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栗山民也演出、田中圭主演による松田正隆の名作『夏の砂の上』開幕!

世田谷パブリックシアターで、11月3日に『夏の砂の上』が開幕した。(20日まで、ツアー公演あり)

1998 年に初演された本作は、劇作家・演出家の松田正隆が生まれ育った長崎を舞台に描いた作品で、1999 年読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した松田の代表作の一つ。
長崎を舞台に、職をなくし妻に家出された主人公と彼を取り巻く人物たちの間で交わされる会話から、一見淡々とした日々に漂う、抗いようのない悲哀や心の乾きが滲みだす。

今回、演出を手掛ける栗山民也は、『涙の谷、銀河の丘』(2003 年、新国立劇場)以来となる松田正隆とのタッグとなる。コロナ禍のこの時代に上演する作品として、栗山は、日々の生活に重く漂う閉塞のもとに生きる人々のやるせなさと慈しみを描き出したこの作品を選んだ。

また栗山は世田谷パブリックシアターでは、『藪原検校』『シャンハイムーン』『CHIMERICA チャイメリカ』『殺意 ストリップショウ』『彼女を笑う人がいても』など数多く上演してきた。今回、『CHIMERICA チャイメリカ』に出演した田中圭を 3 年ぶりに起用するにあたり、積み重ねられる会話から登場人物の心模様があぶり出される、俳優の力量が問われるこの『夏の砂の上』を選び出した。そして田中も絶大な信頼を寄せる栗山の演出により、舞台俳優としての実力を存分に発揮している。

主人公・小浦治を演じるのは田中圭。夫を捨て家を出ていく妻・恵子を演じるのは、舞台や映像作品で唯一無二の存在感を発揮する西田尚美。若手実力派として映像作品に多く出演する山田杏奈は、本作品が初の舞台出演となる。

さらに、新時代のバイプレイヤーとして注目される尾上寛之、 2020 年に第 55 回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した実力派の松岡依都美、 また舞台を中心に活躍し演出家が信頼を寄せる粕谷吉洋、深谷美歩、三村和敬と、豊富な舞台経験を持つ俳優が揃い、登場人物の心情の揺れが幾重にも積み重なる作品世界を、丁寧に描き出す。

《あらすじ》
ある地方都市、坂のある街。
坂にへばりつく家々は、港を臨む。
港には錆びついた造船所。
夏の日。セミも暑がる午後。
造船所の職を失い、妻・恵子に捨てられた小浦治のもとに、家を出た恵子が現れる。恵子は 4 歳で亡くなった息子の位牌を引き取りに訪れたのだが、治は薄々、元同僚と恵子の関係に気づいていた。
その時、治の妹・阿佐子が 16 歳の娘・優子と共に東京からやってくる。阿佐子は借金返済のため福岡でスナックを開くと言い、治に優子を押し付けるように預けて出て行ってしまう。
治と優子の同居生活が始まる。

初日を迎えて、演出の栗山民也と出演者たちからコメントが届いた。

【コメント】
栗山民也(演出)
ずっと大事にしてきた作品の初日を、無事迎えることができました。それぞれの登場人物が、それぞれの過去の記憶とともに、舞台の上で静かに弾け、それぞれがじっと沈黙します。そのなんとも虚無的な人々の光景は、夏が終わっていくように何も変わることなくラストシーンに向かいます。変わったことといえば、指を三本無くしてしまったという事実だけ。幕が降り、今まで緩やかに流れていた風が止み、そこにいくつかの穴が開いたような気分。乾き切った夏の砂の上に、ただ一人ボンヤリ取り残されたかのような。
二十数年前に生まれたこの長崎の物語が、今のこの空虚な時代と妙に重なって見えます。わたしたちと同じ不可解で素敵な人間たちに出会えたことに、感謝!

田中圭(小浦治役)
夏の砂の上。たった今初日を終えました。
本日 11 月 3 日はとても縁起のよい日らしく、そのパワーも借りて、ハプニングもありましたし、台詞も間違えましたが、結果良い初日になったんじゃないかなと思っております。とても楽しかったです。
汗ひとつかかない舞台も初なのですが、とにかく面白いこの本を、栗山さんのもと頼りになるキャストと一緒に生きられるのは嬉しく思います。あとはどれだけ変化、進化していくかもとても楽しみです。
皆様、是非劇場で見てみてください。なかなか見れない舞台なのは間違いないので、皆様、是非お見逃しなくです!!

西田尚美(小浦恵子役)
日常を演じることの難しさと毎日たたかってきて、やっと初日を迎えられてとても嬉しいです。でもきっとそれは、千秋楽まで続いていくのだろうと思います。人と人が話すこと、聞くこと、感じること、言葉の裏にあること、栗山さんとのお稽古で何度も思考したけど、本当に尽きないのです。じーっと耳を澄ませて、あの小さな畳の部屋に存在したい。生きたい。あの人たちが、あの場所で必死に生きていたと想像してもらえるように。がんばります。

山田杏奈(川上優子 役)
このような状況のなかで無事全員揃って初日を迎えられたことにひとまず安堵の気持ちでいっぱいです。私はこの作品で初めて舞台に立たせていただきます、お客さんのまえで芝居をするという経験も初めてに近いです。
この 1 ヶ月間濃密な稽古の期間を過ごさせていただいていましたがそれがある意味まっさらになるくらいひとつひとつがその場でその瞬間に新鮮に生み出されていって、舞台は生ものという言葉を身をもって実感しています。
稽古期間中に栗山さんをはじめとしたスタッフのみなさん、そして役者の先輩方からたくさん声をかけていただいたことを一つ一つ大切に最後まで走り抜けられるようがんばります。

【公演情報】
『夏の砂の上』
作:松田正隆
演出:栗山民也
出演:田中圭 西田尚美 山田杏奈
尾上寛之  松岡依都美  粕谷吉洋  深谷美歩  三村和敬
●11/3~20◎世田谷パブリックシアター
※11/11(金)19:00は終演後にポストトークあり
〈料金〉一般/S 席(1・2 階席) 8,500 円 A 席(3 階席) 6,500 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター  03-5432-1515  https://setagaya-pt.jp/
〈公式サイト〉https://setagaya-pt.jp/performances/2202211natsunosunanoue.html
〈公式Twitter〉@natsunosunanoue(https://twitter.com/natsunosunanoue

●11/26・27◎兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
●12/3・4◎宮崎公演 メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場) 演劇ホール
●12/10・11◎愛知公演 刈谷市総合文化センター 大ホール
●12/16・17◎長野公演 まつもと市民芸術館 主ホール

 

【舞台撮影:細野晋司】

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