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新橋演舞場11月公演『女の一生』製作発表記者会見レポート


日本演劇史に燦然と輝く不朽の名作『女の一生』が、11月に新橋演舞場で上演される。

この作品は昭和 20 年4月、終戦直前に森本薫が文学座に書き下ろし、杉村春子主演で上演された。杉村は以来、その生涯に947 回にわたって主人公の布引けいを演じ、観客の圧倒的な支持を得た。

物語は、明治 38 年(1905)から昭和 20 年(1945)までを全五幕七場で綴り、天涯孤独の少女であった布引けいが、拾われた家の長男の妻となって家業を守る40 年間を描いている。

今回、杉村春子の当たり役“布引けい”に挑むのは、舞台女優として円熟味を増している大竹しのぶ。そして、けいが拾われる堤家の次男の栄二に高橋克実、長男の伸太郎に段田安則、次女のふみに宮澤エマ、ふみの夫の野村精三に林翔太、女主人のしずに銀粉蝶、そして、叔父の章介に風間杜夫という豪華キャストが顔を合わせた。演出は段田安則がつとめる。

その公演の製作発表記者会見が行われ、大竹しのぶ、高橋克実、段田安則、風間杜夫が出席、それぞれ作品への抱負などを述べた。

風間杜夫、高橋克実、大竹しのぶ、段田安則

【出演者挨拶】

段田安則 この舞台は昭和 20 年、終戦の年の 4 月に渋谷道玄坂で 5 日間、ノーギャラで上演されたそうです。警戒警報が鳴ると役者やスタッフ、お客さんが外に避難するという状況で、警報が解除されると途中から再開するという形で行われていたそうです。そんな中でもお客様さんは舞台を観に行きたいと思い、役者も命がけで舞台をやるのかと、今の私には実感が沸かないのですが、そうゆう力を演劇は持っているのだと思いました。今回のコロナの状況を考えたときに、舞台に立てるということは当たり前のことではないと感じたので、命がけで務めたいと思っております。素晴らしい役者の方々が揃っておりますので、演出については、なにもしなくても上手くやってくれるだろうと思っております(笑)。力不足ではございますが頑張りたいです。今まで多くの名女優さんが演じてきましたが、今回は大竹しのぶさんです。令和の新しい布引けいを是非お楽しみくださいませ。

大竹しのぶ 昭和 20 年にこのお芝居が生まれたのだと思うと、色々なことを考えさせられます。私たちは不自由な時代に突入しましたが、それでもやっぱりお芝居をやりたいと思っています。稽古場では万全の対策を練っておりまして、いつもは意見を言い合ったり、良い芝居ができたときは手を取り合って笑っていたことが、全くできなくなりました。その状況の中でも、私が演じる布引けいが生き生きと生きられるようなお芝居をみんなで作っていきたいなと思います。このお芝居はセリフの一つひとつに文学、時代、歴史、人間を感じることができます。私たちが良いものをつくることで、50 年後、100  年後と永遠に続いていくものになればと心から願っております。お客様にとってはリスクを考えながらの観劇となるかと思いますが、来てくださったら嬉しいです。

高橋克実 この 4 人の中では一番年下です(笑)『女の一生』は、大竹さん演じる布引けいの一生を描いているのですが、それぞれの役の一生も描いておりまして、セリフが心に刺さります。「人間はよく間違いをする。間違いをするために生きているようなものだ。」というセリフがありまして、私はここが一番感動したところでございます。そして今回は、19 歳から 59 歳を演じるので、たくさんかつらを被ります。チラシを配ってもどこにいるのか分からないと言われたりもしておりますが、楽しい現場、そして良いお芝居ができるように頑張ります。よろしくお願いいたします。

風間杜夫 この作品には 2009 年と 2011 年での劇団新派の公演に出演させていただき、私にとっても思い出深い公演です。今回は伯父の章介役で出演させていただきます。前回の公演には高橋克実さんが演じる英二役で出演させていただきました。今回、克実さんは文学座の北村和夫さんのお芝居を盗んでいるようでこれからの稽古が楽しみです。南座は中止となりましたが演舞場の公演は行うと聞いた時、役者をやっていて良かったと思いました。こんな状況ではありますが皆様のお力を借りて一席でも多くお客様に来ていただきたいと願っております。

【記者との一問一答】

──明治・大正・昭和を生きた布引けいと同様に、大竹さんも昭和・平成・令和と 3 つの時代でご活躍されましたが、ご自身にとってそれぞれどのような時代でしたか?

大竹 役者という仕事をしてきたので、どの時代も作品と共に生きてきたと思います。16歳から演じるということをしているのですが、その頃に演じた自分のトーンがよみがえってきたりして、不思議なものだなと思いますね。令和という時代は、どこに向かっていくのかとても不安です。娯楽は(休業要請が)解除されるのが一番最後だったりしましたが、演劇は絶対に滅びないことを信じて頑張ってきた半年間だったと思います。

──俳優のみなさんもこの半年間は経験したことのない期間だったと思いますが、それぞれどのように過ごしていましたか?

大竹 4 月の舞台がゲネプロの直前までいって中止になってしまい、あの時の喪失感と言いますか、こんなに面白いお芝居や舞台セットを見てもらえずに散っていくという悲しさは一生忘れられないものでした。その後から自粛期間に入って、私は息子と一緒に暮らしているので、ただ日常を熟していました。

風間 私は落語をやっておりますので、いくつかの公演は延期や中止になりました。ほとんど家から出ない生活でしたが、体がなまってはいけないということで、ウォーキングを始めました。がっつり食べて、昼寝をして、夕方起きて散歩という規則正しい生活をしていたら、見事に太りましたよ(笑)。一度ついた肉は中々落ちないですが、今回演じる章介おじさんは痩せる必要はないので、青年を演じる(高橋)克実さんの方がご苦労されると思います(笑)。

段田 私は 2 月に東京で公演をしていたのですが、その大阪公演がなくなり、その後も 2作品ほど中止となり、ほとんど家におりました。中止になった舞台がやりたかったという気持ちもあるのですが、演劇や映画やドラマは生きていくのには必要ないんじゃないかと考えたりもしました。でも反対に、命がけでやるものでもあるという、両方の面を持っているのが良いなと気づいたり…。エンジンは全開ですので、大丈夫です。

高橋 お芝居ができない喪失感に駆られつつも、毎日情報番組で司会をしていたので、忙しかったですね。

──演出の段田さんにお伺いです。登場人物だけでなく日本という国の在り方が描かれていると昨品だが演出のポイントはありますか?

段田 明治の満期から終戦までの 40 年間を描いておりますので、日本も一番状況が変わった時代ですし、当時の人物の動きや空気は活かさなければいけないですね。人間の本質は明治も今もそんなに変わっていないと思います。時代の変遷がとてもよく描かれている作品で主人公のけいの変わり具合と時代の流れがマッチしているとも思いますね。

──今まで一つの役を若いころから晩年まで演じる機会が多かったですが、今回と共通することはありますか?

大竹 若いころは晩年のことがわからなかったですが、年を重ねてきて分かるようになってきました。だから今まで演じられてきた方はこの芝居を何回もやりたくなったんだと思います。役者としてその役の一生を演じることができるのは楽しいですね。

──布引けいに共感できるところは?

大竹 一生懸命生き抜いたというところに共感できます。そういう方は今の時代にもたくさんいらっしゃると思います。けいの台詞にある「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの」という考え方は好きだし、私はそう思って生きてきました。

──杉村春子さんが演じていた役をやることに対しての気持ちをお聞かせください。

大竹 私は杉村さんの『女の一生』の舞台を残念ながら実際にはみることができなかったので、どのように演じていたのか分かりません。なので、あまり意識しないで私なりの布引けいを演じなければいけないと思っています。ただ、杉村さんが演じていたものなので多少のプレッシャーはあります。杉村さんは当時演じていた時に立つこともできないくらい体調が悪かったようですが、台詞をいう際はピシっとされていてすごいと思いました。

【公演情報】
新橋演舞場11月公演 『女の一生』
作:森本薫
補綴:戌井市郎
演出:段田安則
出演:大竹しのぶ、高橋克実、段田安則、宮澤エマ、多岐川華子 服部容子 森本健介 林翔太、銀粉蝶、風間杜夫
●11 /2~26◎新橋演舞場
〈料金〉一等席13,000円 二等席8,500円 三階A席5,000円 三階B席3,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈発売開始〉10 月 4 日(日)午前 10 時より電話・Web 受付開始
◯チケットホン 松竹 0570-000-489 または 03-6745-0888
窓口販売・お引き取りは 10 月 6 日(火)から。
窓口販売用別枠でのお取置きはございません。
◯チケット WEB 松竹(24 時間受付) http://www1.ticket-web-shochiku.com/t/
〈公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_20201031/

 

【写真提供/松竹】

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