演出:荻田浩一
出演:桐生麻耶 楊琳 虹架路万 舞美りら ほかOSK日本歌劇団
●3/26~28◎新橋演舞場
〈料金〉S席(1、2階)9.500円 A席(3階)5.000円
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹0570-000-489
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_202103/

 

【取材・文・撮影/橘涼香 】

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