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渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』開幕! オンライン取材会レポート

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』©松竹

渋谷のBunkamuraシアターコクーンで、コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』が、5月12日に開幕した。これに先駆けて5月11日にオンライン取材会が実施された。

『夏祭浪花鑑』は、並木千柳・三好松洛・竹田小出雲らの合作により、延享二年(1745)に大坂道頓堀の竹本座で人形浄瑠璃として初演された。当時は人形浄瑠璃の最盛期にあたり、後世に残る数々の名作が生まれた。中でも、大坂の風土や季節感が色濃く反映されている本作は、人々の人気を集め、初演の翌月には歌舞伎として上演され、以来、歌舞伎・文楽の双方でたびたび演じられてきた。

恩ある主人を守るべく奮闘する男だての心意気や、夫のために自己犠牲を厭わない女房の姿など、義理人情がふんだんに盛り込まれた物語で、また、全身に鮮やかな彫物をした主人公の団七が、祭囃子にのって様々な見得を見せる「長町裏」は、歌舞伎随一の様式美溢れる場面として見どころとなっている。

コクーン歌舞伎は、十八世中村勘三郎と演出家・串田和美とがタッグを組み1994 年に誕生。古典歌舞伎を一から読み直し、現代に重ね合わせて演出する斬新な手法で次々と話題作が生まれた。なかでも『夏祭浪花鑑』は、コクーン歌舞伎で過去1996 年、2003 年、2008 年に上演された人気演目。アメリカやヨーロッパでも上演されるなど、時代、文化を問わず愛されてきた。

シアターコクーンでは13 年ぶりとなる今年は、コロナ禍もあり、初日が5月6日から12日にズレ込んだが、無事に開幕。中村勘九郎、中村七之助、尾上松也、中村虎之介、中村長三郎、中村鶴松、中村歌女之丞、笹野高史、片岡亀蔵が出演している。

尾上松也 中村七之助  中村勘九郎  串田和美

【取材会レポート】 

オンライン取材会には、演出・美術の串田和美、出演の中村勘九郎、中村七之助、尾上松也が出席。挨拶と質疑応答が行われた。

串田和美(演出・美術)
『夏祭浪花鑑』は、僕が初めて歌舞伎を演出した作品です。コクーンでも4回目になりますが、平成中村座や松竹座など国内外で何度も上演してきました。大好きなこの芝居を久しぶりに幕を開けることができ、今、喜びが湧き上がっております。よろしくお願いいたします。

中村勘九郎(団七九郎兵衛役)
この大変な状況の中ですが、幕を開けることができて本当に嬉しいです。この祭の灯が消えなかったということが、私たち役者、エンターテイメントの人間としての次に進むための1つになったのではないかと思います。まだまだ油断ができない状況で、世の中本当に大変ですけれど、いらしてくださるお客様1人1人の心の栄養になるように一致団結して、超楽しいお祭をお見せしますので期待していてください。

中村七之助(団七女房お梶役)
まずは明日、初日を迎えられることは本当に幸せでホッとしております。沢山の思い出があるこの『夏祭浪花鑑』で、お梶をやらせていただきます。千秋楽まで一生懸命勤めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

尾上松也(一寸徳兵衛役・ 徳兵衛女房お辰役)
本当に皆さんがおっしゃるように、まずは初日を迎えられるということに、本当に有り難く思っております。串田さんのもとで勘九郎さん七之助さんと一緒に、『夏祭浪花鑑』をやるということはとても思い入れ深いことですから、なんとか公演ができるようにと願っておりましたので、まずは初日をできるというチャンスをいただけましたので、最後まで皆さんに楽しんでいただけるよう、精一杯尽くしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』©松竹

──コロナ禍の中での公演について

勘九郎 休業要請やお店を開けられない方々もいらっしゃる中で、幕を開けられることは本当に幸せですが、まずはお客様の安全安心を第一に、この苦しい日常を少しでも忘れていただけるような舞台空間を、肉体の芸術を、生きいるという実感をお届けするのが私たちの使命だと思っていますし、この公演の意義だと思っていますので、少しでも、生きる鼓動を味わっていただけたら嬉しいです。

七之助 いろいろなお考えはあるかと思いますが、演劇をとめてはいけないと私個人は思っております。そしてなんと申しましても『夏祭浪花鑑』はお祭です。久しぶりにこういうお祭の音を聞いたなと。人間の腹の底に眠っている魂の震えのようなもので、これを聞くだけで元気になれます。ですから私たちは一生懸命勤めますし、公演は安心・安全に行われますので、ぜひお足をお運びください。

松也 お二方がおっしゃったように大変な状況で、営業出来ないお店やお仕事の方々がいらっしゃると思いますが、自分も休業しているときにエンターテイメントに、演劇に救われたということがありましたので、こうしてチャンスをいただけたからには、観てくださる方々に精一杯の力を出して、自分が救われたように、観てくださる方々の希望になるようなお芝居にできたらいいなと思っています。

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』©松竹

──今回は演出がどう変わりますか?

串田 とにかくずっとやってきた大切なものを壊さないでやりたいという思いがありました。そして色々な条件が出て来て、それを克服しなくてはいけないという中で、あれもダメこれもダメだということを沢山乗り越えてきました。それがある意味で、その努力がよかったなという気持ちになっています。そのときはたまらないな、つらいなと思いましたけれど、乗り越えられる力というのは、この一座というか、勘三郎さんと共に作り上げたもので、その遺志を息子さんたち、お弟子さんたちがずっと受け継いで支えてきてくれた、そのパワーが今回も幕を開けたんだなというのをすごく感じています。本当に素晴らしい一座です。そしてお祭というのは楽しいときだけにやるものではない。長い歴史の中でお祭というのは、事故があったり災害があったりというような苦しいとき、お祭でそれを祓おうとした。七之助さんが言ったように「つらいときこそ、お祭のエッセンスを思い出そうよ」と、そういう思いで演出をしました。

──勘九郎さんの次男の長三郎さんの様子は?

勘九郎 毎日楽しんで勤めていて、空間を楽しんでいる姿を見て、ああ良い経験をしているんだなと思いました。なかなか歌舞伎役者で、こういうゼロからの「なんでもやっていい」という演出、ふだんは型というものがあってそこに心を込めていくわけですが、「どうやってもいいよ」「どこから出てきてもいい」というような演出を受けたことが、彼ののちのちの人生にとって役立つと思いますし、いろんなことを吸収しながら楽しんで舞台空間に存在しているので、親としても嬉しいです。

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』©松竹

──原作の男と女の意地とか義理について

串田 毎回読み直すと、人間っていろんな人がいるんだけど、どんな人間だって一生懸命に生きていて、ささやかながら自分が生きる証のようなものを探しているんだなと。団七という男は頭が良いわけでもないし、つまんないことで犯罪を犯してしまったりするんだけど、それでも生きているということを一生懸命示したいという、内側から湧いてくるものに忠実だったんだなと思います。

勘九郎 義理人情というのがすごく薄まっている時代に、はっと思わせてくれるような作品ですし、受けた恩を必ず返すという、体の芯から滲み出てくるもの、そういうものを忘れてはいけないなと、そういうことを思わせてくれる本です。

七之助 この作品は、自分のためじゃなくひとのために動いてる人たちのお話で、僕は愛だなと思っております。串田監督がおっしゃったように、頭ではなく腹の底からひとのために動ける、動物的に動ける人たちの、悲しくもあり、「ああこういうふうに生きなきゃいけない」という熱い魂のお話なんだと思いました。

松也 絆とか人との繋がりというのを改めて感じました。今までも感じていたつもりなんですが、こうしてコクーンの舞台でさせていただくと改めて感じます。こういう時代だからこそというのもありますが、血が繋がっているわけではないのに、そういう絆で支え合っていける。愛し合えるということでは、こういう中だからこそやらなければいけない作品だと思いますし、観ていただいた方々にも感じていただけるのではないかと思います。

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』©松竹

──稽古中の出来事など

串田 稽古中はまず2時間の作品にするために、あそこを切らなきゃ、ここも急がないというのがつらくてつらくて、花道が作れないとか、悔しいとかつらかったことを、あまり思い出さないようにしてましたが、今、頭に湧いてきました(笑)。

勘九郎 これは義太夫狂言で、型というのがあるのですが、監督は実の部分をちゃんと持っていないと上滑りしてしまうし、真実が見えてこないと。歌舞伎だけでなく役者としての基本中の基本を注意していただくので、我々も初心というか目からうろこがあって、楽しい稽古期間でした。

七之助 この稽古、コクーン歌舞伎のこういう稽古って久しぶりだなとつくづく感じました。みんなのスイッチとか、当たり前なのですが大事なことを改めて思い出させていただきました。そしてそれをみんながビビッドに修正していく姿は、コクーン歌舞伎らしいな、久しぶりだなと感じました。

松也 僕は串田さんのもとでのコクーン歌舞伎は2回目なのですが、前回はお二人のおっしゃったように沢山の発見があって、歌舞伎にある型には実がなくてはいけないということで、「1回その殻を破ってやってごらん」というような提案をされたりすると、楽しいのですが僕たちには大変なことで(笑)。でもやってみるとこんな楽しいことはないという、気づかされることの連続でした。今回も九郎兵衛と徳兵衛が出会う最初のシーンで立ち廻りがあるのですが、そこを勢いでやってみろと言われて、わーっとやり合ったらみんなに笑われたんですが、なんかコクーンに戻ってきたなという感じで、嬉しかったです。

──コクーン公演のあと上演される長野・まつもと市民芸術館公演に向けて

勘九郎 串田監督のお膝元でもありますし、お客様が本当に歓迎してくださる。そして心の底から楽しんでくださる。今回、3年ぶりに松本の方々のお顔を見られることをうれしく思っています。

七之助 街中が芝居好きで、何日に観に行きますよとか声をかけたいただいたり、私も松本の皆様が大好きですので一生懸命勤めさせていただきます。

松也 前回の『三人吉三』で初めて伺いましたが、本当に楽しくて、劇場も過ごしやすく、皆様が熱い視線を送ってくださるので、やり甲斐があります。コクーンの熱量を忘れることなく、そのまま松本の皆さんに届けたいと思います。

【公演情報】
渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』
2021年5月12日~30日◎Bunkamura シアターコクーン
作:並木千柳、三好松洛、竹田小出雲(「夏祭浪花鑑」より)
演出・美術:串田和美
出演
団七九郎兵衛:中村勘九郎
団七女房お梶:中村七之助
一寸徳兵衛/徳兵衛女房お辰:尾上松也
玉島磯之丞:中村虎之介
団七伜市松:中村長三郎
傾城琴浦/ 役人左膳:中村鶴松
三婦女房おつぎ:中村歌女之丞
三河屋義平次:笹野高史
釣船三婦:片岡亀蔵

〈料金〉1等席13,500円 2等席8,000円 3等席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489 または03-6745-0888(10:00~17:00)
チケットWeb 松竹 (24 時間受付)
〈松竹ホームページ〉https://www.shochiku.co.jp/
〈Bunkamura ホームページ〉https://www.bunkamura.co.jp

【松本公演】
第7回 信州・まつもと大歌舞伎『夏祭浪花鑑』
2021年6月17日~22日◎まつもと市民芸術館 主ホール

【写真・資料提供/松竹】

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